時事解説「ディストピア」

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北朝鮮の弾道ミサイルは本当に脅威なのか

2016-03-19 00:24:15 | 北朝鮮
日本では「事実上のミサイル」という表現が何気なく使われているが、
実際には打ち上げロケットと弾道ミサイルは似て非なるものだ。


簡単に説明すると、打ち上げロケットは人工衛星を宇宙に送り込むだけで良いが、
弾道ミサイルの場合は、そこから再び地球へと核弾頭を突入させなければならない。


イメージで伝えれば、弾道ミサイルはリフティングのようなもので、
一度、上空へ打ち上げた弾頭を引き戻し、任意の位置にピンポイントに当てなければいけない。

これに対して打ち上げロケットは単に人工衛星を宇宙に飛ばせば良い。
まぁ、言ってみればサッカーボールをただ豪快に空へ蹴り込むようなものだ。


つまり、打ち上げロケットは
確かに弾道ミサイルの技術も使われているが、弾道ミサイルではないということである。



大気圏内へ再突入させる技術が弾道ミサイルには必要不可欠だということは
朝日新聞をはじめ、日本のマス・メディアも認めていることなのだが……


日本の報道は包丁を買う主婦を見て
「主婦のAさん、事実上の凶器を購入!」と騒いでいるようなもので、
傍から見ればクレイジーとしか言いようがない。



外野がキーキーと小うるさい中、朝鮮新報によれば、
光明星4号は、現在、地球観測のための準備段階に突入しているらしい。

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地球観測の準備

「それでも地球は動く」― イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが、
 宗教裁判で地動説を撤回させられた時につぶやいたとされる言葉だ。

地動説は、天動説をとるローマ教会によって異端とされた。
裁判で有罪となったガリレオは、生涯自宅軟禁された。


▼力によって世界を支配しようとする米国は、
 自主の旗を掲げ、我が道を行く朝鮮を異端視している。

 人工衛星の打ち上げに「ミサイル実験」のレッテルを張り、
 衛星が軌道に乗っても「作動しない鉄屑」だと難癖をつける。

 しかし、米国がわめき騒いでも、朝鮮の衛星が
 軌道を回りながらその使命を果たしている事実を変えることはできない。

▼朝鮮の民間団体「アリラン協会」が運営するウェブサイト「メアリ」によると、
 先月打ち上げられた「光明星―4」号は、地上から操縦指令を受けながら、
 地球観測のための準備を行っているという。

 衛星が正常稼働していることについては、
 ロシア国防省傘下の宇宙監視センターが明らかにしていたが、
 先頃、米国のハーバード・スミソニアン天体物理学センターの科学者も
北朝鮮の主張に信ぴょう性がある」と述べた。


 事実をあるがままに受け止めれば、誰もが同じ結論に至る。

▼米国が嘘をついてきたことを認め、謝るなら早い方がいい。
 地動説を異端としたカトリック教会が、ガリレオに謝罪するのに350年を要したが、
 今は時代が違う。朝鮮に対する不当な制裁は、科学の名において即刻撤回されるべきだ。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/03/skst-85/
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アメリカに限らず、日本でも
人工衛星は玩具のようなもので、観測できるだけの能力がない、
要するに「人工衛星はダミーで実際はミサイルの性能実験なのだ」と強弁する声が大きい。


そのうち、実際に観測データが公開されたら、どう答えるつもりなのだろうか…
まぁ、大方の予測はつくけれど。


さて、このように人工衛星の打ち上げが馬鹿騒ぎされる一方で、

北朝鮮は現在、米韓の合同軍事演習に対抗して
弾道ミサイルを数発発射しているのだが、こちらはなぜか特報にならない。



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北朝鮮が弾道ミサイルを発射


北朝鮮が東部の海域に弾道ミサイルを発射しました。                       

フランス通信が韓国のソウルから伝えたところによりますと、
北朝鮮は18日金曜未明、弾道ミサイルを東部の海域に向かって発射しました。

韓国国防省の報道官は、
「このミサイルは18日未明、北朝鮮南西部から発射され、800キロ先の日本海に落下した」
と述べました。

この報道官は、北朝鮮が発射したミサイルの種類を明らかにしませんでしたが、
ヨンハプ通信は、軍事筋の話として、「ミサイルはノドンであり、
射程距離最大1300キロのスカッドミサイルの改良型だ」と報じています。

