まだ逝去されて1カ月もたっていないのに、
高倉健さんの魂を呼び寄せるらしい大川隆法。
「よくやるよ」とは思うが、彼の場合は芸の一種で片づけられるが、
北朝鮮についての評論を書く連中のなかには、どう考えても嘘だろという
内容を平然と流してしまう人間が結構いる。大川よりこいつらのほうが害だと思う。
---------------------------------------------------
最近、日本の芸能界でも薬物汚染が問題になっているが、
北朝鮮でも覚せい剤が蔓延し密かに社会問題化している。
先日、某雑誌で「脱北者座談会」の司会をする機会があったが、
一昨年に脱北した女性の動機は、なんと「覚せい剤」だった。
彼女は、朝鮮労働党の中堅幹部の比較的、
裕福な家に嫁いだだめ経済的にはそれほど苦しくなかった。
住んでいたのも党幹部のみが入居できるアパートで、
隣家は全て党幹部やそこそこ裕福な世帯だった。
ところが、しばらくすると隣家の息子が連日のように
暴れて叫び回るので異常を感じはじめた。
最初は理由がわからず、不安におびえていたが、
やがて彼が覚せい剤中毒になっていたことを知る。
北朝鮮社会の裏側を知らず、また知ろうともせず、
真面目に社会生活を営んでいた彼女は、衝撃を受け
独自に覚せい剤中毒について調べはじめた。
そこで知ったのは、北朝鮮で覚せい剤が蔓延している事実だった。
彼女は「覚せい剤が蔓延する北朝鮮社会に未来はない」と
絶望し北朝鮮を脱出するにいたったという。
http://dmm-news.com/article/899830/
-----------------------------------------------------
冷静に考えて、覚せい剤が蔓延しているのを理由に
向こうで生活できる保証もなく、また捕まったら非道い目に
合わされるリスクを背負ってまで、わざわざ亡命するだろうか?
檻のような国だと勘違いされているが、北朝鮮は鎖国をしているわけではなく、
中国やモンゴル、ロシアに出稼ぎをしに行く労働者もいるし、
ヨーロッパへ留学する学生もいる(金正恩氏もその中の一人)。
だから、単に逃げ出したいならもっと楽な方法があるのだが、
なぜこの女性は一番リスクが高く、経済的にも不安な道を選んだのだろうか?
加えて、そんなに蔓延してるなら
なんで一昨年まで気づかなかったの?
という疑問がわいてくる。
仮に情報統制が厳しくて、知る機会がなかったとしよう。
だが、その場合、この女性が自力で調べられるわけがない。
逆に、その気になれば調べられるレベルの秘密度なのに、
今まで興味がなかったから気付かなかったとしよう。
しかし、その場合も、調べない限り気付かない程度の蔓延ということになる。
日本でも麻薬中毒者はそれなりにいるが蔓延というレベルかと言えば怪しい。
さらに、アメリカではヘロインだのコカインだの、ヤバい薬が「蔓延」していて、
ビル・エバンスだのブライアン・ウィルソンだの、カート・コバーンだの、
大物ミュージシャンで麻薬中毒者(元も含む)は腐るほどいるが、
それを理由にアメリカ人をやめる奴がいるか!?
殺されるのを覚悟してまで無一文で二度と故郷へ帰れないのを承知で、
そこそこ裕福な暮らしをしている人間が脱北するだろうか?
