「組曲(Suite)」(2015.11.11)
1(A-1). 36時間
2(A-2). 愛と云わないラヴレター
3(A-3). ライカM4
4(A-4). 氷中花(ひょうちゅうか)
5(A-5). 霙(みぞれ)の音
6(B-1). 空がある限り
7(B-2). もういちど雨が
8(B-3). Why & No
9(B-4). 休石(やすみいし)
10(B-5). LADY JANE
(()は、アナログ盤)
上記は、「組曲(Suite)」の収録曲順です。
収録曲順はわかっているんです、ということを示したくて最初に載せました。
「問題集」(2014)の時は、勝手に昼と夜とに分けたりして、順番に妄想していったんですが、
「組曲(Suite)」は曲順を気にせずに妄想していこうと思います。
と書きながら、最初の曲は悩みました。
そこで、"田家さんとみゆきさん(前編)"でも話題になった
「霙の音」
を最初にすることにしました。
男性には、歌詞が衝撃的だったのか、田家さんはアルバムA面の問題作として紹介されました。
アルバム後半が、
「Why &No 」 。
田家さんが問題作と言うまでは、全くそんな風に考えたことなかったので、それを聞いて驚いたのが正直なところです。
私にとっては、
「氷中花」
の方がインパクトがありました。
前にも書きましたが、
「霙の音」
の印象は「悪女」でした。
初めて聴いた時、瞬間的に浮かんだのが言い方は悪いですが、
「年食った"悪女"」(笑)
自分の中ではそれで完結していたので、問題作だなんて思いもしなかったんです。
内容はともかく、歌声を考えると
「霙の音」
に、このアルバムで一番好きな声があるんです。
なので、この曲から始めることにしました。
色々な意見のある歌詞については後回しにして、そのものズバリ
"みゆきさんの声"から。
"歌彩(うたいろ)の「組曲(Suite)」"で、
"どの曲も初めて聴いたのに、自然に沁み込んできました。
そんな中で、特に沁みたのが、
「 氷中花」の
『♪夏だったよね 抱き合ったのは~』
の歌声。
通勤電車の中で、聴いてて泣きそうになってしまい、慌てました。
更に、
「霙の音」
で、本気で涙ぐんでしまい、慌てて欠伸で誤魔化しました。
せつない歌声とともに、ストレートに歌詞が入ってくる曲なので、本当にヤバくて、大変でした。(笑)"
と書きました。
その本気で涙ぐんだ歌声が、
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』の
『♪あなた』のかすれと、
『♪外をぉ見てる』の声の揺らぎなんです。
特に、後者です。
前に、
「僕たちの将来」(「はじめまして」 1984)の
『♪さっき抱き合った宿の名前でも』と
『♪君が飛び込んで来てくれた夜の』
の二ヶ所を抱きしめたくなるほど愛しくなると書いたのですが、それに近い感覚です。
どちらも、文字通り"琴線に触れる"感じです。
違いは、
「僕たちの将来」は、甘いせつなさが、抱きしめたくなるんだけと、
「霙の音」は、ただせつなすぎて抱きしめたくなるんです。
「氷中花」の
『♪夏だったよね、抱き合ったのは~』
は、勿論沁みるんです。
そして、同じようにせつなく締め付けるんです。
しかし、締め付け方が違うんですよ、私にとって。
「氷中花」の
『♪夏だったよね~』は、グイって感じで、鷲掴みにされる感覚です。
"歌彩(うたいろ)の「組曲(Suite)」"で書いたように、聴いて直ぐに、捕まりました。
対して、
「霙の音」の
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』
は、まさに琴線と言うか、胸の奥の弦を弾かれる感覚です。
だから、
「氷中花」のほうが、インパクトは強いんですが慣れるんです。
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』
は、大袈裟に言うと身体と感情が反応するんですね。
実はこの
「霙の音」
の歌声全般が、私には初めて聴く声のような気がしたんです。
最初に聴いた時に、そう感じたんです。
似たような声は、あると思うんですけど、どれとも違うような気がするんです。
あくまで、私の感覚なので間違ってたらごめんなさい。m(__)m
