これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

電気自動車(EV)の問題点 (その2)

2023-02-18 06:12:33 | 工業技術
【はじめに】
 欧州連合(EU)は大気汚染対策として車の排気ガス規制を、現行の『ユーロ6』から一段と厳しい『ユーロ7』に移行しようとしています。『ユーロ7』が施行されるとガソリン車とディーゼル車は生産出来なくなり→→電気自動車にせざるを得なくなってしまいそうです。

 日本には深刻な大気汚染問題は有りません。その証拠に日本の平均寿命は男≒82歳、女≒88歳で世界一、二を争う国です。(フランスは、男≒80歳、女≒86歳) 私は、『ユーロ7』は厳し過ぎるので、日本独自の基準を作るべきだと考えています。

【自動車革命の背景】
 世界の自動車産業で『革命』と呼べる様な大改革が起ころうとしています。私はこの変革を『自動車革命』と呼ぶ事にしています。

 車に対する規制には、下記の❶~❸が有ります。❸の騒音につては国際規制が有り、日本も現在は『フェーズ2』が適用されています。2024年頃にヨーロッパ諸国では、さらに厳しい『フェーズ3』に移行しようと考えている様です。

 日本の過疎地では車が必需品になっています。過疎地には高齢者が多いので、運転免許証を返納せざるを得ない人が増えています。 レベル4の自動運転自動車が普及したら、過疎地で無人のオンデマンドバスを走らせる事が出来ると思います。

 日本では、2024年からトラック運転手の労働時間を短縮しなければならなくなります。現行よりも拘束時間を3%~6%短縮する事が要求されるだけですが、運送業界の経営が苦しく、運転手の確保が難しいために→→物流に問題が発生するのではと危惧されています。これを『2024年問題』と呼びます。

❶ カーボンニュートラル :炭酸ガス(CO2)の排出量と吸収量を均衡させる。
❷ 大気汚染低減 :窒素酸化物(NOx)やPM2.5(微粒子状物質)等々の低減
❸ 騒音低減 :2024年から国際規制の騒音に関する『フェーズ3』が始まる?
❹ レベル4の自動運転自動車
❺ トラック運転手の労働時間の短縮 :日本では2024年4月1日から実施する事になっています。
  (厚生労働省告示:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)

【ユーロ7規制】
 2014年に欧州連合(EU)が車の排気ガス規制『ユーロ6(Euro6)』を施行しました。・・・現在は、この規制が適用されています。

 2022年11月に欧州連合(EU)が、2025年7月から販売される新型車についての規制案『ユーロ7』を発表しました。・・・まだ最終決定はされていません。

 『ユーロ7』は、乗用車だけで無く、トラックやバスにも適用されます。(継続生産車は2027年頃には販売出来なくなる可能性が有る様です。)

 『ユーロ7』では、大気汚染低減としてタイヤやブレーキで発生する粉塵(マイクロプラ)も規制の対象になります。多分、スパイクタイヤは使用出来なくなると思います。 電気自動車の場合は、減速時にモーターを発電機にしてブレーキの負担を軽減出来るので、粉塵の発生を抑える事が可能です。(回生ブレーキ)

 『ユーロ7』では、規制値を(車を購入後)『走行距離20万kmまたは10年間保持』する義務を自動車メーカーに負わせ様としています。どんな試験をして実証するのか?疑問です。

 『ユーロ7』の概要は、ベストカーWebの『「ユーロ7」はクルマもバイクもヤバい? 内燃機関の大ピンチ!! 2027年は排ガス規制Xデーか』を参照願います。

【騒音規制『フェーズ3』】
 自動車基準調和世界フォーラムが車の騒音規制『フェーズ2』を出し、2022年9月から日本でも適用されています。

 『フェーズ2』をクリヤーするのは、高出力のスポーツカーでは難しい様です。全開加速時の騒音レベルの規制値は『73dB』ですが、日産のフェアレディZ34は『76dB』なので対応出来ていません。(日産のGT-Rはクリヤーしている様です。)

 2024年秋頃から『フェーズ3』に移行すると言われています。『フェーズ3』の全開加速時の騒音レベルの規制値は『71dB』ですから、スポーツカーは電動自動車(EV)にせざるを得ないと思われます。

《自動車基準調和世界フォーラム(WP29)》 国際連合欧州経済委員会の下部に『自動車基準調和世界フォーラム(WP29)』と言う組織が有ります。自動車に関する(騒音以外にも)種々の規制を検討しています。参加国は、ヨーロッパ諸国の他に、日本、アメリカ、カナダ、韓国、中国、オーストラリア、南アフリカです。

(余談 :暴走族の騒音規制) 新型車の型式認証を受ける時に、多分・騒音も検査項目に入っていると思われます。試験の実施条件を決めて試験室で騒音測定を行う事は可能です。

 公道を走る車の速度を計測する事は簡単ですが、大きな騒音が出る様に改造した、例えば暴走族が出す騒音を測定するのは簡単では有りません。暴走族の車を捕獲して→→試験室に持ち込んで→→騒音を測定する必要が有ります。法律を改正して、速度と同じように騒音についても『違反点数』制を導入すべきです。

(余談 :騒音を撒き散らす車は沢山有ります) 私が取り締まって欲しいと思っているのは、下記の①~④です。特に、③の選挙カーについては、走行中にスピーカーを使用するのは禁止すべきです。(こんな選挙活動をしているのは、日本以外には、ほとんど無い様です。)

 私が管理するマンションのヘンスの外に、上下に動く機械式の駐車場が有ります。車が出入りする時、スゴイ音を発生させます。毎朝5時代に出掛ける方がいて、窓を閉めていても眠りが浅い時は目が覚めてしまいます。深夜~未明に帰ってくる車も有ります。『フェーズ3』に、駐車場の騒音規制を含めるべきです。

① 暴走族
② 宣伝カー :右翼団体、共産党など、宗教団体、廃品回収業者、灯油販売車、・・・
③ 選挙カー :走行中にスピーカーを使用するのは禁止すべきです。
④ カーオーディオ :窓を開けて、大音響でカーオーディオを鳴らす輩

【ユーロ7とフェーズ3】
 『ユーロ7』と『フェーズ3』の両方の規制値は、電動自動車でないとクリヤー出来ないと予想します。

 中国の様に規制が無い場合は、安価な電動自動車を作る事が出来ますが、『ユーロ7』と『フェーズ3』を満足する車は、価格が大幅にアップするので→→車の需要が減少し→→雇用が失われると予想している方がいました。

