今回の事件は、ヨーロッパ全体で蔓延するイスラム差別と中東国家へ対する
EU・NATOの軍事・テロ支援および空爆が問題の背景にあると再三論じてきた。
さすがにバランスが悪くなってきたか…あるいは特に意味はないのか、
現地でのイスラモフォビアについて多少なりとも言及される記事が出現してきた。
特に赤旗は目を覚ましたかのように、
ムスリム側の視点からこの問題について言及をし始めている。
------------------------------------------------------------
パリの新聞社襲撃事件とその後の事態をめぐり、
中東・イスラム世界のメディアでは、残虐なテロ行為は断じて許せないとの非難とともに、
問題の根本的解決のためには欧州でのイスラム教徒排斥の動きや、欧米諸国による
中東への軍事介入が中止されなければならないとする論調が目立ってきています。
エジプトの政府系紙アルアハラム10日付の論評記事は冒頭で、
「新聞社を狙った卑劣なテロは、どんな言葉をもってしても非難しつくせるものではない」
「いかなる口実によってもこの行為を正当化できるものではない」と強調しました。
そのうえで、「フランスを含む欧州で広がるイスラム嫌悪感情」の問題を指摘。
「アルジェリアやモロッコなどからのイスラム系移民が
フランス国民として同化しようとしても、一部は排除され居場所を得られない
状況となっており、それが彼らをもっぱら宗教による自己規定に走らせている」
と強調しました。
結論として同記事はアラブやイスラム社会に対しては
「イスラム教は寛容と穏健の宗教であり
テロや過激主義とは無縁のものであるという理解を確立するため努力する」こと、
欧米をはじめとする国際社会に対しては
「イスラム敵視をやめ、異なる宗教・文明間の対話を促進する」ことを求めました。
一方、中東の著名なジャーナリストで、
長くロンドン発行の汎アラブ紙アルクッズ・アルアラビの編集長を務めた
アブデル・バリ・アトワン氏はさまざまなメディアで、
「意見の違いにより他者を殺害することは絶対に正当化できない」としつつ、
襲撃された新聞社の反イスラムの立場はレッドライン(越えてはならない一線)
を越えていたとも指摘しています。
さらに、「フランスを含む西欧諸国が中東に軍事介入していることが、
イスラム過激組織によるメンバー獲得を容易にしている」と主張。
北大西洋条約機構(NATO)軍の介入でカダフィ独裁体制が倒れたリビアや
イラク、アフガニスタンの例を上げながら、「イスラム諸国に対する西欧の政策が、
無辜(むこ)のイスラム教徒の多数の死に加えて地域の分断と混乱、
そして過激派の台頭をもたらしている」と警告します。
アトワン氏は欧米各国政府に対し、
「正義、平等、共存の精神にもとづく政策を採用し軍事介入を自制することが必要だ。
これ以上、イスラム教徒を扇動することがないよう望む」と訴えています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-12/2015011207_01_1.html
------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------
欧州では、この事件を含め、これまでにもメディアが
ムハンマドを中傷する風刺画を出し、不必要に挑発的で
「宗教の冒涜(ぼうとく)」だとするイスラム教徒の怒りと反発を招いてきました。
今回のテロには、フランスのイスラム社会の中から
“イスラム教に関わりのない犯罪行為”との批判の声が上がっています。
500万人のイスラム教徒(人口の8%)がいるフランスでは、
経済困難の下で排外主義を主張する極右政党が昨年の欧州議会選で国内第1党に進出。
ドイツでも昨年来、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(ペギーダ)」
と称する排外主義団体が毎週のように月曜デモを行い、
回を追うごとに参加者数を増やしています。
しかし、2000万人超といわれる欧州のイスラム教徒は今や、
欧州社会の不可欠の部分をなしています。共存する以外に道はありえないのです。
そのためにも、互いの文化や宗教、価値観に対する「不寛容」ではなく、
それらを互いに尊重しあうことがどうしても必要です。
21世紀は、国連総会が定めた「異なる文明間の対話年(01年)」で始まりました。
しかし、それはアメリカのブッシュ政権が同年10月に開始した
アフガニスタン報復戦争、03年3月開始のイラク侵略戦争により、
深刻な否定的影響を受けました。ブッシュ政権が自らのモデルを力で
押しつけようとした「民主化構想」は、今も続く戦争の泥沼と混乱をもたらし、
欧米諸国とその文明に対する憎しみをあおり、テロの温床をつくりだしました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-10/2015011001_05_1.html