「組曲(Suite)」に"歌彩(うたいろ)の"と付けた理由が、歌声が彩豊かで、それが幾重にも組み合わされて聴こえたからです。
その彩の豊かさを強く感じるのが、ガナリや地声に近い歌声ではない曲、静かな曲調の歌ですね。
歌声が、全て違うんです。
具体的に言うと、
「36時間」、
「霙の音」、
「休石」、
そして
「氷中花」の
『♪夏だったよね~』
の4種類の歌声。
上3曲は、PP(ピアニシモ)な曲、つまり静かな曲ですね。
「36時間」が、一番地声に近い優しい歌声のような気がします。
少しハスキーで、暖かく包み込むような声に聴こえます。
まるで、傷を優しく包むガーゼの包帯のよう。
「休石」は、少し幼声が混ざった懐かしい気分になる歌声。
そして、気持ちを落ち着かせてくれるアルト。
穏やかな気持ちにさせてくれる歌声。
「氷中花」は、最初の朗々とした歌声が、客観的な回想を
『♪夏だったよね~』
のアクの強い幼声で過ぎし日の激情を、
『♪もう泣かない~』
の力強い歌声から、今も続く強い感情と何かしらの決意のようなものを感じます。
「氷中花」って、歌声だけで感情の強弱は勿論、主人公が見つめている心の中の情景まで、鮮やかに浮かび上がらせている気がします。
ちょっと意味は、違うかもしれませんが、イメージとしては
"声の起承転結"。
そして、「霙の音」。
今までのせつない曲は、ハスキーな歌声の曲が多い気がするんですが、ハスキーさや雑味がない綺麗な歌声で、切々と訴える独り語り。
綺麗なと書きましたが、微妙に混じる幼声や甘い声が、歌声に丸みと可愛らしさを与えているような気がします。
語っている女性が浮かび上がってくるような声、といったら抽象的すぎるでしょうか?
押さえた感情と、押さえられない感情を言葉の抑揚もわかる繊細な歌声で表現している。
語っているのに、芝居ではなくて歌なんですよね。
「歌縁」で満島ひかりさんが、
「ミルク32」の独り語りを一人芝居のように歌ったことを書きました。
語りかけを強調して歌う、芝居が勝った演出が見事にハマっていたのですが、それとは逆のような気がします。
さりげない言葉の抑揚や声の強弱、微妙な声色(こえいろ)の変化をメロディにのせて、歌いかけてくるような気がします。
上手く言えなくてすみません、みゆきさんはあくまで歌だと言いたいんです。
「霙の音」の歌声が、初めて聴くような気がするのも、その繊細な歌声だからかもしれません。
または、このアルバムの音そのものが、大きく影響してるかもしれませんね。
何にせよ、内容に沿って声色(こえいろ)を使い分けられる、それがみゆきさんの凄さですね。
声については、この辺で。
ここからは、内容についての妄想です。
私のは、あくまで妄想です。
解釈などと、高尚なものでありません。
だって、解釈って、何か答えを求めてる気がするんですが、私のは妄想なので答は関係ないんです。
それでも良ければ、お読み下さいませ。(^^)
歌詞については、色々な意見がありますねぇ。
みゆきさんが、主人公以上にひどい目にあってる人がいるといったので、よけいに迷走ムードですねぇ~。
Miz さんから、頂いたコメントで"霙"が不倫の暗喩と言うのは、物凄く頷けました。
ただ、Miz さん自身から訂正のコメントを頂いたように、
"本気を移したい相手の妻"というのは、新鮮な視点ですけど、私の妄想とは違いますね。
田家さんの"彼の相手の女性"とも違います。
私の妄想は、やはり最初に聴いた時から、
「悪女」です。
「悪女」(1981.10.21発売)の時は、まだ30手前。
男と遊び回ってる演技で、彼から愛想尽かしさせようと四苦八苦。
悪女のフリまでして、愛想尽かしをさせるのは、彼への深い愛い(おもい)がなければ無理だと思います。
そもそも、女を隠してるのは彼なわけで、二股かけてることをなじったり、相手の女に攻撃してもおかしくない状況なんですよ。
むしろ、泥々に傷つけあうのが普通かもしれません。
そんな彼に呆れて、愛情がなくなっていれば、黙って消えればいいだけです。
なのに、『♪行かないで』と言わずに、悪女ぶる。
その結果何が起こるか。
彼女に愛想尽かした彼は、全く罪悪感を持たずに新しい彼女の元に行けるわけなんですよ。
新しい彼女も傷つくことなく、彼を受け入れることができる。
裏切られた、相手が憎いとなったら、何よりも相手に罪悪感を持たそうとするんじゃないですか?
