これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ロシアと中国の問題

2021-05-08 12:02:22 | 国際問題
【はじめに】
 ロシア、中国、北朝鮮の3国を『ならず者国家』と呼ぶ方がおられますが、3国とも21世紀になっても他国に侵攻して領土を拡大したいと目論んでいます。

 現在・3国は協力関係にありますが、「清の領土だった土地は中国の領土で有る」と主張しており、最近・中国の一部で「高麗(918年~1392年)は中国の国だった!」と言い始めています。 帝政ロシアが清国から、(日本の国土の何倍にも相当する様な)広大な領土を奪ったのは事実です。 元がほんの一時期、高麗を支配したのも事実です。(元寇は、元と高麗軍が攻めてきたのです。)

 ソビエトが1991年に崩壊した混乱時、中国がロシアに侵攻しなかったのは「確実にロシアに勝てる」と判断出来なかったからだと想像します。 21世紀になって中国は軍備を増強しており、「次にロシアが混乱する様な事になったら、帝政ロシアに奪われた領土の奪還を企てるのでは?」と私は危惧しています。

 『ならず者国家』の野望を阻止する為には、抑止力(軍事バランス)の維持が重要だと思います。 ロシアと中国間の軍事バランス、そして、西側諸国と『ならず者国家』達の間の軍事バランスを維持することが、世界の平和に不可欠です。

【プーチン氏と習氏】
 安倍晋三氏がプーチン氏と一緒に風呂に入ったと聞いて、笑ってしまいました。プーチン氏はKGBでスパイの訓練を受けて、実際にスパイとして働いた人間です。 風呂の中で、「スイスの銀行に五千億円振り込むから、北方四島を返してくれ」と切り出したら成功したかも? 日本の政治家は、他国の元首について勉強する必要が有ります。

★★★ プーチン氏と習氏の共通点を書きます。
① 年齢 :今日現在(2021年5月8日)の年齢は、プーチン氏が68歳で習近平氏67歳です。二人とも長期政権を目指しており、生きている間は影響力を維持したいと躍起になっている様に見えます。

② 他人の事は意に介さない :二人とも非人道的人物です。他人の自由、権利、生命など尊重する様な人間では無いと思われます。 (但し、ロシアも中国も、有史以来・民主主義国家だった事が無いので、二人が非人道的なのは個人的な欠陥だとは言えないと私は考えています。)

③ 実力で伸し上がった :日本には二世、三世の政治家が多くいますが、プーチン氏と習氏は過酷な競争の中を実力で伸し上がったのです。 私の偏見かも知れませんが、安倍氏とプーチン氏の交渉を見ていると「役者が一枚も二枚も上」の様に見えました。

④ イデオロギーが無い :二人とも、宗教・哲学・思想・・・何も持っていません。自分に都合の良い様に切り取って利用します。

⑤ 覇権主義 :「プーチン氏はバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の一国を併合して、レーニンかピョートル1世の再来だと言われたい!」、 「習氏は台湾を併合して、毛沢東と同じ様に国民の尊敬を得たい!」と目論んでいる様に見えます。

★★★ プーチン氏と習氏の違う点を、(私の独断的な考え方ですが)書いて見ました。
❶ 体制の継続性 :習氏に万が一の事が有っても共産党の有力者が、大きな混乱無しに後を引き継ぐでしょう。 プーチン氏は後継者を育成している様には見えません。寧ろ自分の地位を脅かしそうな有能な人物は排除している様です。 プーチン氏が急逝したら、ロシアは大混乱になる可能性が有ります。

➋ 人財の豊かさ :中国共産党には(技術系を含む)頭脳明晰な党員(人財)が沢山いると考えるべきです。習氏は、彼らを自由に使う事が出来ます。

➌ 選任方法 :プーチン氏は曲がりなりにも国民投票で選ばれています。従って、国民の人気を気遣う必要が有ります。 習氏は、共産党の長老達の密室会議で推挙(?)されたのです。習氏が総書記に就任したのは2012年ですから、当時の長老達はもう直ぐ鬼籍に入ります。 その後任の長老には習氏にとって都合の良い老人を指名すると予想します。

➍ 経歴 :プーチン氏は悪名高いKGBの出身で、競争相手を粛正することには長けています。然し、技術/工業の発展には余り興味が無い様に見えます。 習氏は、若いころ色々苦労しましたが、清華大学化学工程部を卒業し、後に同大学の人文社会科学院で学んで法学博士の学位を得ています。習氏は、「基礎科学は国家の発展にとって重要だ!」と考えているようです。 ウイキペディア『千人計画』で検索して見て下さい。

【ロシアの近代史】
 赤穂浪士の討ち入りは1703年で、大岡忠相が江戸南町奉行に就任したのは1717年です。 当時のロシアは、ヨーロッパで寒くて貧しい「ロシア・ツァーリ国」と呼ばれていました。然し、ロシア・ツァーリ国の時代から東アジアへの領土拡大を進めていたのです。

 1721年にピョートル1世が即位して、近代化を始め/富国強兵を推進して弱小の周辺諸国に侵攻して領土を拡大して行きました。 (ピョートル1世後の中国との関係は、下に別途書きます。)

 ロシアは農業国でしたから国民の多くは農民でしたが、農民は奴隷(農奴)でした。 農奴解放令が出たのは1861年です。(明治元年は1968年です。トルストイが生きたのは、1828~1910年です。)

◎ ロシア・ツァーリ国 :1547年~1721年
★ ピョートル1世即位 :1721年
◎ 帝政ロシア :1721年~1917年
◎ 日露戦争 :1904年~05年
◎ 第一次世界大戦 :1914年~18年
◎ ロシア革命 :1917年
◎ ソビエト連邦社会主義共和国 :1917年~91年
★ レーニン首相 :1917年~24年
★ スターリン :24年~53年 ・・・第二次世界大戦
  ・・・・・・
★ ゴルバチョフ :85年~91年
◎ ソビエト崩壊 :1991年
★ エリツイン大統領 :1991年~99年
★ プーチン大統領 :1999年~2008年
★ メドヴェージェフ大統領 :2008年~12年
★ プーチン大統領 :12年~
◎ クリミア半島の併合 :2014年

【現在のロシアと中国の比較】
 グローバルノートのデータで最近のロシアと中国を比較して見ました。 第二次世界大戦直後はソビエトの方が圧倒的に強国でしたが、現在では逆転して、国力の差は拡大傾向に有ります。 中国のGDPは、ロシアの10倍程になっています。 2020年の国民一人当たりのGDPは、ロシア=10,037米ドル、中国=10,484米ドルで、ほぼ互角です。(日本=40,146米ドル)

 ロシアは無理してGDPの4%近い金を軍事費に当てています。 それでも、中国の軍事費の四分の一に過ぎません。 20世紀までは兵器の技術はロシアの方が圧倒的に優れていましたが、中国は兵器の開発に莫大な金を投入して、その差を縮めています。 (性能には問題が有る様ですが、)中国はステルス戦闘機・殲(ピンイン)-20(J-20)を自力で開発し、既に50機ほど実戦配備しています。ロシアもステルス戦闘機・Su-57を開発中ですが、実戦配備までには時間が掛かる様です。

 ロシアは『貧乏になりかけた兄』で、中国は『ドンドン金持ちになっている弟』の様に見えます。この傾向を止める事は、現在のロシアには出来ません。 ロシアは覇権主義を止めて、西側諸国に加わらなかったら、将来・中国の属国になってしまいそうです。

① GDP  :ロシア=1.47兆米ドル、中国=14.72兆米ドル ・・・2020年
   :ロシア=1.69兆米ドル、中国=14.34兆米ドル ・・・2019年(アメリカ=21.43兆米ドル)
② 輸出額 :ロシア=3.31億米ドル、中国=25.91億米ドル ・・・2020年
③ 輸入額 :ロシア=2.40億米ドル、中国=24.08億米ドル ・・・2020年
④ 外貨準備高 :ロシア=0.60兆米ドル、中国=3.36兆米ドル ・・・2020年(金保有を含む)
⑤ 人口     :ロシア=1.46億人、中国=14.4億人 ・・・2018年
⑥ 特殊出生率 :ロシア=1.57、中国=1.69 ・・・2018年 (日本=1.42)
⑦ 軍事費   :ロシア=651億米ドル、中国=2,611億米ドル ・・・2019年(アメリカ=7,317億米ドル)
⑧ 軍事費/GDP :ロシア=3.85%、中国=1.82%  ・・・2019年(アメリカ=3.41%)

