時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

増えるウクライナ難民

2014-06-19 23:02:39 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ロシアへ逃げるウクライナの難民が絶えません。


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ウクライナ難民 1昼夜で1万4千人以上ロシア領内へ


この一昼夜の間に、ウクライナ市民1万4千人以上が、
ロシア南部のロストフ州領内に入った。同州の非常事態予防・対応局が伝えた。


4月半ばからキエフ当局は、抗議運動を抑え込むため、
ウクライナ東部で特別軍事作戦を展開している


抗議は、2月に国家クーデターと言ってよい
政権交代がなされた事への住民の反応として始まった。
その結果、6月から、難民のロシアへの流入が、
とりわけ境界を接するロストフ州を中心に急激に拡大した。

地元当局は「すでに難民の大量流入を処理するのは難しくなっている。
しかし、状況は深刻ではあるものの、到着した難民への援助は今後も続けられるだろう」
と約束した。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_18/273658205/

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ウクライナ軍の爆撃で崩壊した住宅(2014年60月10日)
http://rt.com/news/166736-ukraine-military-operation-civilians/



合計で何人がロシアへ逃亡したかは後ほど明らかになるはずです。
何度も何度も言及していますが、現在、ウクライナ軍が行っている戦闘は、
市や町全体を攻撃対象としたものであり、住民がターゲットになっています。

(「テロリスト」「親ロシア派」とレッテルを貼ってごまかしてはいるが…)


既に難民に対してウクライナ軍が砲撃し、死亡者が出ています。
(詳細:http://rt.com/news/166640-ukraine-shelling-refugees-journalists/)


また、つい昨日、ロシア・トゥデイに挙がった記事によりますと、
少なくとも100人の市民が殺され、200人が傷を負っており、
国連の調査でも、最低でも257人の市民が殺されていることが判明しています。

これだけの大規模な空爆で、それしか犠牲者がいないわけもなく、
今後の更なる調査で、更に正確な数が明らかになるでしょう。

http://rt.com/news/166736-ukraine-military-operation-civilians/
http://rt.com/news/166788-eastern-ukraine-death-toll/


これだけのことをしてしまった以上、ポロシェンコが何をしようと、
この地域の住民は決して中央政府を許しはしないでしょう。

中東・中央アジアの内戦について

2014-06-19 21:49:02 | リビア・ウクライナ・南米・中東
イラク・アフガニスタン、リビアと21世紀になってアメリカとイギリスが
侵攻した地域では、いまだに治安が安定せず、危険地帯と化しています。

ここ数日でイラクでアルカイダの系列のグループが首都へ南下していることで、
メディアも取り上げてはいますが、これは単純にシーア派とスンニ派の対立…
という構図で描けるものではありません。この点を報道しない機関がいる。


簡単に説明すると、いずれの衝突も先進国に抵抗する側と協力する側との戦い
と言えるでしょう。シーア派はサダム・フセインが治めていたころ、冷遇されて
いたということもあり、イラク戦争時から外国勢力から支援を受けていました。

現在、イラクで実権を握っているマリキ首相もシーア派の人間で、
宗教主義に基づく政治を行っています。「民主化」を唱える合衆国が
なぜイスラム教に基づく政治を支援するのか?それはもうおわかりでしょう。


イラクに限らず、「アラブの春」と呼ばれた一連の「革命」では、
その後、ムスリム同胞団をはじめとした原理主義者たちが実権を握った地域も
少なくなく、要するに「春」とは「先進諸国にとってのアラブの春」だった。


この点については、ミシェル・チョスドスキー教授やウィリアム・イングドール教授などが
指摘しているとおり、民主主義運動の形態を持って内部の対立を煽っている集団がいて
決して非暴力活動がイコール完全正義の活動ではないことを表しています。


つまり、一連の争いの原因を起こした人間の中には
間違いなく欧米の政府や知識人、人権団体が含まれているわけです。

これを伝えずに、単に向こうの国の内輪もめのように報じるのは
不正確であり、先進諸国の責任を免罪するものでもあります。


ウクライナの報道を見るとヒシヒシと感じるのですが、
最も被害を受けている人間の側に立って報道するというよりは、
先進国にとって都合がよい事件を選択して編集済みのニュースが流れている。

それではいけないと日本の知識人も立ち上がるべきなのですが…
まぁ、需要がないわけですからね。ままならないでしょう。

ウクライナ東部、人道回廊についての報道

2014-06-15 23:43:02 | リビア・ウクライナ・南米・中東
北朝鮮の報道もそうですが、もはや何が何やら…ですね。
メディアが真実を語るとは限らないことがウクライナを通じるとよくわかる。


まず、「ロシアの声」から3つの記事を紹介します。

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ウクライナ大統領選挙に託されていた望は叶わなかった。
ウイクライナでは国民対話の代わりに、南部・東部の特別作戦が強化され、
多くの血が流れ、新政権の代わりに、クーデターで政権に就いた
ヤツェニュク氏が率いる「以前と同じチーム」が残った。


(中略)


ウクライナ情勢を平和的に解決するチャンスは急激に少なくなっている。
現地のマスコミの情報によると、ウクライナ南部・東部では27日、
軍人、義勇兵、一般市民およそ500人が死亡した。負傷者の数は不明だ。
おおよその数さえ分からないという。ドンバスの病院は患者で溢れかえり、
医薬品や医師が不足し、大勢の人が必要な援助を受けることができないために
命を落としている



