シューマン:交響曲第3番「ライン」
指揮:ブルーノ・ワルター
管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック
LP:CBS・ソニーレコード SONC 15016
シューマンは、生涯で4つの交響曲を作曲している。ただ、作曲時期は番号とは異なり、第1番、第4番、第2番、それに今回のLPレコードである第3番の順に作曲された。つまり、第3番は、シューマンの最後の交響曲である。この交響曲は、ケルンにある寺院から受けた印象から楽想を得て作曲されたようで、「ライン」の愛称も、ライン河沿いの街であるケルンから付けられたという。この曲は、1850年12月に、作曲者自身の指揮で初演されている。シューマンの自身の話では「ケルンの大司教が枢機卿に昇進した祝典の光景を思い描いて作曲した」という。なるほど、それなら、この曲が他の3つの交響曲とは異なり、何か華やかで、大らかで、希望に満ちていることが、自ずと理解できよう。ここでのワルターの指揮は、この交響曲の性格を、ものの見事にオーケストラ豊かな響きとして我々リスナーの前に提示してくれており、数ある「ライン」交響曲の録音の中でも、未だにその存在価値を失っていない。ワルターは人間として性格が暖かく、多くの人から好かれていたようであるが、この演奏は、そんな暖かみのあるワルターの人間性が演奏の隅々に沁みわたっており、聴いていて、ほのぼのとした気分に浸ることができる。しかし、一方では、そのスケールの大きい指揮ぶりが聴き進むうちにじわじわと伝わってきて、聴き終わる頃には、この「ライン」交響曲が、雄大なスケールで書かれた交響曲であることを改めて思い知らされる。よく、シューマンの交響曲は演奏するのが難しいとも言われる。ただ漠然と演奏しては効果が出ないし、逆に、いじり過ぎるとシューマンらしさ無くなってしまう。その点、ここでのワルター指揮ニューヨーク・フィルの演奏は、「シューマンの交響曲は、こう演奏すると最も効果的だよ」とでも言っているように私には聴こえる。音質は、現在の録音水準と比べものにならないが、ワルターの心のこもった指揮ぶりがLPレコードの盤面から直接伝わってくる、今となっては貴重な録音ではある。指揮のブルーノ・ワルター(1876年―1962年)は、ドイツ、ベルリン出身。ベルリンのシュテルン音楽院を卒業後、ピアニストとしてデビューしたが、後に指揮者として活躍。モーツァルトやマーラーを得意とし、20世紀を代表する指揮者の一人。バイエルン国立歌劇場音楽総監督、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団楽長、ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督などを歴任した。(LPC)
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