 私は、電動自動車になると部品点数が少なくなり→→雇用が失われると見ています。更に、ガソリンスタンドが少なくなり、車の修理工場も減少するなどして働く場所の無くなる人も出てくると予想しています。

【私の見立て】
 欧州連合(EU)は2014年に施行した『ユーロ6』で前述の❶~❸を規制してきましたが、日本とドイツが先行するハイブリッド車なら『ユーロ6』と『フェーズ3』をクリヤー出来ます。日本とドイツ、2カ国の独占を避ける為に、ハイブリッド車でも難しい規制『ユーロ7』に変更したのだと思います。

 日本とドイツの自動車会社は技術革新に長年努力して来ました。ハイブリッド車と電気自動車、両方を生産出来る技術を持っています。 然し、ドイツ以外のヨーロッパ諸国の自動車会社は、電気自動車に移行する準備を始めたところです。一方、中国製の安価な電気自動車が、既にヨーロッパで販売を開始しています。

 ドイツ以外のヨーロッパ諸国は、自国の自動車メーカーの実力を調査しないで、自分の首を絞める様な規制を掛けようとしている様に見えます。「身の程を知れ!」と言いたいです。

【日本の取るべき道】
 日本は安易に『ユーロ7』を導入してはいけません。 先ず、自動車メーカー各社をヒヤリングして、『ユーロ7』を導入した場合、車の価格がどの程度アップするか?調べる事が肝要です。

 私が一番心配しているのは、『ユーロ7』ではトラックとバスにも、乗用車と同じ規制を掛けようとしている事です。 政府は、大型トラックや大型バスを製造する『いすゞ自動車』、『UDトラックス』、『三菱ふそうトラック・バス』、『日野自動車工業』が、①電動化に対応出来るか?、②価格アップはどの程度になるか?、③電動化にドンナ問題があるか?・・・等々をヒヤリングして、対応を検討すべきです。

 『ユーロ7』が施行されたら、ヨーロッパ諸国に輸出する車は、その規制を満足せざるを得ません。日本政府は国内の苦しい状況(下記の①~⑥)を説明して、国内販売車については日本独自の基準で進める事を理解してもらう必要が有ります。

 私は、レベル4の自動運転ガソリン車を普及させるのが先だと思います→その次に、レベル4の自動運転ハイブリッド車を→→レベル4の自動運転電気自動車を普及させるべきだと考えています。その理由は、

① 日本には深刻な大気汚染問題と騒音問題は発生していません。
② 電気自動車の普及に対応出来るほど、発電容量に余裕が有りません。
③ トラックやバスの価格がアップしたら、利用料金もアップします。
④ 日本人の給与は低迷したままですから、乗用車の価格がアップしたら、庶民が車を買えなくなります。
⑤ 過疎地では車が必需品です。レベル4の自動運転車なら高齢者でも運転(?)出来ます。
⑥ レベル4の自動運転トラックが増えれば『2024年問題』が緩和出来ます。 


電気自動車(EV)の問題点 (その1)

2023-02-11 10:31:46 | 工業技術
【はじめに】
 自動車と関連産業は、今後10年~15年で想像を絶する様な変化をすると私は予想しています。「『自動車革命』の時代に突入しているのだ!」と私は考えています。

 自動車産業は日本にとって極めて重要です。自動車革命に日本の自動車産業が生き残る為には官民一体になって頑張る以外に道は有りません。

【EV化の一番目の問題 :先行する中国対策です!】
 中国には『禍(か)を転じて福と為す』と言う慣用句が有ります。 昔から『黄砂』と言う大気汚染問題が有りましたが、工業が発展して→→国民が豊かになり→→人口が増加して→→暖房設備が増加して→→自動車が急激に増加して来たために→→PM2.5(微小粒子状物質)が大幅に増加して→→大気汚染問題が深刻になって来ました。

 中国政府は、2016年から大気汚対策としてEVの普及に取り組んできました。中国は共産党一党独裁の国ですから、国が決めた事には素早く対応します。特に『EV』については、川上から川下までキメ細かく検討し、それぞれの課題解決に向けて対応しています。「世界のEV大国になってやる!」と意気込んでいる様に見えます。

・・・ 中国が国家を挙げての取り組んでいること ・・・
① 電気自動車(EV)の開発、製造体制、他国への拡販
② リチュウム電池の開発と製造体制
③ リチュウム電池に必要な資源の確保
④ 自前技術による原子力発電所の建設 :EVの普及に伴う電力需要の増加に対応。

《EVの生産台数》 中国のEV生産台数は、2021年≒58.9万台→→22年≒485.7万台にまで驚異的な増加をしています。 この数字には、テスラ、フォルクスワーゲン、本田、MG(イギリス)の中国に有る工場で生産されて分を含んでいます。・・・出典 :MARKLINES『自動車生産台数 中国 2022年』

 現在、中国で最大のEVメーカーは、BYD Auto(比亜迪自動車)です。日本でも販売しています。

《リチュウム電池の生産》 EV用電池の最大のメーカーは中国の『CATL』で、世界の1/3以上も製造しています。ベスト10に中国の会社が6社入っており、6社の世界シェアは『56.4%』も有ります。

・・・EV用電池メーカー・ベスト10 ・・・ 2022年上半期
① CATL(寧徳時代新能源科技) :シェア≒34.8% ・・・中国の会社
② LGエナジーソリューション :シェア≒14.4% ・・・韓国の会社
③ BYD(比亜迪股份) :シェア≒11.8% ・・・中国の会社
④ パナソニック :シェア≒ 9.6% ・・・日本の会社
⑤ SK On :シェア≒ 6.5% ・・・韓国の会社
⑥ サムソンSDI :シェア≒ 4.9% ・・・韓国の会社
⑦ CALB(寧徳時代新能源科技) :シェア≒ 4.1% ・・・中国の会社
⑧ グオンシェン・ハイテク(国軒高科股分) :シェア≒ 2.9% ・・・中国の会社
⑨ サンウォーダ(欣旺達電子股分) :シェア≒ 1.5% ・・・中国の会社
⑩ SVOLTエナジー(蜂巣能源科技) :シェア≒ 1.3% ・・・中国の会社
⑪ その他 :シェア≒ 8.2%
出典 :GL,OBAL.X  ディロン・ジャゴーリ『中国が変える世界のリチウム産業』

《地下資源の確保》 中国は国家として、リチュウム電池の製造に必要な地下資源を確保する政策を進めています。2022年12月24日に投稿した『自動車業界(その2)』を読んで見て下さい。

