ゴートバイ
我が家には4匹の雌山羊がいる。
3匹には角がある。
そして去年生まれた山羊には角がない。
今まで有角の山羊ばかり飼って来たので、今度の無角の山羊には戸惑うことが多い。
と言うのもつかまえようにも、つかみどころがない。
首をつかまえる他なく、首だとすぐに逃げられてしまう。
その点、角があるととてもつかまえやすい。
というわけで、山羊にとってはとっても不本意ながら、角は人間に捕まれるためについてると思わざるを得ない。
だって角は後ろに曲がっているので武器としてはたいして役に.たちそうもないのだから。
というわけで山羊の角は人間のためについている。
きっとそうにちがいない。
そこで角を握ってみると、あることに気づく。
オートバイのハンドルを握っているようだと。
そう、これは使える!
オートバイの変わりにゴートバイ。
ただ山羊は小さいので馬をハーレーだとすると山羊は50ccクラス。
高速は走れないけど自転車代わりに気楽に乗り回すことができる。
馬と違って手綱も鞍もいらない。
手綱のかわりに角をハンドル代わりにする。
もちろん乗馬服もいらない。
野良着や普段着で充分だ。
ゴートバイは原付並みの免許で誰でも手軽に乗れる。
ただ原付並みなので二人乗りはできない。
もちろん道路は「車馬」扱いで車道を走ることになる。
このゴートバイの良いところは石油ではなく自然エネルギーを使うということだ。
山羊スタンドにはレギュラーの変わりに干草が、
ハイオクの変わりに青草がおいてある。
水や塩は無料でサービスしてくれる。
さらに洗車のかわりに自動ブラッシング機が整備されている。
自動爪きりを機を整備しているスタンドもある。
オイル交換は必要ない。
エレメント交換も必要はない。
サービスの良いスタンドでは給餌中、角と角の間を亀の子だわしでマッサージしてくれる。
もっともほとんどのスタンドが車のガラスをおざなりに拭くように、
せっかくのマッサージもいい加減にやるところが多い。
もちろん車検もある。
正確には車検ではなくて山羊検が。
そして厳密な検査が行われる。
・まっすぐ走れるか?
・道草をしないか?
・車庫入れ・・・ではなく小屋入れはちゃんとできるか。
・頭突きはしないか
*頭突きする山羊は重大な欠陥車とみなされて、廃車・・・というかゴートバイとしてはつかえなくなる。
・雨が降ってもパニックにならないか。
・雄の場合は常時、雌の場合は発情期に、異性の山羊がいても平静を保てるか
・・・などなどたくさんの検査項目をクリアーした山羊だけが山羊検を通ることができる。
ゴートバイはガソリンや軽油を使わない。
エネルギーは日本には無尽蔵にある草だけで充分だ。
というわけで、これからの日本の自動車にかわる主役
・・・とはいえないまでも脇役的なものになるだろう。