殴り書くことば

ロープが垂れていても、掴みたくない時が
誰にも縋らないで、泣きたい夜が
へらへら笑ってる僕にさえ、そんなのがある。

閉鎖

2018年03月30日 21時41分38秒 | Image
きみの名はもう
忘れられた時間

扉の中
白い指がピアノを撫でる
透んだ声と旋律に沿って

開かない窓
漏れる光が囲んでいる
寂しくなどない

そこにいる
もうどれくらい
ずっといる



漏れ出す声に色はなく
待つようにして歌われるメロディ
止むことはないのだと諭すのは
佇む重い扉

そこにいる
あとどれくらい
ずっといる



希望を胸に生きることも
悲しみの果てに死ぬことも
どちらも許されない扉の向こう

そこにいる
あとどれくらい
ずっといる



.

此心

2015年01月17日 12時44分47秒 | Image

振り返った地面に
直視できないものが散らばっていて
諦めた方がいい、と呼んでる

ずっと昔にほしかったものは
たぶんずっと昔に与えられてた

気づかないまま何年も過ぎ
失くした




弱いなりに強くあろうとする度
分厚い鎧が体を締め上げる

そのせいでまた弱っていく心が
もう許して、と懇願する





ただひたすらに首を絞める
その恐ろしい両腕に続く顔が
私には見えないから

だれかに怯え
だれかを責め
だれかを恨み

ここには
私しかいないのに








.

カルーア

2014年07月01日 00時07分03秒 | Image




甘いにおいに脳がとろける
奥の、奥の、記憶に達して
酔狂の彼方に

また
目を閉じれば
あの夜にもどるの



吐き気を誘う甘いシロップ
おいしくってまずくって
変な顔して飲み干して

重たい体から逃げ出して
ふわふわ飛んでいられる魔法の薬





とろけ出た脳のその成分に
間違いなく紛れ込んでいる
甘く苦い錯乱の記憶





きみはいなくなった
どこにもいなくなった
どこからも消えて
どこまでもいなくなったまま



吐き気を誘う甘いシロップ
きみの声を忘れても
肌の温度を忘れても
頭の中でとろけ出す





奥の、奥の、遠い記憶
発狂したままでいたかった私
狂いきれずに結局正気の私



飲み込んで
血になって
身体をめぐる甘いシロップ

頭にまで行き渡ってしまって
とろとろになった脳の
修復なんかもうしたくない





だって

私はいつだって真面だった

はずだった









カルーアミルク

おまえのにおいが
すべてを思い出させるよ



沈没船

2014年03月03日 22時47分44秒 | Image
沈んでしまった船が
再び浮上することはなく


暗い
海の
底で



この星が滅びるのを待ってる





忘れていくだろう

悲惨な光景も
背負った痛みも


ゆらゆら揺れる水面に見つけた
似たような顔も





思い出せなくなったその時
何もかも終わりになる



星に願った事も
追憶の中の声も








沈んでしまった船と
長い鎖で足を繋いで

水面に触れることは許そう
けれど息継ぎはできぬよう




再び浮上することはなく



暗い
海の
底で



この記憶が滅びるのを待ってる




.

消失マジック

2014年02月28日 01時49分55秒 | Image



あなたからの手紙
待ちわびてひとり
もう涙は出ない

乾いてしまった口の中に
誰にも伝えたくない声が溜まっていくの

塞いだ耳に
好きなメロディも届かない

沈んでいく砂に体を預けて
声を、殺す
息を、潜める
脈を、止める


夕立のその打ち付ける音と
壊れていく脳内を重ねて




どこに どこへ

どこへでもいい
逃がしてくれたら

神さま。




.

ruin

2013年12月13日 20時41分05秒 | Image



雨の中 待ってる
夢を見て 待ってる
目を開けて 待ってる
祈るように 待ってる

息を潜めた
未だ見つからずに

全てはもう
荒野になったあとで
それはもう
朽ち果てたりしないし



雨の中 待ってる
夢を見て 待ってる
目を閉じて 待ってる

呼吸は止まった
未だ見つからずに

素敵な思い出の
あの頃はそう
素敵なときのままで


さよなら
眠るように 待ってる








.

存在

2013年11月08日 17時53分14秒 | Image


そこにいて
そこにいて

すぐにいくから
すぐにいくから




人がみんな
顔も声も目の色も違うのは
あなただとわかるためなの

あなたが
わたしだとわかるためなの




そこにいて
そこにいて

すぐにいくから
すぐにいくから






寂しさを埋めるため
悲しみを忘れるため
そんな理由は
もう二度と口にしない





すぐにいくから
すぐにいくから




そこにいて



そこにどうか
私のために存在していて





.

白いカーテン

2011年12月20日 01時19分12秒 | Image


とても静か
穏やかに晴れた昼下がりにきみがいる

ちょっと微笑んで
ぼくは子供にかえるよ


サナトリウム
たやすく死ねたら
あぁ 死ねたなら

サナトリウム
簡単に息をしてる
遠ざかる






透明な 微弱な
細い 血の管を


ぼくに張り巡らせたのはだれだ








とても静か
穏やかに晴れた昼下がりにきみがいる

そっと微笑んで
ぼくは子供にかえるよ




遠ざかるそれ
ぼくはまだ当分このまま





たやすく 息を吐くように

あぁ 死ねたら 死ねたなら








シャトル

2008年06月23日 19時53分21秒 | Image
どのビルから飛べば?

夏の老人の歩き方に命がない
握ってる子供の手に温もりもない

手首の裏をごらん
汚いですか?

雨の中
ナイフ持って飛び出した地面に音はなかった


みんな輪になってたんだよ
誰も悪くないと笑って
そうだ自分もと笑みを浮かべて
サイレンに耳を貸さなかった

そうして僕は
死んでいった
自分が悪いと諦めて
サイレンさえ聞こえなかった



離陸した機体は少し傾いて
それでも堕ちなかった








何番線に身を投げ出せば?

歌詞カードの文字に意味はない
誰かへ飛ばした野次に悪気もない

手首の裏をごらん
わかりますか?

雨の中
感謝を込めて切り裂いた肉に味はなかった


みんな輪になってたんだよ
その笑顔に温もりはなくて
さようならも言わずに
サイレンに耳を貸さなかった

そうして僕は
死んでいった
酷いねとあしらう暇はなく
サイレンさえ聞こえなかった














僕を置いて
飛び立った機体は揺れた
それでも堕ちなかった


着陸するその場所で
必ずまたサイレンは鳴るのに
悪天候に悩むその姿

それは相当
馬鹿げていた






そんな夢も希望も乗せないシャトルなら
墜落すればいいのにと
手首の裏を見ながら願い

雨の中
そうして僕は
死んでいった。 
 
 

ゆめうた

2008年02月09日 13時52分54秒 | Image
これみよがしに傷付けた自分の肌
包帯は自分で巻くわ
消毒なんかいらない

カーライトが眩しい
そんな街には行ったことない
惚れ惚れする月夜
潮が満ちて魚は溺れる

「まだ間に合う」?
あんたに何がわかる?


さぁ帰りましょう
ここにはいられない
汚物は私だけでいい

さぁ早く
カルテを燃やして











私の腕を誰か引いて
私の足を誰か暖めて


私の夢を誰も壊さないで