・・・ コバルト(Co)の埋蔵量と鉱石生産量 ・・・ 2017年
❶ コンゴ :埋蔵量≒3,480千トン、鉱石生産量≒63.8千トン ・・・中国が抑えています。
❷ オーストラリア :埋蔵量≒710千トン、鉱石生産量≒5.5千トン
❸ キューバ :埋蔵量≒500千トン、鉱石生産量≒4.4千トン
❹ フィリピン :埋蔵量≒280千トン、鉱石生産量≒4.0千トン
❺ ザンビア :埋蔵量≒280千トン、鉱石生産量≒2.9千トン
❻ その他 :埋蔵量≒1,350千トン、鉱石生産量≒29.4千トン
出典 :①鉱物資源マテリアルフロー 2018 11.コバルト(Co)、②ウイキペディア『コバルト』

《電力需要の増大対策》 中国はEVの普及による電力需要の増大に、原子力発電所を増設して対応しようとしています。中国は自前の原発技術を開発する事が昔からの夢でしたが、なかなか実現しませんでした。その為、欧米の企業が中国に原発を建設しました。フランスが中国に建設した原発を参考にして、自前の技術を確立した様です。その技術を『華竜1号』と呼んでおり、2021年に1台操業を開始しています。

 日本では原発用地を確保するのが極めて難しく、地元住民を説得する為に→→地元自治体に多額の支援金を出し→→地元世論を操作する為に『森山栄治氏』の様な人物に金を渡す事になります。従って、計画を初めて建設に着手するまでに10年とか20年の時間が必要になります。

 中国の土地は全て国有です。国が、「原発を建設するから、住民は○○年✕✕月までに立ち退け」と命令して、立ち退き料を支払えば用地が確保出来ます。 近年の中国は、「原発建設を年に6件ほど認可する方針である」と言う報道が有りました。 兎にも角にも、『やる』と決めたら、モタモタしないのが中国です。

《人材の流動性》 中国の技術革新は目覚ましいです。兵器、旅客機、原子力発電などなどが自前の技術で製造/建設出来る様になっています。中国共産党には優秀な技術者が沢山いる様です。彼ら/彼女達は政府の指示で職場を変わります。「EVの開発と量産体制の確立に、共産党が優秀な技術者を集めたのでは?」と想像します。

《戦略的投資》 中国の銀行の多くは国立か公立ですから、政府が重点志向した分野には、短期間に巨額の資金が投入されます。その効果で、EVが2021年からの飛躍的に増産出来る様になったのだと思います。

【EV化の二番目の問題 :多様なニーズに対応出来るか?】
 世界には色々な国が有り、それぞれが種々の問題を抱えています。欧米諸国は電気自動車(EV)化に取り組んでいますが、「全ての国でEV化が喫緊(きっきん)の課題だ」とは思えません。

 日本の自動車メーカーは、ガソリン車、ハイブリッド車を生産しながら、国際競争力の有るEVを開発し→→拡販する必要が有ります。超高価なスポーツカーから安価な小型車まで多種多用な自動車が販売される様になると、私は予想しています。 今後、自動車メーカーが、一社で全てのニーズに対応する事は不可能だと考えます。自動車メーカーは舵取りが一段と難しくなりそうです!

・・・ EV化と各国の事情 ・・・
(1)日本 :日本は大気汚染はそれ程深刻な問題では有りません。 (大気汚染よりも、針葉樹の花粉飛散の方が問題です。)

 ★日本の問題❶ :日本は電力不足が深刻な問題です。EVが増えると電力需要は確実に増加します。 一方、電力自由化によって、電力の供給義務を電力会社に負わせるのを止めました。従って、国(経済産業省)が電力の供給義務を負う事になっていますが、岸田総理と西村康稔大臣には義務を全うする意識は全く見られません。

 2021年の発電は、化石燃料が『73%』でした。 化石燃料はほぼ全て輸入しているので、日本は効率の高い車(例えば、ハイブリッド車)が必要な国です。「EVの普及速度に見合った発電能力の増強が出来るか?」私は心配しています。

 今から発電所を建設しようとしても、原発は10年~20年後でないと発電できません。太陽光と風力発電では、近年、環境問題で反対運動が起こっており、段々新設が難しくなって来ています。

 ★日本の問題❷ :日本はEVよりもレベル4の自動運転自動車が必要です。 (A)高齢化した過疎地では自動車が必需品ですが、高齢のために手放さざるを得ない家が増加しています。 (B)2024年からトラック運転手の労働時間規制が厳しくなり→→「物流に支障が出るのでは?」と危惧されています。 レベル4の自動運転自動車が普及したら(A)と(B)の問題はほぼ解決出来ます。

(2)ヨーロッパ諸国 :ヨーロッパでは、(A)カーボンニュートラル、(B)大気汚染軽減、(C)騒音低減に取り組んでいます。この三つの課題を解決する為に電気自動車(EV)を普及させようとしていますが、各国とも発電能力に十分な余裕があるとは思えません。自動車産業はヨーロッパ諸国でも重要ですが、EVについては電池の生産も含め中国が先行しているので、各国がバラバラでEVに取り組んでも中国には勝てないと思います。(2022年から中国のEVメーカーがヨーロッパ市場に注力し始めています。)

(3)アメリカ :2022年8月にカリフォルニア州が、「35年までに、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)とプラグインハイブリッド車(PHV)以外の販売を禁止する」と発表しました。まだ国家としては動きが見られませんンが、追随する州が増えて来ると予想します。

(4)中国 :都市部の大気汚染問題が深刻ですから、EV化を進めると予想します。「 ”あわよくば”EVの輸出大国になってやろう!」と目論んでいる様に見えます。

(5)インド :インドも都市部の大気汚染が深刻ですから、安価で/小型/シンプルなEVの実用車が普及すると予想します。

(6)石油産出国 :石油産出国の富裕層は(スタイルの素晴らしい高価な)EVを買う可能性が高いですが、一般庶民はガソリン車で我慢するのでは?と予想します。

(7)貧しい国、電力事情の悪い国、内戦の続く国、酷い砂嵐が発生する国 :これらの国で、急激にEV化が進むとは考えられません。

【EV化の三番目の問題 :総理大臣の能力です!】
 自動車産業は日本にとって『自動車は国家なり』と言えるほど重要です。沢山の雇用を抱える重要な産業なのです。大手自動車会社の従業員だけで無く、その協力会社、修理工場、ガソリンスタンドなどなどの従業員の生活を支えています。

 日本は、地下資源に乏しい国で、食糧も自給出来ない国ですから、『物』を作って外貨を稼ぐ必要が有ります。自動車産業だけで無く、物を作る企業と労働者を大切にする必要が有ります。

 特に日本は、『自動車は国家なり』の状況ですから、自動車産業を衰退させては絶対にダメです。 中国は国を挙げて電気自動車(EV)に取り組んでいます。「トヨタを始めとした企業が、単独で中国に立ち向かえるか?」心もとないです!

