三十六歌仙十

たらちねはかかれとてしもうばたまの我が黒髪をなでずやありけむ　　　遍昭

三十六歌仙九

世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし　　　業平

三十六歌仙七

いづくとも春の光はわかなくにまだみよしのの山は雪降る　　　躬恒

三十六歌仙六

夕されば佐保の川原の川風にともまどはして千鳥鳴くなり　　　　友則

三十六歌仙五

見わたせば柳桜をこぎまぜて都ぞ春のにしきなりける　　　　素性

三十六歌仙四

和歌の浦にしほみちくらしかたをなみあしべをさしてたづなきわたる　　赤人

三十六歌仙三

春の野にあさるきぎすのつまこひいにおのがあたりを人にしれつつ　　　家持

三十六歌仙二

さくらちるこのした風はさむからで空にしられぬ雪ぞふりける　　　　　貫之

三十六歌仙一

ほのぼのと明石の浦の朝ぎりにしまかくれゆく舟をしぞ思ふ　　　　人丸