-------------------------------------------------------------------
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仏週刊紙シャルリー・エブド本社の銃撃に始まった一連の事件は、
これまでに20人の死者を出す悲劇となりました。
事件に一応の決着はつきましたが、テロ対策のあり方や
反イスラム感情への対応など、多くの課題が残されています。
フランスのオランド大統領は9日夜に会見し、
国民の融和と団結がテロに対処する「最大の武器だ」と強調。
「人種差別や反ユダヤ主義を許さず、
われわれの分断を図る全てのものにあらがう意思を示さなければならない」
と訴えました。併せて、「狂信者や過激主義者は、イスラム教とは一切関係ない」
と強調しました。
一連の事件の容疑者がイスラム過激主義者とみられることから、
同国では7日の銃撃事件発生以来、各地でモスク(イスラム礼拝所)への攻撃が続発。
9日も、南部サンジュエリや東部エクスレバンのモスクで発砲や放火が起きました。
一般のイスラム教徒と過激主義者を同一視した報復行為ともとれる犯行に、
同国のイスラム教徒は危機感を強めています。
チュニジア人留学生のアフメド・ヨセフさん(26)は、
「イスラム教徒として(モスクへの攻撃は)受け入れられない。
テロや殺人はそれだけで許されない行為なのに、なぜ犯人の信仰を
区別する必要があるのか。圧倒的多数のイスラム教徒もテロに怒り、おびえている」
と語気を強めました。
仏ニュース番組では事件発生後、多くの識者や専門家が、
自国育ちテロ(ホームグロウン・テロ)対策の難しさを指摘。
一部では、前科を持ち監視対象にもなっていた
容疑者の犯行を防げなかったとして、仏政府を批判する意見もあります。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-11/2015011101_03_1.html
------------------------------------------------------------------
日本ではないが、中国の政党機関紙でも、同様の姿勢が見られた。
----------------------------------------------------------------
フランスがたびたびテロの標的になるのはなぜか
フランス国際放送TV5MONDEの7日の報道によると、
同日昼頃、首都パリの市街地区で風刺週刊誌「シャルリー・エブド」
を発行するシャルリー・エブド本社がサブマシンガンと
ロケット砲で武装した人物に襲撃され、12人が死亡し、多数の負傷者が出た。
フランス国内でのテロ事件としては、40年ぶりに死者数が最も多い事件となった。
実際、ここ2~3年のフランスはテロの脅威にさらされていた。
2013年に米国誌「タイム」に紹介されたフランス政府のセキュリティ部門の高官の話では、
「フランスは米国に代わって原理主義やテロリストの1番目の標的になりつつある。
次々と起こるテロ事件がその証拠だ」という。
▽長期にわたり問題が激化
今回の襲撃事件を分析すると、直接の原因は「反イスラム」とされる
同誌にイスラム教を風刺する漫画がたびたび掲載されたことで、
テロリストに報復のための襲撃という口実を与えてしまったことにある。
だがこれは導火線に過ぎない。
背後に隠された深層レベルの原因をフランスは振り返る必要がある。
上海国際問題研究員外交政策研究所の李偉建所長は、
「社会全体という面から考えると、
西側諸国とイスラム文化との間には長期にわたり問題が存在し、
イスラム系の移民は西側諸国でその文化や宗教を認められないことがしばしばだった。
イスラム系の移民が最も多い欧州国家であるフランスは、
政府が関連の問題を適切に処理できず、
さきにうち出したイスラム教徒の女性に公共の場所で
ブルカやニカブを着用することを禁じる法律は火に油を注ぎ、
イスラム系住民の間に不満の声が広がった。
こうした問題がテロリストに乗じる隙を与えた。
中国現代国際関係研究院反テロ研究センターの李偉センター長は、
「国際テロリストが最も得意とするのは、既存の問題を利用することで、
機会に乗じて極端な思想を伝播し奨励し、西側社会の主流の外側にいる
少数派が西側諸国を攻撃して自身の置かれた環境を変える手段にするよう誘導する」
と指摘する。
また最近のフランスは、旧植民地や中東地域の国際問題に介入したり、
反テロの世界的取り組みで活発に動いたりしており、
テロの「ブラックリスト」に組み込まれるのは避けられない状況となっていた。
李センター長は、
「反テロそのものは一種の正当な行為だが、
西側諸国はそこに私利私欲を混ぜ込んでいる。
一部の西側諸国はいつも反テロを口実にして他国に自国の価値観を押しつけ、
