ショパン:幻想曲
タランテラ
スケルッツォ第2番
舟唱
子守唄
エチュード第12番「革命」
バラード第2番
ピアノ:ヴラド・ペルルミュテール
録音:1960年9月、ジュネーヴ
発売:1981年
LP:日本コロムビア OW‐7875‐PK
ヴラド・ペルルミュテール(1904年―2002年)は、ラヴェルに直接指導を受けたこともあるというフランスの名ピアニストであった。ロシア帝国(現リトニア)に生まれ。10歳でフランスに渡り、15歳でパリ音楽院に入った。21歳の時フランス国籍を取得している。ペルルミュテールは、ラヴェルから直接教えを受けたことにより当時“ラヴェル弾き”とよく言われていた。2度にわたり、ラヴェルの全ピアノ曲をレコーディングもしている。ラヴェルのほかショパンさらにはフォーレやドビュッシーなども得意とした。1950年にはローザンヌ音楽院、1951年にはパリ音楽院の教授に就任するなど、当時フランス楽壇の重鎮として大いに活躍していた。1966年には初来日している。このLPレコードは、ペルルミュテールがショパンの名曲を録音したものであり、発売当時、フランスで1962年度の「ACCディスク大賞」に輝いた名盤。「幻想曲」は、ショパン自身が名付けた作品。創作力の頂点に達していた頃の曲だけに「ショパンの最高傑作」と評価する向きもあり、魅惑的な楽想と深い情感を湛えた傑作。「タランテラ」は、早い調子のナポリの民族舞踊で、ショパンはこの1曲だけ作曲した。「スケルッツォ第2番」は、1837年に作曲された。4曲あるスケルッツォの中でも最もよく弾かれる。「舟唱」は、ヴェネツィアのゴンドラの船頭が歌う歌に由来するが、特定の形式によるものではない。「子守唄」は、1843年から44年にかけてつくられた曲で、しみじみと心に訴えかけてくる名作。「エチュード第12番『革命』」は、作品10の最後を飾る曲で、激烈な力強い作品で知られる。「バラード第2番」は、4曲あるバラードの1曲。1836年から39年にかけてつくられた作品で、シューマンに献呈された。内容は、ミツキエヴィッチの詩「ヴィリス湖」を題材にしたと考えられており、ロシアの流民から逃れるために、水底に沈んで水草に化身した若い娘の物語。これらのショパンの名曲を弾くペルルミュテールは、“鍵盤の詩人”とも評されていた通り、今聴いてみても「こんなにもショパンを美しく演奏できるピアニストは後にも先にもペルルミュテールのほかいない」と思えるほどで、ピアノタッチが宝石の如く美しく、詩的でロマンの香りが馥郁と漂う名演奏の内容となっている。これは一見(一聴)すると情緒的演奏なのではあるが、聴き終わった後の感じは、スケールの大きい構成力のはっきりした、歯切れの良い演奏に聴こえてくるから不思議ではある。(LPC)