(出典) ①~⑦はグローバルノートを転記、⑧はグローバルノートのデータを用いて私が計算しました。

【ロシアの本音】
 中華人民共和国(中国)が、ソビエトの支援を受けて建国されたのは1949年です。 当時、中国とソビエトの経済/軍備の差は歴然としていました。 ソビエトは『社会人になった兄』で、中国は『小学校に入学した弟』の様な関係だったと私は思います。 その後、ソビエトは崩壊して、中国の工業化が急激に進んだので、国力の差は逆転し→差が拡大し続いています。

 米中貿易戦争はロシアにとっては好都合です。 ①中国からの投資が期待できる。②中国と軍事協力関係が構築できる。③中国との貿易が拡大する事が期待できる。・・・

 中国が台湾の併合に成功して、経済発展を続けると、中国の次の目標は「ロシア帝国が清国から奪った領土の奪還」になる恐れが有る事を、プーチンは認識していると思われます。 長期的に考えたら、中国の発展はロシアにとっては脅威です。

【帝政ロシアの北東進出】
 中国は現在でも、「清国時代の領土は我が物で有る」と主張しています。 帝政ロシアは清国から(日本の国土の何倍もの)広大な領土を奪っています。 1991年と94年の、中ソ間の協定によって国境が確定した事になっていますが、中国の国力が急激に高まり、軍備もロシア以上になっています。 その差は、今後・益々広がって来ると予想されます。 将来、中ソ間で国境紛争が再開される恐れが有るので、帝政ロシア以来の北東進出の歴史を簡単に書いておきます。

 昔のロシアは、ヨーロッパの後進国で『ロシア・ツァーリ国』と呼ばれていました。 少しずつ領土を広げて行きました。 東方へも進出を図り、清国と国境を接する様になりました。 1644年に中国は、明→清になっていました。

 1689年に清国の康煕帝(第4代皇帝)とロシア・ツァーリ国のピョートル1世の間で、国境を確定するネルチンスク条約を締結しました。 この条約では、アジア大陸の東側(ウラジオストクやハルピンの有る地域)、樺太などは清国の領土でした。

  ピョートル1世が1721年に即位して、ロシア帝国(1721年~1917年)が誕生しました。ピョートル1世はロシアの近代化を始めました。 ピョートル1世は1725年に亡くなりましたが、後継の皇帝達は近代化を更に進め、ドンドン領土を拡張し続けました。

 清国は近代化に努力しなかったので、ロシア帝国との国力の差が広がり、ロシア帝国の北東進出を抑えられませんでした。(ネルチンスク条約で決めた国境線を超えて、ロシア帝国は侵攻したのです。)  1858年のアイグン条約と60年の北京条約によって、アジア大陸の東側や樺太がロシア帝国の領土になりました。

 中ソの国境線は非常に長く/複雑ですから、両国の主張が食い違う地域が有りました。 そのために、第二次世界大戦後の1969年に極地戦争(ダマンスキー島事件)が起こりました。 その後、国境線を挟んで両国は睨み合って来ましたが、江沢民が国家元首だった1991年と94年の協定によって両国は国境を確定させたのです。 (習近平は近年、江沢民が領土を明け渡したと批判しています。)

(余談) 1989年に天安門事件が発生しました。中露東部国境協定はソビエトが崩壊する寸前の1991年に締結されました。ロシアは大混乱になりましたが、中国も天安門事件を処理する(自由を要求する若者達を抑える)必要があり、江沢民はエリツイン大統領との間で1994年に中露西部国境協定を結んだのだと推測します。

(余談 :樺太) 樺太は大昔から日本と深い関係に有りました。 樺太にはアイヌ人が住んでいて、江戸幕府は北海道に住むアイヌ人と同等の扱いをした様です。 『蝦夷』は現在の北海道と樺太・両方をさす言葉だったのです。江戸時代の樺太の人口は2,000人~3,000人ほどだった様です。ネルチンスク条約では、樺太は清国の領土となっていますが、清国が統治した事は有りませんでした。 明治維新の時は、樺太はロシア帝国の領土になっていたので、日本は樺太の領有権を主張しなかったのか?

【北極海航路】
 ①北ヨーロッパ⇔⇔日本や中国、②北ヨーロッパ⇔⇔北アメリカ大陸の西側への航路は、北極海を通る方が、距離が短く政治的に安定しています。(今年、コンテナ船が座礁したスエズ運河を通る必要がなく、何よりも海賊に襲われる心配がありません。)

 地球温暖化で北極海の氷が融けて来たので、21世紀に入って北極海航路(北方航路)が9月の前後2か月間ほど利用される様になって来ました。 砕氷船の支援を得たら、もっと長い期間・航行出来る様です。 地球温暖化が進めば、更に北極海航路は利用される様になると予想されます。

 1994年に発効された『海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)』によって、瀬戸内海の様な内海(内水)を除いた領海でも商船の航行は自由に行える事になっています。 勿論、排他的経済水域も自由です。 排他的経済水域は、沿岸(基線)から200海里(370.4km)の海です。 すなわち、北極海航路の大半はロシアの排他的経済水域に含まれると思います。

 ロシアは、「北極海航路はロシアの領海だ!」と主張して、航行規則を設けています。 ロシアは2018年時点で原子力砕氷船を4隻所有しており、2030年頃には13隻体制にして、一年中航行可能にする計画を進めています。 現在は、氷が張る期間の航行は有料で商船等の航行を認めている様です。北極海航路を収入源にする事を目論んでいます。

 中国にとっても北極海航路は重要で、3万トン以上の大型原子力砕氷船を建造しています。ロシアとの協力関係を強化しています。中国はロシアと組んで北極海航路から利益を得ようとするでしょうが、ロシアが独占を主張したら、中国は黙っていないと予想します。

 アメリカも以前から北極海航路に注目し、調査・検討しています。 文大統領は中国と組んで、北極海航路での輸送と、造船関係での商売を狙っている様です。

 商船三井と中国遠洋海運集団の合弁会社が所有する砕氷LNG船が2020年に、ロシアから日本にLNGを運んで来ました。 商船三井グループは、砕氷LNG船を最初は韓国の大宇造船海洋(DSME社)で建造し、その後は上海の滬東中華造船(集団)有限公司で建造している様です。

(余談 :日本政府の動き) 安倍政権は2013年に、「海洋基本計画で北極の諸課題に重点的に取り組む」と閣議決定して、15年には『北極政策』を発表しました。何かやっているポーズをしただけで、各国の様子を見ています。 「日本政府は積極的に動くべきだ!」と主張する方がおられますが、「コロナ対策さえ真面に出来ない安倍氏や菅氏では、何もしない方が良い!」と私は思います。

領海 :国連海洋法条約で、領海は沿岸(基線)から12海里(22.2km)と規定されています。 内水を除いた領海では、他国の船の航行を妨害することは禁じられています。

米中貿易戦争の本質 (補遺)

2021-05-01 10:20:46 | 国際問題
【はじめに】
 「米中貿易戦争の本質」と言うタイトルで、私は今まで3回投稿しました。 前稿では「第三次世界大戦だ!」とまで書きましたが、多分・大方の方は「大袈裟だ!」と思われたと想像します。

 アメリカの近年の貿易収支と経常収支の推移を見て頂ければ、トランプ氏が中国に宣戦布告をせざるを得なかった状況を、皆さんに御理解頂けると思っています。

 大西洋評議会の『より長い電報』では中国を問題視していますが、アメリカが努力して「自らの社会と経済を改革する必要が有る」と私は見ています。 然し、アメリカだけでは、アメリカの改革は不可能なのも分かります。 結局、西側諸国が協力してアメリカを改革して行かざるを得ないのでしょう!

【日米中の貿易収支の推移】
 米中の貿易収支の推移を眺めると、「何故?トランプ氏が米中貿易戦争を仕掛けたのか?」を理解出来ます。 アメリカは1980年頃から40年以上・毎年!・毎年!貿易収支の赤字が続いています。 21世紀になって、赤字額は拡大するばかりで、減少する兆しは全く見えません。 アメリカ以外の国だったら、とっくの昔にデフォルト(債務不履行)になっていたと思われます。

 個人や企業だったら自ら努力して『入りを図って出を制す』を実行しないと破産/倒産してしまいます。 21世紀になって覇権主義を露骨に進め出した中国を(これ幸いと)悪者にして、西側諸国の協力を取付て、アメリカは赤字体質から抜け出そうとしている様に見えます。

 トランプ氏は、「自助努力では難局を切り抜けられない!」と判断したのだと思われます。 「アメリカがデフォルトになったら、貴方の国も困るでしょう!」、「このまま放置したら、10年後には中国が世界一の強国になって、中国に都合の良い国際ルールに従って貴国は生きる事を要求されます。それで良いのですか?」と主張している様に思いました。 身勝手な主張ですが、日本を含めた西欧諸国はアメリカに協力せざるを得ないでしょう!

