これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

アフガニスタンからの退避/救出

2021-09-04 12:48:16 | 政治
【はじめに】
 今回は、アフガニスタンの民主主義化について書く予定でしたが、退避/救出活動についての報道が多くなったので、私の考えを書きます。

 退避/救出活動は必要だったと思いますが、今回は明らかに自衛隊法に違反しています。私は、自衛隊法を改正して今回と同様の状況下でも邦人の救出が合法下で行える様に自衛隊法を改正すべきだと考えます。

 アフガニスタン人の救出は、外務大臣が要請し、防衛大臣と協議して最終的には総理大臣が決定する事になっています。日本に到着した後の処遇に関する法律は有りません。「問題が発生してから適当に検討しよう!」と言うスタンスです。今回、外務大臣が要請した人数は500人ほどだった様ですから、何とか対応出来たでしょう。 将来、数千人規模の受け入れが必要なケースもあり得ます。 受け入れ後に発生する問題点を洗い出し、検討して法整備して置くべきです。

(余談) 昨日、この原稿を書いていたら、「菅首相は次の総裁選挙には立候補しない」と報じられました。判断力/決断力/行動力/指導力の有る優秀な方が、次の首相になられるのを期待します。

【将来のために】
 今回の各国のアフガニスタンからの退避/救出活動を分析して、「将来発生すると予想される緊急事態にどう対応するか?」議論する必要が有ると考えます。

 日本政府には、紛争が激しくなって生命が脅かされる事態になったら日本人を救出/退避させる義務が有ります。 自衛隊法第八十四条の3の規定で、外務大臣が要請した外国人を保護して良い事になっています。

 絶対に政府が救出しなければならない人達は以下の①~⑨です。 『結婚などで外国籍を取得した元日本人とその家族?』を含めるか?今から議論しておくべきです。

① 国連平和維持活動(PKO) :選挙の監視など
② 国際連合平和維持軍(PKF)
③ 国際協力機構(JICA)
④ 非営利団体(NPO) :海外で活躍しているNPOは沢山有ります。
⑤ 非政府組織(NGO) :海外で活躍しているNGOは沢山有ります。例えば、国境なき医師団(MSF)
⑥ 日本の諜報機関の現地派遣者とその協力者
⑦ 企業の社員 :ジャーナリストを含む。
⑧ 旅行者、滞在者
⑨ 大使館員、その他の政府派遣者

【日本の救出作戦】
 「韓国の救出作戦は成功したが、日本は大失態をしてしまった」と言う報道が有りますが、結果的には正しいです。然し、紙一重で結果が違っただけです。『目糞鼻糞を笑う』のたとえだと思います。 フランスなどは、今年の春頃から救出作戦を開始していました。国際情勢の認識が、日本も韓国も甘すぎます。

 今回の事態を検討する参考にして頂くために、8月15日以降の出来事を、列記しておきます。

大問題になる可能性! :日本が救出しようとしたアフガニスタン人500名の名簿を、空港入口を検問していたタリバンに渡した様です。残ったら殺害される恐れが有ると日本政府が判断した人達の名簿です! もし、この人達が殺害されたら日本政府は責任を問われる事になります。