治療を必要とする負傷者を別の地域へ搬送することも不可能だ。

なぜならキエフ政権は、包囲されている地域の子供たちのための
「人道回廊」でさえ、設置拒否しているからだ。

ウクライナ軍司令部は現在、
もっとも弱く、もっとも無力になることを目指しているかのようだ。

27日には、戦闘地域から負傷者を搬送していたトラック2台が
空からの攻撃を受け、負傷者のほぼ全員が死亡した。最近設立された、
ウクライナ西部の超過激派組織のメンバーで構成されている
ウクライナ国家親衛隊は、犠牲者の数に触発され、義勇兵が搬送される
医療施設を攻撃する意向を表明した。ポロシェンコ氏は、
南部・東部での軍事作戦は「数時間」で終わるべきであり、長く続くべきではないと述べた。
ロシアのラヴロフ外相は、ウクライナでは暴力が停止される代わりに、
軍の動員が発表され、軍事行動が強化されていると指摘し、次のように語っている。

「ピョートル・ポロシェンコ氏は、国の団結を掲げて大統領選挙に立候補した。
 ポロシェンコ氏は、最初の訪問先はドンバスになると述べた。
 現在ドンバスでは正真正銘の戦闘が行われている。
 そしてポロシェンコ氏自身は、軍事作戦を強化することで、
 この作戦を迅速に終わる必要があると語っている。
 来るポロシェンコ氏の就任式までに、重火器を使用している軍、
 国家親衛隊、『右派セクター』やそれと似たような部隊などが、
 南部・東部で抵抗を鎮圧させたならば、ポロシェンコ氏は、
 勝利者としてドンバスを訪れることができるだろう。
 だがこれが、ドネツク州でポロシェンコ氏が歓迎されるための
 良い条件をつくることは恐らくないだろう。」

(2014年5月28日)
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/2014_05_28/272908216/
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西側の代表者たちは、国連安全保障理事会にロシアが提出した
ウクライナに関する人道支援決議案を、政治的なものにしようとしている。

ロシアのチュルキン国連大使が3日、
国連安保理でロシアが提出した決議案の事前協議の後、記者団に明らかにした。


チュルキン大使によると、ウクライナに関するロシアの提案は、
ウクライナでの暴力停止に焦点を当てたものとなっている。

チュルキン大使は、国際団体が人道支援や医薬品などを届け、
地域の住民が戦闘地域から脱出するために、
ウクライナ南部・東部に人道回廊を設置することに集中する必要があると語った。

だが、西側諸国は決議案を議論する際に、建設的な姿勢をみせなかったという。

チュルキン大使によると、西側諸国はロシアの提案について
「十分にシニカル」に、「問題をさらに分析する」必要があると指摘したという。

チュルキン大使は、「ロシアが提案した決議案に関する作業は、
簡単にはいかないだろう」との見方を示した。


(2014年6月3日)
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_03/273101748/
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ロシアは国連安全保障理事会に、ウクライナに関する決議案の「修正版」を提出した。
ロシアが提出した新たな決議案は、紛争の当事者たちに、
民間人の生命や安全を脅かす行動の自制や、
永続的な停戦交渉を即時に開始するよう呼び掛けている



ロシアの決議案は、ウクライナ南部・東部の幅広い問題を指摘している。
まず、地域における暴力を一刻も早く停止するよう呼び掛けているほか、
全ての当事者たちに、一般市民の生命や安全を脅かし、
社会インフラを破壊する行為を止めるよう求めている。

またウクライナ危機を解決するための基盤となるべきものは、
大規模な憲法改革と、ウクライナのあらゆる民族や政治勢力の対話について記載されている、
欧州安全保障協力機構(OSCE)のロードマップだ。

決議案では、居住区への砲撃が非難されており、
軍事作戦で禁じされている弾薬が使用されていることに懸念が表明されている。



ウクライナ軍は今週、ドネツク州スラヴャンスク郊外の居住地域に焼夷弾を投弾した。
軍事専門家のアンドレイ・クリンツェヴィチ氏は、民間人に対して
白リン弾を使用されたと指摘し、これは ジュネーブ条約で禁止されていると述べ、
次のように語っている。


「米国の分類によると、白リン弾は大量破壊兵器に属している。
 なぜなら白リン弾は、人々を死に追いやる大量の煙を出す。この煙で肺が焼かれてしまう。
そして、豆粒ほどの大きさの弾丸の一部が体にあたった場合、致命傷となる恐れがある。

医師は手の施しようがない。これは油の中に落ちた溶融金属 の一部のようなもので、
さらに深く潜り込んでゆく。医師が応急手当てを施し、2時間後に傷を開いたとき、
まだ燃え続けていたということもあった。」

ウクライナ国家親衛隊は、白リン弾使用に関する情報を性急に否定した。
だが多くのビデオ、目撃証言、そして破壊の性質が、その逆を示唆している。

ロシアは、この受け入れがたい事実に国際社会の関心を向けさせた。
ウクライナ南部・東部で活動している国連の監視団は、
ウクライナ軍が焼夷弾を使用したとの情報を調査していると発表した。


6月2日、ロシアは国連安全保障理事会で、
ウクライナに関する決議案を検討するよう提案した。

(2014年6月13日)
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/2014_06_13/273489722/
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このように、5月末からロシアは一貫して人道回廊の設立や停戦を呼び掛けているのですが、
どうも朝日新聞は、この辺がピンと来ないようで、空爆を行うキエフ政権を支持しています。


次のような記事は、意図的であろうとなかろうとキエフを支持し、
ドネツクやルガンスクを誹謗するものでしょう。

http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN0ED0PM.html
http://www.asahi.com/articles/ASG691555G68UHBI574.html