 中国の貿易収支の黒字が拡大し始めたのは、2005年頃からです。 2005年にはアメリカの貿易赤字は90兆円程にまで拡大していたので、中国のせいで赤字体質国家になったのでは有りません。 アメリカの企業が外国に工場を建設するのを奨励(または放任)し続けた結果、赤字体質の国家になってしまったのです。 そして、アメリカの企業は莫大な収益を上げてアメリカ国民は潤いましたが、国家は赤字に苦しむ事になりました。

 中国は欧米諸国からの莫大な投資で工場を建設し、技術移管を得て、国際ルールに従って輸出を増やし、外貨を獲得する様になりました。 決して、他国を略奪して『金』を得ている分けでは有りません。 そして、その金と、共産党独裁国家のメリットを十二分に活用して、軍備拡大/近代化と、第四次産業革命の覇者になる事を目論んで研究/開発予算を増やして来ました。 これらの政策も国際ルール違反とは言えません。

 国際ルール違反の①ジェノサイド、②覇権主義と言う2つを建前の理由にして、トランプ氏は米中貿易戦争を始めざるを得なかったのです。

2020年 :米=-105.40兆円、中=57.82兆円、日=0.74兆円 ・・・バイデン大統領
2019年 :米=-99.82兆円、中=45.48兆円、日=-1.46兆円
2018年 :米=-102.63兆円、中=37.90兆円、日=-1.12兆円 ・・・米中貿易戦争
2017年 :米=-93.12兆円、中=45.31兆円、日=2.83兆円
2016年 :米=-86.31兆円、中=55.05兆円、日=4.03兆円 ・・・トランプ大統領
2015年 :米=-87.77兆円、中=64.14兆円、日=-2.51兆円
2014年 :米=-85.54兆円、中=41.37兆円、日=-13.18兆円
2013年 :米=-80.94兆円、中=27.97兆円、日=-12.71兆円
2012年 :米=-85.41兆円、中=24.87兆円、日=-9.43兆円 ・・・習近平が総書記に就任
2011年 :米=-84.62兆円、中=16.73兆円、日=-3.48兆円
2010年 :米=-74.59兆円、中=19.60兆円、日=8.18兆円
2009年 :米=-59.32兆円、中=21.13兆円、日=3.10兆円 ・・・オバマ大統領
2008年 :米=-95.26兆円、中=32.20兆円、日=2.04兆円
2007年 :米=-94.20兆円、中=28.55兆円、日=9.94兆円
2006年 :米=-96.35兆円、中=19.17兆円、日=7.31兆円
2005年 :米=-89.31兆円、中=11.02兆円、日=8.54兆円
2004年 :米=-76.77兆円、中=3.47兆円、日=12.00兆円
2003年 :米=-62.45兆円、中=2.75兆円、日=9.60兆円
2002年 :米=-54.77兆円、中=3.29兆円、日=8.59兆円 ・・・胡錦濤が総書記に就任
2001年 :米=-48.61兆円、中=2.43兆円、日=5.88兆円 ・・・小ブッシュ大統領
2000年 :米=-51.56兆円、中=2.61兆円、日=10.78兆円

出典 :2020年はグローバルノート、その他の年は『世界経済のネタ』のデータ(米ドル)を、1$=108円として、私が強引に『円』に換算しました。 為替変動を無視しているので、学研的な厳密さと言う点では問題が有ります。 私は、米ドルで議論されるとピンと来ないので、批判覚悟で『円』に換算しました。

【日米中の経常収支の推移】
 御参考までに日米中の経常収支の推移も以下に示します。 経常収支は貿易収支と、それ以外の金の収支を合算したものです。 アメリカは経常収支も大幅な赤字が続いています。 アメリカの蛇口は壊れてしまって、毎年多量の金が流失しているのです。 

 アメリカは蛇口を自分で修理すべきですが、そうしたら国民の負担が大きくなり、政治家は選挙に勝てなくなります。 西側諸国に莫大な金を出させて、修理しようとしている様に見えます。

2021年 :米=-94.65兆円、中=29.54兆円、日=21.06兆円
2020年 :米=-69.81兆円、中=32.27兆円、日=17.91兆円
2019年 :米=-51.86兆円、中=15.26兆円、日=20.32兆円
2018年 :米=-48.57兆円、中=2.75兆円、日=19.10兆円
2017年 :米=-39.45兆円、中=21.07兆円、日=21.98兆円
2016年 :米=-42.65兆円、中=21.84兆円、日=21.38兆円
2015年 :米=-43.99兆円、中=32.85兆円、日=14.74兆円
2014年 :米=-39.72兆円、中=25.49兆円、日=3.97兆円
2013年 :米=-36.38兆円、中=16.01兆円、日=4.96兆円
2012年 :米=-45.16兆円、中=23.26兆円、日=6.45兆円
2011年 :米=-49.17兆円、中=14.70兆円、日=14.02兆円
2010年 :米=-46.66兆円、中=25.68兆円、日=23.87兆円
2009年 :米=-41.01兆円、中=26.27兆円、日=15.69兆円
2008年 :米=-75.22兆円、中=45.42兆円、日=15.40兆円
2007年 :米=-79.55兆円、中=38.14兆円、日=22.91兆円
2006年 :米=-88.20兆円、中=25.04兆円、日=18.85兆円
2005年 :米=-80.92兆円、中=14.30兆円、日=18.38兆円
2004年 :米=-68.68兆円、中=7.45兆円、日=19.66兆円
2003年 :米=-56.41兆円、中=4.65兆円、日=15.06兆円
2002年 :米=-49.26兆円、中=3.83兆円、日=11.79兆円
2001年 :米=-42.56兆円、中=1.88兆円、日=9.31兆円
2000年 :米=-43.41兆円、中=2.21兆円、日=14.11兆円

★ 経常収支 = 貿易収支 + サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支
 経常収支は、他国との商品取引の収支だけでなく、外国との旅行費用、投資金額、援助金など、金の遣り取りを全て合算した収支です。

出典 :2020年はグローバルノート、その他の年は『世界経済のネタ』のデータ(米ドル)をベースにして、貿易収支の時と同じ要領で円に換算をしました。

【決済通貨と米中貿易戦争】
 アメリカ合衆国は、連邦準備銀行が金を保有して金本位制を維持していましたが、1933年に金本位制を停止しました。(ドル紙幣は兌換紙幣では無くなったのです。) 1934年に金は財務省に移管して、1オンス(28.35g)=35米ドルとしました。

 他国の中央銀行から要求が有れば、『1オンス(28.35g)=35米ドル』のレートでドルと金を交換する事にしたのです。 そのために、戦後の貿易通貨として米ドルが主役になりました。 その後、金の保有量よりも世界の経済の方が大きくなったので固定相場性は維持出来なくなりました。1971年8月にニクソン大統領がドルと金の交換を停止したのが、『ニクソンショック』です。

 1971年12月に『1オンス(28.35g)=38米ドル』とするスミソニアン協定が結ばれましたが、経済が更に拡大したために1973年3月に、変動相場制になりました。(米ドルと金の交換は無くなったのです。) 1976年にキングストン合意(協定)によって、金と通貨の交換は完全に廃止されました。

 各国の紙幣は、ある意味では『印刷した紙切れ』に過ぎません。 然し、各国が貿易するには、物々交換する分けには行きませんから、何処かの国の通貨で取引せざるを得ないのです。

 国連の一機関として、為替相場を安定化させるために1945年・国際通貨基金(IMF)が設立されていました。 IMFは国際取引に利用出来る通貨として、現在は5種類認めています。 これらを『自由利用可能通貨』と呼びます (米ドル、ユーロ、人民元、円、英ポンドです。)

 国際取引で最も利用される通貨を『基軸通貨』と呼びますが、現在は米ドルが基軸通貨です。 中国は、人民元を基軸通貨にしようと目論んでいる様に見えます。(自国の通貨が基軸通貨になると、沢山!沢山!のメリットが有ります。)