他の文明に対する公正さを欠き、テロリストの西側諸国への対抗心をあおり、
テロリストの襲撃に一定の口実を与えている」との見方を示す。
http://japanese.beijingreview.com.cn/gjpl/txt/2015-01/12/content_663359.htm
----------------------------------------------------------------
さて、ここで日本の大新聞の社説を読むと、
意図的にEU(特にフランス)でのムスリム差別を無視・軽視しているように感じられる。
どの社説も「EUでムスリムは疎外感を感じている」ということは書くのだが、
フランスに生まれても移民の子である限り、市民権を得るには試験が必要、
かつフランス的でない(=ムスリム的である)場合、不合格になるといった
政治的・社会的差別については目を伏せている。
読売や産経、日経といった保守系と一般的にみなされている新聞社が
その調子なのは当たり前だとして、気がかりなのは、毎日や朝日といった
一般的に左翼・リベラルとみなされている新聞社の主張のほうが右寄りであることだ。
「気がかりなのは最近、ドイツなどでイスラム教を敵視する
数万人規模のデモが相次ぎ、一部ではイスラム教徒との衝突が起きていることだ。
一方、イスラム系移民の2世や3世が欧州社会での疎外感から
過激思想に走る傾向も強まっているという。戦後の欧州が重視してきた寛容の精神が、
今回のテロによって一層揺らいでしまうことを強く懸念する。
その中で今回、エジプトやサウジアラビアなどイスラム世界の指導者が
事件を一斉に非難し、テロ行為は「イスラム教の敵」であると訴えていることは心強い。
「イスラム国」のような過激勢力やテロ行為には、
国際社会が結束して立ち向かう必要がある。
対立を克服し、憎悪と暴力の連鎖を断たなければならない。」
(http://shasetsu.seesaa.net/article/412054442.html)
赤旗で述べているように、ムスリム社会ではテロの批判に加えて
NATOや欧米諸国の武力干渉・テロ支援を激しく非難している。
このうちの前半部分のみを毎日は切り取って、
結果的には「テロとの戦い」を強く主張している。
また、戦後のヨーロッパが重視してきた「寛容の精神」と美化しているが、
今回の事件は戦後のヨーロッパが軽視してきたムスリムへの差別がきっかけだ。
毎日に輪をかけて、非道い内容を書いているのが朝日新聞である。
(以下の引用元URLは全てhttp://shasetsu.seesaa.net/article/412050754.html)
「ことばを失う凄惨(せいさん)なテロである。
民主社会の根幹である言論の自由への重大な挑戦だ。」
まず、このように今回の事件をムスリム差別と中東諸国への武力干渉への反発
と捉えずに、「言論の自由」という曖昧な問題にしている。
だいたい、言論の自由を言うなら、池上明のコラムを掲載しようと
しなかった自分のところはどうなんだよと右翼ならずとも思うだろう。
「この新聞は、刺激的な風刺画で知られ、反権威、反権力の立場を鮮明にしている。
近年は、しばしばイスラム主義を批判したり、揶揄(やゆ)したりした。
イスラム教徒らの反発を招いていたのは確かだ。」
このように、朝日新聞はフランスにおけるムスリム差別、
日本で言うならばワックやPHPのような極右出版社が行っているコリアン差別と
同じ真似を被害にあった新聞社も行っていたことを素直に認めている。
「ただ、いかに気に食わなくとも、言論を暴力で封じる行動は断じて許されない。
一刻も早く容疑者が法にもとづいて裁かれるよう望む。」
だが、朝日はそれは瑣末なことと軽視してしまっている。
そのうえで、朝日はこの新聞社を全力で擁護、美化する文章を書く。
「フランスは、風刺画が社会に根付いた国である。
有力紙ルモンドの1面にも、その時々のニュースを読み解く風刺画が連日掲載される。
「笑い飛ばす」ことは、力なき市民にとって大いなる抵抗の手段だ。
風刺画は、権威や権力に挑むジャーナリズムの本質的な使命の一翼を担ってきたといえる。」
「挑発的とも言える風刺画の掲載は、
部数を増やす話題づくりの側面がうかがえる一方、
「表現の自由」「政教分離」といったフランスの原則を内外に示す意識も働いただろう。」
嘲笑うという言葉があるように、
「笑い飛ばす」ことは相手を見下し、軽んずる手段でもある。
現に、ほとんどのまとめサイトや週刊誌は特定の政党や人物を
「笑い飛ばしている」。この被害は他ならぬ朝日新聞も受けている。
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
風刺とヘイト・スピーチの境目は実に恣意的だ。
前者はフランスの文化であり、
後者はヘイト・スピーチだとするならば、その基準は何だというのだろうか?
