かへりてあしたに
かぎりなくむすびおきつるくさ
まくらに「このたびならずおもひわす るな
かへし
くさまくらむすぶたびねをわす
ればういとけぬべきここち こそすれ
おきな いかなることをかいひおきけむ
さめぬとて人にかたるなねぬる
よのゆめよよといひしことのは
かへし
あはすべき人もなきよのゆめ なればさめつるほどにわ すられにけり
ありけむ
からごろもそでに人めはつつめども
こぼるるものはなみだなりけり
女、かへし
つつむべきそでだにきみはありける
をわれはなみだにながれはてにき
としをへて、上ずめきける人の
かういへりけるに、いかばかりあ
はれとおもひけむ、これこそ
ものいはむとて、しもにこよひ
はあれといひおきてくらすほど
に、あめいみじうふりければ、そ
のことしりたりける人の、うへに
なめりといひければ、とよかげ
をやみせぬなみだのあめにあまぐ
もののぼらばいとどわびしかるべし
なさけなしとやおもひけむ
おなじ女に、いかなるをりにか
女、からうじてこたみぞ
なにごともおもひしらずはあるべ
きをまたはあはれとたれかいふべき
はやう人は、かうようにぞ
あるべき、いまやうのわかい人は
さしもあらで上ずめきて
やみなむかし、みやづかへする
人にやありけむ、とよかげ
わすれなどして、のちに(み)
れば、ことにあらずぞあり
ける、いひかわしけるほどの人は
とよかげにことならぬ女なり
けれどししつをへて
かへりごとをせざりければ、まけじとおもひていひける
あはれともいふべき人はおもほえ
でみのいたずらになりぬべきかな
一条せふさうの御 しふ
おほくらのしさうくらはしの、とよかげ、くちをしけず
なれど、わかかりけるとき、女
のもとにいひやりける
ことどもをかきあつめ
たるなり、おほやけごとさ
わがしうて、をかしとおもひ
けることどもあるけれど