 ある国(X国)の通貨が基軸通貨になる条件は、多くの国がX国の通貨を欲しがる事です。 欲しがる理由は色々考えられますが、現在はどの国の紙幣も単なる『印刷した紙切れ』になっているので、「X国が多くの国が必要とする物を輸出出来るか?」が重要なポイントです。

 中国は、21世紀に入って他国が欲しがる工業製品を多量に生産出来る様になって来ました。 一方、アメリカは国際競争力の有る製品が少なくなって来て、貿易収支の赤字が続いています。 この状態が続けば、人民元が基軸通貨になるのは、そんなに先では無いと予想されます。

 21世紀になって第四次産業革命が始まったと言われていますが、第四次産業革命の覇者に中国がなったら、確実に人民元が基軸通貨になります。 身勝手な中国のことですから、為替レートを自国の都合の良い様に操作して、他国を平伏させると予想します。 「君たちは、それでも良いのか?!」とトランプ氏が警告した様に私には思えました。

★★★ ご参考 :IMFのSDR ★★★
 国際通貨基金(IMF)は加盟国の出資額に応じて、特別引出権(SDR)を付与しています。 SDRは、加盟国の外貨準備高を補うのが役割です。

 日本の銀行に100万円預けたら、100万円を引き出す権利が与えられます。 特別引出権(SDR)は『自由利用可能通貨』の組合せになっています。 組合せは2021年に見直されると予想しますが、現在は次の様になっています。

1SDRバケット=(0.58252米ドル)+(0.38671ユーロ)+(1.0174人民元)+(11.900円)+(0.085946英ポンド)

★★★ ご参考 :国連の金融機関 ★★★
 国連には四つの金融機関が有り、全て本部はアメリカのワシントンD.Cに有ります。 日本の戦後の復興事業の多くは、世界銀行からの借入れ金で行われました、東海道新幹線、黒四ダム、高速道路、民間企業の多数の工場建設、・・・

① 国際通貨基金(IMF) :1945年設立、 189ヵ国が加盟
② 世界銀行 :1945設立、 189ヵ国が加盟
③ 国際復興開発銀行(IBRD) :1947年から国連の機関になりました。
④ 国際開発協会(IDA) :1960年設立、最貧国向けの融資や無償援助が役割です。

米中貿易戦争の本質 (その3)

2021-04-24 09:25:26 | 国際問題
【はじめに】
 菅政権はコロナ対策に四苦八苦していますが、コロナ問題より”ずっと!”重大な米中貿易戦争が、既に始まっています。 米中貿易戦争は第三次世界大戦だと考えるべきです。

 文大統領は自分の信念に従って、米中貿易戦争に対応しようと頭を悩ませている様に見えます。 然し、お粗末な日本のコロナ対策から考えると、『下手な考え休むに似たり』、アメリカに協力して戦った方が良いと私は思います。

【ジェノサイド】
 最近、欧米諸国はウイグルやチベットでの弾圧を『ジェノサイド(集団殺害)』だと主張しています。 ヨーロッパの一部の国では、ウイグル産の綿花を使用している製品の不買運動をしている様です。

 私の知る限りでは、他国がその国民を弾圧している事を罰する為に戦争を仕掛けた例を知りません。 過去の戦争は全て領土紛争と経済紛争が原因で、人権弾圧が理由だった事は無いと思います。 ある国がその国民を弾圧しても、国連が「重要な問題である!」と制裁する事は無いでしょう!

 文大統領は、中国と北朝鮮の人権問題には出来るだけ言及しない様に、心掛けています。 日本は、「ウイグルやチベットで弾圧しているので有れば、遺憾である!」程度の表明はすべきだと考えますが、「ジェノサイドだ!」と騒ぐと、欧米諸国から梯子を外されて、中国から酷い仕返しを受ける事になると予想します。

(余談 :ジェノサイド条約) 1948年に国連で『集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)』が制定されました。 国連に加盟している大半の国は批准していますが、日本は批准していません。 (中国も北朝鮮も批准しています。)

 ジェノサイド条約は、「ジェノサイドの定義と、批准国に法律を制定して、ジェノサイドの実行者や指示者を罰しなさい」と言う条約です。 仮にウイグルやチベットでの弾圧を国連が「ジェノサイドだ!」と認定したとしても、中国が「いや違う!」と主張すれば、誰も罰せられません。

(余談 :チャーチル) アカデミー賞を受賞した『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』をご覧になりましたか? ヒットラーの『ホロコースト』を阻止するために、チャーチルが戦った分けでは有りません。 ヒットラーの覇権主義が我慢出来無かったのです。

【大国の興亡】
 イギリス人のポール・ケネディ(1945年~)が1987年に、ベストセラー『大国の興亡』を出版しました。 副題が「1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争」となっていますが、ソビエトの崩壊(1991年)や中国の台頭については触れていません。

 世界一の強国は、16世紀はスペインとポルトガル→17世紀はオランダ→19世紀はイギリスでした。 20世紀にヒットラーが、世界一に挑戦しましたが失敗して、アメリカが世界一になりました。 21世紀になって、習近平が世界一に挑戦し始めました。

 ヒットラーは武力による世界一を目論見ましたが、習近平は経済力(金)と武力と言う、二つの武器を巧妙に使用しています。 ポーランドに侵攻したのは1939年の9月で、45年4月にヒットラーは自殺しました。(6年弱で勝敗が決まりました。) 米中貿易戦争は2018年から始まったと私は見ています。

 地下資源と食糧がほぼ自給できる二つの大国が、武器を使用しない経済戦争をしている分けですから、決着はなかなか付かないと予想されます。

【アメリカと中国の比較】
 グローバルノート(G.N)社の2020年のデータで日米中の経済力を比較してみました。

 アメリカの貿易収支は0.98兆米$(≒106兆円)の赤字で、中国は0.53兆米$(≒57兆円)の黒字です。 日本は、ほぼトントンの優等生です。

● アメリカの貿易赤字は中国だけのせいでは有りません。 米ドルが世界の主軸通貨で有るのを”よいこと”に、収入以上に贅沢をしている事が赤字の原因です。 バイデン大統領は、西側諸国の企業に「アメリカでもっと沢山物作りをしろ」と要求すると予想します。

● イギリスの投資ファンドが東芝を2兆円で買収しようとしました。 2020年の中国の貿易収支は57兆円もの黒字でしたから、東芝クラスの企業を28社買収できる事になります。この状態が10年間続いたら、280社もが中国の傘下に入ってしまいます。

● A社がC社に毎年100万円の品物を売って、C社から150万円の品物を買っていたとします。 両社の仲が悪くなって、C社からは100万円分にして、B社から(少し高いですが)52万円分買う事にしました。 A社とC社は損をして、B社が儲かる事になります。

① GDP  :アメリカ=20.9兆米$、中国=14.7兆米$、日本=5.0兆米$ ・・・2020年G.N
② 貿易依存度 :アメリカ=19.4%、中国=30.7%、日本=27.3% ・・・2020年G.N
③ 輸出額 :アメリカ=1.43兆米$、中国=2.59兆米$、日本=0.64兆米$ ・・・2020年G.N
④ 輸入額 :アメリカ=2.41兆米$、中国=2.06兆米$、日本=0.63兆米$ ・・・2020年G.N
⑤ 金を含む外貨準備高 :アメリカ=0.63兆米$、中国=3.36兆米$、日本=1.39兆米$ ・・・2020年G.N (アメリカは75%を金で保有しています。)
⑥ 人口 :アメリカ=3.3億人、中国=14.3億人、日本=1.3億人 ・・・2019年G.N

★ 貿易依存度=輸出入額/国内総生産(GDP)
★ 輸出入額には貿易外の収入と支出が入っている様です。

【米中貿易戦争とは】
 トランプ氏は、「ハーウェイのスマホや通信装置を使用すると、情報が中国に盗まれる!」と叫んで、米中貿易戦争を始めました。 そして、南沙諸島や台湾問題、ウイグルやチベットでの人権問題、米中の貿易不均衡の問題・・・を理由に挙げる様になって来ました。

 「ヒットラーと講和すべきだ!」との主張が多くなって来た時、チャーチルが「バッキンガム宮殿に鍵十字の旗が掲げられても良いのか?!」と演説した様です。 「貴方の国が、中国や北朝鮮の様に一党独裁国家(専制国家)になって、貴方の自由が奪われても良いのか?!」と、アメリカは最後に主張する様になると私は予想します。