他にも、ハリコフ(ウクライナ東部の州)で、
ウクライナ軍を支援する市民が物資を提供したという
にわかには信じがたい記事を載せたりしているわけですが・・・
はっきりとは言えませんが、正直、かなり怪しいと思わざるを得ません。

北朝鮮に関しては何度となく誤報を報じ、かつ訂正記事を載せてこなかったし、
何よりも現地では住民が爆撃を受けて逃げているのに、それを一つも記事に
していないわけです。朝日新聞の記者たちは。ロイター通信でかろうじて
ロシアの呼びかけを報じてはいるものの、どちらかといえば否定的な内容です。


これでは、ウクライナ軍よ、かまわず爆撃せよ
と言っているようなものです。



百歩譲って、東部で軍を支持している人間がいるとしても、
東部にもライトセクターの人間がいるという話ですから、
その種の保守派の人間がやっているものと思われます。


いずれにせよ、朝日新聞は東部からの難民がいること、
都市への空爆をウクライナ軍が行っていること、
それをポロシェンコが断固崩さない姿勢であることを知りながら、
あえてキエフ政権に都合がよい報道をしている
わけです。



そしてリビアやアフガンのように、すべてが破壊された後には
そんな攻撃は始めからなかったかのように報道数を減らしてしまう。


今の朝日をはじめとして新聞が売れない、テレビ離れが騒がれていますが、
根本の原因として、この種の悪質なプロパガンダを平然とやってのける点に
視聴者や読者が辟易していることが挙げられるはずです。

書くべきことが書かれていない。語るべきものが語られていない。
英語が読めない普通の人間は強制的に無知にされているわけです。

無知な人間を量産して、民主主義は果たして成り立つのでしょうか?

テレビ朝日のウクライナ報道

2014-06-15 22:51:07 | リビア・ウクライナ・南米・中東
肝心なことは何一つ…というのは、これまで何度も指摘した通りですが。


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ウクライナ軍機が親ロシア派に撃墜されたことなどに抗議して、
市民がロシア大使館を取り囲みました。


東部ルガンスクで14日、ウクライナ軍の輸送機が親ロシア派に撃墜され、
兵士49人が死亡しました。これを受けて、首都キエフでは、
約200人がロシア大使館を取り囲んで抗議しました。

市民らはロシア国旗を降ろし、建物に石などを投げ付け、大使館の車などを破壊しました。

一方、アメリカのケリー国務長官は、
ウクライナの首相やロシアのラブロフ外相と電話で会談し、
ラブロフ外相に対しては親ロシア派への武器流入などについて強い懸念を示し、
緊張緩和への努力を強く求めました。ウクライナのポロシェンコ大統領は
親ロシア派への攻勢を強めるとしていて、早期の停戦は難しい状況です。

http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000028863.html
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朝日新聞をはじめとして、ずいぶん非道い報道ばかりしているので、
まだマシなほうかと思うのが何とも言えない。


まず、この問題を考えるうえで重要な点として、
この「市民」が擁護しているウクライナ軍の機体は現地で空爆を行っています。

これはピンポイント爆撃ではなく、病院や学校、民家をも破壊するものです。
そのため、現在、ロシアやクリミアに避難する者が多くいます。


また、次の記事を読むと一層、この軍の悪質な面が鮮明になるはずです。


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スラヴャンスクから子供たちを乗せて出発した2台の自動車が、
ウクライナ軍の銃火にさらされ
、少なくとも女性3人が負傷した。


独立を宣言したドネツク人民共和国防衛省の補佐官で
作家のフョードル・ベレジン氏が、ブログで伝えた。


ベレジン氏によると、自動車は白旗を掲げていたという。
2台のうち1台の自動車が横転し、乗員は別の車へ乗り換えたが、
高齢の女性一人が腕を折り、自動車から救出することができなかったため、
成人の娘と一緒に残ったという。

ベレジン氏によると、現場となった地域はウクライナ治安部隊の管理下にあるため、
スラヴャンスクの義勇軍は同地域に入ることができない。

ベレジン氏は、救急医療機関に電話し、状況を説明したという。
ベレジン氏はブログに、「砲撃が停止し、負傷した女性が搬送されることを願っている」
と書き込んだ。

http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_13/273480348/
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なるほど、確かにドネツクの義勇兵は戦闘機を撃墜しました。
しかし、キエフ軍は民間人を攻撃しているわけです。


殺す相手が兵隊と民間人とでは、その残虐性も大きく異なるのは自明の理でしょう。


また、この大使館を攻撃した「市民」には、
ネオナチ政党であるライトセクターの人間もいたことも書かれていません。

↓参考サイト
http://rt.com/news/165984-unsc-russia-embassy-blocked/
http://rt.com/news/166020-ukraine-minister-effing-putin/


これまでにも幾度か指摘していますが、現在行われているのは
親ロシアか親ウクライナかではなくて、中央政府と地方自治体との戦いです。
キエフの保守派をスタンダードにして今回の内戦を語るべきではありません。


私は、少なくともジャーナリズムを標榜する機関ならば、
空爆を支持する人間より、空爆の被害に遭っている人間の
立場から報じるべきだと思います。「中立」という美名で
肝心の事実を報じない、意図的であろうとなかろうと、
この問題を論じるにあたって重要な事実を隠匿すべきではない。そう思います。

ウクライナからロシアへの難民が急増中

2014-06-13 23:09:05 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ここ連日、ウクライナの軍隊は他ならぬ自国の民衆へ向かって空爆を繰り返しており、
これをアムネスティをはじめとした欧米および日本の人権団体、メディアが静観しています。

