旅してマドモアゼル

Heart of Yogaを人生のコンパスに
ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

短編集「Loving YOU~It Might Be You~(前編)」

2010-12-09 | 管理人著・短編集(旧・妄想劇場)

ケンカした。


初めて、彼とケンカした。


ううん、違う。
ケンカじゃない。
あれは私の一方的な八つ当たり。
私が勝手に苛々して、無防備な彼に怒りの矛先を向けただけ。

そう、彼は悪くない。
彼は何も悪くなかった。


あの日。

仕事で外を駆け回っていた私は、かなり遅い時間に帰宅した。

化粧直しをして帰るような気持ちの余裕もなくて、その日1日の疲れをべっとりと顔に貼り付けたまま、部屋のドアを開けた。
玄関で靴を脱ぎ捨てた私は、隅にあった見慣れたスニーカーにも、室内に灯りが点いていることにも気づかないほど疲れきっていた。

「おかえり」

きっと、そう、きっと、いつもの私なら、その声を聞いて、笑顔で彼に駆け寄ったはず。

でも、あの日の私は、駆け寄るどころか、彼の姿を見た途端、凍りついたように棒立ちになった。

「なんでいるの?」

私の口から出たのは、嬉しさの欠片もない棘のある言葉だった。
私の口調に、彼が一瞬、戸惑った表情を見せたが、すぐに笑顔で返してきた。

「なんでってなんやねん。ここ来るのに理由いるか?」
「…弟さん、大阪から来てるって言ってたから。だから、しばらく来ないと思ってた」

そう。

君が来るかもって、部屋にいるかもって、わかってたら。
こんなひどい疲れた顔で帰ってきたりしなかったのに。

「そんなん別に関係あらへんやろ。俺は来たなったら来るよ」

いつも私を癒やしてくれる彼の笑顔がそこにある。
でも、今の私はその笑顔に素直に応えられない。
私は彼から顔を背けた。

「おまえ大丈夫か?疲れとんのか?」

私を心配して気遣う声。
その優しさに素直に甘えたい。
でも気持ちとは裏腹に、口をついて出るのは、可愛げのない言葉。

「疲れた顔して帰ってきて悪かったわね」
「悪うないよ。なに怒っとるん?」
「来るなら来るって連絡くらいしたっていいでしょ。ちょっと…無神経すぎない?」

知らず声が尖る。
彼が顔を強ばらせ、何か言いかけて、でも口をつぐんだ。
ぎくしゃくとした沈黙が私たちの間に澱みのように漂う。

「そやな、ゴメンな」

ぽつりとこぼした彼の言葉に胸が痛んだ。
彼が謝らなきゃいけない理由なんて何一つない。
理不尽な怒りを、都合よく目の前にいる彼にぶつけている自分が、嫌で嫌でたまらない。
私の方が謝らなくちゃいけないのに。
いま、たった一言でいい、ゴメンと謝れば…

「帰って」

待って。
私は何を言ってるの?
謝らなくちゃダメじゃん。

「むちゃくちゃ疲れてるの。だからあなたとも話したくないし。帰って。一人っきりにさせてよ」

心にもない酷い言葉が出てくるのを止められない。
ここで涙ひとつでも零れ落ちてくれたら、言葉とは違う私の気持ちが彼に伝わるのに。
心と一緒に涙腺までカサカサに乾いてしまったのだろうか。
泣き出したいほど胸は強く痛んでるのに涙が出ない。

彼は何か言ってただろうか。
私の耳が覚えてるのは、ドアが閉まる硬い音と、その後の恐ろしいほどの静寂だ。

一段と重くなった足を引きずるように、マフラーを取りながら部屋の奥へと向かう。
バッグをダイニングテーブルの椅子に置こうとして、テーブルの上で目が止まった。

ラップのかかった皿が一枚。
冷める前にラップをかけたのか、蒸気で曇っている。
私は何も考えず緩慢な動作でラップをめくった。

それは、後頭部を叩かれたようなショックだった。
目の前のものを呆然と眺めていたら、行方知れずだった記憶のピースが戻ってきた。
私は、最後に彼が残していった言葉を思い出した。