「戒めるべきなのは、こうした事件の容疑者と、
イスラム教徒一般とを同一視することだ。
そのような誤った見方が広がれば、
欧米市民社会とイスラム社会との間に緊張関係をつくりたい過激派の思うつぼである。」
今回の事件を対テロ作戦(という名の軍拡と警察力の強化)に利用しようと
しているのは、他ならぬオランドをはじめとした欧米の権力者たちなのだが、
なぜか朝日は、それは過激派の狙いなのだということにしている。
「貧困や専制政治などによる社会のひずみから、
イスラム世界には過激思想に走る者が一部いることは否めない。
だが、圧倒的多数の人々は欧米と同様に、言論の自由や人権、
平等などを尊ぶ社会の実現を望んでいる。」
赤旗にも書いてあるが、今回の犯人はムスリム系フランス人であり、
フランスの反体制派支援政策に乗っかる形で中東へ赴き、
現地の反体制派の思想にかぶれてしまったわけである。
この社説が書かれた時点では、まだそこまでは判明していなかったが、
朝日の書き方では、まるでテロリストはイスラム世界の人間に決まっている
とでも言いたげであり、この文章自体がすでに偏見に染まっていると言えよう。
このテロリズムは非民主的な社会からしか生まれないかのような発言は、
実に今の朝日をよく表したものだと思う。中国や北朝鮮への見解とまるで同じ。
「安倍首相を含む主要各国の首脳らが、
事件の犠牲者に対する哀悼や犯行への非難を表明した。
テロ捜査と防止には国際協調が欠かせず、今後も協力や情報の共有が求められる。」
テロ捜査と防止というが、具体的には何がされるのか?
過去の日本には特高、韓国にはKCIAという秘密警察が存在し、
彼らは自分たちが「テロ」と判断した民間人を捕えては拷問にかけ、
最悪の場合、殺害さえしていた。同様のことは、アメリカは今も行っている。
つまり、テロ対策という名の監視体制の促進が懸念されるのだが、
朝日は見事にこの問題点を完全に無視し、協力せよとすら述べている。
人権活動家だったキム・デジュン氏が拉致にあった時、
KCIAと公安が協力したということがあったそうだが、
これなどは、まさに朝日が理想視するものであろう。
「フランス国内で、特に右翼などがこれを機に、
反イスラムの言動を増やす懸念は拭えない。差別や偏見が強まり、
ヘイトスピーチのような現象が起きるかもしれない。
そのような事態に陥らないためにも、イスラム教徒や移民など
少数派と多数派市民とが共生できる社会づくりに向けて、
取り組みの強化が欠かせない。」
そして、最後に一応、朝日は言い訳をするかのごとく、
フランスでの差別の激化を心配(?)しているのだが、
歴史的にムスリムが差別と偏見の目にさらされてきた肝心の事実には触れない。
それどころか、この文章では、
まだフランスでは差別が大したことがないかのように書かれている。
以上、朝日の社説を中心に各紙の主張を見てきたが、
赤旗やイラン、中国紙のそれと比べて、非常に浅薄な意見だと言えよう。
特に、朝日のそれは群を抜いて出来が悪い。非道すぎるレベル。
「朝日はリベラル」という幻想を抱いている人間が非常に多いが、
実際の朝日はそのへんの右翼よりもヤバい意見を平然と書いている。
実際、今回の事件は左翼よりも右翼とみられる連中のほうが
かえって、冷静に事件を受け止めているような気さえする。
(これは、彼らの持つ天皇や大日本帝国に対する信仰が
ムスリム教徒に対する同情を寄せるよう仕向けているのだろう。
実際、天皇やキリストがこのように風刺されたら誰だって怒ると
彼らはコメントしている。)
EU・NATOの軍事・テロ支援および空爆が問題の背景にあると再三論じてきた。
さすがにバランスが悪くなってきたか…あるいは特に意味はないのか、
現地でのイスラモフォビアについて多少なりとも言及される記事が出現してきた。
特に赤旗は目を覚ましたかのように、
ムスリム側の視点からこの問題について言及をし始めている。
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パリの新聞社襲撃事件とその後の事態をめぐり、
中東・イスラム世界のメディアでは、残虐なテロ行為は断じて許せないとの非難とともに、
問題の根本的解決のためには欧州でのイスラム教徒排斥の動きや、欧米諸国による
中東への軍事介入が中止されなければならないとする論調が目立ってきています。
エジプトの政府系紙アルアハラム10日付の論評記事は冒頭で、
「新聞社を狙った卑劣なテロは、どんな言葉をもってしても非難しつくせるものではない」