重い罪悪感は、最高の復讐でしょう。
初めから騙そうとした相手に対しては、
「うらみ・ます」と言えるのでしょう。
この男性は、どちらの女性にも情があるんでしょうね。
その情に恋が付くか、愛が付くか、何も付かないかは別にして。
「てんびん秤」(「LOVE OR NOTHING 」 1994) の
『♪器用にかけもてるのが男たち』
が頭をよぎりますね。
対して、
『♪てんびん秤に乗せるとしたら あんたともうひとつは地球』
ですもんね。
だから、自分が悪者になってまで、彼を傷つけたくないという愛い(おもい)になるんでしょうね。
『♪あなたには裏切りと憎まれてもいいから
たとえ離れても心は変わらない』
(「愛情物語」(シングル1997
、「わたしの子供になりなさい」1998)
もありますし。
裏切られたから単純に憎むという構図は、私の中のみゆきさんのイメージとそぐわないんですよ。
だから、
「霙の音」
も、愛い(おもい)は話かけている相手にあると思うんです。
また、
「元気ですか」(「愛していると云ってくれ」1978)
に代表されるように、相手の女性に対して優しいですよね。
先の
「てんびん秤」で、
『♪ぶざまに押しのけあうのが女たち』
と歌っているのに、女性に対して攻撃はしないですね。
「てんびん秤」も剃刀を送ってくるのは、相手の女性のほうですし。
自分と男性の問題だという意識だと思いますね。
だから、男性を責めても、男性を飛び越えて女性を攻撃することはない。
「それ以上言わないで」(「miss M.」1985)では、
『♪あの娘にあげる心はあげる
せめて私に命がほしい』
と、殺したいほど愛していても、心は譲る覚悟をする。
自分が退くパターンですよね。
心の中では、
「た・わ・わ」(「歌でしか言えない」1991)の
『♪た・わ・わ おまえを殺したい
た・わ・わ あいつをとらないで』や
「南三条」(「歌でしか言えない」1991)
『♪もしもあなたなんか来なければ』、
『♪でも憎まずにはいられなかったなの』
と思っても攻撃はしない。
『♪許せないのは許せなかったのは
あの日あいつを惚れさせるさえできなかった自分のことだった』(「南三条」)
と、自分にかえる。
相手の女性に対して攻撃する女性のほうが、多いと思うんですけどね。
それをしない。
意地の悪い見方をすると、攻撃しないことで、泥沼になってトコトン傷つくのを避けているのかもしれません。
もっと、冷めた目でみると、そこまで泥沼だと歌にならないからかもしれません。
しかし、私にはこの女性を攻撃しないことは、一種のみゆきさんの美学のような気がします。
だから、田家さんのひどい目にあっているのは隠してる女性説や本気を移す相手の奥さん説には頷けないのです。
で、残ったのは、
『♪あなたと似た声の』男性です。
先に「悪女」は、まだ30才手前と書いたのは、その頃なら悪女のふりだけでよかったんだと思ったからです。
彼との時間的な長さもまだ、何十年もないでしょう。
「霙の音」には、彼との関係の長さと深さを感じます。
田家さんの言った、夫もしくはそれに近い存在。
告白する彼女もそんなに若くない気がします。
少なくても、30才手前ではない。
二人で歩んだ時間の長さと、情の深さを断つためには、本気を移す必要があったんだと思います。
本気で嫌いになっていたら、別れを切り出すだけでしょう。
しかし、嫌いになれないなら、どこかに心の置場所を作ってやる必要がある。
悪女のふりなど、きれい事に思えるほどリアルな感情に思えます。
情の行き場があれば、踏ん切りがつくのにっていう気持ちは、歳とともに出てくる感情だと思うのは私だけでしょうか?
