これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

過剰介護と人間の尊厳

2021-11-20 19:29:12 | 在宅医療
【はじめに】
 今年・私は後期高齢者になったので、健康保険の自己負担が10%になって喜んだら、保険料がガバット上がってしまいました。 私はリタイアして10年になりますが、歯科医に10回ほどお世話になっただけです。最近の3年間は歯医者にも行っていません。

 2001年に厚生省と労働省を統合して巨大な厚生労働省(厚労省)が誕生しました。現在の職員数は33,000人ほど、年間予算を33兆円以上も使っています。2007年に年金記録問題が明るみになりましたが、その後も種々の問題が発生しています。 多くのコメンテーターが問題点を指摘していますが、野党の議員達は勉強不足なのか?追及していません。

 今回は、厚労省の問題点の内、過剰介護と過剰医療に絞って投稿します。

【S氏のケース】
 我が家の近くに子供が同級生で、母親達が友達付合いをしている『S家』が有ります。奥さんは冗談の通じる気さくな方なので、昔から時々雑談をしています。旦那さん(S氏)は私より5歳年下でした。

 2007年にS氏が61歳の時、自宅で脳溢血か脳血栓で倒れてしまい、以来自宅介護が始まりました。 S氏の出来る事は、❶片手を少し動かせる、❷嫌と言う表情が出来る、❸「アー」と言う様な叫び声を出して奥さんを呼ぶ、❹頭を少し動かせる、❺耳が聞こえる、❻食べ物の咀嚼が殆ど出来ないので流動食でした。

 娘さんが二人いるのですが、S氏が倒れられる前に二人とも結婚されて、それぞれ二人子供(孫)が出来ていました。 孫達が来ると部屋の中を走り回るので、ベッドに寝ているS氏に微小な振動が伝わったのか?S氏は耐えられ無かった様で、孫達を嫌う様になってしまいました。 奥さんは13年間も一人で介護されました。

 S氏は、パソコンゲームに夢中で、テレビドラマや演歌の放送を楽しみにしていた様でしたが、発病してからは野球放送以外は見なくなってしまいました。 最後の2年間は、野球放送放送も見る元気が無くなって、寝る時間が段々長くなりました。 真夜中でも目が覚めると叫び声を出して、奥さんを呼びました。

 亡くなる2年程前に重い肺炎になり、医者が「普通の治療では助かりませんが、設備の整った大病院で最先端の治療受けたら助かる可能性が有ります」と言われたそうです。 奥さんから相談をうけたので、[医者は、もう十分介護されたのだから、奥さんを解放してあげよう!」と言いたかったのだと私はアドバイスしました。 結局・奥さんは救急車を呼んで入院させました。

 その後も2回・肺炎になり、入院しました。殆ど意識の無い患者に先端医療を施して、二年間延命させる事に意味が有ると思われますか? 費用は若い人達の負担です。「国民皆保険制度の見直しが必要だ!」と私は思います。

 S氏は、13年間ほど寝たっきりで2020年に74歳で亡くなりました。 その13年間、回復の見込みが全く無く、本人が嫌がるのに毎週一回介護トレーナーが来ていました。私は奥さんに「本人が嫌がっているのだから、リハビリは止めた方が良い」とアドバイスした事が有ります。一回のリハビリに国が一万円負担したと仮定すると、一万円✕50週✕13年間=650万円になります。

・・・ S氏が13年間受けていたサービス ・・・
★ リハビリ :週一回・・・介護トレーナーが一人来て、足や手を動かしていた。痛いらしくて毎回嫌と言う顔をしていた。
★ 訪問診療 :週一回・・・医師と看護婦
★ 生活支援サービス :週一回・・・二人来て、プラスチックプール状の風呂に入れていた様です。

(私見 :医療技術と医薬品の進歩) 「医療技術や医薬品が進歩して、S氏の様な患者が普通に近い生活が出来る様になれば素晴らしい」と思います。 然し、病状の回復は無く、単に何年か延命出来る様な進歩は人類にとっては『害』で、決して『益』にはならないと思います。 国民皆保険制度と介護制度を維持する為には、「何処まで治療するか?」、「何処まで介護するか?」、線引きが必要な時代になっていると考えています。 政治的な判断が必要です。 厚労省の抱える多くの問題を、国会で真面目に議論して欲しい!