このように、文章を読むだけでもおかしい記事なのだが、
実のところ、麻薬が北朝鮮で蔓延しているという記事は
2011年に既にニュースになったものなのである。
~アジアプレスの「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」報道は何と1年前のリサイクル記事~
http://roodevil.blog.shinobi.jp/%E3%82%A2%E3%82%B8%E
3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%EF%BC%86%E7%9F%B3%
E4%B8%B8%E6%AC%A1%E9%83%8E%E4%BC%9D%E8%AA%AC/%E3%82%A
2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%
AE%E3%80%8C%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E7%A4%BE%E4%BC
%9A%E3%82%92%E8%9D%95%E3%82%80%E8%A6%9A%E9%86%92%E5%89%
A4%E3%80%8D%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%A81
そして、この件は事実無根であるという反証がすでに行われているのである。
--------------------------------------------------------------
昨年(訳者注:2010年)12月24日にNK知識人連帯という
脱北者団体が北朝鮮住民の麻薬吸入動画を報道した。
この動画は「聯合ニュース」に提供され、
ほぼ全ての媒体が動画の内容を報道した。
また1月5日には保守媒体である「ニューデイリー」が
「清津では10代と20代達も麻薬をたくさんやっている」式の記事を報道した。
北朝鮮の現実を知らない南の人達が見れば
「あんなに北の人々は麻薬を一般的にやるのか」となるが、
北朝鮮で暮らして来た脱北者である私の目からすれば誇張された内容だ。
私もあの動画を見た。動画を撮影した場所は北朝鮮地域に見える。
だが問題は麻薬の価格だ。動画では麻薬1グラムが北朝鮮の金で
5万ウォンくらいすると出ている。だがこれは常識的に考えて、
金のない北朝鮮の人々が買うのは困難な価格だ。
今北朝鮮で「ドル」のように通用するトウモロコシ
(北朝鮮では市場でほぼ全ての物価がこのトウモロコシ価格によって決定される)
価格は地域毎に若干の差異があるものの、1キロあたり大概500ウォン-700ウォン程度だ。
結局、麻薬1グラム買おうとしたらトウモロコシ100キロ程度の金が必要だ。
ほぼ大多数の北朝鮮住民達は一日一日を稼いで食うのにも忙しいのに
トウモロコシ100キロに相当する麻薬を、それもまるで全国民が吸入するという風に語るが、
これは北朝鮮の現実を知る人間にとってはいささか荒唐無稽な話に過ぎない。
もちろん北朝鮮でも麻薬をやる人間がいない訳ではない。
私が北朝鮮を離れる時にも麻薬をやる人間がいたが、
そうした者達は大部分が食っていく心配のない富裕層の一部ごく少数の人間達だった。
一般人は麻薬を見る事も難しく、
また麻薬が手に入ったとしても金に換えて米を買って食おうと考える。
韓国の焼酎のような酒一瓶すら買って飲むのも難しい
北朝鮮住民が食料100キロに該当する価格の麻薬を、それも一般人の多くがやるだと?
これは嘘だ。数日前、北朝鮮にいる兄弟達と通話をする
同僚脱北者達にこの内容について確認してみたのだが
、関連するような事実を全く知らないという。
「麻薬をやる? そんな人がいるの?」と反問する北朝鮮住民もいたという。
南の人は北の食糧事情に対する情報が不足して理解し難いだろうが、
韓国式にくだいて表現すると、月20-30万ウォンの家賃も払えない
人間が一回の利用に500-1000万ウォン出さねばならない飲み屋に通うと考えれば良い。
北朝鮮では食料1キロもなくて飢え死ぬ人間が大半だ。
それなのに一般人達が食料100キロ買える金で麻薬を購入する
というのは常識に合わないだけではなく、北朝鮮住民の所得水準を
勘定してみても合わない悪意的な話に過ぎない。
http://roodevil.blog.shinobi.jp/翻訳記事/
【翻訳記事】アジアプレスの「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」
---------------------------------------------------------
食料1キロもなくて餓死する人間が大半なら、
少なくとも4年間で北朝鮮の人口は8分の1になってんじゃないの?
(おそらく、この話者は自分の地域の惨状を一般化していると思われる)
というツッコミはおいておきながら、2010年(今から4年前)には、
すでに韓国の保守系メディアによって報道されているのである。
「密かに蔓延している」とか「なんと覚せい剤」だったと、
数年前のネタを最新の情報であるかのように語るのはいかがなものだろうか?
