走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

野次馬

2019年08月16日 | 仕事
麻薬の多量摂取によるオーバードース(OD)。一向に終息を見せない。拮抗薬のトレーニングは学校でも職場でもオンラインでも行えるようになった。医療者でなくてもトレーニングを受けた者は他の人に教える事もできる。

トレーニングの質は大丈夫?と疑問に思う人もいるかもしれない。補足で学べる為ののオンラインコースでありビデオクリップである。

とにかく政府としては山火事のように広がるODを抑えるために出来るだけ多くの人にODを知ってもらい、ODによる死亡を防ぐ、これに力を入れているのだ。

で、外回り中にODしそうな彼を見つける。交通表示の棒によたれかかってかろうじて立っている。私の患者ではないがコミュニティーでよく知っている人。刺激を与えないとウトウトし出す。ヨタヨタと道路に出てしまう事も数回。声をかけながら眠らないように刺激を続ける。なんでもバスを待っているとか。バス停はあっちですよ、とアウトリーチワーカーとバス停に連れて行く。

コミュニティーの無料昼食に来る彼の行動から推測すると30分ぐらい前に麻薬を摂取した可能性が高い。丁度ピークに達している。瞳孔も縮瞳している。上手く問診は取れないが(ウトウトしているから) ODしているのは明らか。バス停の待合の席に座ってもらう。呼吸は落ちてきている。刺激を与えれば起き上がるがまたウトウトと。呼吸も1分に10回を切ってしまい。無呼吸も20秒も続く。拮抗剤を投与する事に決めた。

そこで叫び声を聞く。同じくバス停にいた若い女性からだ。

ODをしていないのに拮抗剤を投与しようとしている!と叫ぶのだ。振り返って「私は医療者ですから」と言っても彼女の野次は止まらない。自分もトレーニングを受けてODの事は知っている。あなたは退薬症状でこの人を苦しませたいに決まっているのよ!とまで言ってくる。もう2回、自分はプロだからと伝えましたが、OMGの連呼は止まらない。

無視する事を決めて第1投薬を筋注。

2分もしないうちに彼のODの症状は和らぎました。これなら2投目は要りません。しかし拮抗薬が切れる30分経つまで経過観察はしなければなりません。なので彼の側にいて話し続けました。どんどん目が覚めていく彼。彼女の野次はようやく止まりました。

街で目立つのでバッジもつけていない私が悪いのだけど、ちょっとかじったぐらいの素人が一番厄介だ!下がってろ!!!!って言ってやりたい気持ちをぐっと抑え立ち去るのであった。

注意)私は診察ができる医療者なので、自分の状況判断で安全だと思う範囲ならば救急車を呼ぶ必要はありません。しかしその他の人は真っ先に救急車を呼ぶ事が重要です。私の真似はしないように。


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