走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

北米の大学院

2018年08月06日 | 仕事
前回書いたプライマリーケアNPのコース内容。

NPは医師のように患者を直接治療するわけなので、それらの医学知識は必須です。しかし名前にナースが付いているように根っこは看護師なので看護セオリーを理解していなければなりません。

だからそれらのコースもみっちりあります。

511 Theoretical foundation of nursing Practice
504 Research and Evidence Based Practice
552 Methods in Nursing Science

の3つはCNSを目指す看護修士生もマネージメントを目指す看護修士生も、もちろんNPを目指す看護修士生も履修する必須科目です。3単位ずつなので合計9単位あります。統計を学ぶとかリサーチのやり方を学ぶようなHow To を学ぶものではありません。統計学とリサーチを通して看護の真髄を学びます。

私が日本で3年制の看護学校へ行った時は、総合看護学は沢山のセオリーを誰が、いつ、何を目的に、みたいな丸暗記的な無駄なものでした。

カナダの修士でした事は吐き気がするほどの数の文献を読み(ちょっとした電話帳より厚い)、それを自分の得意分野とする看護のエリアに使ってみて、何が出てくるのか、どのフレームやレンズを使うと自分が看護しているエリアの矛盾やシステム的に足りていない部分が見えてくるかをクラスで徹底討論する授業の繰り返しでした。こうやって様々なセオリーを理解し実践する事が出来るようになるのです。

看護師時代には健康を害するファクターは個人にありと考えがちです。しかし修士以上の授業を受けると(受けるという受動的で消極的な態度では学べません。授業に参加するといったほうが北米の勉学には合っています) 健康に1番影響を与えるのは社会のシステムだと理解できて、どこにメスを入れるべきかがわかるようになるのです。これが真の実践です。このマクロの視点で医療を考える事が出来る力量が修士以上の学歴保持者です。自分の目の前にいる患者のみ(ミクロ)を対象とする看護ではなく、組織(職場から国、世界まで見据える)を含めたグローバルな視点で看護を行えるのです。これが学士とは次元の違う、高次元の看護です。だからこそ卒業生は組織や政治を変革する事が出来る術を持ち合わせているのです。

よって以前にも書いたように、カナダでは修士以上の学歴を持つ看護師は全看護師人口の5%しかいないエキスパートなエリートなのです。

日本で修士以上の看護学歴をお持ちの方々、特に診療看護師を取得された方々。このように高次元の看護を実践する術を大学院で取得したと胸を張っていう事ができますか?



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