「霙の音」の主人公は、心の置場所は作ったけど、まだ夫のほうに気持ちがあるんだと思います。
これも意地の悪い見方をすると、告白することで、夫をもう一度振り向かせたいという思いもあるのかなあ、と。
もし、その気持ちがあるんだとしたら、声の似た彼は完全に当て馬に過ぎなくなってしまう。
ひどいでしょ。
そうならなくても、
「最愛」(「御色なおし」1985)の
『♪二番目に好きな人 三番目に好きな人
その人なりに愛せるでしょう
でも 一番に好きだったのは
わたし誰にも言わないけど 死ぬまで 貴方』
が、聴こえてきそうで、やはりひどい目にあうのは、声の似た彼だと思うんですよ。
みゆきさんは、田家さんに
「もっとひどい目にあってる人が」
と言っています。
傷ついてるとか、悲しんでるとかではなく、ひどい目です。
何となく言い回しが軽くないですか?
だから、隠してる女性や相手の奥さんのように、明らかに具体的に傷を負う相手ではないように思うんです。
何たって、「男いじめ」ですからね。(笑)
長々と書いてきましたが、これはあくまでも私の妄想です。
妄想に都合のいいフレーズだけを、抜き出していますしね。f(^_^;
こんな長い妄想に、お付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。(^^)
では、また。(^-^)
1(A-1). 36時間
2(A-2). 愛と云わないラヴレター
3(A-3). ライカM4
4(A-4). 氷中花(ひょうちゅうか)
5(A-5). 霙(みぞれ)の音
6(B-1). 空がある限り
7(B-2). もういちど雨が
8(B-3). Why & No
9(B-4). 休石(やすみいし)
10(B-5). LADY JANE
(()は、アナログ盤)
上記は、「組曲(Suite)」の収録曲順です。
収録曲順はわかっているんです、ということを示したくて最初に載せました。
「問題集」(2014)の時は、勝手に昼と夜とに分けたりして、順番に妄想していったんですが、
「組曲(Suite)」は曲順を気にせずに妄想していこうと思います。
と書きながら、最初の曲は悩みました。
そこで、"田家さんとみゆきさん(前編)"でも話題になった
「霙の音」
を最初にすることにしました。
男性には、歌詞が衝撃的だったのか、田家さんはアルバムA面の問題作として紹介されました。
アルバム後半が、
「Why &No 」 。
田家さんが問題作と言うまでは、全くそんな風に考えたことなかったので、それを聞いて驚いたのが正直なところです。
私にとっては、
「氷中花」
の方がインパクトがありました。
前にも書きましたが、
「霙の音」
の印象は「悪女」でした。
初めて聴いた時、瞬間的に浮かんだのが言い方は悪いですが、
「年食った"悪女"」(笑)
自分の中ではそれで完結していたので、問題作だなんて思いもしなかったんです。
内容はともかく、歌声を考えると
「霙の音」
に、このアルバムで一番好きな声があるんです。
なので、この曲から始めることにしました。
色々な意見のある歌詞については後回しにして、そのものズバリ
"みゆきさんの声"から。
"歌彩(うたいろ)の「組曲(Suite)」"で、
"どの曲も初めて聴いたのに、自然に沁み込んできました。
そんな中で、特に沁みたのが、
「 氷中花」の
『♪夏だったよね 抱き合ったのは~』
の歌声。
通勤電車の中で、聴いてて泣きそうになってしまい、慌てました。
更に、
「霙の音」
で、本気で涙ぐんでしまい、慌てて欠伸で誤魔化しました。
