行方不明者10万人の真実
「日本の行方不明は毎年10万人も発生している―」
よくネット上で語られているが、その実態はどうなのだろうかと調査する者はいない。
警察庁が毎年発行している『家出の概要資料』(平成21年度版使用)では、平成21年度中の家出人捜索願を受理した件数は、81,644人であるが、捜査された形跡はない。
10万人には達していないが、10万人という数字は平成13年~15年の3年間が、近年では10万人を超えていたので、そこからきた数字である。
(それ以前では昭和59年まで遡り、他の年じゃ8万~9万人台である)
これを見る限りでは行方不明者10万人とはあながち誇張でもないように見えるが、同資料を読み込むとその意味するものがイメージとは異なることが見えてくる。
平成21年度で家出人捜索願が出された人数は81,644人であるが、同年中で所在が確認された家出人は79,936人であり、1,708人の所在は確認されていない。
実に発見率は98%にも達し、この年の未発見者は1,708人しかいない。
この所在確認者は過去に家出した人がこの年に発見された場合も含んでいるが、人数にして7,881人程であり、毎年ほぼ90%後半の発見率で推移してきているが、1,708人を放置して
はならない。
これは「日本の行方不明者は毎年10万人もいる―」は現実を表している言説ではなく「日本で発見されない行方不明者は毎年1000人台程度」でしかないということになるが、ここで1,708人を見逃してしまうと今後も、行方不明者は続出することになる。
つまり、この1,708人が犯罪被害者の可能性もあるのである。
また、家出の動機別で見ると、家族・疾病・異性・事業等の理由が判明している件数を除くと、動機不詳の家出は11,506人でしかない。
しかもこの中で実際に犯罪に巻き込まれるなどして行方不明になったものは一体どれだけいるだろうか…?
殆どは自発的家出ではないかと思われる。
(※動機の中に犯罪によるものがあり、これには加害者と被害者両方が含まれている)
ただし、この所在確認には死亡した状態で発見された件数も含んでいる。
21年度では4,558人が死亡状態で発見され、そのうち自殺が3,071人、不明が1,487人にのぼっている。
不明者や自殺者でも解剖がされないことで他殺誤認があることも、考慮に入れる必要はあるかもしれない。
また、捜索願自体が提出されていない行方不明者が相当数いるであろうことも、同じく考慮しなければならないとは思う。
むしろ気になるのは、自発的に家出や自殺をする可能性がかなり低い、10歳未満の家出人の数が765人もいることである。
この10歳未満の家出人765人は、いくら考えても不可思議である。
海外旅行中に行方不明。
外国を旅行中のある日本人カップルが衣料品店を訪れた。気にいった品物を手に取り試着室に入る彼女。
だが試着室に入ったきりいつまで経っても出てこない。
男性が店員を呼んで試着室を検めさせるが、中はもぬけの空である。
店員に問いただすも要領を得ず、警察に掛け合っても無駄足に終わり、男性は悄然と帰国する。
数年後、男性は外国(中国、あるいは東南アジアのどこかとされることが多い)を旅行中、見世物小屋を訪れることとなった。
見世物の一つに「ダルマ女」というものがあり、悪趣味と思いつつ覗いてみると、そこには両手両足を切断されて生かされている無残な女性が一人いたが、男性を見るや否や、女性は何やら必死に喋ろうとするが、舌を抜かれ、喉を潰されているせいであろう。
その声は意味を成さない音にしか聞こえない。だが彼はその声に聞き覚えがあった。
ダルマ女の顔をもう一度よく見てみると、それは数年前に行方不明となった恋人の慣れの果てであった。
(1)場所
カップルが旅行していた「外国」はヨーロッパであることもあれば、東南アジアのどこかであったりもする。具体的にはパリ、ハンブルク、香港とされることが多い。一方、ダルマ女が発見されるのは大抵中国か東南アジアのどこかとされる。日本人の外国観を見て取ることができよう。
