時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

かつて、日本人経済学者はアパルトヘイトを支持していた!

2015-03-05 01:00:50 | リビア・ウクライナ・南米・中東
もちろん、一部の経済学者なのだが、1980年代、アパルトヘイトの真っ最中の時期に
南アフリカ共和国を支持していた学者が日本にいた。これは驚がくに値するのではないか?


梅津和郎『新現代アフリカ史』書評より
------------------------------------------------------
1987年と言えば、南アフリカ共和国は人種隔離の真っ最中、
アフリカ人居住区で警察や軍隊が住民を弾圧し17万の小中学生が連行されていた時期です。

ANC(アフリカ民族会議)のネルソン・マンデラ議長も獄中にいました。

さて、この梅津教授(当時、大阪外国語大学勤務)によりますと、
この本が書かれた年に南アで「ANCの工作による南ア国内暴動事件」があり、
白人農場主に対する「テロ行為」を激化させ、革命組織の全国化を目指していたのだとか。



「以上のように、ANCは南ア政府のアパルト政策に反対するというよりも、
 南ア全土に共産主義革命を実現しようというのである」
(本書、19ページより)

「ANCがアパルトヘイト反対の「錦の御旗」をかかげていくら革命を呼号しても、
 また、それが増幅されて国際世論にアピールしたとしても、
 南ア国内にはANCに反対する部族が存在しているのである。
 ボータ政権や同国内の産業界指導者、それにアメリカのレーガン政権が対話する相手はANCではない。
 それは、時間をかけて南ア黒人の地位向上を
 促進しようとしているズールー族の指導者ブツレズィなのである」

(本書、21ページ。なお、ズールー族はANCと異なり
 アパルトヘイト撤廃を求めず、市民権のみを要求していた)

その後の歴史を知っている者からすると、ここまでマンデラ側をテロリスト呼ばわりし、
白人政権にすり寄った文章を読んでしまうと、唖然としてしまいます。

こんな差別主義者でも大学教授になれるのだなと。

アンゴラ内戦についても、独立後に南ア軍と共に反乱を起こした
UNITA軍が勝利することが望ましいと述べていますが、
その根拠もUNITAを支持するオヴィンブンド人が人口の40%を占めるからだという稚拙なものです。

当時のアンゴラ政府の支持基盤であるキンブンド人は全体の25%、
少数民族であるコンゴ人も13%です。
おまけに、彼らを支持していた首都のルアンダは全国民の約30%が住んでいます。


何も部族が全員つるんで戦争をしているわけではありません。
その証拠に停戦後の選挙ではUNITAは惨敗しました。


これに納得しないUNITAは再び戦争を開始、
その資金となるダイヤモンドを南アのデビアス社に無断で売却したのです。


このデビアス社はイギリス人の侵略者セシル・ローズが立ち上げた会社です。
いかにUNITAが白人政権の傀儡ゲリラであったのか、
南ア軍がアンゴラの石油とダイヤモンドを狙っていたかがわかるでしょう。

アンゴラ内戦はアフリカのベトナム戦争とも呼ばれる戦争です。


アメリカはベトナムが共産主義化すれば、
近隣国も共産化するというドミノ理論を掲げて10年以上もこの戦争を続けました。

梅津教授の主張は、まさにこのドミノ理論で、
アメリカ軍と南ベトナム軍が南ア軍とUNITAに変わっただけで、理屈そのものは全く同じなのです。

こういう方が2011年まで開発経済学者として専門書の編者となり、
若手・中堅研究者と本を書いていたというのは驚きに値します。

開発経済学というのは、いったいどこの国のために研究されているのか。
私には、さっぱりわかりません。
-------------------------------------------------------------


アンゴラ内戦でキューバ軍がアンゴラ政府軍と協力し、
独立後に侵攻してきた南アフリカ軍を撃退したことが、
その後のアパルトヘイト崩壊、マンデラ政権につながった。

そのため、マンデラはキューバのカストロに感謝し、
その後、アフリカの解放の地となったソウェトに招き、講演を依頼した。


アンゴラでもキューバは住民に英雄として歓迎されている。

それにしても、反共というのは、どれほど卑劣な思想なのだろうと、
人種差別政権を絶賛してまでアンゴラやANCを潰したがる梅津教授をみると思う。


もっとも、彼も1929年生まれ、今年で86歳。もしかしてもう墓場にいるのかもしれない。
とはいえ、実のところ、第二、第三の梅津はやっぱりいるわけで、
あのイラク戦争の折にも、アメリカを支持する政治学者はわんさかいたのである。



1980年代、日本の商社は南アでビジネスにいそしんでいた。
梅津教授は、この辺の空気を読んで、こんなアホな本を書いたのだと思う。


親米と反共は目的のためなら何でもするのだなと少し感心してしまった。
まさに、ある意味歴史的な名著だ。クソ本として捨てずに置きたい。