そういう中で、やはりというか当然というか、
南東部からロシアやクリミアへ避難する民が急増しているようです。


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ロストフ州政府(ロシア南部の黒海沿岸の州)が、
ウクライナから大量の難民が押し寄せているとして、非常事態宣言を行った
と、「コメルサント」紙は伝えている。

難民は爆撃や軍事攻撃から逃れてきた人々。
ここ数日だけでも、ロシアに入国したウクライナ市民は、7000人以上を記録している。


ボランティアや社会的な支援グループは、
軍事攻撃が行われているウクライナ南東部のスロヴャンシク、クラマトルシク、
ルハンシク、ドネツィクから、住民を避難させている。

90~100人の各集団は、主に女性と子どもからなる。

難民が急増したのは、ウクライナ軍がいわゆる反テロ作戦を活発化させた先週末頃からで、
今後も増え続ける見込み。ロシア捜査委員会は、「ウクライナ南東部での対人犯罪」事件を
立件すると伝えている。捜査にあたるのは特殊捜査集団。

http://jp.rbth.com/politics/2014/06/05/6/5_48607.html
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下手をすれば20日には容認されるかもしれない集団的自衛権。
やはり、メディアは容認された後になって騒ぐ算段のようで、
まったく取り上げていません。


軍については色々意見があると思うのですが、
まず軍とは基本的に他国への防衛…ではなくて、
自国の民を弾圧するために歴史的に作られてきました。


日本史を例にとっても、日清戦争や日露戦争の前に
政府軍が行ったのは西南戦争や会津若松戦争、函館戦争。

すべて同じ日本人に対して銃口を向けています。


もっとも、明治初期はまだ「日本人」という意識が希薄で、
藩を主体とした国家観が主流でしたが(だからこそ廃藩置県が求められた)、
現在のウクライナにせよ、イラクにせよ、アフガンにせよ、リビアにせよ、
すべて政府軍は自国の民を殺害しているわけで、本質的には変わっていません。


次の記事も読んでみましょう。

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ウクライナ南東部の州からロシアへ殺到したウクライナ人の数は日に日に増しており、
状況の悪化に関連して一日に約7~8千人が国境を越えている。

ロストフ州を経由して親類や知人のもとへ向かう人もいるが、
まったく身寄りのない人もおり、そうした人々のためにペンションや
保養キャンプが提供され、そこで彼らは部屋や食事や日用品や医療援助を施されている。


たとえば、「ドミトリアドフスキー」だけでもすでに300人ほどが安息の地を見いだし、
ロシア非常事態省はその隣に追加のテント村を開設した。
ロストフ・ナ・ドヌ市には、隣国の市民のために全部で49ヶ所の収容所が用意された。


17歳のロジオン・プラホチンさんと11歳の弟のダニイルくんは、
ルガンスクから逃れてきたが、両親は、目に涙を浮かべて
二人をロシア行きの避難バスに乗せたという。二人はこう振り返る。


「むこうはとても怖かったです。とくに夜は。
 ウクライナの軍用機が低く飛んでいて爆発が起こり、
 そんなときは地下へ隠れました」


~中略~

小柄で痩せていて乙女のように見えるナジェージダ・ペトロワさんは、
あのスラヴャンスクから11歳の息子イリヤくんを連れて文字通り逃げてきた。


ナジェージダさんは、ついこのあいだまで幸せいっぱいだった。
法律家として成功し、ローンで住宅を手に入れた。町外れだが、自分の城だ。
ローンを返済しながら生活するお金に困ることもなく、
息子は追加で外国語を学んでスポーツもやっていた。
ところが、今回の惨事により、この小さな家族の夢は水泡に帰し、
彼らは隣国に身を寄せることになった。ナジェージダさんはこう嘆く。


ウクライナはまさに内戦状態です。
 国家親衛隊は一般市民を敵に回しており、
 男たちは自分の家族を守るために自警団に加わっています。
 以前はこれから爆撃するという警告が
 サイレンや半鐘などで事前にありましたが、
 今ではいきなり砲撃するようになりました。


 幼稚園や学校や病院や住宅も戦火に見舞われ、
 医薬品は高くなり在庫も無くなりつつあります。


うちの地区で爆発が起きるようになると、私たちは両親の家へ移りましたが、
夕食の最中に中庭で爆発があり、ガラスが砕け悲鳴があがりました。

窓の外を見ると、一階の玄関先に隣人が血まみれで倒れていて
すでに息を引き取っていました。ある女性は傷を負い、別の女性は
片足を失って救急車で搬送中に亡くなりました」

その数日後、スラヴャンスクの町外れの彼女の自宅も爆破され、止めが刺された。

ペトロワ家の人々は、ロシアへ避難する女性と子供を乗せるバスがあることを噂で知り、
すぐに問合せ先へ電話をした。バスは数分後に発ったので、
パスポートと出生証明書だけをもって家を飛び出し、何とかバスに間に合ったという。

http://jp.rbth.com/society/2014/06/09/48653.html
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このように、状況次第では簡単に軍は国民を殺す。


ですから、仮に集団的自衛権を容認するとしても、
それは徹底的に国民が監視し、軍の行動の決定権を握っている限りにおいて
成り立つべきであり、そうでない限りは暴力の解放とも言えます。


認めろ・認めないという単純な議論ではなく、もっと具体的な問題に
ついて話し合いたいところですが、そういう土壌が形成されていないのが
日本社会なわけで……フラストレーションがたまる一方です。

ドルに抗う第3諸国 金で脅す民主主義 抵抗する権威主義

2014-06-10 00:21:11 | リビア・ウクライナ・南米・中東
気に入らない国は、金の力で叩き潰すのが民主主義。


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クリミアでウクライナの銀行が活動することは禁じられている。
ロシアの銀行は国際的な経済制裁の対象になるリスクを恐れて進出しない。