――ご飯、炊いてあるから

普段は料理なんてぜったいしない人なのに。
ゲスト出演した料理番組の時みたいに、慣れない手つきで材料と格闘していたんだ、きっと。

君は何を思いながら、これを作っていたのかな。
出来上がった料理を前に、帰りの遅い私をどんな気持ちで待ってたのかな。

不意に体の奥で堪えていたものが決壊した。
口から嗚咽がもれる。
そして、目から溢れ出した涙が、雨の雫のようにぽたぽたと、冷めきった鯖の味噌煮の上に落ちた。


****************************


翌日からの仕事は、何かの連鎖反応のようにトラブルが立て続けに起きた。

伝票の数字を1桁間違えて提出したり…
クライアントから企画を全面的に変更させられたり…
刷り上がった印刷物の校正ミスが見つかったり…
手配したバンケットの内容が違っていたり…

毎日、東奔西走してやっと仕事を終えた時はいつも深夜を回っていた。

そして、あの日以来、彼からの連絡はまったくない。
そのことも私をひどく落ち込ませた。
この負のループは、いったいいつになったら途切れるんだろう。

そんな中で、やっと迎えた休日に私は正直ホッとした。

冬の澄んだ青空と窓ガラス越しのポカポカした太陽の光が、今日は洗濯日和だと告げていた。
溜まった洗濯物を回している最中に、メールの着信が鳴った。

彼からだった。

彼はいつも電話をかけてくる。
メールより電話。
なのに、久しぶりの連絡がメールだなんて。
嬉しさよりも不安が胸をよぎる。

私と電話で話したくないとか?
それとも電話じゃ話しにくいこと?

ネガティブなことしか頭に浮かばない。
しばらく躊躇してから、私は覚悟を決めてメールを開いた。



∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞



なんとですね、今回は前後編に分かれています
とりあえずの前編、いかがでしたでしょうか?

まあ、ね、男女の付き合いは甘いだけじゃないぞ、と(笑)
お互い好き言うてても、そこはやっぱり他人ですから、衝突一つない方がおかしいと思うんですよ

あとは、甘い話ばかり読んでたら、みんな飽きるんちゃう?少し目先を変えることも必要ちゃうん?と思いまして。

さて、次回、後編につながって完結なわけですけども、この話、いったいどう終わるんでしょうかね

自分としても、こんな後味悪いところで保留にして仙台行きたくないので(笑)、後編は早くアップします。

お楽しみに
(楽しみにしてる方は数えるほどかもしれませんが


短編集「Loving YOU~恋人たちの聖地」

2010-11-29 | 管理人著・短編集(旧・妄想劇場)

そろそろ寝よう、そう思って私はテレビの電源を消した。
液晶画面が暗くなると同時に、夜の静けさが室内を支配する。
が、しかし、まるでそのタイミングを図っていたかのように、携帯が音を立てて震えた。


(なんやねん。またFighting Man流れたで。嫌がらせか?)

「ちゃんと登録してるよ。3曲は入ってるはずなんだけど」

(俺、悪いけど、いっちども聞いたことないで。もう、俺、めっちゃ気分悪いわ)

「自分から掛けてきて何勝手なこと言うてんの」

(もう登録消せや、それ)

間髪入れずに「ヤダ」と一言で答えた私に、なに即答してんねん、と彼は笑った。

(そういやブログ。恋人たちの聖地とか。なに一人でそんなとこ行ってるん)

「だって一緒に行く相手いなかったんだもん」

そんなん分かってるくせに。

「それとも、誰か相手見つけて一緒に行った方が良かった?」

(なんやそれ。んなこと言うとらんやろ。ホンマ、おまえ、ムカつくわ)

ムカつくと言いながらも、電話の向こうでは笑っているのがわかる。

(そや、明日のライブ終わったら、次の日一緒に行こか?)


そんなことが、もし本当に出来たら。
出来るはずもない夢だけど、なぜか彼が言うと、簡単に出来そうな気がしてしまう。
本当に、彼にその気があるなら…

「残念でした。月曜はお昼前に帰るの」

嘘をついた。
久しぶりに彼と一緒に過ごせるなら、私の帰りの時間なんて遅くなってもいいと思ってる。
でも実際は、彼の方にそんな時間などないことを、私は知ってる。
彼も私も、お互いのために、優しい嘘をついているだけ。
なのに、なんでこんなに悲しい気持ちになるんだろう。


(仕事か?)