しかも、この情報は既に当の脱北者に、かなり具体的な数字を列挙しながら
「食料を買わないで覚せい剤を買うわけないだろ」と否定されている。
要するに、かなり好意的な解釈をしても、北朝鮮において麻薬は
裕福な家庭でしか使用することができないのだが、この脱北者の
女性は、つい一昨年まで気づけない程度の「蔓延」を理由に
今までの裕福な生活を捨て、向こうで働ける保証もないまま、
捕まったら殺されるか収容所へ送られるであろう脱北をしたことになる。
池袋で危険ドラッグが簡単に入手できてしまう事実を知って、
全財産を捨てて海外に移住するようなものなので、
百憶歩ほど譲って真実だとしても、その場合、
大げさなオバさんだなーで済まされるような話だ(※)。
~~~~~
※むしろ、私は政治的な事情でこの女性は亡命したのではと思っている。
脱北者の大半は、経済的な事情でやむを得ず亡命するのだが、
この女性は、そこそこ力のあった幹部の家に住んでいたらしい。
内部の抗争に敗れて身の危険を感じ、逃げたあたりが真相なのではないだろうか。
~~~~~
北朝鮮が麻薬を栽培しているという情報は以前からあった。
例えば、2004年7月23日付の北朝鮮政府機関紙「労働新聞」の
記事を根拠に大麻王国北朝鮮が吹聴されたことがある。
同記事には「魅力ある作物」というタイトルで、
金正日が、「大麻には食糧、燃料、建材、医薬品、石鹸、塗料などの
原料として幅広い利用価値がある。大麻ほど役にたつ植物はほかにない」と断言し、
「党を挙げて栽培し利用を進めよ」と書かれていた。
実際、大麻はアサという植物から採れるのだが、
このアサは服にも食用にも医薬にも利用できるものである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B5
つまり、アサの栽培=麻薬の栽培ではなし、実際、
労働新聞でもそう書いているのだが、北朝鮮バッシング論者は
「しめたぞ!」と飛びつき、大麻王国北朝鮮をねつ造したというわけだ。
他にも、保守系の新聞サイトや極右の著書を読むと、
北朝鮮が覚せい剤を製造しているという情報はよく書かれていて、
いわゆる「あるあるネタ」になっている。
私が知るなかで一番、傑作なのがウォール・ストリート・ジャーナルの記事。
----------------------------------------------------
北朝鮮の25歳の男性は、凍りついた豆満江を
ひとたび中国側に渡って脱北すれば引き返せないことを分かっていた。
それは2009年2月のことだった。
この男性は武装した北朝鮮や中国の国境警備兵に
見つからないように素早く行動する必要があることも分かっていた。
この男性は、そうした思考の明晰(めいせき)さを
与えてくれたものはたったの1つだったと話す。
それは麻酔効果のあるクリスタル・メス、つまり、メタンフェタミンだ。
~中略~
North Korea Review誌の2013年春号で発表された調査によると、
北朝鮮では「麻薬のまん延」が起きている。
「北朝鮮の薬物使用の新たな様相:北朝鮮北部全域で
メタンフェタミン(=メス)の乱用が急増」と題するこの研究では、
ここ数年間、メスの生産がいかに、国有工場から民間経営の
地下組織の研究所や「家庭のキッチン」に移行しているかが説明されている。
同研究の共同執筆者のKim Seok-hyang氏は
「(北朝鮮の)その地域の成人のほぼ全員がアイスを
使用した経験があり、しかも1回にとどまらない」と指摘、
「私の試算では40‐50%以上が深刻なアイス中毒だ」と話す。
http://jp.wsj.com/articles/SB10001424127887324562504579024172885512560
-----------------------------------------------------------

覚せい剤の中毒者は、こういう顔をしているのだが、
この記事によると、北朝鮮北部全域の半分の人間はこうなっているらしい。
覚せい剤の症状は、以下のようなものがある。
1・妄想・精神劣化
攻撃的になり、また妄想しがちになり、何時間も同じ窓の掃除を繰り返すなど、
取るに足らないことに過度に集中するようになる。
2 幻覚・精神異常
いわゆるヤク中の状態が終わると、猛烈な空虚感に襲われる。
この状態に共通しているのは強烈なかゆみで、
使用者は皮膚の下を虫が這いまわっていると思い込むことがある。
何日も眠ることができず、しばしば完全に精神に異常をきたした状態になり、
自分だけの世界に入り込み、幻覚を見る。この幻覚は非常に鮮明で、
本物であるように見える。また自傷の危険性も高くなる。
・・・北朝鮮北部全域の住民4~50%が
この有様だったら、もう全滅してるジャン。
私のこの手の蔓延説を疑うのは、
彼らの言うとおりだと、北朝鮮人はヤク中だらけになるし、
その場合、人口が超スピードで激減するはずだからだ。
考えてほしい。東北や北海道の半分が麻薬中毒者だとしたら、
まともに日常生活を送れるだろうか?経済活動ができるだろうか?