 今後の政治家には、科学や工学の知識が絶対に必要です! 特に、総理大臣、経済産業大臣、防衛大臣、文部科学大臣、国土交通大臣、環境大臣、農林水産大臣、厚生労働大臣には科学や工学の知識が必要不可欠です。「2位じゃダメなんでしょうか?」などと言う政治家に投票するのは止めましょう!

 『工業立国』と言う言葉は死語になってしまった様ですが、日本が発展するためには産業(特に工業)の発展に官民協力して取り組む必要が有ります。

(余談 :お手上げの上司) 私が勤務した会社は『派閥』で上層部の人事が決まっていました。実力が有っても、胡麻を摺って有力派閥に入らないと重役にはなれませんでした。逆にアンポンタンでも、胡麻摺が上手だと重役になれました。現在の自民党に良く似ていました。

 横浜国大の工学部卒の上司(T氏)がいました。私がT氏に口頭で報告したり、報告書を提出する時、「僕は高卒の知識しか無い、専門用語は使用するな」と何回も言いました。T氏と一緒に東大工学部卒の重役(S氏)に何回か報告に行きました。T氏が、「S重役は中学卒程度の知識しか無いから、分かり安い説明が必要だ!」と言いました。一応、S重役は私の説明を最後まで聞いてくれるのですが、何時も、とんでもなく頓珍漢な質問をしました。私が答えに窮していると、何時もT氏が噓八百の説明をしました。S重役は何時も納得してくれました。

 麻生太郎氏から、「電気自動車(EV)の問題点と、国が実施すべき施策について説明しに来い」と命令されたとします。私はギブアップですが、皆さんはどうですか?

 T氏は頑固一徹の性格だったので、有力派閥には入れて貰えなかった様です。日頃の言動から重役になる事が『夢』だったと思いましたが、実現しませんでした。「会社が現在でも低迷しているのは、『派閥』の横行が最大の原因だ!」と私は見ています。

自動車業界 (その5)

2023-01-28 10:06:34 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、自動車業界についての最終稿です。ドイツについては前回書きましたので、今回はその他のヨーロッパ諸国の自動車業界について書きました。

【フランスとルノー】
 第二次世界大戦でフランスの工業は壊滅的な被害を受けました。ドゴール大統領がルノーを国営化して→→1年間ほどで立ち直り→→ヨーロッパを代表する自動車会社になりました。技術的に優れた車種を次々に上市しました。1979年には、アメリカで第4位だったアメリカン・モーターズを買収しました。アメリカでの事業がうまく行かず、本体の経営も傾いてきて、1987年にアメリカン・モーターズをクライスラーに売却しました。

 1990年に、ルノーは国営企業から株式会社になり→→1996年に民営化を完了しました。(然し、現在でもフランス政府が株式の15%を保有しています。)

 1999年に経営不振に陥っていた日産自動車を傘下に収めました。ルノーが日産の株式の『44.4%』を、日産がルノーの『15%』を保有し、ルノーからカルロス・ゴーン氏が副社長(COO)として派遣されました。(たったの4年間で)2003年には約2兆円も有った有利子負債を返済して→→日産は危機を脱出しました。

 然し、2019年には、ルノーが『純損益が80億800万ユーロ』、日産が『総額6,712億円の赤字』になりました。今後、両社がどうなって行くのか目が離せません。

(余談 :日産の問題) 日本の企業には、大なり小なり『派閥人事』の問題が有ります。経営が順調な時は、重役達が派閥闘争を楽しんでいても会社は何とか維持出来ますが、景気が悪化してきたら派閥闘争を中断して、一致団結して対策を練り/強力に事に当たる必要が有ります。

 日産の経営が悪化したのは、バブル崩壊(1991年~93年)が引き金でしたが、派閥闘争も原因だったと思います。 日産の派閥闘争の歴史とゴーン氏の問題は、井上久男氏の次の記事に詳しく書かれています。(インターネットで読めます。)

 私は、重役達の派閥闘争の弊害を身をもって体験しました。井上久男氏の記事からは、中間管理職や平社員の悲惨な状況が伝わってきません! 「派閥闘争は『パワハラ』と同等か?それ以上の犯罪だ!」と私は思います。

❶ 『独裁、内紛、権力闘争……日産を苦しめてきた「歴史の呪縛」』
❷ 『ゴーンという「怪物」を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る』

・・・ フランスに本社の有る自動車会社 ・・・
★ ルノー
★ パナール ジェパナール ジェネラル ディフェンス :軍用車両を製造
▲ ルノー・トラック :ボルボグループ ・・・現在はバスを製造
▲ シトロエン :ステランティスの子会社
▲ プジョー  :ステランティスの子会社
▲ DSオートモビルズ :ステランティスの子会社

【イタリア】
 イタリアで最大の自動車メーカーは、フィアット(従業員数≒214,000人;2014年)です。フィアットは、アルファロメオ、ランチア、マセラティ、アバルトを次々に傘下に収めました。 フィアットは、現在はステランティスグループになっています。

 現在純粋なイタリアの自動車メーカーは、フェラーリとトラックやバスを製造するイヴェコしか有りません。

・・・ イタリアに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フェラーリ :従業員数≒2,850人(2014年)
★ イヴェコ  :トラック、バス ;従業員数≒25,000人
★ パガーニ・アウトモビリ :従業員数60人ほどの小さな会社
▲ ステランティスグループ :フィアット、アルファロメオ(フィアットの傘下) 、ランチア(フィアットの傘下)、マセラティ(フィアットの傘下)、アバルト(フィアットの傘下)
▲ フォルクスワーゲングループ :ランボルギーニ
▲ マヒンドラグループ(インド) :ピニンファリーナ

【スウェーデン】
 ボルボは1999年に乗用車部門をフォードに売却し→→フォードが2010年に中国の浙江吉利控股集団に売却して→→乗用車部門は『ボルボ・カー・コーポレイション』になっています。 現在、ボルボ・カー・コーポレイションは電気自動車(EV)に注力しています。多分、リチュウムイオン電池は中国から調達する計画だと思われます。

