ちょっと期待している。ハンコ原則廃止を打ち出した行革相であるが、「次は書面とファクスを止める」と言い出した。捺すものが無ければハンコは不要になるので、妥当な戦略である。官公庁のクラウドにAWSが採用された絶好の機会である。メールの使用も控えてもらい、事務連絡は全部メッセンジャー、書類のやり取りは共有サービスに限る所にまで踏み込んで頂きたい。官僚は地頭は良いので、すぐに慣れると思う。少なくとも「添付ファイル付きメールを全文引用して返信し合う」と云う不幸は抑止出来ると思うし、フィッシングの危険性も下げられるだろう。クラウドのアカウントだけは是が非でも防衛するセキュリティとセットにして運用を始めて欲しい。ツイッターのエゴサには定評が有る大臣である。釈迦に説法となってしまいそうであるが、紙だから漏洩していなかった不都合な物事は官公庁にはいっぱいあると思うので、そこら辺をうまいことやって欲しいのである。
デジタル庁が不退転の決意で臨まぬ限り、ハンコは無くならない。その説得力の有る根拠を、何処かで読んだ。収入印紙の消印、及びそれに伴う税収をどうDXするか。税源が無くなる方向で話が進む事は、この国では稀である。大手小売店なら5万円以上の領収書でも「ミカジメは別途納めます」と印刷して済ませられるが、投資余力が無い零細企業の取引をどう変革するかが注目される。不動産の売買や賃貸等、契約書類を電子化すると少々不安になるものもある。権利書はこのCD-ROMの中にあります、と渡されて途方に暮れる人も居るのではないか。また消印業務が必要なのは国の印紙だけではない。各道府県が発行する収入証紙(運転免許やパスポート更新で何故か買わされるアレ)も、法に則って運用すれば捺印で無効化しなくてはならない。「印紙は手書き署名で消印と見做す」みたいな現場のトンチキな暴走を誘発しない様、不退転の根回しがデジタル庁には求められるのである。
自分の信念が突き崩されるのは、何事であれ悲しいものである。便利さを競争力とするのがコンビニ、と云うのが私の信念だった。裏を返せば価格面ではスーパーやドラッグストアには対抗し得ない。プライベートブランドのPET飲料を購入する度にその確信は深まるばかりである。ましてやセブンのサバ缶が美味いなどと言われて、誰が素直に信じようか。正式名称は「セブンプレミアム国産さば水煮」で、価格は税込みで200円を切る。しかしスーパーに並んでいる同価格帯のサバ缶とは比べ物にならない(所詮はサバ缶の範囲で)逸品だった。OEM先の三洋食品と云うのがその筋のマニアに定評のある缶詰メーカで、そこの石巻工場で作られたサバ缶は別格との事である。真の旨味を引き出すには2年程熟成させるのが良いらしいので、備蓄食として買い溜めようかと思っている。崩れ落ちた信念の復旧作業を進めながら、便利なライフラインとしか見ていなかった不明を恥じるのである。
少年少女よ。美しき徳を一つ積みなさい。自分を棚に上げた大人があれこれ積ませようとするだろうが、一つで十分である。私がお薦めする最善の美徳は「正直」である。最も忌避すべきは「勤勉」である。まず、正直である事に労力は不要である。嘘に嘘を重ねるのは緻密な思考力と矛盾を起こさない構成力、そして多少の演技力が必要である。総合芸術の域にまで達する嘘吐きも居るがあれは異能であり、万民向けではない。アホに向かって「お前はアホだ」と口に出さない程度の自制心だけ備えれば宜しい(沈黙は正直と矛盾しない)。それに正直であると認められれば、多少の嘘は大目に見られるものである。その逆が勤勉である。全力で働くのが当たり前と扱われ、少しでも気を抜けば怠け者扱いされるのであるから、費用対効果は極めて悪い。だから少年少女よ、「美徳を損得で考える様な大人にはなりたくない」と云う正直な言葉だけは、どうか飲み込んで欲しいのである。
無事、ランダム化比較試験(RCT)を通過した様である。アビガンの製造販売申請が正式に出された。これで安心と思いたい所であるが、「新薬は3年寝かせろ」と医者の間では言い伝えられているらしいので、副作用の知見が集まるのはこれからなのであろう。危険性をもっと見極めてから申請すべきだと云う意見もあろうが、RCTで効果が有ると認められたならまずは使ってみようじゃないかと云うのが私の意見である。体質的に服用したら死ぬ可能性もゼロではないが、そこら辺は統計的に諦めるしかないだろう。とは言えRCTも万能ではない。2003年に発表された医学論文では、「パラシュート着用の効果をRCTでは証明出来ない」と云う、至極真っ当な報告もされている。真顔で冗談を繰り出してくるのが英国流であるが、試験の限界を的確に表現もしていると思う。アビガンだろうとイワシの頭だろうと自分に効くかどうかは、どんな精緻な試験を重ねても使うまで分からないのである。