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       - 松永史談会 -

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富士川 游=主宰 「人性」、1905-1918

2013年09月10日 | 教養(Culture)
富士川 游=主宰

人 性(じんせい)1905年~1918年
全17巻別冊1【復刻版】




本誌は、心理学、生物学、文化人類学、「刑事」人類学、社会衛生学、「人種」衛生学、社会病理学、教育学、犯罪学、法社会学、社会学、統計学、宗教学、哲学など多種多様な分野を網羅した学術雑誌である。
 とくに犯罪者・心身障害者・精神病者、女性などを対象にした研究論考には、当時の知識人の人間観がよく現れている。
 現役のドクターや医学者・文学者・法学者などが多数寄稿すると同時に、国内外での学問の情報に高くアンテナを張り、海外の論説の紹介、医学雑誌や統計雑誌などからの転載も豊富である。
 児童問題・女性問題・性教育・優生問題などにとどまらず、ひろく精神衛生学、心理学等の歴史を研究するために必須の文献である。

富士川 游(ふじかわ ゆう 1865年~1940年)
 医学者・医史学者。
 広島県に出生。広島県立病院附属医学校卒。
 1887年上京、「中外医事新報」の編集に携る。1889~1890年ドイツに留学し学位取得。帰国後日本橋中洲養生院の内科医長となる。東洋大学教授(1906年~)、鎌倉中学校校長(1922年~)、中山文化研究所所長(1924年~)。
 『日本医学史』(1904年刊、1912年学士院恩賜賞受賞)をはじめ、多くの医学、病理、医史に関する著書を著し、関係の学会、研究会において運営指導に奔走した。また児童問題にも学殖が深かった。

*生前コレクションした図書・資料のうち、東京大学教育学部所蔵の江戸後期から明治期の教科書や教育関係資料図書171点は「電子版富士川文庫」として公開されている。
また京都大学図書館へ寄贈されたものの目録大学図書館ホームページで見ることが出来る。



【主要執筆者】
浅田 一 阿部 文夫 阿部余四男 池岡 直孝 池田 隆徳 石川 貞吉 石橋 臥波 石巻 良夫 井上哲太郎 氏原 佐蔵
海野 幸徳 大沢 謙二 大沢岳太郎 丘浅 次郎 緒方 正清 小川剣三郎 小河滋次郎 小田 平義 乙竹 岩造 笠原 道夫
片山 国嘉 加藤 弘之 門脇 真枝 川島金五郎 河本 健助 岸上 謙吉 呉 秀三 呉 文聡 小酒井光次 児玉 昌
榊 保三郎 佐野保太郎 沢田順次郎 三田谷 啓 志賀 潔 下田 次郎 荘司秋次郎 菅沼清次郎 鈴木梅太郎 鈴木券次郎
高島平三郎 高峰 博 竹内 薫兵 竹中 成憲 常光 得然 坪井正五郎 妻木 直良 寺田 四郎 寺田 精一 徳谷豊之助
永井 潜 速水 滉 原 胤昭 福来 友吉 藤井健治郎 富士川 游 松木 五郎 三浦謹之助 三上 義夫 三田 定則
三宅 鉱一 元良勇次郎 森田 正馬 谷津 直秀 山崎 佐 横山 雅男 淀野 耀淳
Asberg,Morits Crile,George Darwin,Mayor Eulenberg,A Forel,August Gaupp, R Haecel,Ernst Hirsch,Max Lapouge,G


【解説】  
松原洋子(科学史)

富士川游(1865-1940)は呉秀三(1865-1932)とは大変に親しかった。高島平三郎(1865-1946)とは東洋大学(東京哲学館)で接点があり、呉秀三も一時期東洋大学に籍を置いていた。永井潜とはどうだったのだろ。雑誌「人性」にはよく投稿していたようだが・・・・。

中沢務は「近代日本における優生学の形成と雑誌『人性』」では本雑誌を我が国初めての本格的な優生学雑誌だと評価。この雑誌の発行母体:人性学会の発足当時の役員を見ると富士川の郷里の広島県人や医学史関係の学者(たとえば高島平三郎・永井潜・下田次郎ら幹事6名、呉秀三・花井卓三・柴田常恵ら評議員19名)で構成されている。
藤野豊『日本ファシズムと優生思想』(かもがわ出版、1998年4月15日、46版、527頁)の書評を掲載する解放研究126号(岩井健次執筆)には「永井潜は外科手術により犯罪者などの悪質者を生殖不能にすること、性病患者を排除するため、国家の許可に基づく結婚を提唱している。(第1章「第1次世界大戦と優生思想」)また、廃娼運動・婦人運動などの社会運動からも優生思想への共鳴がみられるようになった(補論(3)「近代日本のキリスト教と優生思想」)」とか・・・。
まあ、エイズ患者に対する人権に配慮した形を変えた「断種政策」とか、麻薬常用者などに対する「断酒政策」類似のものまで否定していたら、社会の健全性(公序良俗)は保てまい。
昭和12年ごろから欧米では犯罪者・知能障害者の一部に対しては断種法の励行され、特にドイツでは徹底した施策が施されている。これに対して富士川游らは「遺伝を基盤とした優生学的な考え方を受け入れず、」環境要因や教育効果を重要視すべきだと主張(68ページ)」。
米本昌平ほか編著「優生学と人間社会」、講談社現代文庫、2000参照
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