せつない歌声とともに、ストレートに歌詞が入ってくる曲なので、本当にヤバくて、大変でした。(笑)"
と書きました。
その本気で涙ぐんだ歌声が、
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』の
『♪あなた』のかすれと、
『♪外をぉ見てる』の声の揺らぎなんです。
特に、後者です。
前に、
「僕たちの将来」(「はじめまして」 1984)の
『♪さっき抱き合った宿の名前でも』と
『♪君が飛び込んで来てくれた夜の』
の二ヶ所を抱きしめたくなるほど愛しくなると書いたのですが、それに近い感覚です。
どちらも、文字通り"琴線に触れる"感じです。
違いは、
「僕たちの将来」は、甘いせつなさが、抱きしめたくなるんだけと、
「霙の音」は、ただせつなすぎて抱きしめたくなるんです。
「氷中花」の
『♪夏だったよね、抱き合ったのは~』
は、勿論沁みるんです。
そして、同じようにせつなく締め付けるんです。
しかし、締め付け方が違うんですよ、私にとって。
「氷中花」の
『♪夏だったよね~』は、グイって感じで、鷲掴みにされる感覚です。
"歌彩(うたいろ)の「組曲(Suite)」"で書いたように、聴いて直ぐに、捕まりました。
対して、
「霙の音」の
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』
は、まさに琴線と言うか、胸の奥の弦を弾かれる感覚です。
だから、
「氷中花」のほうが、インパクトは強いんですが慣れるんです。
『♪あなたは静かに窓の外を見てる』
は、大袈裟に言うと身体と感情が反応するんですね。
実はこの
「霙の音」
の歌声全般が、私には初めて聴く声のような気がしたんです。
最初に聴いた時に、そう感じたんです。
似たような声は、あると思うんですけど、どれとも違うような気がするんです。
あくまで、私の感覚なので間違ってたらごめんなさい。m(__)m
「組曲(Suite)」に"歌彩(うたいろ)の"と付けた理由が、歌声が彩豊かで、それが幾重にも組み合わされて聴こえたからです。
その彩の豊かさを強く感じるのが、ガナリや地声に近い歌声ではない曲、静かな曲調の歌ですね。
歌声が、全て違うんです。
具体的に言うと、
「36時間」、
「霙の音」、
「休石」、
そして
「氷中花」の
『♪夏だったよね~』
の4種類の歌声。
上3曲は、PP(ピアニシモ)な曲、つまり静かな曲ですね。
「36時間」が、一番地声に近い優しい歌声のような気がします。
少しハスキーで、暖かく包み込むような声に聴こえます。
まるで、傷を優しく包むガーゼの包帯のよう。
「休石」は、少し幼声が混ざった懐かしい気分になる歌声。
そして、気持ちを落ち着かせてくれるアルト。
穏やかな気持ちにさせてくれる歌声。
「氷中花」は、最初の朗々とした歌声が、客観的な回想を
『♪夏だったよね~』
のアクの強い幼声で過ぎし日の激情を、
『♪もう泣かない~』
の力強い歌声から、今も続く強い感情と何かしらの決意のようなものを感じます。
「氷中花」って、歌声だけで感情の強弱は勿論、主人公が見つめている心の中の情景まで、鮮やかに浮かび上がらせている気がします。
ちょっと意味は、違うかもしれませんが、イメージとしては
"声の起承転結"。
そして、「霙の音」。
今までのせつない曲は、ハスキーな歌声の曲が多い気がするんですが、ハスキーさや雑味がない綺麗な歌声で、切々と訴える独り語り。
綺麗なと書きましたが、微妙に混じる幼声や甘い声が、歌声に丸みと可愛らしさを与えているような気がします。
語っている女性が浮かび上がってくるような声、といったら抽象的すぎるでしょうか?