 スウェーデンは昔から、ABボルボ社とスカニア社がトラックを沢山生産しています。

(余談 :スウェーデンの電力事情) スウェーデンは水力発電≒40%、原子力発電≒40%、風力発電≒10%、バイオマス・廃棄物発電≒7%と極めて珍しい国です。化石燃料を用いた発電は『1%』ほどしか有りませんでした。今月(2023年1月)原子力発電に関する制限を緩和する法案が提出されました。現在、スウェーデンの電気料金は非常に安いので、すでに電気自動車が沢山走っている様です。

・・・ スウェーデンに本社の有る自動車メーカー ・・・
★ ABボルボ :トラック、バス、建設機械、船舶用エンジン、航空宇宙 
★ ボルボ・カー・コーポレイション :乗用車 ;2010年から中国の浙江吉利控股集団 が株式の『82%』を握っている。
★ ケーニグセグ :1993年設立のスーパーカーのメーカー ・・・少量生産
★ スカニア :トラック、バス、産業用ディーゼルエンジン ;フォルクスワーゲングループ

(余談 :ボルボ車の思い出) 1995年頃、私が所属していた部に40歳前後の人格が素晴らしい男性社員がいました。彼はボルボの中古車を数年毎に乗り換えていました。「ボルボ車が特に好きではないが、ボルボの中古車は格安の値段で買えるから」と言っていました。時々乗せて貰ったのですが、夏の暑い日はエアコンを使用出来ませんでした。現在は改善されて、真夏でもエアコンは使用出来る様です。

【オランダとステランティス】
 オランダには自動車の量産企業は『ネッドカー』1社だけ有ります。一時期三菱自動車の子会社でしたが、現在はオランダの企業『VDL』の傘下に入っています。

 2021年1月に、フランス、アメリカ及びイタリアのメーカーが対等合併して『ステランティス』と言う巨大企業が誕生しました。その本社はオランダのアムステルダムに有ります。『ステランティス』は会社の名前で、製造する車のブランド名は昔のままです。 ジープ、クライスラー、アルファロメオ、シトロエン、プジョー、・・・などなど。

 (日本とドイツの自動車メーカーに対抗出来る様に、)ジリ貧に落ちいる恐れの有った会社が『大同団結』した分けですが、「電気自動車(EV)化にうまく対応出来るのか?」私にとっては非常に興味深いです。

【イギリス】
 イギリスの工業分野は、1960年代からジリ貧状態が続いています。典型的なのは、自動車産業です。「2020年にEUを離脱しましたから、今後益々イギリスの自動車産業は衰退するのでは?」と私は予想しています。

 イギリスには沢山自動車メーカーが有りましたが、その多くは外国企業の傘下に入り、現在はアストンマーティン社だけがイギリスに本社を置く生粋のイギリスのメーカーなっています。 有名なロールスロイスはジェットエンジン等の部門と自動車部門に分割され、自動車部門はBMWの傘下に入っています。

 イギリスの自動車産業の栄枯盛衰(えいこせいすい)は、日本の反面教師としては素晴らしいです。 日本も容姿や血筋でボンクラ議員に投票し続けたら、産業が衰退してしまいます! 志を高く持った、世情に通じた、勉強家を選んで投票しましょう!

❶ アストンマーティン :高級スポーツカーメーカー ・・・従業員数≒1,250人(2010年)

・・・ 外国の企業に吸収された等のイギリスの自動車会社 ・・・
★ ジャガー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ランドローバー :インドのタタ・モーターズの傘下
★ ミニ :かってはローバーの一部門→→2001年からBMWが製造している。
★ ロールス・ロイス・モーター・カーズ :BMWの傘下
★ ベントレー :1998年からフォルクスワーゲングループの傘下
★ ロータス・カーズ :吉利汽車が株式の51%を保有している。

(余談 :ジャガー) 私は、1986年に神戸に家を建てました。近所に洒落た洋館が有って、広い庭にピカピカに磨いたジャガーMk22.4サルーンを駐車していました。小豆色で、私好みのスタイルだったので、休日に散歩する時は、必ず前を通ってジャガーを眺めました。2000年頃にケーブルテレビと契約しました。そして、『主任警部モース』を見たのですが、モースの乗っていた車は形も色も近所の車と同じでした。2010年頃まで、大事に乗っていた様でした。

【ロシア】
 ロシアを『自動車』と言う視点から見ると、『発展途上国』に分類されると思います。半導体産業が発展していません、エアーバックも国内では製造されていません。欧米諸国の経済制裁が続く限り、1980年代の安全性の低い自動車しか製造出来ないと予想します。

 ロシアは国土面積が(日本の45倍)世界第一位です。人口は日本の1.14倍有ります。乗用車の保有数は日本の90%ですが、トラック・バスの保有数は57%ほどしか有りません。鉄道で物資を運んでいる国です。 従って、ウクライナ軍が鉄道路線を破壊したら、前線に物資を送る事が難しくなってしまうと思われます。

(余談 :ロシアの工業力) 私は大昔、エアーバックの火薬を収納する『インフレーター』を1年間ほど掛けて開発しました。ロシアが私をスカウトしたらインフレーターを製造出来る様になると思われますか? 絶対に不可能です! 冷間鍛造と機械加工の技術者/ノウハウ、加工機械が不可欠ですが、ロシア国内では調達出来ません。多分、プーチン氏はロシアの工業力を把握出来ていないと思われます。

★ 国土面積 :ロシア≒17,09万km2、アメリカ≒983万km2、中国≒948万km2、日本≒38万km2
★ 人口 :ロシア≒14,202万人、アメリカ≒33,481万人、中国≒141,178万人、日本≒12,421万人
出典 :ウイキペディア、人口は2022年時点

★ 乗用車保有数 :ロシア≒5,600万台、アメリカ≒11,626万台、中国≒22,691万台、日本≒6,219万台
★ トラック・バス保有数 :ロシア≒923万台、アメリカ≒17,278万台、中国≒4,648万台、日本≒1,627万台
出典 :日本自動車工業会『世界各国の四輪車保有台数 (2020年末現在)』

自動車業界 (その4)

2023-01-21 12:33:42 | 工業技術
【はじめに】
 今回はドイツの自動車業界について書きます。

 第二次世界大戦後、自動車の生産と言う点ではアメリカが圧倒的な力を持っていましたが→→日本、ドイツ、イギリス、フランスなどで自動車メーカーが成長し→→国際競争が激化して→→日本とドイツの企業が一馬身ほど先行する様になりました。