あなたもね。「うん。ほら、年末も近いし」

(そういや、この前も毎日よう残業してたよな)

ううん。
新しい仕事が決まって忙しくなってるのは彼の方。
でも、私の前では、そんな様子は微塵も見せないけど。
少しは、忙しい、疲れた、とか愚痴を言ってくれてもいいのに。

―― 大好きな仕事、好きなようにさせてもらってんのに、辛いとか言ってたらおかしいやん。

彼はきっとこう答えるに決まっている。
本当に自分の仕事が大好きな人だから。


(そやな…そしたら何か違うことしよか)

「違うこと?」

(恋人たちの聖地に負けんようなこと)

「なにそれ」

笑ったのは私だけだった。
「どうしよかな」とか「何がええやろな」とか、彼のつぶやく声が聞こえてくる。

「いいよ、そんなん無理に考えなくても」

(…そや、おまえ明日のラストに来るんやろ?)

なんだろうと思いながら、うんと答える。

(俺、おまえに合図するわ)

「は?」

(おまえにわかりやすく合図する。ライブ中に)

彼が正直何を言ってるんだか、全然わかんなかった。
合図?なんの合図?

「よくわかんない」

(ええねん、いまわからんでも。見ればすぐわかるから)

「どんな合図?」

(それ言うたらつまらんやろ)

「だって見逃すかもしれんし」

(見逃さんように、俺だけ見とったらええやん)

いつも、君しか見てないよ。

他のメンバーが面白いことやってても、うっかり見逃しちゃうくらい、ずっと、ずーっと。

「その合図って、他の人にはバレないん?」

(…たぶん)

「たぶん?」

(いや、大丈夫)


―― 今回は、ちゃんとおまえと目合わせるから。俺から目そらすなよ


**********************


携帯の呼び出し音で目が覚めた。

部屋の明かりを点けっぱなしで、寝てしまったらしい。
しかも、起き上がって自分の格好を見れば、昨日着ていた服のままだ。

昨日の夜は、久しぶりに最高の気分で、お酒を飲みすぎた。

携帯に手を伸ばして相手の名前を見た途端、まだ真新しい記憶が蘇って心臓が高鳴った。
でも、そんな気持ちを悟られたくなくて、私は照れ隠しに彼のネタを使って電話に出た。

「もしもし、ヘンリー?」

(…そんなんに乗っからんからな、俺は)

「ねえ、レイチェルが彼女じゃないんだね」

(…電話、切ってええか)

「ヤダ」

(おまえ、ヤダ言う時だけ迷いもなく即答やな)

彼の笑い声に包まれて、気持ちが温かくなる。

(な、わかったやろ?)

メガネをはずすタイミングのこと?と、またネタで返そうとして、でもすぐに思いとどまった。

あの瞬間を冗談になどしたくなかった。

「…うん」

(席聞いたとき、ちょうどあの曲でおまえの席の真っ正面やな、思って。わかりやすかったやろ)

「うん」

(目ぇそらさんかったな)

「うん」


うん。

私はそう答えるしか出来なかった。
あの瞬間からずっと続いている、彼と私の間の見えない絆。
儚くて、脆くて、とても傷つきやすい絆。
それを、私のうかつな一言で、切ってしまうのが恐かった。

(…あれな、昔から歌ってたけど)

「うん…」

(…あれ、歌やなくてホンマの気持ちやから)




―― 君をさがして…




受話器を持つ手が震える。
彼に伝える言葉を失った。
心が熱くて、熱くて、今にも体の中心から燃え上がってしまいそう。

お願い、このまま、時を止めて

繊細なガラス細工のような私たちの時間を、私自身が不用意な言葉でうっかり壊してしまわないように。





(なあんてな)

「…え?」

(…おまえ、いまどんな格好してるん?)

「え?え?か、格好…」

(俺、言うたやろ。どんなん疲れて酔って帰っても、ベッドに入る前にちゃんと風呂入れって。言ったやろ)

「えっ…何で、わかったん?」

大げさなため息が受話器越しに伝わってくる。

(やっぱりそうやったか。まさかとは思ったけど)

え?いまのって誘導尋問?

(もうホンマ、頼むからちゃんとしてくれ)



―― 探す相手はおまえしかいないんやから…




∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


うーん

やっぱり例のミラクルは、文章では説明しにくかったです。

てか、書いちゃうと、の記憶からが消えちゃいそうな気がしたんです

でも、これで、わかる人にはわかると思うんですよ。

チェリッシュで手越さんから→を受けたきゅうちゃんは特にわかると思う。

素敵な思い出を別の形で残しておきたくて、短編にしました…

いえ、スミマセン。ウソです。

たしかに「いいネタもらった」という気持ちがなかったわけじゃないです

はい、めちゃめちゃ楽しんで書きましたーっ



数少ないご愛読者のみなさま

今回の作品、いかがでしたでしょうか


短編集「Loving YOU ~切れない関係~」

2010-11-13 | 管理人著・短編集(旧・妄想劇場)

えーと、今日はこれから『0号室の客』の初日に行ってきます!