押さえた感情と、押さえられない感情を言葉の抑揚もわかる繊細な歌声で表現している。
語っているのに、芝居ではなくて歌なんですよね。
「歌縁」で満島ひかりさんが、
「ミルク32」の独り語りを一人芝居のように歌ったことを書きました。
語りかけを強調して歌う、芝居が勝った演出が見事にハマっていたのですが、それとは逆のような気がします。
さりげない言葉の抑揚や声の強弱、微妙な声色(こえいろ)の変化をメロディにのせて、歌いかけてくるような気がします。
上手く言えなくてすみません、みゆきさんはあくまで歌だと言いたいんです。
「霙の音」の歌声が、初めて聴くような気がするのも、その繊細な歌声だからかもしれません。
または、このアルバムの音そのものが、大きく影響してるかもしれませんね。
何にせよ、内容に沿って声色(こえいろ)を使い分けられる、それがみゆきさんの凄さですね。
声については、この辺で。
ここからは、内容についての妄想です。
私のは、あくまで妄想です。
解釈などと、高尚なものでありません。
だって、解釈って、何か答えを求めてる気がするんですが、私のは妄想なので答は関係ないんです。
それでも良ければ、お読み下さいませ。(^^)
歌詞については、色々な意見がありますねぇ。
みゆきさんが、主人公以上にひどい目にあってる人がいるといったので、よけいに迷走ムードですねぇ~。
Miz さんから、頂いたコメントで"霙"が不倫の暗喩と言うのは、物凄く頷けました。
ただ、Miz さん自身から訂正のコメントを頂いたように、
"本気を移したい相手の妻"というのは、新鮮な視点ですけど、私の妄想とは違いますね。
田家さんの"彼の相手の女性"とも違います。
私の妄想は、やはり最初に聴いた時から、
「悪女」です。
「悪女」(1981.10.21発売)の時は、まだ30手前。
男と遊び回ってる演技で、彼から愛想尽かしさせようと四苦八苦。
悪女のフリまでして、愛想尽かしをさせるのは、彼への深い愛い(おもい)がなければ無理だと思います。
そもそも、女を隠してるのは彼なわけで、二股かけてることをなじったり、相手の女に攻撃してもおかしくない状況なんですよ。
むしろ、泥々に傷つけあうのが普通かもしれません。
そんな彼に呆れて、愛情がなくなっていれば、黙って消えればいいだけです。
なのに、『♪行かないで』と言わずに、悪女ぶる。
その結果何が起こるか。
彼女に愛想尽かした彼は、全く罪悪感を持たずに新しい彼女の元に行けるわけなんですよ。
新しい彼女も傷つくことなく、彼を受け入れることができる。
裏切られた、相手が憎いとなったら、何よりも相手に罪悪感を持たそうとするんじゃないですか?
重い罪悪感は、最高の復讐でしょう。
初めから騙そうとした相手に対しては、
「うらみ・ます」と言えるのでしょう。
この男性は、どちらの女性にも情があるんでしょうね。
その情に恋が付くか、愛が付くか、何も付かないかは別にして。
「てんびん秤」(「LOVE OR NOTHING 」 1994) の
『♪器用にかけもてるのが男たち』
が頭をよぎりますね。
対して、
『♪てんびん秤に乗せるとしたら あんたともうひとつは地球』
ですもんね。
だから、自分が悪者になってまで、彼を傷つけたくないという愛い(おもい)になるんでしょうね。
『♪あなたには裏切りと憎まれてもいいから
たとえ離れても心は変わらない』
(「愛情物語」(シングル1997
、「わたしの子供になりなさい」1998)
もありますし。
裏切られたから単純に憎むという構図は、私の中のみゆきさんのイメージとそぐわないんですよ。
だから、
「霙の音」
も、愛い(おもい)は話かけている相手にあると思うんです。
また、
「元気ですか」(「愛していると云ってくれ」1978)
に代表されるように、相手の女性に対して優しいですよね。
先の
「てんびん秤」で、
『♪ぶざまに押しのけあうのが女たち』
と歌っているのに、女性に対して攻撃はしないですね。
「てんびん秤」も剃刀を送ってくるのは、相手の女性のほうですし。
自分と男性の問題だという意識だと思いますね。
だから、男性を責めても、男性を飛び越えて女性を攻撃することはない。
「それ以上言わないで」(「miss M.」1985)では、
『♪あの娘にあげる心はあげる
せめて私に命がほしい』
と、殺したいほど愛していても、心は譲る覚悟をする。
自分が退くパターンですよね。
心の中では、