 第二次世界大戦後、地下資源の豊富な国を植民地にする事は出来なくなっています。 一方、大国になる条件は、地下資源と食糧が自国でほぼ確保出来る事です。 この条件を満たす国は、アメリカ、中国そしてロシアの3ヵ国だけだと思います。 ロシアはプーチン氏の政策ミスで、経済発展が難しくなり、覇権競争から脱落しつつ有ります。

 結局、アメリカと中国が世界の覇権を争う時代に突入しました。 近年、兵器の進歩は目覚ましいですが、皮肉な事に「米中貿易戦争では兵器は殆ど使用される事が無い」と私は見ています。

【米中貿易戦争の武器は?】
 「米中貿易戦争は覇権を争う人類最後の戦争になるのでは?」と思いますが、「武力で直接・敵国民を殺さない、新しいタイプの戦争になる」と私は予想します。 今までは考えられ無かった物/体制/制度が武器として活用される戦争です。

① 政治体制 :為政者(大統領や首相)が必要と判断した法律が、短時間に制定出来るか? 野党との調整の為に中途半端な政策にならないか? 中国は共産党一党独裁国家でから、国民の意向を問う必要は有りません。

② 外交政策 :アメリカ一国だけでは米中貿易戦争を戦うことは不可能です。協力国を増やすには、それぞれの国が抱えている問題を考慮した外交が必要です。例えば、イタリアとギリシャは将来の脅威よりも、今・中国の金が欲しい!

③ 対外収支 :西側諸国は協力して、中国の対外収支をトントンか赤字にする事が不可欠です。

④ サイバー攻撃 :米中は種々のサイバー攻撃をすると予想します。(日本は、情けない事に役所のデジタル化が始まった所です。)

⑤ スパイ活動 (産業スパイを含む) :中国は外国に住む中国人に、国家に情報を提供する義務を負わせる法律を制定しています。 西側諸国の企業、研究所、大学にいる中国人はスパイと見なすべきか? 中国の要求を拒否すると、彼らは帰国出来なくなる様です。

⑥ 特許、研究/開発 :中国は益々研究/開発に力を入れると予想します。 (日本政府は研究/開発予算を増やす必要があります。)

⑦ 製造技術と設備 :西側諸国は今後・中国への投資を絞って、製造設備を中国以外に移す必要が有ります。

【アメリカが勝つためには】
 2週間前に、『より長い電報』について書きましたが、「習近平が中国共産党から排除されたら、中国の脅威は無くなる」と言う考え方には賛同出来ません。そんな簡単な問題では無いと思います。

① 貿易で得た莫大な金をフルニに活用して、「中国中心の新しい国際秩序を構築しよう」としている事が中国の脅威です。 中国の海外収支をトントンにするか、赤字にしない限り中国の脅威は無くなりません。 アメリカ一国が中国との貿易不均衡を改善しても、他の西側諸国から中国が金を得たら問題は解決しません。

② アメリカの大統領制、議会制、選挙制度は、日本が江戸時代だった頃から殆ど変わっていません。 銃社会で、10万人当たりの殺人件数は、日本が0.26人に対しアメリカは4.96人も有ります。 人種差別が未だに横行して、健康保険制度はお粗末です。 『アメリカン・ドリーム』は良い事だけでは有りません。超貧しい→貧しい→・・・→金持ち→超金持ちが混在する社会になるのです。 日本は資本主義を大幅に修正して社会福祉を充実させてきました。 アメリカは時代に合う様に社会改革をして、少し社会主義化を進めないと国論を統一する事は難しいと思われます。

 武器を使用する戦争なら中国に勝てるでしょうが、米中貿易戦争は武器が役に立たない全く新しいタイプの戦争です。 多くの国民の協力/努力が必要な戦争ですから、国論がバラバラでは勝てません。

【中国の方が有利です!】
 中国は共産党一党独裁国家です。独裁国家と民主主義国家が経済戦争したら、どちらが有利だと思われますか? ソビエトが崩壊したので、「民主主義国家が勝つ」と予想される方が多いいのでは? 私は逆だと思います。

 中国共産党は、「労働者の為の政党で有る」と主張していますが、実情は党員の為の政党です。 共産主義を固守している分けでは有りません。自分達が都合の良い様に、どうにでも(柔軟に)政策を変えられます。 個人や民間企業の財産を何時でも没収して、国家(=共産党)の為に使用出来ます。

 大学で優秀な成績だと、共産党に入る様に勧誘され、入党すると魅力的な(高給の)職に付ける様です。 (日本の共産党の様に誰でも入れる分けでは有りません。エリート集団なのです。) 中国共産党には頭脳明晰な人間が多いい事を忘れてはいけません。

 中国共産党が、「Aと言う分野(または企業)を重点的に育てよう!」と決定したら、(短時間の間に)金と優秀な人材を集中的に投入出来ます。 従って、A分野(A企業)は急激に発展する事になります。 逆に、アメリカは、国家が企業に介入する事をタブー視して来ました。

 私が社会人になった1970年頃の日本は、旧・通商産業省(通産省)の課長クラスの官僚が、大手企業の部長や重役を集めて国の方針を伝えていました。 そして、企業の研究/開発を促すための『呼び水予算』を準備したのです。 現在は、もう・そんな習慣は無くなているのでは?と思われますが、中国と向き合って生きる為には、(国と企業がもっと連携して)少ない金と人材を有効に活用して行く事が不可欠です。

 中国は、共産党の下に三権(立法権、行政権、司法権)が有り、軍隊も共産党の為に存在しています。 新聞やテレビも共産党の下に有ります。 日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の議員は間接選挙で選ばれ、会期が存在します。 全国人民代表大会常務委員会は常設で、(日本とは大幅に違って)立法権を持っています。 党内に強い反対が無ければ、習近平は何時でも法律を制定して実行出来るのです。 日本を含む欧米諸国は、「今後・長期に亘って・そんな国と経済戦争をするのだ!」と覚悟しなければなりません。

【中国が勝つためには!】
 1930年代の後半に、アメリカを中心に、日本に対して『ABCD包囲網』を構築したと言われています。 米中貿易戦争は近い将来、アメリカを中心とした『対中国貿易包囲網』に変質する可能性が高い様に思われます。

 地下資源に乏しい日本は、『ABCD包囲網』によって『狂犬病』に罹った様になってしまい、戦争に突入してしまいました。 中国は、地下資源も食糧もほぼ自給自足出来る状況で、国内消費も一般に考えられているより多いですから、包囲網が完成しても『狂犬病』になる恐れは無いと予想します。

 中国が、対外収支の黒字を維持する事を最大の課題にして、得られた外貨で日本を含めた欧米諸国の有望企業を買収し続けたら、米中貿易戦争の勝者になると予想します。

 無駄な事は止めて商売に徹したら、中国が勝者になれるのです。 台湾を武力で併合しても、発生する軍費や戦争で失われる若者の命に見合う利得が得られるとは思われません。 日本の様に、「北方4島、竹島、尖閣諸島は、我が国の領土だ!」と主張し続けるだけで十分です。

 悪徳高利貸の様に、貧しい国に金を貸して、軍事基地を設けたり、港湾設備を手に入れても、商売として成り立つでしょうか? 一路一帯構想は経済的に意味が有るでしょうか? 現状でも、貨物の輸送に問題は発生していません。 

 1982年に鄧小平が打ち出した『第一列島線』構想は、尖閣諸島を除いてほぼ達成した様に見えます。 『第二列島線』には、日本や台湾が含まれますから、すんなりと、西欧諸国が認めるとは思われません。 『第二列島線』構想は、商売をする上ではメリットは殆ど有りません。 この主張は引っ込めるべきです。

 中国が、軍事力を背景にした覇権主義を放棄して、現在の国際ルールに準じて『商売に徹した』ら、貿易戦争に勝利して、本当の脅威になると予想します。 そうなったら、西欧諸国は国際ルールを変える必要が有りそうです。

【大胆な私の予想】
 米中貿易戦争は、どんな状態で終戦になるのか?予想して見て下さい。 私には分かりません。 兵器を使った戦争は、兵隊と国民を沢山殺して、生産設備、住居、インフラを破壊して、どちらかがギブアップしたら終結しました。

 米中は地下資源も食料もほぼ自給出来る国です。 中国は北朝鮮と同じ様な専制国家ですから、西側諸国に包囲されても北朝鮮の様に耐え抜くと予想します。

 世界はアメリカ・グループ、中国グループに分かれて共存していく様になると予想します。 二つのグループは少しずつ交流を深めて、100年程したら仲良くなれるでしょう!