ヨコが出るのは映像だけなんだけど、どうやら!かなり!登場するみたいです!

やったー♪

というわけで

ウチの人との妄想劇場が出来る前に、やっぱりこっちが先に出来てしまいました。

だって、ヨコが相手の方がイメージしやすくて楽しいんだもーん。


*****************************


―― 俺や、俺



果たして夢を見ていたのかどうか、定かではない。
夜の深い静寂を破るように、いきなり鳴り響いた携帯の呼び出し音に私の眠りは中断した。

もう朝なの?

私はうんざりしながら薄目を開け、音のした方に顔を向けた。
暗闇の中で液晶が七色にせわしなく点滅している。

「俺、真っ暗じゃないと寝らんないねん」と、彼はこの部屋に来るたび、寝る時には電気を全部消していた。
そんなことが何度も続いて、私もいつの間にか、暗闇で寝ることに慣れてしまっていた。

私はしつこく点滅を繰り返している携帯にゆっくり手を伸ばした。
ふと、鳴っている音楽が目覚ましのアラームに設定している曲ではなく、電話の着信音だということに気づいた。

暗闇に液晶の光が幻想のように浮かび上がる。
その光の中に、彼の名前を見た途端、私の胸の鼓動が早くなる。



(俺や、俺。)

いきなりテンション高めの威勢のいい声が、まだ寝ぼけている私の耳に飛び込んできた。

今はいったい何時なんだろうと、壁の時計を見た。3時10分前。

(あれ、もしもし?俺やけど?)

「あ、うん…なんかあったん?」

(なんもないよ。どうした?寝てたん?)

思わず吹き出しそうになって、私はぐっと笑いを耐えた。
そして、わざとちょっと不機嫌そうな低い声で答える。

「うん、寝てるよね、普通」

(あっもうこんな時間なんや、レコメンの後やし、起きてるかと思ってた)

レコメンが終わって、もう2時間は経ってるんだけど、それは黙ってることにした。

(それより、なんやおまえ)

彼のちょっと拗ねた声が、私の心をくすぐる。

(携帯の呼び出し音がNEWSのFighting Manって。なあ)

あちゃ~
ランダムでそっちが出ちゃったか。メロディーコールには彼のグループの曲も登録してるんだけど。

(おまえ、今日のラジオ聴いた?電話したリスナーも同じNEWSの曲やったぞ。なんで2回も聴かされなあかんねん、俺?しかも2回目はおまえの携帯やし…)

「ゴメン。でもエイトの曲も登録してるよ。ランダムに出てくるようになってるだけだから」

(誰が好きなん?)

「え?」

(…誰が、好きなん?)

2度目の同じ問いかけは小さい声だった。
私は思わずベッドから起き上がった。
夜の間に部屋に満ちた秋の冷気が私の体を一気に包み込む。
携帯を持つ手に力が入った。
何と答えたらいいんだろう。

いや

答えは目の前にあるんだろう。
自分でもよくわかってる。
でも、その答えが正解かどうかはまた別。

耳にぎゅっと押し当てた受話器の向こうから伝わってくる沈黙。
不安と疑問がない交ぜになったそれは、遠く福岡から電波に乗って私の心に届いている。


それにしても

ボタン一つの操作で簡単にたち切れてしまうほどの脆いツールに、私たちはどれほどの自分の想いを託そうとしていることだろう。

そして、私たちがそれにのせて発する言葉こそ、何よりも繊細で危ういツール。


「…ねえ、ライブ盛り上がった?」

息を呑む微かな音。
表情が見えなくても、瞬時に伝わってくる彼の戸惑い。

(…ライブ?…ああ、うん。盛り上がったよ)

「そっかあ、行きたかったな」

(何言うとんねん、おまえ初日に来たやんか)

彼の声に含まれた微かな笑いに、私の心は救われる。

(おまえ、あのしょーもない…なんやあれ、黒い猫の耳みたいな変なんつけて…あと毛皮のベスト着とったやろ。おまえ、これから狩りにでも行くんか!?って)

「あれはデビルホーン。翌日がハロウィンやったし」

(え?なに?デビルマン?)

