一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

耐力壁とホールダウン

2017年10月29日 12時08分57秒 | 住宅ノウハウ・実例
▲金属部分が、基礎コンクリートと柱を
つなぐビス式のホールダウン金物です 


「家の四隅のうち3か所が、35KNのホールダウン金物がつく設計になっています。
これでも良いでしょうか?」という質問がきました。

耐力壁や筋交いの配置による構造的な設計のバランスが悪いといけない
引き抜き力が大き過ぎると、計算上はOKでも木造の柱が裂けることがあるので、
考慮した方が良い、と

このブログやホームページでお話ししているので、
ご心配されたのだと思います。

いくつかの要素、条件、状況などで変わりますが
ひとまずの結論として、

上記の内容だけの質問に回答しますと

「ビス留め式のホールダウン金物35KNが、柱に1つついているだけならば
通常は、問題ないと思います。」

ということで、まず安心してもらってから、もう少し補足します。

阪神大震災の教訓から、2000年にこの制度がスタートした当初は
ほんとうにひどい現場をいくつも見ました。
住宅専門誌にも依頼を受けて写真と一緒に投稿しましたが、反響が大きかったです。

筋交いをカットしてホールダウン金物を付けたり
背割りのある柱に、ボルト貫通式のホールダウン金物を1つの柱に2か所付けたり
ホールダウン金物が全くなかったり、

などなど、それでも中間検査なしで合格、中間検査があっても指摘無し
という状態のときがあった記憶があります。

本末転倒ですし、何のために行うのか全く意味がわかっていない、
という状況のときがありました。

今では、金物が改善され、工事業者も使い方がわかってきたので
そういうひどい使い方は、見なくなりました。

熊本大地震で、長期優良住宅として認定を受けている住宅が
被害を受けた理由のひとつに
このホールダウン金物の施工不良がありました。

長期優良住宅で設計上は、耐震等級2以上、
建築基準法の1.25倍以上になっていて良さそうに思っても
施工が悪ければ、意味がないということです。

良い住宅にするには、良い設計だけでなく工事をしっかり監理して
細かい部分も含めて、見えなくなる箇所は手直しさせることが
同じように重要だと

私が何十年も言い続けてきている理由です。

手直しが必要のない現場というのは、まずありません。

話をもとに戻すと、全体の壁の余裕度がギリギリの1.0を少し上回る程度だと
ホールダウン金物に掛かる引抜き力の負担は、まともに必要になります。

全体が1.25倍、1.5倍と余裕ができるにつれて、
他の壁がそれだけ負担してくれることになるので、

計算上、同じ引き抜き力のホールダウン金物が必要とされていても
実際の揺れの場合は、余裕が出てきます。

ミタス一級建築士事務所が1.5倍以上を満たすように設計しているのは
このためでもあります。

そして、もうひとつ重要なのは、

平面的なバランスは
偏心率を計算することで数値化が可能ですが、

上下階の地震時の力の伝わり方が、大変重要なのです。

2階建ての場合は、屋根から2階、2階から1階、1階から基礎、
基礎から地盤へと、どのように力を伝えていくかを考えないといけません。

特に2階から1階が重要で、偏心率と違って数値化できません。
チェックも規制もありません。

直下率という考え方がありますが、

重要なのは、耐力壁にどのように流していくかなので
単純に柱や壁がある直下率とは少し違ってきます。

最初の質問に戻りますと、

もし、私が改善するなら、全体の壁量を1.5倍以上にすることを前提にして

① 外壁ではなく、内部の壁に筋交いや耐力壁を多くすること。
② 外壁には、できれば筋交いより、耐力面材を使うこと。
③ 床を含めて上下階の力の流れを考えて耐力壁を配置すること。
④ 筋交いを使う場合は、平面と上下階の両方を考えて向きを決めること。
⑤ 引抜き力を分散できるように、可能ならば窓の位置や大きさなどを変えること。


これをコンピューターを入れたデーターで

壁倍率、偏心率、金物の引抜き力を
シュミレーションしながら、ベターな方法を考えるのです。

ミタス一級建築士事務所では、スタッフがデーターをインプットして考えた後、
必ず私が上記の方法を再度行って訂正しています。

この具体的な方法は、一般の方には、とても説明できません。

プランによっては、無理な場合もあるので、

① そのプランの範囲内で、できるだけ改善する
② プランを僅かに変更しても良いので改善する
③ 1.5倍以上で、他の要素もクリアするようにプランも改善する

方法がありますが、

心配な方は、ご自宅の資料をもってお近くの建築士事務所に相談に行かれて、
(知識があるだけでなく実践していて、コンピューターソフトを持っている建築士事務所であることが前提)

①なら①の前提で、耐力壁と金物の修正図面とその理由を書いてもらい、
依頼している工務店やハウスメーカーにお願いするしかないでしょう。



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ご意見があれば、お気軽にどうぞ!

注文住宅 横浜市

横浜市 一級建築士事務所
コメント
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