★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇コルトー全盛期のSPレコードからの復刻盤“コルトー愛奏曲集”

2020-12-07 09:40:53 | 器楽曲(ピアノ)

ブラームス(コルトー編曲):子守唄
アルベニス:やしの木陰
ショパン:即興曲 Op.36
     練習曲 OP.-11「木枯らし」
ラヴェル:水の戯れ
メンデルスゾーン:ロンド・カプリチオーソからプレスト
リスト:ハンガリア狂詩曲第2番
ヴェルディ(リスト編曲):リゴレット・パラフレーズ
アルベニス:セギディーリャ
ウェーバー:舞踏へのお誘い
ショパン:即興曲 Op.29
     子守歌
     バラード Op.23から後半
     ポロネーズ「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」OP.22より

ピアノ:アルフレッド・コルトー

発売:1979年

LP:RVC(RCA RECORD)RVC-1575 GOLDS

 このLPレコードで演奏しているアルフレッド・コルトー(1877年―1962年)は、20世紀を代表するピアニストの一人。コルトーの録音は、いろいろと遺されているが、このLPレコードが貴重なのは、42歳から50歳までの、ピアニストとして油の乗り切った頃のSPレコードへの録音を、LPレコードに復刻したところにある。SPレコードというと鑑賞に支障が出るのではないかという危惧を持たれがちだが、実はSPレコードの録音は、意外と良い音質を有しているのである。繊細で、しかも輪郭のはっきりした、きちっとした音質なのである。勿論、現在の録音レベルとは比較にはならないが、では原音に忠実な現在の録音がいい録音なのかというと、私には必ずしもそうとも思えない。コルトーは、フランス人の父とスイス人の母の間にスイスで生まれた。パリ音楽院で学び、1896年にショパンのバラード第4番で1位となる。しかし、ピアニストとして楽壇にデビューした当時は、意外にもワーグナーの作品に傾倒し、1896年から1897年までバイロイト音楽祭の助手を務めたほどであった。また、1902年頃からは指揮者としても活動、ワーグナーの楽劇「神々の黄昏」のフランス初演を行ったという。我々日本人にとっては、コルトーの名を聴くとショパンのピアノ演奏のスペシャリストとしか考えられないので、不思議な気がする。1905年にはヴァイオリニストのジャック・ティボー、チェリストのパブロ・カザルスとともにカザルス三重奏団を結成し、1920年代後半まで高い評価を受けた。このLPレコードで聴くコルトーの全盛時代の演奏は、いずれも洒落た味わいのあるもので、フランス音楽の粋を踏襲したような雰囲気の演奏を聴かせる。しかし、よく聴くと、その一方で強靭な打鍵も感じられ、ただ単にフランス音楽風と断じられないところがコルトーの魅力なのかもしれない。この辺は若い頃ワグナーに傾倒したことが、後年になって時折顔を覗かせるのかもしれない。それにしてもこのLPレコードのラヴェルの「水の戯れ」の演奏が何と瑞々しいことであろうか。SPレコードの古い録音から、水のしぶきが鍵盤からほとばしっている様が伝わってくるようでもある。いやむしろ、SPレコードであるからこそ、このような瑞々しさが再現できるのだ。現在の原音に忠実な録音では、逆に再現不可能なことなのかもしれない。音楽を聴くということは、所詮想像力を働かせることなのだから。一方、リストの「ハンガリア狂詩曲」などでは、限りなく歯切れが良く、力強いピアノタッチを聴くことができ、その変幻自在ぶりには脱帽するしかない。(LPC)


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