「ホーン。『つの』だよ。ちゃんと見えてたん?」

(見えるわ、視力2.0やぞ)

と言って、笑った。
子供のように無邪気に笑う、彼の笑顔を思い浮かべる。
あの笑顔にいったい何度救われただろう。

「でも目合わんかったよ」

(目合わせんでも見えるって。そんなん逆に目合ったら、俺どんな顔すればええねん)

そうだね、私も困る、と私も笑った。
互いの笑い声が携帯越しに行き来する。

「ライブの話、聞かせて」

(んー帰ったらな。なんか急に眠くなってきた)

「自分から電話してきたくせに」

(そやな、こんな時間にな)

「そうだよ。私なんか目が覚めちゃったよ」

(俺、眠い)

「もう勝手やね」

どうでもいいような短い会話をつなげながら思う。
電話を切るタイミングって、なんでいつも難しいんだろ。

「…さっきの答え」

(ん?)

「誰が好きか、答え、聞きたい?」

(…ええわ、もう)

「興味なくなったん?」

(聞かんでもわかるわ。おまえ、俺のこと好きやろ)

「うん」

(それでええやん。もう。加藤君のこと好きでも、別に。俺のこと好きならそれでええよ)




いつも気づかされる。
子供っぽい彼の、想像以上の懐の深さに。
そして、その優しさに甘えてる自分自身に。

ねえ、私、まだまだあなたに甘えててもいいかな?




*****************************


はいっ
めっちゃ楽しんで書きました!

でも、単なる妄想ストーリーを越えてるんじゃないかと自負しとります。

いかがでしょうか?


【追記】

自分の中の文学的ハードル(?)を上げるために、あらたに「管理人著・短編集」というカテゴリを作りました。

実在の人物で妄想を書きながら「短編集」などとおこがましいのもいいとこですが、まあ、管理人の余興・戯言だと大目に見てください。

前回書いた妄想もこのカテゴリに変えました。

今回の短編集のタイトル「Loving YOU」は、完全にご本人の芸名に助けられてます(笑)
というわけで、しばらくは、このお方が相手の妄想・・・もとい短編を書いていきます。
そういう要望も直にありましたので。きゅうちゃん、ありがと。そして、しげさん、許して。

登場人物の「私」は私であって私ではない…

短編集としたことで、個人的な妄想という枠を越えて、ファンの皆さんが「私」をご自身に置き換えてお楽しみいただければと思っております。


短編集「Loving YOU~女が髪を切る理由~」

2010-10-13 | 管理人著・短編集(旧・妄想劇場)

基本的に妄想は自分の頭の中で楽しむもんで、オープンに披露したくないんだけど(笑)
今月発売のWUを見てると、どうしても妄想が暴走するのを止められない


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「ちょっと短く切りすぎたかなあ」

むき出しになった首筋を、冷気を含んだ秋風がちょっかいを出すようになぶっていく。
私は手にしていた白いニットのストールを無防備な首に緩く巻きつけた。

特別な理由は何もなかった。
ずっと長く伸ばしていた髪を思いきって切ったのは、失恋したわけじゃない。
ただの気まぐれ。

この前見たファッション誌で、髪をショートにしたモデルがカッコイイと思ったからかも。
テレビでもショートヘアのアイドルや女性タレントをよく見かけるようになったし。
もしかしてショートがこれからの流行り?と思ったからかも。

まあ、どちらにしても大した理由じゃないんだけど。

でも…

彼はどう思うかな?

私の長い癖っ毛を指でクルクル丸めては面白がってた彼は。

今日は久しぶりのお休みだっていうのに、彼は昨日の夜から明け方までずっとオンラインゲームで遊んでた。
ゲームに夢中になってる時の、子供みたいに無邪気な彼の横顔を見てるのは好きなんだけど。

「ねえ、私もう寝るけど…」
「ああ、ええよ」

声は優しいけど、こっちに顔も向けてくれない。
ま、手強そうなモンスターと対戦中だから仕方ないか。

明日どうする?って相談したかったけど、楽しんでるとこを邪魔しちゃ悪いと思って、私はそのまま布団の中にもぐり込んだ。

今回は彼のオフに合わせて、わざわざ有給休暇を取ったから、2人でどこか遊びに行きたいなって考えてたんだけど。
まあ明日の朝考えればいっか…

朝、太陽が昇る頃、ベッドのスプリングが軋む振動で目が覚めた。
私を起こさないよう気を使って、そーっと布団の中に入ってくる彼の気配を背中で感じた。

まさか。
今の今までゲームしてたん?

