『 松田のろう梅 』須田 孝雄さん 撮影
一昨日、とうとう補聴器を買う破目になってしまった。
あんなに小さいものが何故あんなに高いのか。それ程の精密機器とも思えぬのに。
この数か月、病院の指示でお試しと称して時々音量、音質などを調整して貰いながら使ってみた。
しかしとてもとても満足とはいかなかった。
何度調整しても、声や音がするのは聞こえるのだが意味が聞き取れない。
大きくすると、部屋の掃除器の音がまるでB29の大爆撃のようだし、茶碗がぶつかる音は刺激的だし、
息子に大きな声で話しかけられるとまるで怒られている様だ。
外に出れば耳の傍を通る風の音がうるさく、車の走る音やクラクションに驚く。
片耳の所為か音が右から来るのか左なのか、前後なのかが分かり難い。
それから歌や音楽が楽しめなくなった。昭和の懐かし歌謡曲と言う深夜放送を聞いて驚いた。
昔のあの感じと全く別物だった。彼らはあんなにも音痴だったのか、とても聞いてることが出来なかった。
私の耳はもはやリズムや音程が感じられないようだ。周りの人の声が皆同じような風邪声のようだ。
音楽、名曲、美声は諦めたとしても、人との会話が聞こえるけれど何と言っているのかが分らないのが困る。
そんなことを医師に話したら、それは音を脳に伝える神経が休んでしまっていているからで、だんだん慣れる、
復活するかもしれませんよ、と言われた。
そして会話の相手にゆっくり話して貰いなさいという。人にそんなことを頼めるものじゃないのになぁと
思いながら聞いていた。
かくなる事情ながら、お試し期間もあまりに長くなったしこれ以上長引かせるわけにもいかず、ましてや
要らぬとキャンセルするにはかなりの度胸と厚顔さが必要な感じで、人生で最大ではないかと思うような
大変な妥協をもって、片方だけを購入することにした。その辺の気遣いや配慮や羞恥心などの神経だけは
残っているのに、耳への伝達の神経だけが休んでいるのが残念だ。
現役時代の丁度1ヶ月の給料位の値段だった。明日から1日1食、禁酒、禁ウナギ、禁おやつ、そして春物の
爽やかなシャツを買うのも控えようか!