「た・わ・わ」(「歌でしか言えない」1991)の
『♪た・わ・わ おまえを殺したい
た・わ・わ あいつをとらないで』や
「南三条」(「歌でしか言えない」1991)
『♪もしもあなたなんか来なければ』、
『♪でも憎まずにはいられなかったなの』
と思っても攻撃はしない。
『♪許せないのは許せなかったのは
あの日あいつを惚れさせるさえできなかった自分のことだった』(「南三条」)
と、自分にかえる。
相手の女性に対して攻撃する女性のほうが、多いと思うんですけどね。
それをしない。
意地の悪い見方をすると、攻撃しないことで、泥沼になってトコトン傷つくのを避けているのかもしれません。
もっと、冷めた目でみると、そこまで泥沼だと歌にならないからかもしれません。
しかし、私にはこの女性を攻撃しないことは、一種のみゆきさんの美学のような気がします。
だから、田家さんのひどい目にあっているのは隠してる女性説や本気を移す相手の奥さん説には頷けないのです。
で、残ったのは、
『♪あなたと似た声の』男性です。
先に「悪女」は、まだ30才手前と書いたのは、その頃なら悪女のふりだけでよかったんだと思ったからです。
彼との時間的な長さもまだ、何十年もないでしょう。
「霙の音」には、彼との関係の長さと深さを感じます。
田家さんの言った、夫もしくはそれに近い存在。
告白する彼女もそんなに若くない気がします。
少なくても、30才手前ではない。
二人で歩んだ時間の長さと、情の深さを断つためには、本気を移す必要があったんだと思います。
本気で嫌いになっていたら、別れを切り出すだけでしょう。
しかし、嫌いになれないなら、どこかに心の置場所を作ってやる必要がある。
悪女のふりなど、きれい事に思えるほどリアルな感情に思えます。
情の行き場があれば、踏ん切りがつくのにっていう気持ちは、歳とともに出てくる感情だと思うのは私だけでしょうか?
「霙の音」の主人公は、心の置場所は作ったけど、まだ夫のほうに気持ちがあるんだと思います。
これも意地の悪い見方をすると、告白することで、夫をもう一度振り向かせたいという思いもあるのかなあ、と。
もし、その気持ちがあるんだとしたら、声の似た彼は完全に当て馬に過ぎなくなってしまう。
ひどいでしょ。
そうならなくても、
「最愛」(「御色なおし」1985)の
『♪二番目に好きな人 三番目に好きな人
その人なりに愛せるでしょう
でも 一番に好きだったのは
わたし誰にも言わないけど 死ぬまで 貴方』
が、聴こえてきそうで、やはりひどい目にあうのは、声の似た彼だと思うんですよ。
みゆきさんは、田家さんに
「もっとひどい目にあってる人が」
と言っています。
傷ついてるとか、悲しんでるとかではなく、ひどい目です。
何となく言い回しが軽くないですか?
だから、隠してる女性や相手の奥さんのように、明らかに具体的に傷を負う相手ではないように思うんです。
何たって、「男いじめ」ですからね。(笑)
長々と書いてきましたが、これはあくまでも私の妄想です。
妄想に都合のいいフレーズだけを、抜き出していますしね。f(^_^;
こんな長い妄想に、お付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。(^^)
では、また。(^-^)
中でも、声の分析の秀逸なこと! "押さえた感情と、押さえられない感情を繊細な歌声で表現している”のところは
お持ちになっている繊細な感性を見事に言葉で表現されていて、感銘を受けました。
この透き通った歌声は正に主人公の心情を表しているんだなぁ、と思っていた私の思いを見事に表していただけました。
みゆきさんが言っていた"もっとひどい目に"あってる人は"彼"だということは、先のコメントの返信で"みゆきさんの「男いじめ」は、愛のあるいじめ"と
教えていただいた時から感じておりました。相手の奥さんではこの歌の、この女性のけなげな美しさが壊れてしまいますよね。
あと、不倫をして初めて解った後ろめたい辛い気持ちを"ねぇ 霙って音がするのね、あなたには聞こえていないの?あなたは何も感じていないの?"と
問いかけることで"あなた"の気持ちを確かめようとしている歌詞の奥深さを感じます。
もうひとつ、この主人公のこの後ですが、恐らく"あなた"とは別れることになるけれども、時間が経ってから"彼"とハッピーエンドになると妄想して
おります。根拠はアルバムでこの曲のふたつ後にある"もう一度雨が"の歌詞です。よく読むと、