 ハイブリッド自動車が普及し始めると→→日本が先頭に躍り出る様になり→→欧米諸国は環境問題を理由にして→→数年後には電気自動車(EV)しか販売出来ない規制を設けました。 今後10年以内に、世界の自動車産業は大きく変化すると私は予想しています。

【ドイツの自動車業界】
 ヨーロッパにおける自動車業界は、ドイツの一人勝ちの状態になっています。

 ベンツは安全性に力を入れてきました。1996年に出向した中小企業の社長から、「車を買い替えたいので、車種を選んで欲しい」と依頼されました。私は、(その少し前に)車の安全性について詳しい、英文の雑誌を読んでいたので、エアバック付きのベンツ車を推奨しました。ベンツは高級車のイメージが強いので、「顧客からそんなに儲かっているのなら、負けてくれと言われる」と社長は言われましたが、「私が事故で死んだら、会社が潰れてしまうので無理して買った!と答えて下さい」とアドバイスしました。

 予想通り、「負けてくれ」と言う要求が有りましたが、社長は何時も私がアドバイスした答えを返していました。社長の車に月に何回か同乗させて貰いましたが、車体下の温度が表示され→→露結の可能性が確認できました。高速道路のカーブを曲がる時→→殆どハンドル操作が不要でした。カーナビでテレビが受信出来ましたが、運転中は受信出来なくなっていました。座席ヒーターが有ったので、寒いシーズンには助かりました。

 フォルクスワーゲンは株式公開会社ですが、ポルシェ・オートモービル・ホールディングが株式の『53%』を保有しています。ポルシェ一族と傍系のピエヒ一族がポルシェ・オートモービル・ホールディングの株式を『100%』保有しています。従って、フォルクスワーゲンは実質的にはポルシェ一族とピエヒ一族が共同経営しているのです。

(注記 :アウディ) 〇四つマークのアウディ車は日本でも良く見かけますが、1964年からフォルクスワーゲンの巨大な子会社です。フォルクスワーゲングループで高級車を製造しています。

(注記 :ポルシェ) ポルシェもォルクスワーゲンの子会社で、スポーツカー、SUV(スポーツ用多目的車)、セダンを製造しています。

・・・ ドイツに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フォルクスワーゲン
★ メルセデス・ベンツ
★ ダイムラー・トラック :メルセデス・ベンツ・グループ
★ BMW
★ アルピナ :アルピナ社は、BMWが製造した車に、手作業で改造して販売している。年間販売台数は1,700台ほどで、その内・約400台を日本に輸出しています。
★ フンケ&ヴィル  :ブランド名はYES!(小型スパーツカー) ・・・現在は生産していない模様
▲ フォード・ジャーマニー :フォード社の現地法人
▲ オペル :ステランティスの子会社

【ドイツの国際問題】
 2005年~21年の間ドイツの首相だったメルケル氏は、『経済安全保障』と言う考え方が欠如していた様に思います。 中国の購買力に頼り過ぎ、ロシアの地下資源を偏重し過ぎました。 私には、危なかっしい『近欲』の政策を実行している様に思っていました。

 2018年から米中貿易摩擦の問題が発生しました。2021年に大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代して→→貿易摩擦問題はあまり話題にならなくなりましたが→→習近平氏が台湾に侵攻する可能性が高まったので→→米中間の軍事衝突への対応が必要になってきました。

 米中間の緊張が高まって来たら→→アメリカは中国包囲網を構築しようと画策して→→ドイツはアメリカ側に付く事が要求され→→ドイツと中国間の貿易は縮小すると予想します。

・・・ ドイツの貿易額 ・・・ 2021年
★ 輸出 :中国≒1,036億ユーロ、 アメリカ≒1,221億ユーロ ・・・輸出総額≒1兆3,754億ユーロ
★ 輸入 :中国≒1,417億ユーロ、 アメリカ≒ 721億ユーロ ・・・輸入総額≒1兆2,025億ユーロ

 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して、ドイツを含むNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに武器を支援し、ロシアに経済制裁を加えました。ドイツで使用していた天然ガスの『60%』はロシアからパイプラインで送られていましたが、ロシアは対抗処置としてパイプラインを閉鎖しました。その為、ドイツは大金をはたいて天然ガスを買いあさり、今年の冬は何とか切り抜けそうにな状況の様です。

 『ウクライナ戦争が、早期にウクライナの勝利で終わって欲しい』と、NATO諸国の中でドイツが一番望んでいると私は見ています。

 ウクライナは、ドイツ製戦車『レオパルト2』の支援を強く望んでいます。ポーランドとスペインが供与する意思を表明しましたが、ドイツの承認が必要な様です。今の所、ドイツは承認しそうに有りません。 アメリカが供与を検討しているハイマースの射程150km弾(GLSDB)と、ポーランドなどがレオパルト2を多量に供与したら、今年中にウクライナが勝利して、戦争が終結しそうに思います。

(悲惨な映像を見て考える事!) テレビやインターネットでウクライナ戦争の映像が沢山見られます。住宅がガレキの山になっていて、畑は穴だらけです。ウクライナの復興は大変だと思います。ウクライナの民間人と両国の兵士が毎日沢山亡くなっています。日本を含む欧米諸国は、一日も早くロシア軍をウクライナから撤退させる様に、兵器を供与すべきだと思います。

【ドイツの電動自動車(EV)の問題】
 欧米諸国は、騒音規制と排気ガス規制を強化する方針を打ち出しました。2022年11月に欧州委員会が発表した新排ガス規制では、タイヤの摩耗やブレーキで発生する『粉』も規制しています。 これらの規制をガソリン車やディーゼル車でクリヤーする為には、研究/開発に巨額の投資が必要になると予想され→→欧米諸国は電動自動車(EV)の普及に舵を切りました。

 ハイブリッド自動車は燃費、排気ガス、騒音の総合得点が高いですが、日本の自動車メーカーが先行しているので、日本との競争を避ける為に、欧米諸国はハイブリッド自動車では達成出来ない規制にしたのだと思われます。

 然し、EVは中国が先行しており、近年インドが安いEVの輸出を始めています。欧米諸国は中国とインドとの競争には勝てると考えているのでしょうか? 甘い!甘い! 国家間の貿易戦争に勝つためには、(日本もそうですが!)国を挙げた取り組み/努力が必要です。

