そっと息を吹いてタネを飛ばした
その花の名前も思い出せないほど
横顔に見惚れていた
涙を見せれば
慰めてくれるのでしょう
震えて見せれば
抱きしめてくれるのでしょう
遠のいていく記憶に
ピントが合うことはもうないのに
鮮明なまま取っておきたくて
何度もシャッターを切る
本当は
もう思い出せもしないくせに
言葉のなかに、何を閉じ込めたの
「後悔してる」と零した声の
表面で疼くのは
「これも幸せだけど」と取り繕った笑顔の
裏側で燻っているのは
帰る場所なんか
初めからない
タイミングを逃してばかりで
呼吸さえためらうほどに
当たり前に転がるぬくもりが
怖い
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