そうなると、当然、北朝鮮では餓死ではなく麻薬中毒で死ぬ人間のほうが
多くなるはずなのだが、このことを当の大麻王国論者が主張したことはない。
加えて、連中の理屈に従えば、
北朝鮮から逃げてくる人間は、妄想に駆られたヤク中だらけになるはずなのだが、
そのわりには連中は彼らの言い分を特に疑うこともなく北朝鮮批判のネタにしている。
要するに、北朝鮮で麻薬が蔓延しているというのであれば、
必ず同国で社会問題になっているし、場合によっては
大量の死亡者が出て全滅する地域だって出てくるはずなのだが、
そういうニュースは一切ないのである。
ちなみに、北朝鮮が麻薬を国営で製造して密輸している
ということはずっと前から言われていた。しかし、どうも私には
これはイラクやシリアに細菌兵器があると同レベルの話に聞こえてならない。
イラクやシリアにも細菌兵器はあったのだが、
問題になった時点では既に処分していた。それにも関わらず、
アメリカはイラクやシリアを攻撃するためのネタとしてでっち上げた。
これと同じで、北朝鮮もキム・イルソンの時代(つまり冷戦時代)には
そういうこともやってたんだろうが、それを今もそうだと決めつけて
攻撃しているように見える。
この手の話の論者は揃いも揃って北朝鮮に個人的な恨みを抱いており、
韓国が北朝鮮を攻撃して統一すればいいじゃんといった論調をとる、
戦争を望む(北朝鮮を滅ぼしたがってる)人間が多いので、
どうも尾ひれをつけて大げさに語っているんじゃないかと思うのである。
実際、これ以外でも彼らが嘘をついてきた例はいくらでも列挙できるわけだし。
(例えば、北朝鮮の食糧事情は未だに自前でどうにか出来るほど甘くないが、
連中の手にかかると、厳しい事情→飢餓ということになってしまっている。
このように、針小棒大に誇張して話をすることが多いのである)
いずれにせよ、発信者の性質や論調自体に見える矛盾点に注目しつつ、
この手の話は慎重に受取り、考えなくてはならないだろう。
その場合、少なくとも北朝鮮麻薬蔓延論は間違いなく、
荒唐無稽のファンタジーであると断言できる。
真実だとするならば、この数年で住民が全滅する地域が続出しているだろうし、
政府も本腰を入れて対策に当たっているはずだろうし、そこまで死亡者が多いなら
とっくの昔に自滅して崩壊しているに違いないからだ。
高倉健さんの魂を呼び寄せるらしい大川隆法。
「よくやるよ」とは思うが、彼の場合は芸の一種で片づけられるが、
北朝鮮についての評論を書く連中のなかには、どう考えても嘘だろという
内容を平然と流してしまう人間が結構いる。大川よりこいつらのほうが害だと思う。
---------------------------------------------------
最近、日本の芸能界でも薬物汚染が問題になっているが、
北朝鮮でも覚せい剤が蔓延し密かに社会問題化している。
先日、某雑誌で「脱北者座談会」の司会をする機会があったが、
一昨年に脱北した女性の動機は、なんと「覚せい剤」だった。
彼女は、朝鮮労働党の中堅幹部の比較的、
裕福な家に嫁いだだめ経済的にはそれほど苦しくなかった。
住んでいたのも党幹部のみが入居できるアパートで、
隣家は全て党幹部やそこそこ裕福な世帯だった。
ところが、しばらくすると隣家の息子が連日のように
暴れて叫び回るので異常を感じはじめた。
最初は理由がわからず、不安におびえていたが、
やがて彼が覚せい剤中毒になっていたことを知る。
北朝鮮社会の裏側を知らず、また知ろうともせず、
真面目に社会生活を営んでいた彼女は、衝撃を受け
独自に覚せい剤中毒について調べはじめた。
そこで知ったのは、北朝鮮で覚せい剤が蔓延している事実だった。
彼女は「覚せい剤が蔓延する北朝鮮社会に未来はない」と
絶望し北朝鮮を脱出するにいたったという。
http://dmm-news.com/article/899830/
-----------------------------------------------------
冷静に考えて、覚せい剤が蔓延しているのを理由に
向こうで生活できる保証もなく、また捕まったら非道い目に
合わされるリスクを背負ってまで、わざわざ亡命するだろうか?
檻のような国だと勘違いされているが、北朝鮮は鎖国をしているわけではなく、
中国やモンゴル、ロシアに出稼ぎをしに行く労働者もいるし、
ヨーロッパへ留学する学生もいる(金正恩氏もその中の一人)。
だから、単に逃げ出したいならもっと楽な方法があるのだが、
なぜこの女性は一番リスクが高く、経済的にも不安な道を選んだのだろうか?