【T氏のケース】
 私は大阪の小さな賃貸マンションの管理をしています。このマンションにはエレベーターが有りません。 二階に今年76歳になる身寄りの無い女性(T氏)が住んでいます。 私が管理を始めたのは2018年2月ですが、その前年に3ヶ月ほど入院したそうです。病院では寝たっきりだったので、足の筋肉が弱ってしまい、退院後・リハビリ施設に週一回通う様になりました。

 私がT氏と知り合いになった頃、「歩ける様になったら、前の会社で働く事になっている」と嬉しそうに言っていました。 暫くして、リハビリ施設の担当者が、「大分・良くなったから走って見ましょう」と言ったそうです。床に転がっていた物に躓いて→転倒→骨折→また3ヶ月ほど入院しました。

 退院後・リハビリには通わなくなって、デイサービスを週一回利用する様になりました。 運動を殆どしないので、歩くのが更に難しくなってきました。2020年の7月頃に、マンションの住人達が「Tさんは急に痩せてきた」と言っていました。誰かに(思いっきり力を入れて)ズボンを持ち上げてもらわないと、階段の昇り降りが出来なくなってしまいました。

 2020年10月頃にベランダに設置したエアコンの屋外機の上にうつ伏せに倒れて動けなくなってしまったので、私がレスキュー隊を呼びました。今年(2021年)3月に施錠した部屋の中でほぼ一日動けなくなり、生活支援サービスに来た女性がレスキュー隊を呼びました。

 今年の5月からは介護スタッフが週七日・毎日来る様になりました。 私は、30歳前後の男性・介護トレーナーと顔見知りなりました。 エントランス部の掃除をしていると、「おはようございます」と言って、T氏の部屋に上がっていきましたが、数分後に降りて来て、「今日は気分が乗らないから、リハビリは止める」と言ったと、不満気でした。彼は時間が余ってしまったので、私と雑談しました。

 「Tさんはリハビリしても良くなる可能性は全く無い。僕は見込みの有る方の手助けをしたいんだけど」と言いました。「Tさんは毎日話し相手が来て、家事を全てやって貰えて天国だね。医者が、そんな介護が必要だと書類を作ってくれたら、私でも介護して貰えるのか?」と聞いて見ました。 「その通りです」と言うので、「医者のだまし方を教えてくれ!」と言うと笑っていました。

 介護分野に詳しい方の話では、「T氏の様にフルスペックの介護が必要な方は、介護施設にとっては喉から手が出る程欲しい顧客で、取り合い状態になっている」そうです。

・・・ T氏の受けているサービス ・・・
 今年(2021年)の5月からは、毎日(土日も)生活支援サービスの為に介護施設から自転車で一人か二人、3時間(長い日は6時間)ほど来て、買い物、料理、洗濯、掃除をしています。週一回・デイサービスに出掛けます。週二回・リハビリにトレーナーが来ます。一週間か二週間に一度、医者に連れて行く担当者が別に来ます。

★ 日曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 月曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 火曜日 :11:30~12:30=リハビリ、13:00~15:00=生活支援サービス
★ 水曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス
★ 木曜日 :11:00~16:00=デイサービス、~18:00=送って来たヘルパーが生活支援サービス
★ 金曜日 :リハビリ、11:30~15:00=生活支援サービス
★ 土曜日 :11:30~15:00=生活支援サービス

・・・ T氏の病状の悪化 ・・・
 この5年間でT氏の体力の衰えはドンドン進んでいます。もう直ぐ車椅子が必要になるのでは?と予想していますが、知り合いの医者は「寝たっきりになっても10年以上生きられるだろう」と言っています。国の負担はどのくらいになるのでしょうか?!

★ 2017年 :(72歳)3ヶ月入院して歩行が困難になった→リハビリに通う様になった。
★ 2018年2月 :私と立ち話する様になった。
★ 2018年6月頃 :リハビリ施設で転倒→骨折→3ヶ月ほど入院
★ 2018年9月頃~ :週一回デイサービスに通うようになった。
★ 2020年7月頃 :急に痩せてきて、手助け無しでは階段の昇り降りが出来なくなった。
★ 2020年8月頃 :デイサービスの他に、週二回生活支援サービスを受ける様になった。
★ 2020年10月頃 :ベランダで動けなくなってレスキュー隊に助けてもらった。
★ 2021年3月 :(76歳)施錠した部屋の中で動けなくなりレスキュー隊に助けてもらった。
★ 2021年5月~ :過剰介護が始まった。

(余談 :T氏は強欲で超我儘です!) 去年の9月に、一階に30年以上住んでた一家が転居する事になりました。奥さんが10年以上寝たっきりで、全く換気をしなかったので部屋中にカビが生えて、全面的なリフォーム工事が必要な状態になっていました。

