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マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

木材として利用される樹木 (その3)

2021-08-14 10:01:17 | 山林の問題
【はじめに】
 今回は、樹木の種類と、その木材の特性についての最終稿です。

 国立の『森林研究・整備機構』と言う組織が有り、その下に『森林総合研究所』、『森林総合研究所林木育種センター』、『森林総合研究所森林バイオセンター』が有ります。 そして何故か?『森林保険センター』なる機関が付いています。

 各都道府県では、『林業研究所』、『林業研究センター』、『林業試験場』などで樹木/森林や林業を研究しています。 30校近い大学が森林関係の研究を行っています。 全国の研究者の合計は二千人ほどいるのでは?と想像します。 無料で研究成果を公表しているので、時々読みますが、「田舎育ちなら子供でも知っている事」を金を掛けて研究していたり、呆れる報告書も有ります。 成果が出ている様には思えません。

 食用の木の芽以外では、木を食べる事が無いので、遺伝子組換えで有用な新種を開発すべきです。 花粉症を軽減する新種の研究、木目の綺麗な新種、杢目の出やすい環境の研究や育て方の調査、等々・研究テーマは沢山有ると私は思います。

【関連記事】
 森林や木材に関して、過去に投稿した記事を御参考までに列記しておきます。

★ 木材として利用される樹木 (その1)~(その2):2021年7月24日、8月7日投稿
★ 植林から製材まで (その1)~(その2) :2021年7月3日~10日投稿
★ 森林破壊と再生        :2021年6月12日
★ 木材価格が高騰している様です! :2021年5月29日
★ 過疎地の新しい産業は!  :2018年6月23日

【杢目(もくめ)】
 木材に、稀に現れる文様の事を『杢目(杢=もく)』と呼びます。杢の出た材は高値で取引されます。 ウイキペディアと府中家具工業協同組合の資料から、木の種類と現れる可能性の有る杢目を整理しておきます。 杢目の写真は『 https://wp1.fuchu.jp/~kagu/siryo/moku.htm 』で見れます。

★ 楢(なら)の種類 :虎斑(とらふ)
★ 楓(かえで) :鳥眼杢(ちょうがんもく)、波状杢(はじょうもく)、縮杢 (ちぢみもく)
★ 栃ノ木 :波状杢、縮杢
★ 欅(けやき) :玉杢(たまもく)、如鱗杢 (じょりんもく)
★ 春楡(はるにれ) :葡萄杢 (ぶどうもく)
★ 柘植(つげ) :虎杢、孔雀杢
★ 柿 :孔雀杢、縞杢 (しまもく)・・・黒柿
★ 楠 :葡萄杢、玉杢
★ 赤松の古木 :鶉杢 (うずらもく)
★ 杉の老木 :笹杢 (ささもく)

【掬(ぶな)】
 昔は北海道南部から九州の自然林に、掬(ぶな=橅)は沢山自生していた様です。 ①掬の丸太は重く、川を利用して搬出するのが難しかった、②腐りやすい、③加工後に狂いが出易いなどの欠点が有るので、昔は薪等にしか利用されませんでした。

 戦後、沢山生えているから何とか利用しようと研究され、段々・家具などに利用される様になりました。 特に曲げ加工を施す椅子の脚には不可欠な材になっています。 伐採が進み、その後に杉等を植林したため、現在では入手が難しくなっている様です。

【樫(かし)】
 樫(かし)はブナ科の中で高木になる種類の総称です。 私の故郷・紀州の雑木林には樫が沢山生えていました。椎茸のホダ木、炭の原料にするか、薪にしていました。  私は正月が近づくと、樫の木を切って来て、拍子木(ひょうしぎ)を作りました。 硬い木を叩くと良い音がするのです。「火の用心! カンカンカン」・・・

 白樫と赤樫は、東北地方の北部と北海道以外では、全国各地に自生しています。白樫も赤樫も硬くて加工しにくい材です。鍬、鉈等の柄、大工道具の柄、木刀などに細々と使用されています。 「木目が綺麗とは言えない」と私は思います。

【椎(しい)】
 紀州の雑木林には(数は少なかったですが)椎(しい)が自生していました。 結構な大木になります。 生命力が高く、雑木林の伐採を繰り返すと、(私は見たことが有りませんが)白樺の様に椎だけの林になる様です。

 我が家では、椎茸のホダ木として利用しました。 炭の原料にした事も有ります。

(余談 :椎の実) 椎の実はドングリの仲間ですが、生でも食べられます。 ドングリとは区別して『椎の実』と呼ばれます。椚木(くぬぎ)の実よりもずっと小さくて、大豆ほどしか有りません。 椎の実が落ちる頃になると、小学生以下の子供達・十数人で拾いに行きました。枯葉の上に落ちた椎の実を見つけるのは難しかったです。 それでも、小さな子供も見つけていました。 その場で皮を剝いて食べました。

