北朝鮮がアメリカに対して対話、平和協定の締結を何度も呼びかけていることは
何度か触れたが、先日、朝鮮新報からこれに関連する記事が書かれたのでここに紹介する。
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朝米対話、再開と進展の道筋
先行課題としての平和協定締結
朝鮮は、有名無実化した停戦協定(1953)を平和協定に替えることを米国に提案し、
この問題に関して「建設的な対話」を行う用意があるとの立場を明らかにしている。
米国側に公式ルートを通じてメッセージを送り、外務省声明も発表した。
米の外交的怠慢
朝鮮の提案は、朝米対話の再開と進展の道筋を示すもの。対話を避け、
圧力をかけ続けるオバマ政権の「戦略的忍耐」政策は、米国内でも批判の対象となっている。
平和協定締結の必要性は、朝鮮半島に一触即発の
戦争危機が迫った「8月事態」によって改めて証明された。
北南高位級緊急接触で衝突回避の合意がなされたが、南の戦時作戦統帥権は米国にある。
米国は、いまだ朝鮮の交戦相手であり、「8月事態」のもう一方の当事者であった。
不安定な停戦体制のままでは、戦争勃発の危機がいつでも起こり得る。
朝鮮は核保有国となり、中、短距離ミサイルだけでなく長距離ロケットの精密化、
知能化も達成したとされる。第2次朝鮮戦争が起きれば、1950年代の戦争とは、
まったく違った様相を呈するであろうことは容易に予想できる。
しかし、米国のオバマ政権は「いま目の前の危機」を直視せず、
朝鮮半島の軍事的緊張を高める戦争演習に熱を上げた。2012年以降、朝米対話は中断したままだ。
ホワイトハウスと国務省は、米国の核威嚇を棚上げしたまま、
朝鮮の一方的な核放棄を「非核化」と呼び、「北朝鮮に非核化の意志がないため対話できない」
とのレトリックで、自らの外交的怠慢を正当化してきた。
しかし、それは問題の先送りに過ぎず、実際には米国に選択の余地はあまりない。
朝鮮側は、過去の朝米対話、6者会談が挫折した経験から、対決と緊張激化の悪循環に終止符を
打つには停戦協定を平和協定に代える問題をすべての問題に先行させるとの結論に達したという。
米国が「非核化」テーマで対話を行おうとしても、
朝鮮側が最初から失敗が明らかな交渉に参加することはないだろう。
オバマ政権の対決政策は、二度にわたって朝鮮の核実験を引き起こした。
13年2月の核実験の直後には大統領名義の声明で、
朝鮮の核とミサイルが「米国の国家安全保障上の脅威」であると述べている。
「北朝鮮の問題」を米国から遠く離れたアジアの問題、日本や南朝鮮など
同盟国の懸案だと思っていた米国民にとって、憂慮すべき事態がオバマ政権下で進行したということだ。
結論的に言えば、米国が大胆に政策転換しなければ、米国の安全保障上の懸案は解消されない。
朝鮮側は「朝米間に信頼を醸成して、戦争の根源を除去できれば、
核軍備競争も究極的に終息できる」(外務省声明)との見解を示している。
残り任期わずかなオバマ政権が、朝鮮の提案に沿って、対話再開を模索するかどうかは不透明だが、
朝米の外交戦では、朝鮮が攻勢を仕掛けて、米国が追い込まれていく構図が鮮明だ。
朝鮮労働党創建70周年に際して行われた盛大な閲兵式で演説した金正恩第1書記は、
「わが党は、今日、われらの革命武力が、米国が望むどのような形態の戦争にも対応でき、
祖国の青い空と人民の安寧を断固として守る万端の準備が出来ていることを堂々と宣言できる」
と述べた。
朝鮮の指導者が、人民の前で嘘をつく事は決してない。閲兵式を論評して欲しいという
メディアの求めに対してホワイトハウスは「ノーコメント」を繰り返したという。
守勢に立たされた側は、だんだんと口数が少なくなるものだ。
http://chosonsinbo.com/jp/2015/10/sinbo-j_151102/
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北朝鮮は米韓合同軍の攻撃を懸念している。
朝鮮戦争では北朝鮮の数々の村々が空爆により破壊され、
多くの人間が「北朝鮮の手先」ということで虐殺されていった。
同戦争の研究家であるブルース・カミングス氏は
朝鮮戦争はベトナム戦争そのものだったと述べている。
(ベトナム戦争を知るには、オリバー・ストーン監督の『プラトーン』や
フランシス・コッポラ監督の『地獄の黙示録』を見ると良い)
「朝米間に信頼を醸成して、戦争の根源を除去できれば、核軍備競争も究極的に終息できる」
という言葉は深く受け止めるべきだ。
池上彰氏や佐藤優氏をはじめ、多くの論者は北朝鮮の「核外交」を語るが、
継続して行われている停戦の呼びかけについては一切、語ろうとはしない。
そもそも「核外交」という言葉自体、造語であり、
「北朝鮮は核で脅して言うことを聞かせようとしているのだ」
というイメージを植えつけるものにすぎない。現実は真逆で軍事的威圧をかけているのはアメリカだ。
北朝鮮は自国の核開発を中止する代わりに、
アメリカに自国を攻撃するための軍事演習を停止せよと語りかけている。
自国の軍事演習は継続するが北朝鮮の核は停止せよというアメリカの主張は身勝手に過ぎる。
この点を著名な知識人は強調すべきなのだが、
現実は北朝鮮バッシングを使命と心得ていそうな輩ばかりで、どうにもならない。