★ 8月15日以前 :岡田隆駐アフガニスタン大使が退去した。
★ 15日 :アフガニスタン政府が降伏宣言・・・この日、ガニ大統領が国外逃亡した?
★ 15日 :空港周辺に救出希望者が集まり始めた。
  ◎ この時点では、空港の中はアメリカ軍が掌握しており、周辺ではタリバンが検問を開始していた。
★ 16日 :タリバンがカブールに入る。
★ 17日 :韓国人の大使館員が全員カタールに撤収した。
★ 17日 :日本人の大使館員12名がアラブ首長国連邦(UAE)に撤収した。
★ 20日 :韓国は現地スタッフに「24日に救出作戦を行う」と連絡した。
  ◎ 20日、日本政府が自衛隊の派遣を決定した。
★ 22日 :韓国の駐アフガニスタン大使館の4人がカブール空港に戻った。
★ 22日夜 :自衛隊の先遣隊が出発した。(外務省の役人が搭乗していた。)
★ 23日 :韓国から救出用の輸送機3機が出発した。
★ 23日夕方 :自衛隊機が出発した。→25日にカブール空港に到着した。
★ 24日 :韓国は、救出希望者が徒歩で、この日に空港に集まる計画だった。26名しか集まらなかった。
★ 25日 :韓国は急遽バス6台手配した。バスに、米軍兵を乗せて、彼らに空港入口で検問していたタリバンと交渉してもらった。
 ◎ 日本はバスで救出希望者を運ぶ事に急遽変更した。
★ 26日 :空港テロが発生
 ◎ 韓国が救出した人達はテロ発生前に空港に入っていた。
 ◎ 日本が救出しようとした人達はテロ後にバスで空港周辺に到着したので、空港内に入れなかった。
★ 26日~27日 :韓国は2便に分けて390名救出した。
 ◎ 日本はアメリカから依頼されたアフガニスタン人14名をパキスタンに搬送した。
★ 27日 :日本の救出活動終了・・・邦人1人だけ救出した。
 ◎ 救出出来た唯一の邦人である、共同通信社の安井浩美氏はカタール政府が手配したバスで空港に入った様です。
★ 28日 :アメリカ軍が空港からの撤退を開始した。
★ 31日 :アメリカ軍の撤退完了

【アフガニスタン人を退避させる義務が有るか?】
 「民主主義や自由主義に接したり、学んだアフガニスタン人はタリバンに殺害される恐れが有るから、本人が希望したら日本政府は救出する義務がある!」と主張する人達がいます。 大使館と国際協力機構(JICA)が雇っていたアフガニスタン人とその家族が該当します。日本の大学で学んでいる学生/卒業生と家族も含めるべきだと言う方もいます。

 欧米諸国と韓国は上記の考え方で退避させた様です。 然し、日本人の民主主義思想は、この考え方に賛同する程進んでいるとは考えられません。 退避させたアフガニスタン人が「日本に住みたい」と希望したら、最低限・就業ビザの発行、住居の支給、当面の生活保護、日本で暮らせる教育、そして就職先の斡旋が必要です。 仕事が無く、生活に困窮する様な事態になったら、テロ組織が出来る恐れが有ります。

 日本人と結婚したソマリア人の男性を知っています。 彼は日本に来て10年以上になり、イスラム人が経営する会社で働いています。彼は英語は堪能ですが、日本語を勉強しようとはしません。勿論、イスラム教徒ですから豚肉は食べませんが、ビールは大好きです。娘さんは公立の学校で勉強させています。イスラム原理主義者で無ければ、アフガニスタン人が日本で普通に生活する事は可能だと思います。

(余談 :韓国の対応) 韓国政府は、「今回入国したアフガニスタン人は短期滞在者である」と国民に説明しています。韓国に永住したいと希望したら、どうするのでしょうか? 韓国政府が受け入れ国を探すのでしょうか? 薄っぺらい人道主義で救済してはいけません! 「彼と彼女の、これからの人生を手助けする!」と言う覚悟を持って救出すべきです!

【自衛隊法】
 1954年に『自衛隊法』が出来ました。結構分量の有る法律ですが、自衛隊の外国での救出行動に関する規定はA4一枚程しか有りません。 ポイントと思われる個所を以下に示します。

 今回は、自衛隊を派遣して良い条件をクリアしているとは思えません。私は、「法律を改定して今回同様の事案が発生した時は、合法的に自衛隊を派遣出来る様にすべきだ」と考えています。 皆さんのご意見を、コメント欄に書いて下さい。

在外邦人等の保護措置 :第八十四条の三 ;防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。

 次の全ての条件を満たす場合のみ自衛隊の派遣/活動が出来る事になっています。

① その国が治安を維持しており、戦闘行為が行われていないこと。
② その国か、国が存在しない場合は国連が認める準政府が、日本の自衛隊の派遣/活動を認める場合に限定されています。
③ 派遣される部隊と、その国の当局との間で、連携及び協力が確保されると見込めること。

在外邦人等の輸送 :第八十四条の四 ;・・・当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者、当該外国との連絡調整その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者又は当該邦人若しくは当該外国人の家族その他の関係者で当該邦人若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者を同乗させることができる。