【朴の木(ほおのき)】
 朴の木(ほおのき)は全国各地に自生していて、大木になります。 私の故郷(紀州)にも数は少なかったですが、有りました。 材は軽く、堅く、加工し易い為に種々の用途で利用されています。 欠点は、耐久性が低いことです。

 私が子供の頃、下駄は重要な履物でした。下駄の歯が欠けたり/すり減ると、大工さんが朴の木を加工して、歯を取り替えてくれました。 下駄の歯は、材料の名前を取って『朴歯(ほおば)』と呼びます。 旦那衆達の上等な下駄の台は桐(きり)でした。私のは杉だったと思います。

 太い朴の木の下には、他の木や草が生えていなかったので不思議に思いました。 朴の木の根や落ち葉から、他の植物の発芽を抑制する物質を出すためだそうです。

 朴の木の葉は大型です。 葉には殺菌作用が有るので、大昔から食材を包む時に使用しました。例えば、奈良県や長野県の『朴葉寿司』など。

【銀杏(いちょう)】
 銀杏は全国各地で街路樹として植えられていますから、日本では比較的簡単に育てられる木だと想像します。 銀杏材には歪難い、柔らかくて加工し易い等々の長所が有るので、木材としての利用を検討して、価値が有りそうなら植林すべきだと考えます。 観光地に向かう道路から見える、放置されている杉林を伐採して→銀杏林にしたら→落葉前に全山黄色に輝く素晴らしい景色が得られると思います。

(余談 :祖父江のギンナン) 20年ほど前に、愛知県稲沢市祖父江町の会社に数回行った事が有ります。 銀杏が沢山植えられていたので、会社で聞いてみると、「祖父江は日本一のギンナンの生産地だ!」と言われました。一般に果樹は収穫が簡単に出来る様に、剪定して低く育てますが、祖父江の銀杏は伸び放題の大木でした。収穫作業は見られませんでしたが、「多分・重機で幹を揺すって実を落とすのだろう?」と想像しました。 祖父江の銀杏なら、木材として利用出来そうに思います。

【柳】
 柳は水辺の土地を好み、杉や檜の植林には向かない川岸に自生しています。(しだれ柳は風情が有るので、堀端等にも植えられています。) ほどほどの大木になりますが、現在は木材としての価値は殆ど無い様です。 茸の栽培、化薬の原料として細々と利用されている様ですが、他の利用方法を検討すべきです。

 子供の頃、家具と呼べる様な物が有る家は少なかったです。 服や下着は柳行李に収納して押し入れに仕舞いました。部屋はガランとしていました。

(余談 :鉛筆の軸) 私の故郷に(山裾の)川の近くの山に柳が30本ほど植えられていました。 父は、「柳は鉛筆の軸になる」と言っていましたが、北米産の檜科の『インセンスシダー』が正しい様です。 子供の頃の安い鉛筆の軸は削り難かったので、柳だったのかも知れません。

【桜】
 桜材は硬くて湿気に強い等の特徴から、板にしてテーブルや床材に使用されて来ました。比較的高価な材です。 長男が入学した私立中学校の机は桜の板で出来ていました。 桜は燃やした時に良い香りがするので、燻製のスモークチップとしても利用されています。

 桜の樹皮から茶筒などの工芸品が作られます。 秋田県の角館が有名ですが、我が家の桜樹皮製の茶筒は天童市で買ってきた物です。 天童市に出張した時、将棋駒を買うつもりだったのですが、予算の都合で茶筒にしました。妻は、今でも大事に使っています。

【柿】
 ゴルフの好きな方は、柿がクラブに使用されていることを御存じだと思います。 稀に幹の芯が黒くなります。これを『黒柿』と呼んで昔から、床の間の柱や板に使用して来ました。黒柿は非常に高価な材です。

(余談 :黒柿) バブル景気が始まり掛けた頃、親戚(OM氏)が賃貸マンション用の用地を探していました。 「出来たばかりの地下鉄の駅から徒歩三、四分の所に適当な物件が見つかったので、同行してくれ!」と言って来ました。 畑の中に築100年以上の二階建ての古民家が有りました。 中に入ると、金に糸目を付け無いで建てたと思われ、天井は普通より1mほど高く、高級木材をフンダンニ使用していて、壊すのは忍び無い建物でした。 一階と二階に床の間が有り、特に二階の床の間は柱、梁、床全てが黒柿でした。柱は全て良質の檜で、廊下の板も厚い無垢板でした。 近年に設けたと思われる、ステンレス鋼の螺旋階段の板は、厚さが3cm以上有る無垢の綺麗な欅板でした。

 OM氏は買う事を決断して、「解体は君に任せる」と約束してもらいました。 OM氏は木材についての知識が全く無いので、古材が売れると言っても信じて貰えませんでした。私は古材の販売ルートを調べて、捕らぬ狸の皮算用を始めていました。 数か月して、解体工事の計画を話に行ったら、「もう解体してしまった」と言うのです!

