これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ファーウェイの問題 (その1)

2019-01-12 11:01:30 | 中国
 最近、中国のファーウェイ(HUAWEI)を排除する動きが日本、欧米諸国に広まっています。 トランプ大統領が中国に種々の要求をしていますが、トランプが深夜に半鐘を”けたたましく”叩いて、「皆さん起きてくれ、大変な状況になっているぞ!」と叫んでいる様に、私には思えます。
 問題が複雑すぎて、私は頭の中の整理が出来ていませんので、説得力のある記事にはならないと思いますが、批判を覚悟で私見を公表します。

【ファーウェイ問題の本質】
 21世紀になって中国は、急激に経済が発展し、巨額の外貨を毎年獲得し、膨大な外貨を蓄積しています。 もはや発展途上国などでは、決して有りません。

 かっての中国では、需要を無視して製鉄所、セメント工場、高層住宅群等々を建設し過ぎ、銀行の不良債権問題になっていると言われています。 習近平政権は、国営企業の統合・整理を進めていますが、従来の国営企業をより成長させて、国際競争に勝とうとは考えてはないと私は見ています。 役人が企業を経営して成功した例は、欧米諸国に無いことを認識していると思うからです。

 近年は内外の需要予測と技術進歩予測を中央政府が行い、重点分野に進出した民間企業に金と人を集中投入して、大成功している様に見られます。 さらに、国家の機関が外国で合法的、非合法的に集めた技術情報や企業情報も民間企業に与えていると思われます。 習近平は、企業の経営は任せるが、国家が全面的にバックアップして国際競争力を持たせようとしていると私は見ています。 そんな企業を、私は”国家支援・統括株式会社”と呼ぶ事にしています。

 日本や欧米の会社は、中国の国家支援・統括株式会社と競合を強いられる様になって来ています。 トランプの要求で、中国はある程度譲歩するでしょうが、トランプはアメリカの企業の事しか考えていません。 共産党は無理でしょうが、野党も政府と一体になって、日本企業が中国企業と互角に競争出来る様に、国を挙げて支援する必要があると私は思います。

 ファーウェイはまさに国家支援・統括株式会社です。 事実、一企業の副社長を救出する為に、2018年12月にカナダ人二名を国家保安に違反したとして逮捕さえしたのです。

 経済学者や経済評論家は、「中国の経済成長はいづれ停滞し、共産党支配は崩壊する」と呑気な事を言っています。 私は、このまま放置したら、「その前に日本や欧米の企業が衰弱し、各国が貧しくなってしまうのでは?」と恐れています。

 共産主義と資本主義の”良いとこ取りした国家資本主義”の中国と、オーソドックスな”補正資本主義”の日本や欧米諸国が、今後十数年間、(中国があまり妥協しなかったら数十年間、)貿易戦争を続ける事になると私は見ています。

(注記) ”補正資本主義”は私の造語です。 高額所得者から税を取り立て低所得者に配分する等々の修正をした資本主義の意味です。 ”修正資本主義”が中国の”国家資本主義”と同義語として使用されるケースが多々有ります。 一方、先進国の現在の資本主義は、マルクスが考えていた”社会主義”に近い状態にまで修正されています。 その為、私は敢えて ”補正資本主義”と言う造語を使用しています。

【世界の力関係】
 国連の常任理事国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の五か国です。 中国が飛躍的に発展し、軍事及び経済で影響力を高めています。 ロシアは現在でも強大な軍事国ですが、経済的な影響力は大幅に低下しています。 (ロシアの名目GDPは、世界の第11位まで低下しています。)

 誇り高いイギリスは、EUを離脱した後に衰退する可能性が高いと私は見ています。 頼みの綱だった北海油田はもうすぐ枯渇しますので、”イギリス病”が再発するでしょう。 一方、改革が遅々として進まないフランスは、EU内でドイツと経済戦争を互角には戦えないと思われます。 ”フランス病”が発生する恐れが有ります。

 アメリカの相対的経済力は近年大幅に低下しています。 兵器は目覚ましく進歩していますが、兵器の価格は飛んでもなく高騰しています。 アメリカ一国で、世界の警察になれる軍隊を維持する金はもう調達出来なくなっているのです。

★ 2017年の主要国の名目GDP (日本を100として比較)  出典=IMF
①アメリカ(400)、②中国(247)、③日本(4兆8730億ドル=100)、④ドイツ(76)、⑤イギリス(54)、⑥インド(54)、⑦フランス(53)、⑧ブラジル(42)、⑨イタリア(40)、⑩カナダ(34)、⑪ロシア(32)、⑫韓国(32)

