佳奈たちが秋田市を去る日がやってきた。
「もう、帰る日か・・・。」
秋田を楽しんだ久留美が名残惜しそうな顔をした。
「まぁ。何日か出れば春休みだしな」
佳奈が毒づいた。
「所で、彰ちゃんのことだけれども、先に返ってしまったけれども・・・。」
淡雪が佳奈に聞いた。
「彼女とは関東で会えるからね。だから秋田では是でいい。でも、あの先生が
原因でお前さんと彰の香具師が不和になったというのは・・・。」
淡雪は言葉に詰まっているようだった。
「佳奈ちゃん、もういいでしょ。淡雪がますます混乱するから。」
久留美が止めに入った。
「すまぬ・・・。」
佳奈は淡雪の方向を見ながら、バッグに帰りの荷物を詰めていた。
「先生のことは初恋だった。高校に入学してから初めての担任が先日の先生だった。中学まで
私のことを何かとかばってくれた彰ちゃんは、私を取られるのが怖かったのかもしれない。
私は其れを組んでやれなかった。だから・・・。」
涙目になっていた淡雪は、佳奈の肩を持った。
「ああ、関東であいつを見てやるよ・・・。」
佳奈は確信を満ちた顔をした。
関東に向かう電車の中・・。
車両が福島県から栃木県の県境を通過するぐらいの時、佳奈の携帯にメールが来た。
「彰です、今関東に向かう電車の中だと思ってmailを書きました。今立川の
下宿です。神奈川の佳奈ちゃんたちが住んでいる下宿に言ってみたいと思いました。
たしか、横浜駅から赤い電車だったよね・・・。」
そんな内容だった。佳奈はふっとした顔をしながら携帯を閉じた。
「あいつ、私らの下宿に来るな・・・。」
聞こえるような聞こえないような声で独り言を言う佳奈を
「えっ。」
という顔で淡雪と久留美はみた。
おわり