「いかなる口実によってもこの行為を正当化できるものではない」と強調しました。
そのうえで、「フランスを含む欧州で広がるイスラム嫌悪感情」の問題を指摘。
「アルジェリアやモロッコなどからのイスラム系移民が
フランス国民として同化しようとしても、一部は排除され居場所を得られない
状況となっており、それが彼らをもっぱら宗教による自己規定に走らせている」
と強調しました。
結論として同記事はアラブやイスラム社会に対しては
「イスラム教は寛容と穏健の宗教であり
テロや過激主義とは無縁のものであるという理解を確立するため努力する」こと、
欧米をはじめとする国際社会に対しては
「イスラム敵視をやめ、異なる宗教・文明間の対話を促進する」ことを求めました。
一方、中東の著名なジャーナリストで、
長くロンドン発行の汎アラブ紙アルクッズ・アルアラビの編集長を務めた
アブデル・バリ・アトワン氏はさまざまなメディアで、
「意見の違いにより他者を殺害することは絶対に正当化できない」としつつ、
襲撃された新聞社の反イスラムの立場はレッドライン(越えてはならない一線)
を越えていたとも指摘しています。
さらに、「フランスを含む西欧諸国が中東に軍事介入していることが、
イスラム過激組織によるメンバー獲得を容易にしている」と主張。
北大西洋条約機構(NATO)軍の介入でカダフィ独裁体制が倒れたリビアや
イラク、アフガニスタンの例を上げながら、「イスラム諸国に対する西欧の政策が、
無辜(むこ)のイスラム教徒の多数の死に加えて地域の分断と混乱、
そして過激派の台頭をもたらしている」と警告します。
アトワン氏は欧米各国政府に対し、
「正義、平等、共存の精神にもとづく政策を採用し軍事介入を自制することが必要だ。
これ以上、イスラム教徒を扇動することがないよう望む」と訴えています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-12/2015011207_01_1.html
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欧州では、この事件を含め、これまでにもメディアが
ムハンマドを中傷する風刺画を出し、不必要に挑発的で
「宗教の冒涜(ぼうとく)」だとするイスラム教徒の怒りと反発を招いてきました。
今回のテロには、フランスのイスラム社会の中から
“イスラム教に関わりのない犯罪行為”との批判の声が上がっています。
500万人のイスラム教徒(人口の8%)がいるフランスでは、
経済困難の下で排外主義を主張する極右政党が昨年の欧州議会選で国内第1党に進出。
ドイツでも昨年来、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(ペギーダ)」
と称する排外主義団体が毎週のように月曜デモを行い、
回を追うごとに参加者数を増やしています。
しかし、2000万人超といわれる欧州のイスラム教徒は今や、
欧州社会の不可欠の部分をなしています。共存する以外に道はありえないのです。
そのためにも、互いの文化や宗教、価値観に対する「不寛容」ではなく、
それらを互いに尊重しあうことがどうしても必要です。
21世紀は、国連総会が定めた「異なる文明間の対話年(01年)」で始まりました。
しかし、それはアメリカのブッシュ政権が同年10月に開始した
アフガニスタン報復戦争、03年3月開始のイラク侵略戦争により、
深刻な否定的影響を受けました。ブッシュ政権が自らのモデルを力で
押しつけようとした「民主化構想」は、今も続く戦争の泥沼と混乱をもたらし、
欧米諸国とその文明に対する憎しみをあおり、テロの温床をつくりだしました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-10/2015011001_05_1.html
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仏週刊紙シャルリー・エブド本社の銃撃に始まった一連の事件は、
これまでに20人の死者を出す悲劇となりました。
事件に一応の決着はつきましたが、テロ対策のあり方や
反イスラム感情への対応など、多くの課題が残されています。
フランスのオランド大統領は9日夜に会見し、
国民の融和と団結がテロに対処する「最大の武器だ」と強調。
「人種差別や反ユダヤ主義を許さず、