 「T氏が一階に移りたいと言ってくるだろう。 許可するつもりだが、君に言って来たら大家に直接電話する様に言ってくれ」と大家から言われていました。 工事が始まる前に、T氏から「家賃は現在のままで、一階に移りたい」と電話が有ったそうです。大家が了承すると、「大家が引っ越し業者を探して、費用は大家が負担してくれ」と言い出しました。

 大家がカンカンになって怒って、電話を切ったそうです。 リフォーム工事の見積金額は300万円以上なりました。 工事が始まると、T氏が部屋に入ってきて作業員に「この部屋には私が入る」と言っていたそうです。ほぼ工事が完了した頃、T氏が「工事代金の一部を負担するから一階に移らせてくれ」と大家に電話したそうです。「240万円出してくれたら了承する」と回答したら、「一週間時間を下さい」とT氏が言いました。

 結局・回答期限が過ぎても電話が無く、不動産屋に募集を掛けて貰いました。直ぐに話が纏まって、12月に新しい人が入居しました。 T氏は住民達に(今でも、)「今度、一階が空いたら私が移る」と言っています。

【”介護の囲い込み”の問題】
 2021年時点で全国の有料老人ホームに入っている方は26万人もおられるそうです。 有料老人ホームの『介護の囲い込み』と言う問題が、最近話題になっています。

 2001年に『高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)』が制定され、その後・何回も改正されています。 『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』、即ち『有料老人ホーム』に関する法律です。

 問題は、利益を最大限引き出すために、過剰な介護をして介護保険で定められた限度額ぎりぎりまでサービスする不埒な有料老人ホームが沢山出て来た事です。 A氏がB有料老人ホームを作って、Cデイサービス会社とDリハビリ会社も運営していたとします。B有料老人ホームの入居者を全員、Cデイサービス会社とDリハビリ会社に通わせて、過剰なサービスを受けさせるので『囲い込み』と呼びます。

 都道府県が有料老人ホームのやり過ぎをチェック(立入検査)する事になっていますが、有料老人ホームの数がドンドン増えているのに、どの都道府県でも担当部署の職員数を増やさない為にチェックが疎かになっているのです。

 立入検査すると殆どの有料老人ホームの運営に問題が有り、対処に時間と人手が掛かり、新たな立入検査をするのが難しくなっている様です。その為に全国の立入検査件数は減少しているとの報道が有りました。 近年は滅多に立入検査が行われないので、「儲けられるだけ儲けておこう、罰金も刑罰も軽いから!」と言う輩が増えている様です。

 介護の分野は人手不足だとの報道が時々有りますが、「過剰介護を止めさせたら少しは余裕が出てくるのでは?」と推察します。そして、介護保険料を下げる事も可能になるのでは?と思います。

【N氏の奥さん】
 この話は過剰介護の話では有りません。「高額な医療費を国が何処まで負担すべきか?」と言う問題です。

 2007年頃に働いていた職場に、50歳前後の男性社員(N氏)がいました。 N氏と私はタバコを吸うので、喫煙所で時々雑談をしました。N氏の奥さんは10年以上前に高額の医療費が必要な珍しい病気(希少疾患)を発病しました。 N氏は、もう介護に疲れてしまって、誰かに悩みを聞いて貰いたかったのです。

 N氏は、「殆ど全額・国が負担してくれるが、毎年の医療費は1,600万円~1,800万円も掛かる。もう2億円以上になっている。治る見込みは全く無い!」と自嘲気味に言っていました。 ある日・N氏が医療費控除の明細書を持って来ました。その年の医療費は1,800万円以上になっていました。 「僕の年収の4倍以上だ!」と笑っていました。

 医療技術と医薬が進んだので、昔だったら助からなっか患者を救う事ができます。 然し、高額の医療費が必要になるケースが多いい様です。 『人の命は金には代えられない』と言いますが、将来が有る若い人には・この考え方で国費を出すのには賛成です。然し、老人の場合は、何処かで線を引かないと「国は破綻してしまうか?」、「教育費や研究開発費などを減らすか?」の二者択一の問題になります。

 どんな生物でも年老いたら死んで、そのスペースに次の世代が生きられる様にします。 「人間は元気な内だけ思う存分・楽しく生きて、生かすために高額の医療費が必要になったら、尊厳を維持して死ぬのが理想だ」と私は考えています。

 スウェーデンでは、❶80歳以上の患者、❷70歳代でも腎不全などが有る患者は、集中治療室(ICU)が利用出来ません。


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