北朝鮮のミサイル発射は、同国のキム・ジョンウン第1書記が
さらなる核・ミサイル実験を命じた後に行われました。

北朝鮮の朝鮮中央通信は、15日火曜、キム第1書記の話として、
北朝鮮はまもなく核弾頭と弾道ミサイル数発の実験を行うと伝えました。

キム第1書記は、
「これらの実験は、北朝鮮の核攻撃能力を向上させるために行われる」と述べています。

北朝鮮の最近の核実験を受け、アメリカと国連は同国に対する制裁を決定しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/63055
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北朝鮮から東京までの距離は1200kmしかない。

つまり、どう考えても今回の実験のほうが日本にとって重大だ。


北朝鮮が本気を出せば、東京の横田基地をはじめとする首都圏内の軍事施設を攻撃できる
ことが証明されたのだから。


では、北朝鮮が今すぐ日本を攻撃してくるかといえば、それは違う。
北朝鮮にとって最大の敵国はアメリカだ。当然、ミサイルの標的も米国本土になる。

だからこそ、北朝鮮は長距離弾道ミサイルの開発に躍起になっている。

(実際、先日の警告においても、マンハッタンを攻撃すると語っていた)


加えて、北朝鮮にはミサイルを飛ばす技術はあっても、
アメリカと交戦して勝利するだけの軍事力がない。



兵器の中にはソ連時代の古いものが多くあるし、第二次世界大戦以降、
世界各地で戦争を巻き起こしてきたアメリカと比べて、北朝鮮は、明らかに経験値が少ない。

つまり、本人たちが言っているように、北朝鮮のミサイルは自衛手段以上の意味を持たない。
これは先制攻撃のための核ミサイルを所有しているアメリカと大きな違いである。
アメリカは朝鮮戦争の時点ですでに朝鮮半島への原爆投下を検討している


そういうわけだから、北朝鮮とアメリカが交争状態になり、金正恩が玉砕覚悟で
在日米軍基地を消滅しようとしない限り、核ミサイルが日本に降ってくることはない。



むしろ、日本の場合、国内の原発事故のほうが深刻だろう。
あまり騒がれないが、日本の原発事故の頻度は凄まじく高い。

つい最近も原発の調子が悪くなって、また稼動が停止されたが、
これは技術が足りないというよりは、国や発電所の安全対策がずさんなことに起因する。

日本の明日を守りたいだの、日本を取り戻すだの、日本人の誇りがどうたらこうたら
言っている人間が「原発は安全だ」と吹聴して管理を徹底しなかった結果が3.11である。

核を恐れるのであれば、まず第一に原子力発電の安全体制の見直しを求めるべきだろう。
(少なくとも政府の息がかかっている安全委員会は解散すべきだと思う)


再三、述べているが、北朝鮮は継続的に
平和条約の締結と核開発の中断を米韓合同軍事演習の中断を条件に提案している。
今回のミサイル実験も軍事演習への反発として発射された。

アメリカや韓国が演習を中断すれば、「北朝鮮の脅威」とやらは簡単に消える。
これは、自国を侵略しようとする動きに対する警告なのだから。


最後に、私は、今回の弾道ミサイル実験が人工衛星打ち上げと違って小さな扱いなのは、
つまるところ、このミサイルではアメリカ本土を攻撃できないからだと思っている。


日本における北朝鮮の報道を観察すると、別に日本が被害を被るわけではないことでも、
なぜかアメリカに被害に及ぶことは大々的に報道されることに気がつく。

例えば長距離弾道ミサイルの開発などはその典型的な例だ。
「長距離」とあるように、このミサイルのターゲットはアメリカであって日本ではない。

逆に今回のミサイルのように日本や韓国の米軍基地がターゲットになっているであろう
弾道ミサイル実験に対しては、番組を中断したり、速報が流されるようなことはしない。

どこまで行っても、アメリカの手駒として良いように使われる日本。
仮に日本が本当にアメリカと対等な関係ならば、集団的自衛権にも意味は多少はあるだろう。

だが、実際には、ご覧の通り、格下の扱いを受けている。
安倍政権が目指しているのは集団的自衛権の容認ではない。集団的他衛権だ。
この状態で日米同盟を強化しても、それはアメリカの弾除けにしかならない。意味がない。

これが愛国心だというのであれば、そんなものは捨ててしまったほうが良い。