これにより、クリミアの現金自動預け払い機(ATM)は止まったまま。

市民は預金を引き出そうとしたり、
クレジットの返済を行おうとしたりしているが、むなしい努力に終わっている。

連邦政府は現状の正常化を約束しているが、今のところ現金で取引することしかできない。


(中略)

ウクライナ国立銀行(NBU)の文書によると、5月6日より活動が禁じられている。

ウクライナの大手銀行クリミア支店の元幹部は、
ウクライナにとって外国人となったクリミアの住民が、
ウクライナ永住権などの追加的条件なしに
ウクライナの銀行のサービスを受けることは、法律で禁じられていると説明する。

NBUはクリミア住民へのあらゆる支払い、またクリミアとの決済を禁止したという。
これによってクリミアの預金者の口座は凍結されたが、銀行は返却権を持っていない。
また利用者がクレジットの返済を行おうとしても、クリミアから送金もできない。

http://jp.rbth.com/business/2014/06/05/48589.html
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言うことを聞かないなら預金を引き落とせなくしてやるぞ!

というわけです。



時間が経てば経つほど、中央政府の横暴が目に余ってきます。

ほとんどの識者は、この事態をもって民主主義の欠如を非難すると思いますが、
むしろ私はこういうことをするのが民主主義の本質だと捉えています。

(民主主義を絶対視することは、総じて民主主義を国是とし、
 また民主化という名の他国への干渉を正当化させる。

 実際に、彼らの多くはイラクの占領政策の失敗を
 その民主主義の本質のせいではなく、民主化に失敗したのであり、
 民主化そのものは良いものだと言っている。

 つまり、原則的に権威主義と彼らが名指しする国家に対して
 武力干渉、経済制裁を与えることは良いことだと是認しているわけである)

権威主義国では、途上国が多くを占めることもあり、
得てして武力を持って内外の敵を弾圧する傾向にありますが、
民主主義国の場合は、より狡猾で支援という形で間接的に武力介入する一方で、
食糧や金融を持って真綿で首を絞めるように体力を奪っていき、弱体化させていく。


逆らう国家や集団を、じわじわと嬲り殺しにしていくその様は、
暴力を使わない暴力とでも言えましょう。


こういう動きに対して、第3世界の諸国家も黙っているわけではありません。
近年では、ドルに代わる基軸通貨を打ち立てようとする動きが見られます。


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米国は強大な軍事力と基軸通貨としてのドルの力を背景に世界を支配してきた。
しかし、その力に陰りが指摘されて久しい。

米国はロシアに対して経済制裁を課しているが、
反発するロシアの対抗策の方がインパクトが強い。

ロシアを非難すればするほど、自国の弱体化を証明する泥沼にはまっている。

▼ロ中両首脳は5月20日、上海で会談し共同声明を発表。
金融での連携を強化し、ルーブル、人民元建ての貿易の増加を目指すと宣言。
直後にロシアのVTB銀行は、人民元による国際決済を開始した。
ロシアは朝鮮との貿易でもルーブル決済を開始する。西から東に重点を移している

▼ドル支配を瓦解させる動きは、制裁対象国から発信される。
ドルによる原油取引の中止を宣言したイランは、
自国通貨や相手国の通貨による決済に努めている。

南米、アフリカ、中東などでも、
ドルやユーロに経済的に対抗するための共通通貨を模索する動きが活発だ

▼1997年のアジア通貨危機や2008年の国際金融危機では、
 ドル依存の危険性を十分思い知らされた。ロシア、中国など、
 外貨保有率が高く、領土や資源が豊富な国がドル決済を解除し、
 潜在的な反米国家がそれに便乗することで、ドルは一気に弱体化する。
 制裁は自国に跳ね返る。

搾取と圧迫がある所には必ず抵抗がある。
 世界大戦後、力でねじ伏せられていた国々が反発し独立したように、
 経済で押さえつけられていた力が爆発する時が来る。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/il-287/
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最近、何かと欧米から攻撃を受けているロシアと中国ですが、
彼らも昔とは違い、十分に経済力を持ちつつあるわけで、
今後も先進諸国の言いなりになるつもりはないようです。

私としては、この動きに日本も加わってくれればと思わなくもないですが、
まぁ、大っぴらに欧米に喧嘩を売るこの動きに日本が応じるわけもなく。

というか、むしろ日本は欧米と一緒になって途上国を絞っているわけで、
まず、ないでしょう。いずれにせよ、金の力で解決するという手法は
もはや通用しなくなりつつあるわけで、その辺を踏まえて外交を
行わなければ、いずれ時代の波に乗れず大損をするような気がします。


海外における北朝鮮の報道

2014-06-09 00:23:58 | 北朝鮮

平壌科学技術大学に通う学生たち
http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/20140604riyo/


日本の北朝鮮の報道には誤報が大変多いのですが、
それは欧米メディアも同じことです。それら情報は、
冷静に考えれば間違いだとすぐに気づくものばかりですが、
北朝鮮=地獄というイメージによってすんなり受容されるのでしょうか?


今回取り上げる産経の記事などはその典型と言えるでしょう。


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北朝鮮当局が、国内の男子大学生に対し、
最高指導者である金正恩第1書記と同じ髪形にするよう発令したと、
欧米メディアが28日までに一斉に伝えた。

独裁国家の北朝鮮では髪形にも厳しい規定が存在し、
かつて「長髪禁止令」が出されたこともある。

ただ、金第1書記のトレードマークでもある側頭部を
大胆に刈り上げた独特の髪形への「統一令」に対しては、
国内でも不評の声が上がっているという。

髪形の自由すら認められない北朝鮮。
その“異質さ”が改めて浮き彫りなった。


http://sankei.jp.msn.com/world/news/140329/kor14032911370001-n1.htm
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・・・・・・






?????