何ともやるせない話である。
何度か触れたが、先日、朝鮮新報からこれに関連する記事が書かれたのでここに紹介する。
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朝米対話、再開と進展の道筋
先行課題としての平和協定締結
朝鮮は、有名無実化した停戦協定(1953)を平和協定に替えることを米国に提案し、
この問題に関して「建設的な対話」を行う用意があるとの立場を明らかにしている。
米国側に公式ルートを通じてメッセージを送り、外務省声明も発表した。
米の外交的怠慢
朝鮮の提案は、朝米対話の再開と進展の道筋を示すもの。対話を避け、
圧力をかけ続けるオバマ政権の「戦略的忍耐」政策は、米国内でも批判の対象となっている。
平和協定締結の必要性は、朝鮮半島に一触即発の
戦争危機が迫った「8月事態」によって改めて証明された。
北南高位級緊急接触で衝突回避の合意がなされたが、南の戦時作戦統帥権は米国にある。
米国は、いまだ朝鮮の交戦相手であり、「8月事態」のもう一方の当事者であった。
不安定な停戦体制のままでは、戦争勃発の危機がいつでも起こり得る。
朝鮮は核保有国となり、中、短距離ミサイルだけでなく長距離ロケットの精密化、
知能化も達成したとされる。第2次朝鮮戦争が起きれば、1950年代の戦争とは、
まったく違った様相を呈するであろうことは容易に予想できる。
しかし、米国のオバマ政権は「いま目の前の危機」を直視せず、
朝鮮半島の軍事的緊張を高める戦争演習に熱を上げた。2012年以降、朝米対話は中断したままだ。
ホワイトハウスと国務省は、米国の核威嚇を棚上げしたまま、
朝鮮の一方的な核放棄を「非核化」と呼び、「北朝鮮に非核化の意志がないため対話できない」
とのレトリックで、自らの外交的怠慢を正当化してきた。
しかし、それは問題の先送りに過ぎず、実際には米国に選択の余地はあまりない。
朝鮮側は、過去の朝米対話、6者会談が挫折した経験から、対決と緊張激化の悪循環に終止符を
打つには停戦協定を平和協定に代える問題をすべての問題に先行させるとの結論に達したという。
米国が「非核化」テーマで対話を行おうとしても、
朝鮮側が最初から失敗が明らかな交渉に参加することはないだろう。
オバマ政権の対決政策は、二度にわたって朝鮮の核実験を引き起こした。
13年2月の核実験の直後には大統領名義の声明で、
朝鮮の核とミサイルが「米国の国家安全保障上の脅威」であると述べている。
「北朝鮮の問題」を米国から遠く離れたアジアの問題、日本や南朝鮮など
同盟国の懸案だと思っていた米国民にとって、憂慮すべき事態がオバマ政権下で進行したということだ。
結論的に言えば、米国が大胆に政策転換しなければ、米国の安全保障上の懸案は解消されない。
朝鮮側は「朝米間に信頼を醸成して、戦争の根源を除去できれば、
核軍備競争も究極的に終息できる」(外務省声明)との見解を示している。
残り任期わずかなオバマ政権が、朝鮮の提案に沿って、対話再開を模索するかどうかは不透明だが、
朝米の外交戦では、朝鮮が攻勢を仕掛けて、米国が追い込まれていく構図が鮮明だ。
朝鮮労働党創建70周年に際して行われた盛大な閲兵式で演説した金正恩第1書記は、
「わが党は、今日、われらの革命武力が、米国が望むどのような形態の戦争にも対応でき、
祖国の青い空と人民の安寧を断固として守る万端の準備が出来ていることを堂々と宣言できる」
と述べた。
朝鮮の指導者が、人民の前で嘘をつく事は決してない。閲兵式を論評して欲しいという
メディアの求めに対してホワイトハウスは「ノーコメント」を繰り返したという。
守勢に立たされた側は、だんだんと口数が少なくなるものだ。
http://chosonsinbo.com/jp/2015/10/sinbo-j_151102/
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北朝鮮は米韓合同軍の攻撃を懸念している。
朝鮮戦争では北朝鮮の数々の村々が空爆により破壊され、
多くの人間が「北朝鮮の手先」ということで虐殺されていった。
同戦争の研究家であるブルース・カミングス氏は
朝鮮戦争はベトナム戦争そのものだったと述べている。
(ベトナム戦争を知るには、オリバー・ストーン監督の『プラトーン』や
フランシス・コッポラ監督の『地獄の黙示録』を見ると良い)
「朝米間に信頼を醸成して、戦争の根源を除去できれば、核軍備競争も究極的に終息できる」
という言葉は深く受け止めるべきだ。
池上彰氏や佐藤優氏をはじめ、多くの論者は北朝鮮の「核外交」を語るが、
継続して行われている停戦の呼びかけについては一切、語ろうとはしない。
そもそも「核外交」という言葉自体、造語であり、
「北朝鮮は核で脅して言うことを聞かせようとしているのだ」
というイメージを植えつけるものにすぎない。現実は真逆で軍事的威圧をかけているのはアメリカだ。
北朝鮮は自国の核開発を中止する代わりに、
アメリカに自国を攻撃するための軍事演習を停止せよと語りかけている。
自国の軍事演習は継続するが北朝鮮の核は停止せよというアメリカの主張は身勝手に過ぎる。
この点を著名な知識人は強調すべきなのだが、
現実は北朝鮮バッシングを使命と心得ていそうな輩ばかりで、どうにもならない。
何ともやるせない話である。