ショーソン:「果てしない歌」
「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲(コンセール)」
ピアノ:ピエール・バルビゼ
ヴァイオリン:クリスチャン・フェラス
弦楽四重奏:パレナン弦楽四重奏団
ジャック・パレナン(第一ヴァイオリン) マルセル・シャルパンティエ(第二ヴァイオリン) ドゥネス・マルトン(ヴィオラ)
ピエール・ペナスウ(チェロ)
ソプラノ:アンドレエ・エストポジート
LP:東芝EMI EAC‐40125
フランスの作曲家であるエルネスト・ショーソン(1855年―1899年)は、我々日本人にとっては、フォーレほどは馴染はないのかもしれないが、「詩曲」の作曲家と言えば、「あの曲の作曲家なのか」と誰もが頷くことになる。それは「詩曲」を一度聴けば、その繊細で、夢の中を歩いているかのような、文字通り“詩的”な音楽との出会いに、誰もが一度は感激したことを思い出すからであろう。ショーソンは、24歳でパリ音楽院に入り、マスネ、フランクなどに作曲を学んだ後に、バイロイトでワーグナーの影響を強く受けたりもした。44歳で亡くなるまで、交響曲、室内楽、歌曲、歌劇など幅広い分野での作曲を手がける。その中でも、1896年(41歳)のときに作曲したヴァイオリンと管弦楽のための「詩曲 」が有名である。そのほか、交響曲 変ロ長調 や「愛と海の詩」などの曲で知られる。このLPレコードには、ソプラノの独唱にピアノと弦楽四重奏団が伴奏をする「果てしない歌」と「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲(コンセール)」が収められている。この2曲は、「詩曲 」ほど有名ではないが、その内容の充実度からすると、「詩曲 」に比肩し、むしろフランス音楽的な詩情に関しては、一層濃密さを湛えた、隠れた名曲という位置づけがされても少しもおかしくない優れた作品だ。「果てしない歌」は、シャルル・クロスの、失われた愛に対する切々たる心情を吐露した詩によるもので、ソプラノのアンドレエ・エスポジートの澄んだ歌声が実に印象的であり、その繊細極まりない伸びやかな歌声を、ピアノのピエール・バルビゼとパレナン弦楽四重奏団が巧みにエスコートする様は、聴いていて、自然にため息が出てくるほど詩的情緒が溢れ出すといった演奏内容となっている。一方、「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲(コンセール)」は、協奏曲という名称が付けられてはいるが、実質的には、室内楽の「六重奏曲」に相当する曲。全体は4つの楽章からなり、ピアノとヴァイオリンがリードしながら、6つの楽器全体が巧みに融合された、優れた室内楽作品に仕上がっている。ピエール・バルビゼのピアノ、クリスチャン・フェラスのヴァイオリン、それにパレナン弦楽四重奏の、デリケートなリリシズムに貫かれた演奏内容にリスナーは酔い痴れる。このようなフランス音楽の室内楽を静かに味わうにはLPレコードほど適したものはない。(LPC)