というわけです。思いっきり誤報ですね。

冷静に考えれば、キムジョンウンと同じ髪型にしろだなんて、
生類憐みの令と同じくらいの愚法を発令するわけないでしょう。

みんなあの髪形だったら、気持ち悪いじゃないですか。
普通の美的感覚をもっていれば、やるはずがない。


第一、同じ髪型にしたからって何だと云うのです。する意味がないでしょう。



http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/py_140421/

4月21日時点で、北朝鮮の卓球の選手を見ても、
キム・ジョンウンと同じ髪型の人間はいません。



ちょっと考えれば、こんなアホな法律作るわけがないって
勘付くはずなのですが、向こうのメディアも相当アホなんですねー


・・・などと笑い話にするようなことではなく、
この現象は海外メディアの問題点を克明に反映したものだと思います。


まず、こういった誤報は、意図的に流している可能性が高い。


産経の記事の続きを読むと、この報道を行った最初のメディアが
ラジオ・フリー・アジアだったと書かれています。

ラジオ・フリー・アジアは合衆国議会が出資して
設立された機関で、その目的は…まぁ、言うまでもないでしょう。


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匿名の情報筋がラジオ・フリー・アジアに明かしたところによると、
約2週間前に朝鮮労働党から首都の平壌で口頭による通達が出されたという。
その後対象範囲が国全体に拡大されたとしている。
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またしても匿名の情報筋です。

誰が言ったのかはっきりしない情報、もしくは
誰も言っていないのかもしれない情報がまかり通っている。

これは日本のメディアだけでなく海外にも共通する問題点です。


このラジオ・フリー・アジアは、北朝鮮が国連から受け取った食糧は、
国民の間で分けられたという主張に対して、嘘だ!と騒いでいたりして、
日本の産経同様に、ある一つの結論を前提とした報道を行っています。

人はそれをプロパガンダと言う。


ただ、こういう分かりやすい屑メディアはともかく、
一見、中立を装っていて実は体制に倣っているメディアのほうが、
より性質が悪く、社会的害悪をもたらす
ものだと思います。


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また、韓国紙コリア・タイムズは、
「2000年代中盤まで、あれは中国密輸者の
髪型と呼ばれていたんだ。北朝鮮でも人気がない」
という中国に住む脱北者は本音を伝えた。
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このコリア・タイムズは韓国日報の英字新聞なのですが、
国内の北朝鮮の脅威を煽り立てる政府を、国民の不満を
そらすために行っているものだと批判しているのですが、
当の本人が、他ならぬ北朝鮮の脅威を宣伝しているわけです。


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一方、コリア・タイムズ紙は、韓国の朴政権が日本に対し、
理にかなった謙虚な外交姿勢をとることが重要だろう、と意見している。

また同紙は、アメリカのシンクタンクであるヘリテージ財団の
ブルース・クリングナー氏の意見をとりあげた。

同氏は、「国家主義は、戦前の日本帝国主義という
負のイメージを想起させるが、日本は単に世界標準となっている
政策方針をもっと国政に取り入れようとしているだけだ。
中国が見せている攻撃的な外交とは全くかけ離れたものだ」とみている。

http://newsphere.jp/world-report/20131226-7/
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こういう記事をみて喜ぶのは安倍政権の支持者及び関係者でしょう。

安倍の行った靖国神社参拝や、麻生のナチス肯定、
沖縄の竹富町での極右教科書の強制、そして軍拡。

コリア・タイムズは一見、冷静な意見を言えるようでいて、
実際には、読者から現実を見るなと言っているわけです。

それでいて、中国と比べると大したことがないという意見、
これは裏返せば中国の外交を相対的に貶めているのですが、
そういう言葉を取り上げて、フォローをしている。


この左の振りをしながら思いっきり右を応援している姿勢、
朝日新聞とそっくりなのですが、やはり韓国新の中では中道左派らしい。


右翼ではなく左翼が、ウソの情報を、さも本当のように流して
表面的には北朝鮮の脅威を批判しながら、実はバッチシ脅威を煽っている。

こういう巧妙で卑劣な手を使うのは万国共通ですね。

・追記
ただし、髪型に対して厳格な決まりがあるのは誤報とも言い切れません。
写真を見る限りでも、短髪の学生しかいませんし、風紀の取締として
服装や髪形の規制は近代国家も行ってきたことです。

針小棒大と言いましょうか、針で突かれたのに釘が撃ち込まれた
鉄バットで殴られたと報道されたのが真相なのではと考えています。

アムネスティ・インターナショナル批判 人権団体という名の工作集団

2014-06-08 00:17:11 | リビア・ウクライナ・南米・中東
アムネスティ批判については、イリノイ大学のボイル教授の
インタビュー記事が秀逸な出来で、一読することを薦めたい。


下記のサイトで日本語訳されているので、英語が苦手な方でも問題ないだろう。
http://bilininfojp.blogspot.jp/2012/12/blog-post_30.html


一部抜粋すると、次のようなことが書かれている。


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2012年5月、アムネスティ・インターナショナルは
「NATOよ、その調子で進歩を進めてくれ」

というロゴを使ってアフガニスタンでの戦争を煽るキャンペーンに参加した

このキャンペーンと、アムネスティ米国支部の新しいトップに
スザンヌ・ノッセル(米国元国務省)が就任したことについては、
アン・ライトらが書いている。フィリップ・ヴァイスは、
アムネスティがこのキャンペーンに賛同した理由はノッセル就任がすべてだと書いている。



