『 病院前の桜 』
何という桜の種類なのだろう。
某月某日、某病院にて。この年になって病院での初めてのことがあった。
その日もいつものように看護師さんと和やかに会話を交わす。最近私は耳が遠くなったのに、
相手がマスクをしているとまことに聞き取りにくい。
あまり何度も聞き返すのも悪いような気がしてきて、「すみません、英語で言ってくれますか」
と笑顔で言ったら、「学生時代から英語は苦手だったので…」と笑顔で直ぐに反応があった。
そんな楽しい会話ややり取りがあった。
さて初体験のその1は、第5診察室でS医師の診断中に、突然PHSの医師用携帯がけたたましく鳴った。
救急患者が運び込まれたらしい。
「すみません、救急患者で重篤なようで、ちょっとそっち行ってきますので待合で待っていて下さい」
という事で、「良いですよ、どうぞ行ってあげて下さい。待っていますから」という会話を交わし
医師は部屋の後ろの廊下に小走りに消えていった。
今更ながら医師の仕事も緊急性があって何とも厳しい大変な仕事だと思った。
白髪で小太りの温和そうなそこそこのお年の医師だったが、偉いものだと尊敬の念すら抱いたものだった。
さて、その2になるがしばらくして診察再開。
薬の説明などあり、貴方は85才だから点滴した方が良いかなぁなどと話があり、たまたまウガイの効用
について皆が思っているほどの効果はないという事から、紙を出してそこに横顔の断面図をイラスト的に
書き始めた。口の中の構造を説明しようとしたのだろう。
そこで私がつい何時もの冗談で「鼻がもう少し高いような気がするのですが…」と言ったら、
突如「そんなことを言うなら!」と言って紙を丸めてゴミ箱へ、そして立ち上がるや奥の廊下へ消えてしまった。
私は呆然唖然!薬のこと今後の対応などいろいろ聞きたいことがあるのに、それっきりだった。
真剣に説明してやろうとしているのに失敬な、という事でカッとして切れてしまったのだろう。
こちらもいきなり何という無礼な、この医師は精神分裂気味じゃないのかと気になった。
忙し過ぎや何かがあってイライラしていたのかも知れないとも思った。もし通常の人だったらあそこ迄
切れるだろうか。
医師の過酷な仕事の犠牲なのかしらとも思った。今話題の過剰勤務時間の影響なのかなと同情もしたし
そして腹も立った。
医師も人間、いろいろな性格の人が居るだろうとは理解するが、お陰でいささか後味悪い思いがした。
医者に逃げられるという初めて変な経験をしてしまった。
薬はあるけれど、これからどうすれば良いのか、もし薬が切れても治らない時にはどうすれば良いのか、
点滴はしなくて大丈夫なのか、現実には様々な不安を残したままになってしまった。
あれで切れてしまう医師も失敬で困ったものだが、私もつまらない冗談、軽口、センスのないユーモアなどは
明日から一切謹んで、きわめて無口な物硬い謹厳なあまり面白くはないが、真面目老人になろうと反省した。
さぁどうなるだろうか!
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