【姥目樫(うばめがし)】
 備長炭で鰻や肉を焼くと美味しいですね! 私が高校生活を送った、和歌山県田辺市に(江戸時代に)中屋左衛門と言う商人がいて、彼が姥目樫(うばめかし)の焼き方を工夫して素晴らしい『炭』を作り、販売したと言われています。彼の名前の二文字(『備』と『長』)から、備長炭と呼ばれるのだそうです。

 備長炭は、本来は姥目樫が原料です。 小さな穴が無数に有り、そこに悪臭を吸着するので、冷蔵庫や下駄箱の脱臭剤に使用されています。非常に硬いので、叩くと良い音がします。 適当な長さに切った備長炭を並べると、木琴が出来ます。(夏休みの工作に最適です。)

 姥目樫は紀州の雑木林に沢山生えているので、備長炭の原料が不足する恐れは有りません。

 普通の炭の原料は、その他の樫(かし)、椚木(くぬぎ)、栗、唐松(からまつ)、杉などです。 近年、竹の炭も注目されています。

【茸の栽培】
 松茸を除く、殆どの食用茸は人工的に栽培出来るようになっています。 その殆どは広葉樹の『大鋸屑(おがくず)』に菌を植えて、衛生的な工場で生産されています。 (私は、新聞紙から作った紙綿で茸を栽培する研究を少しして、特許権を取得した事が有ります。)

 占地(しめじ)には色々種類が有る様です。 昔から味が良いと言われてきた占地は、ホンシメジの事です。我が家の山の頂上部に赤松が十数本植えられたいました。そこに毎年沢山ホンシメジが生えました。 松茸とホンシメジは赤松に寄生します。 ホンシメジは、赤松林に広葉樹の枯れ葉が堆積した(栄養豊富な)所に生える様に私は思います。 (松茸は真逆です。)

 ホンシメジの人口栽培が出来る様になっていますが、大鋸屑では無くて、赤玉土に穀物を混ぜた物に菌を植え付けている様です。

★★★★★★★★
【竹】
 竹は樹木では有りませんが、昔は種々の用途で活用されました。竹には、沢山種類が有ります。 庶民の家では無くてはならない物だったのです。 箒、笊(ざる)、竹籠、物干し竿、釣竿、・・・。 私の子供の頃、筍には商品価値が有りましたが、竹は持ち主の許可を得ないで、勝手に切っても文句を言われませんでした。

 孟宗竹(もうそうちく)は中国から入って来て、全国で栽培される様になりました。最大の竹です。市販される筍(たけのこ)は孟宗竹の地下茎から出る『芽』です。 破竹(はちく)や真竹(まだけ=苦竹)の筍(たけのこ)も食用です。

 竹の新しい用途の研究/検討が行われています。建材、家具材、繊維、家畜の飼料、バイオ発電用の燃料などなど。 (株)バイケミが、竹を有機肥料にする提案をしています。

(余談 :土壁と竹) 昔の家は土壁でした。田舎では、左官に頼まないで家の男達で土壁を造りました。我が家では、父と私の仕事でした。 古い壁を壊して→新しい竹木舞掻(たけこまいかき)を取付け→海藻を煎じた液体(糊)を作って→土に藁と海藻の煎じ汁を混ぜ→竹木舞掻に塗りつけました。 外側に、表面を黒く焼いた板(焼き板)を取り付けて完成です。

(余談 :竹の桟橋) 1998年頃にベトナムに機械を輸出しました。 ベトナムの田舎の工場だったので、陸揚げ、搬送が心配でした。 近くに出張していた大手企業の知り合いの社員に調べて貰ったのですが、送ってくれた桟橋の写真を見てビックリしました。 全て竹で出来ていたのです! 彼は確か?、「2トンまでなら大丈夫」と言っていました。

(余談 :鉄筋の代用品) 第二次世界大戦中に建設した大きな石油タンクを、1980年頃に解体しました。基礎のコンクリートを破壊すると、鉄筋の代わりに竹が出てきました。 孟宗竹を縦に割って、細い帯鋼の様な形状にして、(竹木舞掻の様に)縦・横方向に並べた後、コンクリートを流し込んだものでした。それでも、40年間ほど基礎が罅(ひび)割れる事は無かったのです。