加えて、そんなに蔓延してるなら
なんで一昨年まで気づかなかったの?
という疑問がわいてくる。
仮に情報統制が厳しくて、知る機会がなかったとしよう。
だが、その場合、この女性が自力で調べられるわけがない。
逆に、その気になれば調べられるレベルの秘密度なのに、
今まで興味がなかったから気付かなかったとしよう。
しかし、その場合も、調べない限り気付かない程度の蔓延ということになる。
日本でも麻薬中毒者はそれなりにいるが蔓延というレベルかと言えば怪しい。
さらに、アメリカではヘロインだのコカインだの、ヤバい薬が「蔓延」していて、
ビル・エバンスだのブライアン・ウィルソンだの、カート・コバーンだの、
大物ミュージシャンで麻薬中毒者(元も含む)は腐るほどいるが、
それを理由にアメリカ人をやめる奴がいるか!?
殺されるのを覚悟してまで無一文で二度と故郷へ帰れないのを承知で、
そこそこ裕福な暮らしをしている人間が脱北するだろうか?
このように、文章を読むだけでもおかしい記事なのだが、
実のところ、麻薬が北朝鮮で蔓延しているという記事は
2011年に既にニュースになったものなのである。
~アジアプレスの「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」報道は何と1年前のリサイクル記事~
http://roodevil.blog.shinobi.jp/%E3%82%A2%E3%82%B8%E
3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%EF%BC%86%E7%9F%B3%
E4%B8%B8%E6%AC%A1%E9%83%8E%E4%BC%9D%E8%AA%AC/%E3%82%A
2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%
AE%E3%80%8C%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E7%A4%BE%E4%BC
%9A%E3%82%92%E8%9D%95%E3%82%80%E8%A6%9A%E9%86%92%E5%89%
A4%E3%80%8D%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%A81
そして、この件は事実無根であるという反証がすでに行われているのである。
--------------------------------------------------------------
昨年(訳者注:2010年)12月24日にNK知識人連帯という
脱北者団体が北朝鮮住民の麻薬吸入動画を報道した。
この動画は「聯合ニュース」に提供され、
ほぼ全ての媒体が動画の内容を報道した。
また1月5日には保守媒体である「ニューデイリー」が
「清津では10代と20代達も麻薬をたくさんやっている」式の記事を報道した。
北朝鮮の現実を知らない南の人達が見れば
「あんなに北の人々は麻薬を一般的にやるのか」となるが、
北朝鮮で暮らして来た脱北者である私の目からすれば誇張された内容だ。
私もあの動画を見た。動画を撮影した場所は北朝鮮地域に見える。
だが問題は麻薬の価格だ。動画では麻薬1グラムが北朝鮮の金で
5万ウォンくらいすると出ている。だがこれは常識的に考えて、
金のない北朝鮮の人々が買うのは困難な価格だ。
今北朝鮮で「ドル」のように通用するトウモロコシ
(北朝鮮では市場でほぼ全ての物価がこのトウモロコシ価格によって決定される)
価格は地域毎に若干の差異があるものの、1キロあたり大概500ウォン-700ウォン程度だ。
結局、麻薬1グラム買おうとしたらトウモロコシ100キロ程度の金が必要だ。
ほぼ大多数の北朝鮮住民達は一日一日を稼いで食うのにも忙しいのに
トウモロコシ100キロに相当する麻薬を、それもまるで全国民が吸入するという風に語るが、
これは北朝鮮の現実を知る人間にとってはいささか荒唐無稽な話に過ぎない。
もちろん北朝鮮でも麻薬をやる人間がいない訳ではない。
私が北朝鮮を離れる時にも麻薬をやる人間がいたが、
そうした者達は大部分が食っていく心配のない富裕層の一部ごく少数の人間達だった。
一般人は麻薬を見る事も難しく、
また麻薬が手に入ったとしても金に換えて米を買って食おうと考える。
韓国の焼酎のような酒一瓶すら買って飲むのも難しい
北朝鮮住民が食料100キロに該当する価格の麻薬を、それも一般人の多くがやるだと?