2012年5月のNATO会議開催中、
シカゴに貼り出されていたアムネスティのポスター


http://bilininfojp.blogspot.jp/2012/12/blog-post_30.html
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この手のプロパガンダは今もアムネスティは行っている。

上の映像でも、ロシアの伝統工芸品、マトリョーシカを効果的に利用して
「ロシアは危険な国だ、腹黒い国だ、気をつけろ」と煽っている。

他方で、私が連日、取り上げているウクライナ南東部での
市民へ対する空爆行為は完全に無視されている。
支配者にとって都合がよい人権を守るために日夜闘っているということか。

ボイル教授の次の言葉をもって本記事を終えることとしよう。


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アムネスティ・インターナショナルを動かしているものは人権ではない。

まず第1にパブリシティで、第2に金、第3に会員を増やすこと、
第4に内紛、そして人権、人権問題への真正な懸念が最後にくる。

米国や英国と仲の悪い国の人権状況を扱う場合は、えらく着目され、
予算、マンパワー、パブリシティ、何でもゲットできる。好きなだけやり放題だ。

だが、米国、英国、イスラエルによる人権侵害を扱うとなると、
行動を起こさせるのは至難の技。どんでもない量の内輪もめ、内紛が起き、
圧力がかかったあと、渋々でなら腰を上げるかもしれないけど、
それにしたって公的な敵国リストに載ってる国とはまるっきり違うやり方でだ。

http://bilininfojp.blogspot.jp/2012/12/blog-post_30.html
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2015年12月28日追記

スプートニク紙のコメント欄に紹介されたのを機にフォント、文体を改めた。
内容自体は以前と変えていない。

本サイトで紹介したイリノイ大学のフランシス・ボイル教授の翻訳記事だが、
該当するサイトが消滅して、閲覧することが出来ない。動画も同様だ。

これに限らず、この手のサイトは、どういうわけかよく消される。
http://roodevil.blog.shinobi.jp/Date/20200226/
(↑ここは、その典型的な例)

仕方がないので、英文だがボイル氏の評論が読めるページを以下に列挙したい。

Amnesty International: Imperialist Tool
(直訳すれば「アムネスティ・インターナショナル:帝国主義者の道具」となるか。
 ここから原文を閲覧・ダウンロードすることが出来る。

Ukraine: The Brown (Shirt) Revolution(ここで読める
(インタビュー記事なので読みやすい。活字も大きく高齢者にも親切)

Amnesty International says
 humanitarian disaster looms as food aid blocked in Eastern Ukraine,
yet doesn’t tell the whole truth
2014年12月時点のボイル教授の評論。英文だが…たぶん大丈夫。
 こういう英文記事を読むたびに日本は情報が一部の人間に独占されているなと思う。
 普通の人間は英文を読む機会など滅多にないし、センターレベルの英文でも苦心するはずだ。
 とすれば、当然、我が国の左派系知識人は積極的にこういう文を翻訳すべきなのだが……)

竹中平蔵と余斌 現代経済の肯定者と批判者

2014-06-05 22:39:06 | 日本政治
アベノミクスは100%正しいと豪語する竹中平蔵氏。
http://toyokeizai.net/articles/-/15884



私はアベノミクスを批判する人間の中に、彼を擁護する人間がいるのを
非常に不可思議な気持ちで受け止めているのですが、まぁそれはさておき。


余斌という人物については、おそらく99%の日本人は「誰?」と言うはず。

ネタばらしをすると、この方は中国の経済学者で、
ポール・サミュエルソンやハイエク、フリードマンなどが主導した
近代経済学・新古典派経済学の批判者として、業界では有名な人です。


先日、彼が書いた資本論の解説書がこぶし書房から出版されました。
『さぁ「資本論」を読んでみよう』・・・直球ですねぇ。
http://www.kobushi-shobo.co.jp/book/b176215.html


本書の最大の特徴は、資本論の入門書でありながら、
最新の中国経済事情をはじめとして、市場主義経済の罠に
警鐘を鳴らし、また、それらシステムを構築させた
近代経済学(経済学部で習う経済学)そのものの批判にあります。


つまり、経済学の入門書でありながら、
現代批判の本でもあるわけです。


まだ、読んでいる最中ですが、非常に面白い。

中国の学者が自国の経済事情をどう受け止めているかを知る上でも、
必読の書ではないでしょうか?すでに台湾研究者の丸川哲史氏が
同書の書評を書いたとか。さもありなんですね。



さて、中国の経済学者が自国の経済の問題を
批判的にとらえているのに対して、竹中氏は
アベノミクスは「理論上は」100%正しいと評価した上で、
実行できるかどうかは疑問という実に彼らしい逃げ口上を述べていました。


ウマいですねぇ。
アベノミクスが成功すれば、「な?俺の言う通りだったろう」で、
失敗すれば、「やはり実行は難しかったか」と言うことができる

…どちらにせよ彼の意見は正しいことになるわけです。


そんな彼が先日、『ハバード経済学入門』という本を翻訳しました。
ハバードとは、ブッシュ政権で経済政策を担当したグレン・ハバードのこと。

彼が提唱するサプライサイド経済は、いわゆる新自由主義経済に属するもので、
同経済の批判者を筆頭に、多くの同業者から否定されているものなのですが、
これを日本の大学生に読ませるために翻訳したわけですよね。竹中先生は。