われわれの分断を図る全てのものにあらがう意思を示さなければならない」
と訴えました。併せて、「狂信者や過激主義者は、イスラム教とは一切関係ない」
と強調しました。
一連の事件の容疑者がイスラム過激主義者とみられることから、
同国では7日の銃撃事件発生以来、各地でモスク(イスラム礼拝所)への攻撃が続発。
9日も、南部サンジュエリや東部エクスレバンのモスクで発砲や放火が起きました。
一般のイスラム教徒と過激主義者を同一視した報復行為ともとれる犯行に、
同国のイスラム教徒は危機感を強めています。
チュニジア人留学生のアフメド・ヨセフさん(26)は、
「イスラム教徒として(モスクへの攻撃は)受け入れられない。
テロや殺人はそれだけで許されない行為なのに、なぜ犯人の信仰を
区別する必要があるのか。圧倒的多数のイスラム教徒もテロに怒り、おびえている」
と語気を強めました。
仏ニュース番組では事件発生後、多くの識者や専門家が、
自国育ちテロ(ホームグロウン・テロ)対策の難しさを指摘。
一部では、前科を持ち監視対象にもなっていた
容疑者の犯行を防げなかったとして、仏政府を批判する意見もあります。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-11/2015011101_03_1.html
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日本ではないが、中国の政党機関紙でも、同様の姿勢が見られた。
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フランスがたびたびテロの標的になるのはなぜか
フランス国際放送TV5MONDEの7日の報道によると、
同日昼頃、首都パリの市街地区で風刺週刊誌「シャルリー・エブド」
を発行するシャルリー・エブド本社がサブマシンガンと
ロケット砲で武装した人物に襲撃され、12人が死亡し、多数の負傷者が出た。
フランス国内でのテロ事件としては、40年ぶりに死者数が最も多い事件となった。
実際、ここ2~3年のフランスはテロの脅威にさらされていた。
2013年に米国誌「タイム」に紹介されたフランス政府のセキュリティ部門の高官の話では、
「フランスは米国に代わって原理主義やテロリストの1番目の標的になりつつある。
次々と起こるテロ事件がその証拠だ」という。
▽長期にわたり問題が激化
今回の襲撃事件を分析すると、直接の原因は「反イスラム」とされる
同誌にイスラム教を風刺する漫画がたびたび掲載されたことで、
テロリストに報復のための襲撃という口実を与えてしまったことにある。
だがこれは導火線に過ぎない。
背後に隠された深層レベルの原因をフランスは振り返る必要がある。
上海国際問題研究員外交政策研究所の李偉建所長は、
「社会全体という面から考えると、
西側諸国とイスラム文化との間には長期にわたり問題が存在し、
イスラム系の移民は西側諸国でその文化や宗教を認められないことがしばしばだった。
イスラム系の移民が最も多い欧州国家であるフランスは、
政府が関連の問題を適切に処理できず、
さきにうち出したイスラム教徒の女性に公共の場所で
ブルカやニカブを着用することを禁じる法律は火に油を注ぎ、
イスラム系住民の間に不満の声が広がった。
こうした問題がテロリストに乗じる隙を与えた。
中国現代国際関係研究院反テロ研究センターの李偉センター長は、
「国際テロリストが最も得意とするのは、既存の問題を利用することで、
機会に乗じて極端な思想を伝播し奨励し、西側社会の主流の外側にいる
少数派が西側諸国を攻撃して自身の置かれた環境を変える手段にするよう誘導する」
と指摘する。
また最近のフランスは、旧植民地や中東地域の国際問題に介入したり、
反テロの世界的取り組みで活発に動いたりしており、
テロの「ブラックリスト」に組み込まれるのは避けられない状況となっていた。
李センター長は、
「反テロそのものは一種の正当な行為だが、
西側諸国はそこに私利私欲を混ぜ込んでいる。
一部の西側諸国はいつも反テロを口実にして他国に自国の価値観を押しつけ、
他の文明に対する公正さを欠き、テロリストの西側諸国への対抗心をあおり、
テロリストの襲撃に一定の口実を与えている」との見方を示す。
http://japanese.beijingreview.com.cn/gjpl/txt/2015-01/12/content_663359.htm