 私の予想に反して中国が勝利したら、台湾、朝鮮半島、モンゴールは併合されて、西欧諸国の大企業は中国の傘下になって、その従業員は働きバチになってしまいそうです。

米中貿易戦争の本質 (その2)

2021-04-17 11:39:49 | 国際問題
【はじめに】
 21世紀になって第4次産業革命が始まったと言われています。 一方、中国の経済が飛躍的に発展し、軍備の近代化を進め、露骨に覇権主義を進め出したので、日本を含む欧米諸国にとって中国が脅威になって来ました。

 トランプ氏は、「中国をこのまま放置しては、中国が第4次産業革命の勝者になってしまい、アメリカはジリ貧になる」と気付き、「取り敢えず、ハーウェイをやり玉にして中国を牽制してやろう」と米中貿易戦争を始めた様に私には見えました。

 オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏が大統領になり、「貿易戦争の手を緩めるのでは?」と予想した方がいましたが、(トランプ氏が目をつぶっていた)ウイグルやチベットの人権弾圧を問題視して、より強力な攻撃をしようとしている様に見受けられます。 その考え方の根拠は、最近(4月12日)にアメリカがサムソン電子、TSMCなど十数社を招集した半導体やインフラに関する会議です。

【安全保障とは?!】
 今回の新型コロナの問題で「安全保障」と言う言葉を、もっと広い意味で使用する必要が有る事を日本人は学んだと思います。 日本では今まで、 「安全保障」を他国からの攻撃/侵略に備える視点でのみ考えていた様に私には思えます。 安全保障と危機管理の点では日本は、トンデモナイ後進国だった事を痛感させられました。

 国民の生命と財産を守る事は、国家の最大の使命ですが、生命と財産を侵害するのは敵国だけでは無かったのです。 自然災害、天候不順や新型コロナウイルスも「安全保障」の範疇で検討/対策すべきなのだと学びました。 原油やレアーメタルなどの地下資源は「安全保障」の観点から、日本は備蓄しています。 転んでもただは起きない中国は、マスクやワクチンを外交の武器として活用して、成功している様に見えます。

 日本人は毎年・花粉症に悩まされ、マスクが必要な人が多いですが、マスクを殆ど輸入していた事は知らされていませんでした。 中国が国際ルールに違反して、マスクを日本に輸出する事を禁止したために、大騒ぎになって、アベノマスク騒動が起こったのです。

 工業製品については「安全保障」を忘れていた様に思えます。 例えば、新型コロナワクチンの入手が、先進国と比較すると日本は遅れています。 その原因は、日本にはワクチン接種に反対する人が多いい為、国はワクチンの研究開発に力を入れて来なかった事と、製薬会社がワクチン製造工場を拡大しなかった為です。

 韓国のSKバイオサイエンスが、アメリカ・ノババックス社の新型コロナワクチンを国内で製造して6月から出荷すると発表しています。 あの貧しいキューバが新型コロナワクチンを開発して、既に最終臨床試験(治験)に入っている様です。

 「日本のワクチン接種計画が先進諸国に比べ大幅に遅い事は良い事だ」とテレビで堂々と主張するコメンテイターがいました。「外国で安全性が確認された後に接種する事になるから、安心だ!」と言うのが彼の主張です。 『従順な羊』の発想ですね! 問題が起こってから考えましょう!

【豊かになった国の金は後進国に投資される!】
 「金が金を産む」と言いますが、資本主義社会では金持ちの所には、ドンドン金が集まります。 「三代目は店を潰す」とも言います。 創業者と二代目が努力して蓄財しても、創業者が可愛い孫(三代目)を甘やかすと、あっという間に金が無くなって、貧乏人の仲間になります。

 国家も、豊かになって来ると更に豊かになります。 豊かな国(A国)の資産家や企業は、(自国の産業に投資するよりも、)貧しい国(B国)に投資して、技術を流出させ、B国でより多くの金を得ようとします。 B国は豊かになって行きますが、A国は相対的には貧しくなります。

 家業の発展を継続する為には、息子の教育が重要ですが、国家が継続的に発展する為には、金持ちや企業が後進国に投資したり、技術/ノウハウを流出させるのを制限しなければならないのです。 今までに、先進国が後進国への投資やノウハウの流出に正面切って反対した事は無かった様に思われます。

 16世紀にスペインとポルトガルが豊かになり、17世紀にはオランダが黄金時代迎え、19世紀には産業革命を始めたイギリスが強国になりました。 その後、資源が豊富だったアメリカとロシアが次第に強国になっていったのです。

(余談 :出島とオランダ貿易) 関ヶ原の合戦は1600年です。 当時、世界で最も強国だったのがオランダでした。 オランダの東インド会社はキリスト教の布教に固守しなかった事も有って、徳川幕府は出島に商館を設けることを許したのです。 (その後・直ぐにオランダは衰退し始めましたが、幕府は世界一の強国になった大英帝国には出島を解放しませんでした。)

【中国の海外投資】
 今までの中国の海外投資に関する私見を書いておきます。 貿易で得た巨額の金(年間20兆円とか30兆円)を海外投資してきましたが、近年は減少傾向です。 堪り兼ねたEUは、既に中国による企業買収に対して規制を強化しています。 日本の政治家の多くは、殆ど勉強しませんから、実情を理解しておらず、対策の必要性を考えていない様に見えます。 中国の海外投資の特徴を纏めてみました。

① 中国の海外投資は、国家が行っているのか?民間企業なのか?個人なのか?分かり難い事が最大の問題です。 共産党一党独裁国家ですから、個人が外国に所有している資産でも、何時でも国が没収出来ます。 従って、全て国家が投資していると見るべきです。

② 中国は、他国の地下資源の採掘権や土地(農地や水が得られる土地)を買収しています。 (日本でも、北海道などで、既にかなりの土地を買っている様です。)

③ 中国は他国の企業を買収していますが、他国に工場を建設するのは積極的では無い様に見受けられます。(今の所、中国国内で仕事を作り、雇用を増やすことを優先している様です。)

④ 他国の既存企業を買収して株式の配当利益を期待するだけでは無く、ノウワウを吸い取る事が主目的の様に思えます。

⑤ メディア(報道機関)の買収を目論んでいます。 (日本は、メディア会社の20%以上の株式を外国資本が取得する事を禁じています。) ハリウッドでの映画製作に投資して、観客が意識する事無く、中国の思想/考え方を学習する映画を作ろうとしている様です。

(余談 :中国資本に買収された日本の企業) ➊シャープ、➋東芝の家電部門、❸三洋電機の家電部門、❹パイオニア、❺レナウン、❻池貝(工作機械メーカー)、❼NECと富士通のパソコン部門、❽本間ゴルフ、・・・

【巨額の金での企業買収は脅威です!】
 今までの国際ルールでは、『金』で企業を買収する事は、原則として認められて来ました。 企業合併や吸収を制限するのは、その国の「独占の禁止」と「安全保障」の二つの視点から行われるのが国際ルールだったのです。

 昔は国内企業の国際競争力を高めるために、各国が国内企業間の合併や吸収統合を奨励しました。 20世紀の後半から、合併や吸収統合が他国の企業間で行われる様になり、どこの国の企業なのか?分からない巨大な多国籍企業が沢山誕生しています。

 21世紀になって世界的に金余りの状態になり、兆円単位の金を動かせる西欧諸国の投資ファンドが活躍する様になっています。 最近、イギリスのファンドが東芝を2兆円で買収すると発表しました。 このまま放置すると、国家と企業の関係が根本的に変質してしまう事になります。

 中国の貿易黒字が続いて、また、中国が海外投資を積極的に進める様になったら、(投資ファンドと中国によって、短期間で)日本の有望な企業の多くは多国籍企業の一部門になってしまう恐れが有ります。

 日本の経済政策は、族議員達と経済3団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)の長老達でコントロールして来ました。 然し、日本の企業の多くが多国籍企業の一部門になって来たら、世界状勢や技術の進歩を勉強しない族議員達や長老達が今までの様にのさばる事は出来なくなります。

 「米中貿易戦争と同時に外国資本による日本企業の買収攻勢(戦争)に立ち向かう必要が有る」と私は考えています。 コロナ対策でアップアップの菅氏ですが、優秀なブレインを集める事が出来たら、この両面戦争に対応出来るかも知れません!?