 ドイツのEV化には、日本以上に重大な問題を沢山抱えています。・・・電力需要の増大、半導体とリチュウムイオン電池の生産・・・などなど。

《課題 :ドイツの電力需要の増大対策》 電動自動車(EV)が増加すると→→電力需要も増加するので→→発電設備を増やす必要が有ります。ドイツは脱原発政策を進めてきたので、風力発電と太陽光発電で対応しようとしています。 昨年(2022年)に法律を改正/制定して『新発電計画』に取り組み始めました。

 風力発電には、❶発電量が『風』任せ、❷低周波騒音が発生する、❸野鳥の衝突死、➍景観の悪化・・・などの問題が有るので、政府の方針通りに事が進むとは考えられません。

 九州電力の試算では『100万kW』の太陽光発電所を建設する為には『58km2(山手線の内側面積とほぼ同じ)』もの面積が必要です。2030年の目標値『21,500万kW』を達成するためには、ドイツの国土の『3.5%』にパネルを張り巡らせる必要があります。景観破壊など・・・種々の問題が発生しそうに思います。

・・・ 2022年に発表したドイツの新発電計画 ・・・
★ 太陽光   :2021年≒5,890万kW→→2030年≒21,500万kW
★ 陸上風力 :2021年≒5,620万kW→→2030年≒11,500万kW
★ 海上風力 :2021年≒ 770万kW→→2030年≒ 3,000万kW
● 年間発電量:2021年≒240兆Wh→→2030年≒600兆Wh
出典 :自然エネルギー財団・一柳 絵美『ドイツ 自然エネルギー拡大加速に向け法律一式を採決』

(注記 :脱原発政策) 1988年からドイツは脱原発政策を進めて来ました。メルケル氏は一時、脱原発政策を見直しましたが福島原発事故(2011年)によって、脱原発政策に戻らざるを得なくなりました。17基有った原発を2020年までに全て廃止すると決定しました。 2022年末の時点では、3基稼働していた様です。その内2基を2023年4月まで運転出来る様にしておく事になっています。

《課題 :ドイツの半導体メーカー》 ヨーロッパ諸国は半導体に力を入れて来なかったので、現在、種々の産業で半導体不足が問題になっています。近年、半導体の重要性に気付いて、EU全体で製造体制を発展させようとしています。

 ドイツには、半導体メーカーが①インフィニオン・テクノロジーズ、②カールツァイスSMT、③シルトロニックの3社が有ります。 インフィニオン・テクノロジーズは、2021年の半導体売上高が世界第10位でした。(日本の『キオクシア』とほぼ同じ売上高でした。) 他にエルモス(Elmos Semiconductor)と言う企業が有りますが、車用の照明(LED)を製造しています。

(注記 :ASML社) オランダにはエーエスエムエル(ASML)と言う半導体製造装置メーカーが有ります。露光装置の世界シェアが『80%以上』も有る様です。 然し、オランダには半導体メーカーが育っていません。 最新鋭の半導体工場を建設する為には、ASML社、日本とアメリカの企業から装置を購入する必要が有るのです。

《課題 :ヨーロッパのリチュウムイオン電池》 ヨーロッパ諸国はリチュウムイオン電池の製造もなおざりにして来ました。ヤット近年、リチュウムイオン電池工場が多数建設される様になって来ています。

 先行する中国は、リチュウムイオン電池に必要な地下資源の確保に、国家として取り組んでいます。周回遅れの様に思えるヨーロッパで、リチュウムイオン電池産業が発展する為には、各国が相当努力する必要が有ると私は見ています。

【ボッシュ :不思議な企業】
 ドイツには『ボッシュ(Bosch)』と言う、巨大な自動車関連部品などを製造する会社が有ります。日本にも『ボッシュ(株)』と言う子会社が有って、埼玉県や群馬県などに工場を所有しています。

 大昔、私は非常にユニークで素晴らしいボッシュ製品を購入した事が有り、その時・ボッシュ社について勉強しました。考えられない様な、ユニークな会社です。株式の92%を、慈善団体の『ロバート・ボッシュ財団』が所有して、配当金の大半を受け取っています。(従って、非上場会社です。)

 ロバート・ボッシュ財団には『議決権』が有りません。『ロバート・ボッシュ工業信託合資会社』と言う、『1%』しか株式を所有していない組織が有って、議決権の93%を保持する事になっています。従って、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社がボッシュ社の経営を行っています。経営理念は『長期的に社会貢献できる経営を行う』です。 (ボッシュ一族が『7%』所有していますが、原則として一族は経営に口出ししない事になっています。)

 毎年、巨額の金を研究開/開発に投資して→→新製品を上市して→→会社を発展させて来ました。ボッシュは、こういう経営体制を80年間も続けています。資本主義社会でもボッシュの様な企業が存続出来るのですね! 『目から鱗が落ちる』様に思いました。

 ロバート・ボッシュ財団は、所有する病院の運営、教育、国際協力などなどに配当金を使用しています。 

・・・ ボッシュとトヨタグループのデンソーの比較 ・・・
★ ボッシュの従業員数≒40万人(2021年)、デンソー≒16.8万人(2022年連結)
★ ボッシュの売上≒10.2兆円(2021年)、デンソー≒5.5兆円(2022年)

自動車業界 (その3)

2023-01-14 10:51:27 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、インドとアメリカの自動車業界について書きます。

 21世紀になって、インドの経済は発展し始めましたが、古い文化が残っていて経済発展の足枷になっている様に思います。それで、カースト制度等についても書いておきます。

【インド】
 インドの国土は中国の『35%』ですが、人口は中国とほぼ同じです。1991年から自由化政策を採用して、近年急激な経済成長を続けています。中間所得層が増えて、購買力も高くなって来ています。四輪車の潜在需要は大きいと私は予想しています。

 2020年度のバイクの生産台数は、1,835万台で世界一でした。インドはバイクの輸出国です。然し、四輪車の生産台数は少ないですが、(人件費が安い為か?)四輪車の価格が安いので輸出国です。 インドで最大の自動車会社は『マルチ・スズキ』で、日本のスズキの子会社です。

 インドで二番目の自動車会社のタタ・モーターズは、イギリスのジャガーとランドローバーを傘下に収め、韓国やスペインにも進出しています。(インドの企業は、少し成功すると、国内に投資しないで外国に進出する傾向が有ります。)