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さて、ここで日本の大新聞の社説を読むと、
意図的にEU(特にフランス)でのムスリム差別を無視・軽視しているように感じられる。
どの社説も「EUでムスリムは疎外感を感じている」ということは書くのだが、
フランスに生まれても移民の子である限り、市民権を得るには試験が必要、
かつフランス的でない(=ムスリム的である)場合、不合格になるといった
政治的・社会的差別については目を伏せている。
読売や産経、日経といった保守系と一般的にみなされている新聞社が
その調子なのは当たり前だとして、気がかりなのは、毎日や朝日といった
一般的に左翼・リベラルとみなされている新聞社の主張のほうが右寄りであることだ。
「気がかりなのは最近、ドイツなどでイスラム教を敵視する
数万人規模のデモが相次ぎ、一部ではイスラム教徒との衝突が起きていることだ。
一方、イスラム系移民の2世や3世が欧州社会での疎外感から
過激思想に走る傾向も強まっているという。戦後の欧州が重視してきた寛容の精神が、
今回のテロによって一層揺らいでしまうことを強く懸念する。
その中で今回、エジプトやサウジアラビアなどイスラム世界の指導者が
事件を一斉に非難し、テロ行為は「イスラム教の敵」であると訴えていることは心強い。
「イスラム国」のような過激勢力やテロ行為には、
国際社会が結束して立ち向かう必要がある。
対立を克服し、憎悪と暴力の連鎖を断たなければならない。」
(http://shasetsu.seesaa.net/article/412054442.html)
赤旗で述べているように、ムスリム社会ではテロの批判に加えて
NATOや欧米諸国の武力干渉・テロ支援を激しく非難している。
このうちの前半部分のみを毎日は切り取って、
結果的には「テロとの戦い」を強く主張している。
また、戦後のヨーロッパが重視してきた「寛容の精神」と美化しているが、
今回の事件は戦後のヨーロッパが軽視してきたムスリムへの差別がきっかけだ。
毎日に輪をかけて、非道い内容を書いているのが朝日新聞である。
(以下の引用元URLは全てhttp://shasetsu.seesaa.net/article/412050754.html)
「ことばを失う凄惨(せいさん)なテロである。
民主社会の根幹である言論の自由への重大な挑戦だ。」
まず、このように今回の事件をムスリム差別と中東諸国への武力干渉への反発
と捉えずに、「言論の自由」という曖昧な問題にしている。
だいたい、言論の自由を言うなら、池上明のコラムを掲載しようと
しなかった自分のところはどうなんだよと右翼ならずとも思うだろう。
「この新聞は、刺激的な風刺画で知られ、反権威、反権力の立場を鮮明にしている。
近年は、しばしばイスラム主義を批判したり、揶揄(やゆ)したりした。
イスラム教徒らの反発を招いていたのは確かだ。」
このように、朝日新聞はフランスにおけるムスリム差別、
日本で言うならばワックやPHPのような極右出版社が行っているコリアン差別と
同じ真似を被害にあった新聞社も行っていたことを素直に認めている。
「ただ、いかに気に食わなくとも、言論を暴力で封じる行動は断じて許されない。
一刻も早く容疑者が法にもとづいて裁かれるよう望む。」
だが、朝日はそれは瑣末なことと軽視してしまっている。
そのうえで、朝日はこの新聞社を全力で擁護、美化する文章を書く。
「フランスは、風刺画が社会に根付いた国である。
有力紙ルモンドの1面にも、その時々のニュースを読み解く風刺画が連日掲載される。
「笑い飛ばす」ことは、力なき市民にとって大いなる抵抗の手段だ。
風刺画は、権威や権力に挑むジャーナリズムの本質的な使命の一翼を担ってきたといえる。」
「挑発的とも言える風刺画の掲載は、
部数を増やす話題づくりの側面がうかがえる一方、
「表現の自由」「政教分離」といったフランスの原則を内外に示す意識も働いただろう。」
嘲笑うという言葉があるように、
「笑い飛ばす」ことは相手を見下し、軽んずる手段でもある。
現に、ほとんどのまとめサイトや週刊誌は特定の政党や人物を
「笑い飛ばしている」。この被害は他ならぬ朝日新聞も受けている。
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風刺とヘイト・スピーチの境目は実に恣意的だ。
前者はフランスの文化であり、
後者はヘイト・スピーチだとするならば、その基準は何だというのだろうか?