★ 2017年の主要国の外貨準備高 (日本を100として比較)  出典=IMF
①中国(256)、②日本(1兆2600億ドル=100)、③スイス(64)、④アメリカ(36)、⑤ロシア(34)、⑥インド(33)、⑦韓国(31)、⑧ブラジル(30)、⑪ドイツ(16)、⑬フランス(12)、⑭イタリア(12)、⑮イギリス(12)、㉔カナダ(7)

★ 2017年の主要国の人口 (日本を100として比較)  出典=IMF
  中国の人口は、日本、アメリカ、EU、韓国、カナダの合計よりも多いいのです。
①中国(1,097)、②インド(1,039)、③アメリカ(257)、⑤ブラジル(164)、⑨ロシア(114)、⑩日本(1億2675万人=100)、⑰ドイツ(65)、㉑イギリス(52)、㉒フランス(51)、㉓イタリア(49)、㉖韓国(41)、㊳カナダ(29)

【グローバルスタンダード】
 「中国にはグローバルスタンダードが適応出来ない」とか、中国を批判するのに”グローバルスタンダード”と言う言葉が用いられます。
 私は”技術屋の端くれ”ですので、あえて言いますが、技術の世界では世界標準(国際標準、国際規格)の英語は” international standard”です。 中国の知識人に、グローバルスタンダードと言う言葉が中国で通用するのか聞いて見たいです。

 ”グローバルスタンダード”を”国際的な常識”とか、”国際的なルール”の意味で使用しているのだと思いますが、そんなものが存在するのでしょうか? 幻想では有りませんか? 有ったとしても、ほんの一握りの先進国でしか通用しない”常識”や”ルール”では有りませんか?

【共産化した中国の初期】
 中国は毛沢東と共産主義者達の中国工農紅軍(紅軍)が、1949年に建国した国です。 まだ、70年しか経っていません。 当時の中国の人口は5.5億人程で、紅軍に参加したのは人口の0.7%(400万人)にすぎませんでした。

 第二次世界大戦後、世界の若者達は共産主義国家を理想的なものだと考える風潮が有りました。 紅軍の兵士の多くは、蒋介石軍を追い出して共産主義の国になれば、国が豊かになり,国民が共産党を支持してくれると考えていたでしょう。

 建国当時の中国の産業は農業が主でした。 地主や自作農から土地を国家が収奪しても、税金を課したら農民は豊にはなりません。集団農業を強いられ、農民は何も得る事が出来ませんでした。 戦後の我が国で行われた農地改革は、土地を小作人に与える政策でした。 日本の農民は、土地と言う(自分の意思で処分出来る)財産を得る事が出来ました。

 ソビエトも、レーニンが1922年に、農業が主な国で共産主義国家を建国したわけですが、帝政ロシアの農民は半奴隷(農奴)だったのです。 奴隷的な束縛から少しだけ解放されたので、レーニンを支持する農民もいたと思います。 さらに、革命に参加したのは帝政ロシアの兵士、農民、と労働者達で、大半は共産主義者では無かったと思われます。 中国のケースとは根本的な違いがあります。

 毛沢東の中国は共産化した後に、農業改革に注力して、工業の発展にはあまり努力しませんでした。 農業政策にも失敗して、多量の餓死者を出しました。毛沢東が死ぬ1976年まで権力闘争が続きました。 建国から鄧小平の改革開放が始まるまでの期間を、私は”中国の失われた30年”と呼んでいます。

(私見 1) マルクスが考えた共産主義は、工業の発展がもたらす富の集中や所得格差が拡大すると言う問題を解決する手段として、工場、農地等々を国有化(共有化)することでした。 マルクスは、工業化がほとんど進んでいない農業国を共産化する事は考えていなかったと私は思います。

(私見 2) 工業化が進んでいた国が、共産化したのは北朝鮮です。 朝鮮戦争が無かったら、どんな国になっていたか、非常に興味深いです。 ほとんどの国では、共産国になった後に工業化を始めました。

(余談) 高校2年の時、友人が岩波書店の資本論を三冊持って来て、「絶対に読め」と言いました。 ほったらかしにしていたら、会うたびに「読んだか?」と言うので、イヤイヤ読んだのですが、難解で結局2回読みました。 友人は、「共産主義社会では資源を効率的に分配し、計画的な生産等々によって、資本主義社会より発展し、豊かになる」と言います。 私の考えは、『「人より頑張って儲けてやろう!」と言う人間の欲望によって、技術が発展し、経済は成長する』、『やる気を無くす共産主義は、むしろ非効率になる』でした。

★★予告★★ 次回は、中国の虐殺の歴史と、今でも続いている少数民族への圧政について書く予定です。