【台湾問題の変質】
 トランプ氏は台湾重視の方向に政策転換しました。

 台湾(中華民国)は国連の常任理事国の一つでしたが、1971年に常任理事国の座を中国(中華人民共和国)に奪われたので、国連を脱退しました。 第二次世界大戦後、アメリカと台湾には相互防衛条約が有りました。 1972年に、当時の大統領・ニクソン氏が中国を訪問し、日中正常化をさせて、79年に米華相互防衛条約を破棄しました。 そして、台湾を国家としては取り扱わなくなりましたが、アメリカは79年に(軍事同盟の様な)『台湾関係法』を制定して、中国の侵攻を牽制してきました。

 台湾に、1980年・半導体メーカーの聯華電子股份有限公司(UMC)が、87年には臺灣積體電路製造股份有限公司(TSMC)が設立されました。 UMCとTSMCは急激に発展して、巨大企業になっています。

 中国は「清国の領土を回復する権利が有る」と主張して、第二次世界大戦後ずっと台湾進攻を狙って来ました。 然し、現在、日本を含む欧米諸国にとって、台湾は極めて重要な国になっています。 勿論、中国にとっても台湾の重要度は高まっています。中国が台湾を併合したら、現在進行中の第4次産業革命において極めて重要な半導体を、西側諸国が入手するのが難しくなります。

 「中国が、台湾に侵攻する前に尖閣諸島を占領して軍事基地化する恐れがある」と言う人がいましたが、尖閣諸島は台湾に侵攻する上でも、台湾の防衛にも重要です。 従って、尖閣諸島は日本だけでなく、欧米諸国にとっても重要になっています。欧米諸国の理解と協力を得て、日本は、尖閣諸島への中国の侵入を阻止する体制を固める必要が有ります。

(突拍子の無い提案) 近年の、中国の海軍と空軍の近代化と増強は凄まじいです。 現在・既に、アメリカ一国で台湾を防衛する事は難しくなっています。 アメリカが金を殆ど掛けないで、中国に野望を捨てさせる手段が一つだけ有ります。

 1962年にロシアがキューバに核兵器を持ち込もうとした、キューバ危機を覚えておられますか? 同じ様に、アメリカが核爆弾100発と運搬用ミサイルを同数、密かに台湾に持ち込んで、体制が整った後で公表したら、中国は手出し出来なくなると予想します。 

 核兵器を所有しないドイツやイタリアは、アメリカの核兵器を配備してロシアに対抗しています。 これを『ニュークリア・シェアリング』と呼びます。 中国は台湾との国交断絶をすると予想されるので、台湾は中国に輸出出来なくなります。 然し、欧米諸国とは安定した貿易が可能になり、長い目で見たら台湾に取ってメリットが大きいと思われます。

 「台湾と国交を樹立する国が増えて、10年ほどしたら国連に復帰出来るのでは?」と私は予想します。 そうなったら、東南アジア諸国に対して中国は強引な事は出来なくなります。 日本にとってもメリットは大きいです。

米中貿易戦争の本質 (その1)

2021-04-10 10:45:14 | 国際問題
【はじめに】
 トランプが米中貿易戦争を始めました。バイデン大統領になったので少しは変化が有ると予想されますが、「アメリカの方から米中貿易戦争を止める事は不可能だ」と私は見ています。

 日本は米中の板挟みになって、今後は難しい!難しい!外交を行う必要が有ります。外交の経験が乏しい菅総理には荷が重すぎる様に見えます。

 米中貿易戦争についてのアメリカの主張は種々報道されますが、アメリカの本音は隠されたままです。 私の乏しい知識と経験をフル動員して、アメリカの本音と思われる事を想像して、御参考までに/大胆に書いて見ました。

【トランプの功績】
 私はトランプ氏が嫌いですが、中国の覇権主義に警報を鳴らしたのは功績だと認めます。 逆説的ですが、習近平氏が覇権主義を露骨に出して来たのは、西側諸国にとっては幸いだったとも思います。

 習近平は、2011年に総書記になり、13年にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の提案と一路一帯構想を発表しました。 これらは、「中国は覇権主義を進めるぞ!」と言う宣言だった様に思います。

 21世紀に入って、中国の工業は飛躍的に発展しましたから、習近平が覇権主義を明確にせずにジット我慢して、爪を研ぎ続けていたら、トランプが中国に貿易戦争を仕掛ける事は難しかったと思われます。 そして、2025年になったら、中国は西側諸国が手を出せない様な経済/軍事大国になっていたと想像します。

 私の見立てでは、「習近平は10年程早く西側諸国に宣戦布告してしまった!」のです。 幸いな事に、アメリカの大統領が優柔不断のオバマから、何をするか分からないトランプになっていました。 中国から見たら、無茶苦茶な言いがかりを付けてトランプは逆襲を始めました。

 鄧小平が1978年に改革開放政策を打ち出したので、日本を含む欧米諸国の企業が『近欲』から中国に投資して工場を建設し、工業技術/ノウハウを渡しました。 その上、欧米諸国は人材の育成にまで積極的に協力しました。

 鄧小平は、欧米の企業に中国にとって都合の良い条件を種々呑ませました。 欧米諸国は、「中国が豊かになったら民主化し、世界のルールに従うだろう!」と手前勝手に思い込み、自国企業の進出を応援しました。

 鄧小平は1987年に亡くなりました。 鄧小平も・その後の指導者達も、「将来・民主化する」とは一言も言っていません。 それどころか、1989年に天安門事件が起こり、民主化の要求を軍隊を導入して徹底的に抑え込みました。 それでも、日本を含む欧米諸国は、「いずれ、民主化する!」と呑気に構えて自国企業の投資を制限しませんでした。

 20世紀が終わる頃には、中国は『世界の工場』になり、アメリカの対中国貿易は大幅な赤字になり、中国はドルを多量に貯めこみました。 21世紀になって、『第4次産業革命』が始まっていると言われる様になり、アメリカはこのまま放置すると、中国が第4次産業革命の旗手になると気付いたのです。

【中国は脅威だ!】
 米中貿易戦争におけるアメリカの主張には、本音と建前が有ります。 日本を含む欧米諸国にとって、中国の脅威は以下に示す➊~❿ですが、いずれの問題も「国際ルール違反だ!」とは主張出来ません。 (これらの問題が、米中貿易戦争の本音です。)

 「ハーウェイのスマホを使うと、情報が中国に筒抜けになる」、「ウイグル、チベット、香港の人権弾圧を止めろ!」とか「南沙諸島の埋め立ては不当だ!」と声高に主張して、アメリカは貿易戦争を始めました。 これらは建前の主張です。 他国内の人権問題は、脅威にはなりません。

➊ 研究所、大学、企業に研究開発費を支援して、優秀な人材を投入する。 西側諸国では到底不可能な巨額の支援を中国が行える事は脅威ですが、国際ルール違反では有りません。 そして、研究開発の成果を国家が自由に活用出来る事も脅威です。

➋ 他国に金を貸す。 返却出来無い貧しい国に金を貸しても、国際ルールには違反していません。 国家間の貸し借りの金利を制限する国際ルールは有りません。 金を返せなくなった国の港(港湾施設)などを租借することは、国際ルール違反では有りません。

❸ ダンピング・輸出 :西側諸国では国内企業に不当販売(ダンピング)を禁止しています。 然し、国家間の取引では、ダンピングに対抗する手段は適正な関税を掛けるのが国際ルールです。 国内に製造する企業が無ければ、一番安く売ってくれる国から買うのが当たり前です。

❹ 軍事費の増額や軍備増強/近代化は国際ルール違反では有りません。

❺ 企業が、他国の企業を買い取るのは国際ルール違反では有りません。 中国では、「国有企業だけでなく民間企業も共産党のための企業だ!」と見るべきです。中国が欲しいと考えた他国の企業を、巨額の金を投じて買収しています。 これも、西側諸国にとっては脅威ですが、国際ルール違反では有りません。