「戒めるべきなのは、こうした事件の容疑者と、
イスラム教徒一般とを同一視することだ。
そのような誤った見方が広がれば、
欧米市民社会とイスラム社会との間に緊張関係をつくりたい過激派の思うつぼである。」
今回の事件を対テロ作戦(という名の軍拡と警察力の強化)に利用しようと
しているのは、他ならぬオランドをはじめとした欧米の権力者たちなのだが、
なぜか朝日は、それは過激派の狙いなのだということにしている。
「貧困や専制政治などによる社会のひずみから、
イスラム世界には過激思想に走る者が一部いることは否めない。
だが、圧倒的多数の人々は欧米と同様に、言論の自由や人権、
平等などを尊ぶ社会の実現を望んでいる。」
赤旗にも書いてあるが、今回の犯人はムスリム系フランス人であり、
フランスの反体制派支援政策に乗っかる形で中東へ赴き、
現地の反体制派の思想にかぶれてしまったわけである。
この社説が書かれた時点では、まだそこまでは判明していなかったが、
朝日の書き方では、まるでテロリストはイスラム世界の人間に決まっている
とでも言いたげであり、この文章自体がすでに偏見に染まっていると言えよう。
このテロリズムは非民主的な社会からしか生まれないかのような発言は、
実に今の朝日をよく表したものだと思う。中国や北朝鮮への見解とまるで同じ。
「安倍首相を含む主要各国の首脳らが、
事件の犠牲者に対する哀悼や犯行への非難を表明した。
テロ捜査と防止には国際協調が欠かせず、今後も協力や情報の共有が求められる。」
テロ捜査と防止というが、具体的には何がされるのか?
過去の日本には特高、韓国にはKCIAという秘密警察が存在し、
彼らは自分たちが「テロ」と判断した民間人を捕えては拷問にかけ、
最悪の場合、殺害さえしていた。同様のことは、アメリカは今も行っている。
つまり、テロ対策という名の監視体制の促進が懸念されるのだが、
朝日は見事にこの問題点を完全に無視し、協力せよとすら述べている。
人権活動家だったキム・デジュン氏が拉致にあった時、
KCIAと公安が協力したということがあったそうだが、
これなどは、まさに朝日が理想視するものであろう。
「フランス国内で、特に右翼などがこれを機に、
反イスラムの言動を増やす懸念は拭えない。差別や偏見が強まり、
ヘイトスピーチのような現象が起きるかもしれない。
そのような事態に陥らないためにも、イスラム教徒や移民など
少数派と多数派市民とが共生できる社会づくりに向けて、
取り組みの強化が欠かせない。」
そして、最後に一応、朝日は言い訳をするかのごとく、
フランスでの差別の激化を心配(?)しているのだが、
歴史的にムスリムが差別と偏見の目にさらされてきた肝心の事実には触れない。
それどころか、この文章では、
まだフランスでは差別が大したことがないかのように書かれている。
以上、朝日の社説を中心に各紙の主張を見てきたが、
赤旗やイラン、中国紙のそれと比べて、非常に浅薄な意見だと言えよう。
特に、朝日のそれは群を抜いて出来が悪い。非道すぎるレベル。
「朝日はリベラル」という幻想を抱いている人間が非常に多いが、
実際の朝日はそのへんの右翼よりもヤバい意見を平然と書いている。
実際、今回の事件は左翼よりも右翼とみられる連中のほうが
かえって、冷静に事件を受け止めているような気さえする。
(これは、彼らの持つ天皇や大日本帝国に対する信仰が
ムスリム教徒に対する同情を寄せるよう仕向けているのだろう。
実際、天皇やキリストがこのように風刺されたら誰だって怒ると
彼らはコメントしている。)