これは嘘だ。数日前、北朝鮮にいる兄弟達と通話をする
同僚脱北者達にこの内容について確認してみたのだが
、関連するような事実を全く知らないという。
「麻薬をやる? そんな人がいるの?」と反問する北朝鮮住民もいたという。
南の人は北の食糧事情に対する情報が不足して理解し難いだろうが、
韓国式にくだいて表現すると、月20-30万ウォンの家賃も払えない
人間が一回の利用に500-1000万ウォン出さねばならない飲み屋に通うと考えれば良い。
北朝鮮では食料1キロもなくて飢え死ぬ人間が大半だ。
それなのに一般人達が食料100キロ買える金で麻薬を購入する
というのは常識に合わないだけではなく、北朝鮮住民の所得水準を
勘定してみても合わない悪意的な話に過ぎない。
http://roodevil.blog.shinobi.jp/翻訳記事/
【翻訳記事】アジアプレスの「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」
---------------------------------------------------------
食料1キロもなくて餓死する人間が大半なら、
少なくとも4年間で北朝鮮の人口は8分の1になってんじゃないの?
(おそらく、この話者は自分の地域の惨状を一般化していると思われる)
というツッコミはおいておきながら、2010年(今から4年前)には、
すでに韓国の保守系メディアによって報道されているのである。
「密かに蔓延している」とか「なんと覚せい剤」だったと、
数年前のネタを最新の情報であるかのように語るのはいかがなものだろうか?
しかも、この情報は既に当の脱北者に、かなり具体的な数字を列挙しながら
「食料を買わないで覚せい剤を買うわけないだろ」と否定されている。
要するに、かなり好意的な解釈をしても、北朝鮮において麻薬は
裕福な家庭でしか使用することができないのだが、この脱北者の
女性は、つい一昨年まで気づけない程度の「蔓延」を理由に
今までの裕福な生活を捨て、向こうで働ける保証もないまま、
捕まったら殺されるか収容所へ送られるであろう脱北をしたことになる。
池袋で危険ドラッグが簡単に入手できてしまう事実を知って、
全財産を捨てて海外に移住するようなものなので、
百憶歩ほど譲って真実だとしても、その場合、
大げさなオバさんだなーで済まされるような話だ(※)。
~~~~~
※むしろ、私は政治的な事情でこの女性は亡命したのではと思っている。
脱北者の大半は、経済的な事情でやむを得ず亡命するのだが、
この女性は、そこそこ力のあった幹部の家に住んでいたらしい。
内部の抗争に敗れて身の危険を感じ、逃げたあたりが真相なのではないだろうか。
~~~~~
北朝鮮が麻薬を栽培しているという情報は以前からあった。
例えば、2004年7月23日付の北朝鮮政府機関紙「労働新聞」の
記事を根拠に大麻王国北朝鮮が吹聴されたことがある。
同記事には「魅力ある作物」というタイトルで、
金正日が、「大麻には食糧、燃料、建材、医薬品、石鹸、塗料などの
原料として幅広い利用価値がある。大麻ほど役にたつ植物はほかにない」と断言し、
「党を挙げて栽培し利用を進めよ」と書かれていた。
実際、大麻はアサという植物から採れるのだが、
このアサは服にも食用にも医薬にも利用できるものである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B5
つまり、アサの栽培=麻薬の栽培ではなし、実際、
労働新聞でもそう書いているのだが、北朝鮮バッシング論者は
「しめたぞ!」と飛びつき、大麻王国北朝鮮をねつ造したというわけだ。
他にも、保守系の新聞サイトや極右の著書を読むと、
北朝鮮が覚せい剤を製造しているという情報はよく書かれていて、
いわゆる「あるあるネタ」になっている。
私が知るなかで一番、傑作なのがウォール・ストリート・ジャーナルの記事。
----------------------------------------------------
北朝鮮の25歳の男性は、凍りついた豆満江を
ひとたび中国側に渡って脱北すれば引き返せないことを分かっていた。
それは2009年2月のことだった。
この男性は武装した北朝鮮や中国の国境警備兵に
見つからないように素早く行動する必要があることも分かっていた。
この男性は、そうした思考の明晰(めいせき)さを
与えてくれたものはたったの1つだったと話す。
それは麻酔効果のあるクリスタル・メス、つまり、メタンフェタミンだ。