❻ 過剰な生産設備 :中国の鉄鋼やセメントの製造設備は、明らかに過剰だと思われますが、国際ルール違反では有りません。

❼ 共産党の独裁・専制国家で、民主的な選挙を実施していない :国家体制に関する国際ルールは存在しません。

❽ 軍隊や産業/企業が共産党の為に有る :西側諸国にとっては脅威ですが、国際ルール違反では有りません。

❾ 中国が第4次産業革命の覇者になる恐れが有る。

❿ 『人民元』が台頭して、米ドルに変わって主要基軸通貨になる恐れが有る。

【長い電報】
 モスクワのアメリカ大使館に勤務していたジョージ・ケナンが、1946年に国務省に送った長文の電報を『長い電報(Long telegram)』(X論文)と呼びます。 冷戦時代の、アメリカの対ソビエト政策に大きな影響を与えました。 (私より高齢で近代史に興味の有る方は、覚えておられると思います。)

 「ケナンの予想とは違った原因でソビエトは瓦解した」と私は見ています。 土地と工業/商業を国有化して、人間の欲望によって発展する経済の芽をソビエトは潰し続けました。 共産主義思想に固守して、問題が顕著になった計画経済を頑固に修正しなかったのです。 例えば、麦の収穫を機械化したのですが、農作従事者達と農業機械部隊を分離して効率化を図りました。 その結果、「麦の収穫時期が来たのに、農業機械部隊がやってこない!」と言った問題が種々発生しました。 ソビエトは自滅したのだと、私は見ています。

 毛沢東はソビエトの様に共産主義思想に拘りましたが、鄧小平以降の中国の指導者達は、自分達の都合の良い様に「共産主義を修正/改良」しています。 この点を考慮して、今後の中国政策を検討する事が肝要です。

【より長い電報】
 アメリカのシンクタンクの一つ・大西洋評議会(Atlantic Council)が、2021年1月28日に『より長い電報(The longer telegram)』と言う論文を発表しました。 インターネットで原文が読めます。 64ページも有るので、私は少しだけしか目を通していません。

 要約の和訳がインターネットで読めます。長谷川幸洋氏は有料で公開しています。末次富美雄氏の文章は、『第2のX論文となるか−米シンクタンクの対中戦略【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】』で検索すると、無料で読めます。

 『より長い電報』の考え方に私は賛同出来ません。 そのために、本稿を書こうと思い立ったのです。

 中国はアメーバの様な存在です。 此方への進出を抑えても、反対側に進出します。 自由自在に変化出来るのです。共産主義に拘ったソビエトの様に簡単には自滅しません。

【和人と漢人についての私見】
 和人(大和民族)と漢人(漢民族)には、少しだけ共通する所が有ります。 『外から入って来た文化/思想/技術を吸収して、自分達に合う様に改良/修正/工夫する習慣』は最大の共通点だと思います。

 20世紀になって、日本にも共産主義思想は入ってきましたが、国民の支持は得られませんでした。 現在、中国は共産主義国家になっていますが、共産党だけが軍隊を持って、一部の国民(共産党党員)が権力と富を支配しているのです。 今でも、国民の多くが共産主義者になっている分けでは無いと私は見ています。

 第二次大戦後に毛沢東は共産主義イデオロギーで国家を統治しようと試みましたが、ソビエトで旨くいかなかった様に、中国でも共産主義イデオロギーでは、工業化して経済を発展させる事は出来ませんでした。

 鄧小平以降の中国の指導者達は、共産主義(労働者主義)と言う言葉を利用しているだけで、彼らはマルクスの考え方を自分達の都合の良い様に改良/修正/工夫して利用しています。

 「共産主義と儒教は相容れない関係だ」と私は思って来ましたが、習近平の発言では時々・孔子を引用します。 要するに、中国の指導者達は、マルクスと孔子はどうでも良いのです。自分達に都合の良い様に(恥じる事無く)切り取る事が出来るのです。

【専制国家】
 人類は、『欲深い動物』です。 動物はお腹が一杯になったら、食べるのを止めます。 人間は「他人より豊かになりたい! 他人を支配したい!」と言う欲望を持っています。 『向上心』は、この欲望の良い面です。 国を一部の人間が、この欲望で支配/統治すると専制国家になります。

 その典型例は北朝鮮の金王朝ですが、中国も専制国家です。 北朝鮮と中国の根本的な違いは、中国が、「専制政治の利点を生かしながら、改革開放政策によって欧米諸国からの投資を呼び込む政策を打ち出した」ことです。

【覇権主義】
 人間の数が増えると、国家が出来ました。 より豊かになると、他国を侵略して土地や富を奪いました。 これが覇権主義です。 地球上の殆どの場所で、武力衝突が続いて来たのです。 日本でも同じでした。 徳川家康も勿論、覇権主義で国を統一した分けですが、外国に侵攻する欲望は捨て、外国の侵略を防止する為に鎖国政策を導入したのだと思います。

 「幕末に、工業技術が格段に進んだ欧米諸国から侵略される恐れが有る」と、島津斉彬などの賢人達が気付き、・・・倒幕して・・・→明治政府を作りました。 明治政府は欧米諸国の技術を短時間に吸収して、富国強兵政策を進めました。 そして、少し豊かになり、軍隊が当時としては近代的な兵器を装備出来ると、覇権主義国家に仲間入りして、1894年から清国と戦争(日清戦争)を始めました。 (清国の兵器は、江戸時代の様な旧式の!旧式の!兵器だったのです。) 日本が覇権主義を放棄したのは第二次世界大戦後です。

 中国とロシアは今でも覇権主義国家です。 中国は軍隊だけでなく、貿易で得られる『豊富な金』を武器に活用して覇権主義を進めています。

【殺人は『悪しきこと』か?!】
 人が人を殺すのは、人類の長い歴史の中で許されて来ました。 江戸時代までは、『親の仇を討つ』のは子供の義務だったでしょう! 欧米諸国の考え方を導入して、日本でも明治以来・敵討ちは禁止され、人を殺すことは『悪だ!』と考える様になりました。 然し、戦争で人を殺す事は、悪とは見なさなかったのです。

 第二次世界大戦に敗れて、日本人の多くは、「戦争で人を殺すことも悪だ!」と考える様になっていますが、残念ながら・国際的な標準思想にはなっていません。 殆どの国は軍隊を持っており、現在でも「戦争で殺すことはやむを得ない」と認めています。 諜報機関の暗殺も「やむを得ない」と認めている国が有ります。

 民主主義国家では、統治者が自分勝手に国民を殺すことは許されませんが、専制国家では程度に差が有りますが、自国民を殺します。 北朝鮮や最近のミャンマーが典型的な例です。

 プーチン大統領でも、政敵を暗殺するのは『悪しきこと』だと認識している様に見えます。 ロシアでは暗殺が多数行われている様ですが、プーチンが直接関わっていない様に見せかけています。

 中国では毛沢東が多数の国民を粛清(殺)しました。 その後も、天安門事件、「ウイグルやチベットでの弾圧」を見ると、「国家が国民を殺す事は悪だ」とは考えていないのでは?

【覇権主義を否定する考え方】
 国民が、国家に戦争を始めたり/行う権限を許容すると、(一歩間違えると)覇権主義国家になります。 ヨーロッパ諸国は、今は覇権主義を放棄している様に見えますが、人道主義をベースにして考え方を変えたとは思えません。 コストパフォーマンス(コスパ)からだと私は見ています。 植民地を維持するコストと植民地から得られる利得がトントンになって来たので、「貿易相手国にした方がメリットが大きい」と考えているだけです。

 アメリカは中国の覇権主義を非難していますが、植民地だったフィリピンは1946年に放棄しましたが、キューバのグァンタナモ基地(116km2)は今でも保持しています。 (グァンタナモ基地は、大田区と世田谷区をたした面積に相当します。)

 中国は、20世紀の終わり頃から、外貨(主に米ドル)を多量に蓄積し、過剰な鉄鋼やセメントの製造設備を抱える様になりました。 2020年時点での中国の外貨準備高は370兆円も有ります。(世界第2位の日本は153兆円です。) 中国の国益は、有り余る外貨と工業製品を活用して、他国を支配する事です。 今のところは、南沙諸島以外では武力による覇権主義は我慢している様に見えます。

 『より長い電報』では習近平が権力を失ったら、中国の覇権主義は治まると見ていますが、「覇権主義は悪だ!」と言う考え方は中国共産党だけでなく、漢民族にも無いと私には思えます。 従って、中国の覇権主義は、習近平とその取り巻きが権力から遠ざかったら解決する問題では無いと私は見ています。

 「習近平がいなくなっても、貿易黒字が続く限り軍備拡張を続け、中国は覇権主義を放棄しない」と私は思います。 アメリカ自身が変わって、対中国貿易を黒字化する努力が肝要なのです。