国外での女性の一人歩きは、危険極まりないということである。
(2)店員の対応
「そのようなお客さんは最初からお見えになりませんが」と、「パリ万博の消えた貴婦人と客室」を思わせるパターンもあるが、衣料品店も共謀しているのは明白なのである。
試着室の床が抜けて、落下するとマットの上に落下しますが、周囲には数名の男たちが苦笑いしながら待ち構えています・・・・・。
(3)女性の末路
消えたまま話が終わるパターンや、無事に救出されるパターン、中東のハーレムに売り飛ばされるパターン、「翌日、隣の肉屋には新鮮な肉が並ぶのです……」と人肉売買を示唆するパターンなどがあります。
このようにバリエーションは色々異なるものが確認されるが、試着室で女性が消えるというのが本話の骨子であることに変わりはありません。
さて、真実性の検証であるが、事細かに考えるまでもないだろう。衣料品店を手下に変えて、試着室を改造し、女性を拉致する人員を揃え、死なないように四肢の切断手術を行う。
特に四肢の切断手術など、相当高度な外科手術を要する大変な難作業である。まるで採算が合わないだろう。よほどの資力と企画力を兼ねそろえた変態でもない限り、宝石泥棒でも企画した方が遥かにマシというものだが、都市伝説の常として、この話に具体的な出典が示されることはない。元々無茶な話であることも考慮すれば、本件が単なる都市伝説であるのは明白であるように思える。
しかし、この犯行を行う者達を人類からレプティリアンに置き換えると謎は簡単に解けてしまう。
都市伝説
都市伝説全般に言えることであるが、この話がいつ、どこで発生したかをつきとめるのは大変難しい。しかし明らかにこの話に影響を与えたと思われる同様の話がフランスに存在していますので、紹介します。
フランスのオルレアンの町にある複数の衣料品店で、若い女性が次々と姿を消している。
その店はいずれもユダヤ人の経営する店で、彼らは試着室に入った女性に麻酔薬を嗅がせ
て地下に張り巡らされた通路を通して外国の売春宿に売り飛ばしているのだという。
この話は日本の「客の消えるブティック」と瓜二つであり、両者が無関係であるとは到底考えにくい。
この話は通称「オルレアンの噂」と呼ばれ、ジャンヌ・ダルクで知られるフランスのオルレアンの町で1969年の5月から6月にかけて爆発的に広まったものであるが、単なる噂にしては細かく時期が特定されているのは何故かというと、エドガール・モランを中心とするフランスの社会学者のグループによる克明な調査によって、噂の発生源から終息に至るまでの経緯が明らかにされているためである。
その調査結果についてはこの場では割愛するが、『オルレアンのうわさ』という古典に結集しているので、興味のある向きは一読されたい。文章が大仰で冗長という難はあるが、社会学・民俗学の名著である。
日本の「客の消えるブティック」の発生年は不明だが、1989年2月9日に発行された『女性セブン』に「恐怖怪異談」と題して、「デパートの試着室から24才OLが消えた!」という記事が掲載されている。
また、漫画「シティーハンター」の第1巻、「闇からの狙撃者! の巻」には、落とし穴を用いて試着室から女性を誘拐する人身売買業者が登場する。これは1985年の週刊少年ジャンプに掲載された話である。
それ以前の出典は残念ながら筆者は掴めていないが、発生は恐らく80年代前半ではないかと考える。「客の消えるブティック」の話自体は大変シンプルな筋書きゆえ、フランスと日本とで別個に発生したという可能性も無くは無いだろうが、1969年に発生した「オルレアンの噂」が日本に伝わったと見るのが妥当であろう。
単に試着室から女性が消えるというだけの話であれば、出典を巡る謎はこれで一件落着であるが、日本の「客の消えるブティック」には「ダルマ女」という新たな要素が加わっている。この要素はどこから来たのであろうか。ここで興味深いのは「灯台鬼」という話である。