 インドは、大気汚染が極めて深刻で、電気自動車(EV)化が進むと予想されています。既に、非常に安価なEVが市販されています。

★ 国土面積≒328.7万km2
★ 人口≒13.8億人 ・・・2020年
★ 自動車 :生産≒ 440万台、 販売≒ 376万台、保有≒ 6,853万台 ・・・2020年
★ 自動車メーカー :マルチ・スズキ、タタ・モーターズ(Tata Motors)、マヒンドラ(Mahindra)、・・・

(余談 :牛肉と豚肉) インド人の80%はヒンドゥー教で、14%がイスラム教徒です。ヒンドゥー教は牛肉を、イスラム教徒は豚肉を食べられません。ヒンドゥー教は牛乳を飲んだり、乳製品を食べる事は許されています。 牛は屠殺(とさつ)して→→ヒンドゥー教が食べられないので→→輸出しています。・・・私には腑に落ちない風習の様に思います。

(余談 :カースト制度) 1950年に施行された憲法で『カースト制度』は禁止されていますが、現在でも存在しています。工業化が進んだ地域では急激にカースト制度が無視される様になるのでは?と思いますが、農村地域では簡単には無くならないのでは?と思われます。

 カースト制度はヒンドゥー教の考え方から生まれました。神の前では平等が基本のイスラム教徒でも、インドではカースト制度に近い社会慣習を採用しています。 インド陸軍の一部では、同じカーストで部隊を編成しています。

 カースト制度には2種類あります。江戸時代の『士農工商∔非人』に近いのが『ヴァルナ (種姓)』です。 人間を、バラモン(司祭階級)、クシャトリヤ(武士階級)、ヴァイシャ(庶民階級)、シュードラ(隷属民)、パーリヤ(不可触民)に分類する制度です。

 もう一つの身分制度が、『ジャーティー』で、職業(生業)の世襲制度です。例えば、大工の子は大工になって、大工の息子と娘しか結婚できず、大工同士しか一緒に食事出来無いと言う制度です。時代が経つにつれて→→細分化され→→『ジャーティー』は3,000程にもなっている様です。

 インドのカースト制度は、『ヴァルナ』と『ジャーティー』が両方適用されるので、私には良く理解出来ません! 例えば、農民は『ジャーティー』では『農民カースト』で、『ヴァルナ』では『シュードラ』です。 然し、土地持ちの農民は『クシャトリヤ』と主張している様です。

(余談 :王) 昔のインドは『藩王国』の集合体の様な国でした。現在でも、トンデモナイ富豪の『王(マハーラージャ)』が存在しています。

(余談 :英語と高等教育) インドには多種多様な言語が存在しています。 憲法では、公用語は『ヒンディー語』ですが、15年間は英語を第二公用語とすると規定していました。その後、無期限に延長されて現在も英語は第二公用語として使用されています。・・・私は、インドの紙幣を持っています。日本の紙幣には漢字とローマ字が印刷されていますが、インド紙幣には17の言語が印刷されています。

 インドには優秀な大学が沢山有りますが、英語で授業しています。インド人の英会話には訛りが有りますが、英語圏で十分通用する様です。卒業後に外国に出て行くケースが多いい様です。『インド工科大学』が有名ですが、国立の工学系大学・23校の総称です。日本では近年『人材不足』が問題になっていますが、「インド工科大学卒業生が国内で働き始めたら、インドの工業は一層発展する」と私は見ています。

(余談 :インドの紙幣) 私はインドに行った友人達からインドの紙幣を沢山貰ったので、今でも大切に保管しています。インドの紙幣はクシャクシャ、汚れていて、落書きが多く、黴菌が沢山付着している恐れが有るそうです。 (日本のATMの一部では、殺菌しているそうです。)

【アメリカ車】
 私が若かりし頃、アメリカの自動車業界には『ビッグスリー』と呼ばれる巨大企業が3社有りました。現在何とか頑張っているのは、ゼネラルモーターズ(GM)とフォードモーターの2社だけです。 (GMは2009年に倒産し→→アメリカ政府が支援して再建されましたが、現在も財務状況は厳しい様に思います。)

 アメリカは世界第二位の自動車生産国ですが、世界第一位の輸入国になってしまっています。ドルが世界の基軸通貨で無かったら、アメリカ人は今の様な豊かな暮らしが出来ない国家になってしまったのです。

❶ ゼネラルモーターズ(GM)
❷ フォードモーター
❸ クライスラー :現在はオランダに本社が有るステランティス N.V.の一部門になっている。
➍ アメリカン・モーターズ :1987年にクライスラーに吸収された。

【アメリカに有る自動車工場】
 アメリカには、勿論GM、フォード、テスラの工場が有りますが、日本やドイツの企業が沢山、アメリカに工場を持っています。アメリカの自動車生産台数には、これらの工場で生産された数が含まれています。

・・・ 日本とドイツのメーカーがアメリカに所有する工場 ・・・
★ トヨタ自動車 :ケンタッキー工場
★ トヨタ自動車とマツダ :アラバマ(?)工場
★ 日産自動車日産自動車 :デカード工場、キャントン工場、スマーナ工場
★ 本田技研工業 :メアリズビル工場、イースト・リッベルティ工場、アラバマ工場、ティッモンズビル工場、
★ フォルクスワーゲン :チャタヌーガ工場
★ メルセデスベンツ :バンス工場
★ BMW :スパータンバーグ工場

【テスラ社とマスク氏】
 テスラ社は、電子技師であったニコラ・テスラ(1856年~1943年)の名前を拝借して、2003年に設立された会社です。2009年にスポーツタイプの電気自動車『ロードスター』の製造を開始しました。太陽光発電所の建設なども手掛け、急成長しています。

 2008年にイーロン・マスク氏がCEO(最高経営責任者)になって経営しています。マスク氏が21.9%の株式を所有しています。テスラの株価が異常に高いので、マスク氏は世界一、二を争う長者になっているのです。

 私の独断と偏見で見たマスク氏は、『目立ちたがり屋の御天気屋さん』です。順風満帆の時は『それ行け!』と実力を発揮しますが、厳しい局面に向かうと『さじを投げてしまう』のでは?と危惧しています。

・・・ テスラ社の生産台数 ・・・
★ 2012年 :0.26万台
★ 2013年 :2.2万台
★ 2014年 :3.2万台
★ 2015年 :5.0万台
★ 2016年 :7.6万台
★ 2017年 :10.3万台
★ 2018年 :24.5万台
★ 2019年 :36.7万台
★ 2020年 :49.9万台 ・・・この年から黒字になった。
★ 2021年 :93.6万台
出典 :ポジテン『テスラの販売台数の推移と売上高・営業利益率・純利益の推移』・・・2022年9月22日