(余談) 今回、アメリカからの依頼で、アフガニスタン人14名を救出しました。自衛隊法には、第三国からの依頼で救出活動をしても良いと言う規定は有りません。今回は、菅首相が超法規的な判断をされたのだと推察します。然し、その手続きは、以下の様に非常に煩雑です。 この点からも、法律の見直しが必要です。

 ❶アメリカ政府が外務省に依頼→❷外務大臣が防衛省に救出を要請→➌防衛大臣と外務大臣が総理大臣に報告→➍総理大臣が決定→❺防衛省が現地部隊に命令→❻救出活動を行う。

【憲法九条と自衛隊の活動制限】
 自衛隊は軍隊では無いので、他国内での活動には厳しい制限が設けられています。 自衛隊法84条の規定により、他国の政府の承認が無ければ、自衛隊を派遣出来ない事になっています。今回の様に政府が崩壊した国に自衛隊が入るのは、違法行為です。

 治安が悪化した国から、日本人を救出する事は自衛隊法で認められていますが、(救出作戦を)「安全に実施することができると認めるとき」と規定されています。「安全かどうか?」は総理大臣が最終決定する事になります。然し、安全な国で無くなったので、救出作戦が必要になるのです。この点からも、今回の救出活動は違法の疑いが有ります。

 2003年にイランに自衛隊を派遣した時、小泉純一郎首相は「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、私に聞かれたってわかるわけがない」、「自衛隊が活動する所が『非戦闘地域』だ」との詭弁を言う以外に有りませんでした。この時、一人でも自衛隊員が亡くなっていたら、小泉首相は辞職に追い込まれていたと想像します。

 責任を取りたくない、気の小さい人が首相になったら、「安全だと言えないから、救出作戦は行わない!」と言っても、野党は追及出来ません。それで良いと思われますか?

【日本の諜報機関】
 憲法には諜報機関の設置を禁止する条項は有りません。 諜報機関では無く情報機関と称する組織が日本にも(以下に列記する様に)沢山有ります。全ての組織に共通する点は、❶組織が非常に小さい、❷検察庁の関係者が出向するなど検察庁との関係が深い、➌スパイ養成機関が無い。 国力に見合ったスパイ組織は存在していません。

 1985年に『スパイ防止法案』が上程されましたが審議未了で廃案になりました。2013年に『特定秘密の保護に関する法律(秘密保護法)』が成立しましたが、『秘密』と指定した情報を外部に漏らすのを禁止しただけです。スパイを死刑にする国が有りますが、日本には外国のスパイを罰する法律が有りません。それで、『スパイ天国』と外国から揶揄されているのです。

 以上の状況から外国の諜報機関が、友好国で有る日本を支援する目的で、「有益な情報を日本に渡したくても」出来ないのです。 

 英語を母国語とする5ヶ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の諜報機関が情報を共有するための組織『ファイブアイズ』から重要な情報を入手するのは難しいのです。

① 内閣情報調査室(内調) :最大の情報機関の様です。
② 警察庁警備局(公安警察)
③ 国際情報統括官組織
④ 外務省国際情報統括官組織
⑤ 防衛省情報本部
⑥ 法務省公安調査庁
⑦ 海上保安庁警備救難部

(何故、小さな組織が乱立しているのか?) 野党が反対するから小さな組織にして分散させている分けでは有りません。関係省庁の力関係で、一つの組織に集中投資出来ないのが原因の様です。 微力な小さな組織を作っても、成果が期待出来ませんから、金をドブに捨てている様なものです。

★★★★★★★★★★★★
余談 :アフガニスタンからのアメリカの撤退

 戦場から退却する時は、秘密裏に準備して行動しないと敵の攻撃を受けて甚大な被害を被る事は私でも知っています。 アメリカがアフガニスタンから撤退する事はトランプ氏が決定し、公表しました。バイデン大統領は、「撤退は、非常に難しい軍事行動だ」と言うことを忘れていた様です。日程を公表しておいて、計画通り粛々と進めたたのです。

 1570年に信長が朝倉義景を攻めていた時、浅井長政が寝返ったので信長軍は撤退しました。「わが軍は〇月✕日に撤退する、殿(しんがり)は兵4,500名の木下藤吉郎である」と信長が朝倉に情報を流していたら、藤吉郎軍は全滅したでしょう!