「はじめからもういちど やり直せるだろうか 空がまだあるらしい」と"霙"の主人公のことを歌っているような気がします。
"はじめから"の英訳のニュアンンスが少し具体的なことから、ふとそう思ってしまいました。妄想すぎるでしょうか。
本当に、私に対して頂いたお言葉なのかと、頬をつねりたい気分になりました。
身に余る光栄です。
ありがとうございます。m(__)m
声に関して共感頂けるのは、ものすごく嬉しいです。
また、"愛のあるいじめ"という、私の戯言を真剣に考えて頂いたのも、ありがたいことだと思っております。
ただ、あれもこれも私の妄想なので、こんな考えもある程度に思って頂ければと思います。
また、「もう一度雨が」の妄想はステキだと思います。
私もこの曲を聴いた時に、ふとよぎりました。
ただ、みゆきさんが曲の関連性について、否定的なので深くは考えなかったんですね。
それと、私にはハッピーエンドまでは妄想できなくて、何かを吹っ切れた主人公が、一歩を踏み出そうとしているところまでの妄想なんです。
それでも色んな妄想を膨らませることが出来る、みゆきさんの歌って、やはりステキですよね~♪
妄想を許してくれる、みゆきさんに感謝♪♪♪
これからも、妄想していくと思いますのでで、よろしくお願いいたします。(^-^)
それほどハマっています、この曲に^^。
田家さんの番組での みゆきさんの発言がきっかけでしょうか…
曲の解釈のほうが盛り上がっている感じですね。
私も mihanaさんの「悪女説」に一票ということで。。。
切ない声色の曲って いろいろありますね。
ふたつの炎、寄り添う風、などなど…
でも、この曲では 声が歌詞によって少しづつ変化していって
いろんな切ない声で語りかけるよう歌っています。
よく "七色の声を持つ歌姫” と呼ばれるみゆきさんですが
「霙の音」だけでも七色あるのでは? と思うほどです。
私の妄想にご賛同頂いて、ありがとうございます。(^^)
本当に、歌詞が盛り上がってるようですね。(笑)
miya さんの"声が歌詞によって少しずつ変化していって、いろんな切ない声でかたりかけるように歌います"は、その通り!
お見事です。(^o^)v
感動しました、スゴイです♪
七色の声が入っているから、初めて聴く声のような気がしたんだなと、納得しました。
ありがとうございます。(^-^)/
私も、じわじわハマってます。
勉強になりました、ありがとうございます。(^-^)
「霙の音」の解釈、私もまさに書かれておられる通りに考えていたので共感してコメントします。
「ひどい目にあってる」のは実はただの当て馬だったかもしれない新彼だろう、と。
「男いじめ」というのは俯瞰的な表現かなと思ってました。
この曲に限らず初期からのみゆきさんの男女物語歌って女性はけなげ、真面目、一途、で男性は卑怯、ずるい、不誠実、に描かれることが多いですよね。
霙の音は随分巧妙に表現されてるからわかりずらいけど80年代までの歌なんか本当にそうです。
聞いてて印象に残るのが「男ろくでもないなー」「男ひどいなー」ってこと。 「空と君のあいだに」のAメロ、Bメロの世界。
そんな風に書いちゃうことが男いじめなのかなって。
でもこの記事を読むと私のは随分乱暴で単純な解釈だったなと思いました。
それにしても、みゆきさんは本当に女性に優しいですね。エッセイ風小説「女歌」「泣かないで女歌」を読んでもわかるし、他のエッセイでユーミンについて書いてた文章もとても優しかったですね。
女歌の解説でも村上龍さんが、みゆきさんの同性に対する目線の暖かさ優しさに驚かれてます。
女性が同性を見る目は普通もっと手厳しい、と。みゆきさんはどんな立場の女性にも変わらぬ共感と愛情をもっておられるように感じました。
歌の恋敵の女性に対するやさしさも、それも出てるんじゃないかなあ。
共感頂けたようで、嬉しいです。(^-^)/
「女歌」、「泣かないで女歌」をお読みになったのですね。(⌒‐⌒)
みゆきさんの書かれたものを読むと、ストレートに目線の優しさが伝わってきますよね。
女性に対しては勿論、少しでも弱いものに対して。
または、真面目に生きているものに対して。
反対に上からくるモノへは、反骨と厳しさが。
自分への厳しさも。
そんな優しさと、厳しさが好きで、みゆきさんの記事を書いています。(^^)
また、良ければお立ち寄り下さい。(^o^)
本当に、ありがとうございました。(^-^)