しばらくすると彼の寝息が聞こえてきた。
いつもなら愛しくてたまらないその寝息が、今はなんだか腹立たしい。

30分、1時間?どれくらい経っただろうか。
私はおさまらない苛々した気持ちを抱えてベッドから出た。
そして、私が起きたことにもまったく気づかない彼を残して一人で外へ出た。
近くのカフェでモーニングセットを食べて、行きつけの美容院に電話した。

そっか。

髪を切ったのは、せっかくのお休みを不意にした彼へのあてつけだったのか。

そして、どうやら髪と一緒に今朝までのもやもやとした怒りも切り捨ててきたらしい。
早く彼に会いたい。

美容院の帰り道、最近オープンしたばかりのセレクトショップで、彼が気に入ってくれそうな秋服を買った。


彼が気に入ってくれそうな。


そう、それが私の基準だったのに。

短くなった髪に手を伸ばした。
肩から揺れていた長い髪はもうない。
微かな後悔を覚えながら、雲一つない秋空の下を、彼の待つ部屋へと私は急いで戻った。



「ただいま」
部屋は静かだった。
彼が起きた気配はない。
音をたてないように、寝室のドアをそっと開けた。
締めきったカーテンの隙間から午後の日差しが部屋の中に細く差し込んでいる。
ベッドの中で彼はまだ眠っていた。


天使のような寝顔をもっと近くで見たくて、私は足音をしのばせながら彼に近づいて傍らにしゃがみこんだ。

温かな部屋のぬくもり。
穏やかな彼の寝顔、そして静かな寝息。

あまりに愛おしくて優しい時間。
胸が熱くなって、彼の髪にそっと指を寄せた。

「ゴメンね」

思わず口をついて出てしまった。
彼に何を謝っているのか、自分でもわからないまま。

「ん・・・」
物憂げな声とともに、彼が身じろぎして薄く目を開けた。
その瞳に私が映っている。

「・・・帰ったん?」
「出かけたの知ってたの?」
「さっき一度起きたから。なんか食おう思ったら、おまえおらんし」
「あー・・・うん、起こしちゃ悪いかな思って」
「どこ行くとかメモくらい残しといて」
「ゴメン」
「・・・あれ?」

ようやく気がついたらしい。

「・・・切ったん?」
「うん。驚いた?」
「なんやさっきから、なんかヘンやヘンや思ってたら」
「なにヘンって?切らんほうがよかった?」
「いや・・・別にええと思うけど」
「そう?」
「・・・てか、なんで切ったん?」
「なんでだと思う?」
「知らんわ、そんなん」

自分以外の人の気持ちなんてわかるわけないやろ、と言って彼は私の視線を避けて天井を見上げた。

「・・・なあ、俺と別れよう、とか思った?」

彼の意外な変化球に私の方が動揺した。

「え・・・な、んで・・・?」
「もう、こんな自分のことしか考えてへんような男とは一緒にいられんわーて思ってんとちゃうの?」

呟くように尋ねる低い声といつにない真剣な表情に、知らず鼓動が速くなる。

私がいない間、この人はそんなこと考えてたの?
極度な人見知りで人一倍シャイな彼が、外でどれだけ努力してトップに上って行こうと頑張っているか。
わかっているはずなのに、仕事以外のことで余計な心配をさせてしまった自分に腹が立つ。
彼の気持ちを考えると心が痛い。

ベッドの上に腰かけて、彼の顔を上から覗き込んだ。

「なに?」

私は余計なことを言わずにいようと思った。
きっと何を言っても、それは彼の問いに対する答えにならないだろうと思ったから。

「お腹空いてる?お昼何か食べた?」
「・・・なんや、急に」

でも、彼の顔に笑顔が戻った。
私はこの人の笑顔が本当に好き。

「さっき言うたやろ、なんか食べよう思ったのに、おまえいないから・・・」
「わかった、じゃ、なんか作るね」

立ちあがった私の手を、彼の手が優しくつかんで引き寄せる。

「ええって。なんもいらん」



彼のぬくもり。

彼の匂い。

肌を通して伝わる彼の胸の鼓動。



そうだね、たしかになにもいらない。

 

彼の大きくて繊細な指が私の短くなった髪を優しくかきあげる。

「もうしばらくポニーテールできへんな」



∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


いやいや楽しいですね~
妄想ムキャ

しげさんとの妄想はなぜか「お笑い」になってしまうのに、この方との妄想は、こう、なんというか、アダルトなというか、甘口な方に向いてしまいます。

ただ、しげさんの場合、こういうシチュエーションがどうしても浮かんでこないんだよね

まあ、また気が向いたら、妄想劇場書いてみたいと思います。