ボクのいる森の下に住んでいる 仲良しの奥さん
ボクを見ても怖がらないし 慌てないし・・ 話しかけてもくれる
おとなしくしていれば お茶会に呼んでもくれるしお菓子ももらえる
誰に対しても同じようだから 親しい人が集まれるときに何となく誰かの話に
耳を傾けながら お茶を飲むときもある
ついこのあいだ聞いたお話
軽井沢におじいさまの代から別荘があって 長い間軽井沢を訪れているという高齢男性
中学生の頃 親しい友人と自転車で走り回っていた時のことだそうだ
みなさん この橋を見て どこにあるか、わかるかしら
お茶会の席にいた人の中に この橋の存在を知っている人もいて
昔は この真ん中の欄干が見える辺りの道幅で 木製の手すりがある小橋がかかり
歩行者や自転車が向こう岸と往来していた
そう 東部小学校の北側を東方向に通過する道に架かっている
ただ 車は通れない橋だったので 通称「 (車が)通れない橋 」って呼び名なんだろう
タクシーや 配送業のベテランの人たちは 古くからの別荘地にあるこの橋を
そんな風に読んでいたようだ
小学校の時の真冬、この橋を通って軽井沢駅前に会ったスケートリンクに
歩いてスケートの授業に通った・・とか
その頃は 小さな木造の橋で 簡単な木製の手すりがあった・・とか
地元の高齢者は だんだんいろいろなエピソードで話題に加わって来た
話し始めた男性は 話題の当時、友人とこの橋の周辺で遊ぶうちに大粒の軽石にハンドルを取られ
小さくて低い 欄干を乗り越えて下を流れる小川のせせらぎに落っこちてしまったのだそうだ
現在はこんな風に河川整備も整い
当時は こんなに整備もされていなくて もう少し水かさはあったんだろうか
幸いけがはしなくて、自転車も無事だったけれどほとんどずぶぬれ・・
まずいことに バシャ~ン!って水音が聞こえたのか
それとも 決定的ドジな瞬間を目撃されたのか 女の子がひとり立ち上がる自分を
やや離れたところから 見下ろしている
友人は これも無事だとわかると 大きな声で「 大丈夫かい ?!」と声をかけ
自転車を引き上げるのを手伝ってくれたけれど
今よりは道から川岸に上がり降りするのも苦にならない状況で
いつのまにか 女の子も手を貸してくれたり ハンカチを差し出してくれたりして
とりあえず別荘に帰ろうと歩き始めるまでに
誰からともなく笑いが漏れて そのうち 濡れネズミの自分も
思春期にありがちな 照れやカッコつけや恥ずかしさも 不思議とすっ飛んで
3人で 大笑いをしてしまった
その後の展開は既に記憶に遠くなって思い出せないけれど
この女の子に後にこの橋のたもとで再開した事が有って
成長期のお互いは 瞬く間にその様相が変わり別荘滞在も少なくなる年齢を通り
記憶も次第に薄れてしまった
仕事をリタイヤして軽井沢を訪れる時間に余裕がうまれ
久しぶりに 「 あの橋 」を訪れてみると
自分が乗り越えて?しまった 古い木橋は 金属橋に、、河川敷はコンクリート岸壁に
整備されたようだけれど・・・ 相変わらず「 通れない橋 」で
しかも 自分の様なドジもいたのか 歩行者や自転車も 「 通れない橋 」になっていた
抜け道したかったり 何かの事情で通りたい人もいるんだろうけれど
自分にとっては 少年時代の小さな思い出が遺された橋で
ちょっと ノスタルジックな思いを味わっている
・・んですよ
と 男性は遠くを見るような目線を 暖炉の火に向けて静かにお茶をすすり込んだね