~中略~
North Korea Review誌の2013年春号で発表された調査によると、
北朝鮮では「麻薬のまん延」が起きている。
「北朝鮮の薬物使用の新たな様相:北朝鮮北部全域で
メタンフェタミン(=メス)の乱用が急増」と題するこの研究では、
ここ数年間、メスの生産がいかに、国有工場から民間経営の
地下組織の研究所や「家庭のキッチン」に移行しているかが説明されている。
同研究の共同執筆者のKim Seok-hyang氏は
「(北朝鮮の)その地域の成人のほぼ全員がアイスを
使用した経験があり、しかも1回にとどまらない」と指摘、
「私の試算では40‐50%以上が深刻なアイス中毒だ」と話す。
http://jp.wsj.com/articles/SB10001424127887324562504579024172885512560
-----------------------------------------------------------

覚せい剤の中毒者は、こういう顔をしているのだが、
この記事によると、北朝鮮北部全域の半分の人間はこうなっているらしい。
覚せい剤の症状は、以下のようなものがある。
1・妄想・精神劣化
攻撃的になり、また妄想しがちになり、何時間も同じ窓の掃除を繰り返すなど、
取るに足らないことに過度に集中するようになる。
2 幻覚・精神異常
いわゆるヤク中の状態が終わると、猛烈な空虚感に襲われる。
この状態に共通しているのは強烈なかゆみで、
使用者は皮膚の下を虫が這いまわっていると思い込むことがある。
何日も眠ることができず、しばしば完全に精神に異常をきたした状態になり、
自分だけの世界に入り込み、幻覚を見る。この幻覚は非常に鮮明で、
本物であるように見える。また自傷の危険性も高くなる。
・・・北朝鮮北部全域の住民4~50%が
この有様だったら、もう全滅してるジャン。
私のこの手の蔓延説を疑うのは、
彼らの言うとおりだと、北朝鮮人はヤク中だらけになるし、
その場合、人口が超スピードで激減するはずだからだ。
考えてほしい。東北や北海道の半分が麻薬中毒者だとしたら、
まともに日常生活を送れるだろうか?経済活動ができるだろうか?
そうなると、当然、北朝鮮では餓死ではなく麻薬中毒で死ぬ人間のほうが
多くなるはずなのだが、このことを当の大麻王国論者が主張したことはない。
加えて、連中の理屈に従えば、
北朝鮮から逃げてくる人間は、妄想に駆られたヤク中だらけになるはずなのだが、
そのわりには連中は彼らの言い分を特に疑うこともなく北朝鮮批判のネタにしている。
要するに、北朝鮮で麻薬が蔓延しているというのであれば、
必ず同国で社会問題になっているし、場合によっては
大量の死亡者が出て全滅する地域だって出てくるはずなのだが、
そういうニュースは一切ないのである。
ちなみに、北朝鮮が麻薬を国営で製造して密輸している
ということはずっと前から言われていた。しかし、どうも私には
これはイラクやシリアに細菌兵器があると同レベルの話に聞こえてならない。
イラクやシリアにも細菌兵器はあったのだが、
問題になった時点では既に処分していた。それにも関わらず、
アメリカはイラクやシリアを攻撃するためのネタとしてでっち上げた。
これと同じで、北朝鮮もキム・イルソンの時代(つまり冷戦時代)には
そういうこともやってたんだろうが、それを今もそうだと決めつけて
攻撃しているように見える。
この手の話の論者は揃いも揃って北朝鮮に個人的な恨みを抱いており、
韓国が北朝鮮を攻撃して統一すればいいじゃんといった論調をとる、
戦争を望む(北朝鮮を滅ぼしたがってる)人間が多いので、
どうも尾ひれをつけて大げさに語っているんじゃないかと思うのである。
実際、これ以外でも彼らが嘘をついてきた例はいくらでも列挙できるわけだし。
(例えば、北朝鮮の食糧事情は未だに自前でどうにか出来るほど甘くないが、
連中の手にかかると、厳しい事情→飢餓ということになってしまっている。
このように、針小棒大に誇張して話をすることが多いのである)
いずれにせよ、発信者の性質や論調自体に見える矛盾点に注目しつつ、
この手の話は慎重に受取り、考えなくてはならないだろう。
その場合、少なくとも北朝鮮麻薬蔓延論は間違いなく、
荒唐無稽のファンタジーであると断言できる。
真実だとするならば、この数年で住民が全滅する地域が続出しているだろうし、
政府も本腰を入れて対策に当たっているはずだろうし、そこまで死亡者が多いなら
とっくの昔に自滅して崩壊しているに違いないからだ。