梅雨のころ紫陽花のしっとり感が身に沁みる。
曼殊沙華を見るとじゃがたらお春、をついつい思い浮かべる。
鎖国により理不尽にも2度と日本に戻ることができなかったお春、
きっと現地での暮らしはとっても辛かったのだろう。
戻りたい!戻りたい!戻りたい!
そんなお春の気持ちがこもった布の端切れに書いた手紙を見ると、
とっても痛ましい、やるせない。
菊を見ると、お菊さんをついつい思い浮かべる。
ピエール・ロチにとってはお菊さんはしょせん現地妻。
「日本に行ったら結婚しようと思っている、でもそれは現地にいるだけの間で、戻るときは結婚は解消される」
という情報で結婚したのだった。
ところが日本人はまじめに結婚を考えていた。
そこでまずはお見合い。
ところがピエール・ロチはその相手が気にいらなくて、そばにいたお菊さんの方がいいと突然言いだす。
みんな慌て、その結果お菊さんが結婚相手に選ばれる。
この西洋人の傲慢さ!
日本人はまじめに結婚を考えて、そんな儀式をしていたのに、まるで売春宿のような横暴なふるまい。
こんな「結婚生活」がうまくいくわけはない。
もうそのあとロチの小説を読むのに耐えられなくて、途中で読むのをやめた。
これはプッチーニの「マダムバタフライ」にも言える。
あの歌劇を全編見たのはただの1回しかない。
あとは途中でやめてしまった、あるいはダイジェスト版でしか見ていない。
長崎で育った人間としてやっぱりお菊さんやマダムバタフライの立場になってつい見てしまうのだ。
そして途中で耐えられなくて、見るのをやめてしまうのだ。
梅雨のころ紫陽花のしっとり感が身に沁みる。
紫陽花の学名は「オタクサ」
この学名をつけたシーボルトの長崎の妻あるいは愛人?そんなお滝さんからつけた名。
無骨で純情なシーボルトルトはきっと本当にお滝さんを愛していたのだろう。
そしてきっとシーボルトは日本の中でアジサイが一番好きだったのだろう。
それで学名に紫陽花にお滝さんという名をつけた。
でもシーボルト事件~伊能忠敬の日本地図を盗み出そうとした~でもきっと本当は科学者として日本を西洋に紹介しょ~う、と思ってただけなのだろうけど・・・で二度と日本に戻ってくることができない、お滝さんとも会うことができない・・・
そんな悶々とした気持ち・・・それはドーデの「月曜物語」の1編でも伝わってくる。
ところでお滝さんとその子のお稲さんの話。
シーボルトはその後、幕末になって日本が開港して再びやってくることができたしお滝さんともお稲さんとも再開することができた。
でもその間の長い長い時間を結局うめることはできなかったのだろう。
一緒に暮らすことはなかった。
一方お稲さんは、父親のシーボルトにきっと複雑な気持ちを持ちつつも、日本初の女医となり暗殺された村田蔵六(大村益次郎)を看取った。
実家の長崎のお墓のすぐ近くに、お滝さんやお稲さんのお墓がある。
いつもひっそりとしているけど、でも献花が絶えることはなかった。
そしてたまに墓参り行く途中、ひっそり手を合わせていた。
でも今ではもう墓払いをしたので、墓参りすることもないだろう・・・
こんな思いを思いはせる花、紫陽花。
自分の心の中ではやっぱり長崎のシーボルト記念館に紫陽花が・・・
やっぱり一番美しい!