前から存在した経済格差を目に見えて拡大させた日本の経済学者と、
新自由主義を筆頭とする近代経済学の欺瞞性を暴露する中国人学者。

この違いは一体全体何なんでしょうねぇ…



特に後者に至っては、中国の社会科学の最高学術機関、
中国社会科学院に所属しているわけです。中国の国立大学は、
日本の国立大学と同じではないことは、容易に想像できることでしょう。

つまり、なぜか比較的言論や思想の自由が許されているはずの
日本の大学教授のほうが日本よりはるかに自由が制限されている中国の教授よりも
露骨に体制に迎合し、私利私欲のために職権を濫用している。これは注目すべき事実です。


ところで、アベノミクス礼賛の文章の中に、
スティグリッツも同意見だと述べている箇所があるのですが、
これが本当だとすると、イラク戦争批判で著名な彼も、本質は
同じだったということなんでしょうか…まぁ、思い当たる箇所はあるけれど。

大手人材会社パソナの会長、竹中平蔵氏が旗振り 人材会社を潤わす「300億円」の助成金を設けさせる

2014-06-05 21:02:26 | 日本政治
日刊ゲンダイの記事より。三流新聞だが、インタビューに応じた
五十嵐仁氏は労働問題を専門とする社会学者なので、信頼性は高いと思います。


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これも人材派遣最大手のパソナによる政官接待の成果なのか──
今年3月から大幅拡充された「労働移動支援助成金」が注目を集めている。
この制度で多大な恩恵を受けるのがパソナだからだ。


労働移動支援助成金は、従業員の再就職を支援する企業に国がカネを出す制度。
それまでは転職成功時に限って上限40万円の補助金が出たが、これを改め、
転職者1人につき60万円まで支払われることになった。

しかも、仮に転職が成功しなくても、
従業員の転職先探しを再就職支援会社に頼むだけで
10万円が支払われる。


この制度拡充を主張したのが、パソナ会長であり、
産業競争力会議のメンバーを務める竹中平蔵慶応大教授だった。


「労働力の移動と言いますが、要はリストラ促進助成金です。
 従業員をクビにすると助成金を受け取れる。
 昨年3月に開かれた第4回産業競争力会議で、
 竹中氏は『今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が
 1000対5くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージで
 やっていただけると信じている』と発言しています。その言葉通り、
 労働移動支援助成金は、本当に2億円から一気に300億円に増えた。

 この巨額の税金が、人材サービス業のパソナなどに流れ込むわけです。
 これが自社への利益誘導でなくて何なのでしょう
(元法大教授・五十嵐仁氏=政治学)

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150691
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日本の雇用体系の崩壊の一つの原因は、
彼が推進した労働力の流動化(派遣社員を増やし正社員を減らす)
なのですが、その経済政策で最も利益を得るであろう人材派遣会社の
会長職に収まって、大金を頂いているというのは凄すぎですよね。




わかりやすく説明すると、麻薬を合法化させた大臣が
大手の麻薬販売業者の会長になっていたようなもの
なのですが、
いまだに彼を擁護する人が少なくありません。他ならぬ庶民に。かなりの数で。


私も、さる場所でこの件について「派遣会社が得をする制度に
改造した後に、自分が会長になるあたり、陰謀めいたものを感じる」と
竹中氏を批判したところ、「それは決めつけだ」「批判者の意見を鵜呑みにしている」
という厳しい意見を頂きました。どうも陰謀という言葉がよくなかったらしい。


しかし、状況証拠からして、自分の利益のために行動しているのは
一目瞭然でしょう。私は誰かの意見をそのまま垂れ流しにしているのではなく、
ありのままの事実だけを並べると、彼が大金を得られるような経済システムを
「経済改革」の美名のもとで行ったようにしか見えないと考えているのですが……


彼らにとっては、「それこそがお前の思い込みだ」らしい。

ちなみに、「なぜ、そこまで竹中を庇うのかがわからない」と反論すると、
「これを『かばう』と受け取るあたり、隔たった観点に立っている」とのこと。

彼らは、この人材派遣の点については、どうでもいい、さして関心がないと
明言した後に、「傍から見た意見として」と称して、批判者の意見を
「それは言いすぎだ」「他人の意見に流されている」と否定するのです。


もし、その情報を流した相手がオウムだと知らずに
信じたらどうする?と言われました。少なくとも、五十嵐教授より
竹中のほうがよりオウム的だと私は思うのですが、そういう感情も
「お前は前から竹中が嫌いだから、少しでも批判できる情報を
 得ると過敏に反応してしまうのだ」らしいです。


要するに「気にするな」ってことですよね。


それが誰にとって都合のよい言葉なのか……
明らかに竹中をはじめとした派遣会社と、
リストラをしやすくなった大企業なんですがね……



私と論議した相手は、企業の経営者ではなく、ごく普通の労働者。
これに限らず、在日問題や歴史問題、軍拡でも感じることですが、
当の被害者たちの中に加害者たちに加担する人が一定の割合でいるんですよね。


彼らにとっては、無知であることが客観的であることで、
事情に詳しくなることを、情報に流されていると呼ぶらしい。


経済格差の責任者の一人を批判するのではなく、
その批判を浅薄な意見だとみなして一蹴するのが客観的意見らしい。


その一方で、彼らは、
消費税増税や年金といった自分に直接関係のある
問題に対しては、政府を批判しているんですよね。



私が同じような論調で、彼らの不満をせせら笑ったら、
どう感じるのか、想像できないのでしょうか・・・?


どうも、今の日本の政治や経済で語る人たちの中には、
自分のこと以外に関心がないくせに参加したがる人が多い気がする。

そういう連中は、百害あって一利なしで、
口出し無用なのですが、まぁ、喋ってくるんですよね。困ったもんです。