『四季彩々里山だより』

大切な自然・四季の風景を未来へ・・・
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「彼岸花」・・・毎年、彼岸になると思い出す・・・・

2012年09月18日 | 心に残る一冊
(自宅の庭先に咲く・今年は暑さで当分先かなー)
二度とあってはならない悲しい出来事・・・・

        故・林大貴くんに捧げる 「彼岸花」      林有加

ある年の七月、十才の少年の灯が消え、ひとつの魂が生まれました。
短い命から生まれた小さな小さな魂でした。
その小さな魂は、母が恋しくて、神に、もう一度だけ母に会わせてほしいと頼みました。
神は、その純真無垢な魂を不憫に思い、願いを聞き入れてくれました。そして、神は、こう言いました。

「1日だけ、おまえを人間界にもどしてあげよう。ただし、人間の姿ではもどれない。
母が、おまえの姿を見つけ、母の声を聞くことが出来たなら、いつか再び、
親子として人間界に生まれかわることを許そう。しかし、母の声を聞くことが出来なかった時には、
魂は、消えてなくなってしまうが、それでもよいか?」

小さな魂は、九月の半ば、母との思い出深い彼岸花の姿をかりて、母の住む家の近くの
土手にひっそりと咲きました。

なつかしい家の窓には、悲しげに外を眺める母の姿がありました。
精一杯、健気に咲く一本の赤い彼岸花に目がとまったのでしょう。しばらくすると、
母は、引き寄せられるかのように、ゆっくりと土手の方に近づいていきました。
そして、母は、彼岸花に顔を近づけ、語りかけました。
「もう、彼岸花の季節になったのね・・・。ひろくんは、いつも、お母さんのために、このお花を
摘んできてくれたよね。ありがとう。」 母の目から涙がこぼれ落ち、声にならない声をふりしぼって
言いました「ひろくん、おかえりなさい。」そう言って、花をやさしく手で包み込みました。
やさしい、母の声とぬくもりでした。その母のやさしい声を聞くことが出来た瞬間、

「お母さん、ただいま!いつかまた、きっと、お母さんのこどもに生まれてくるからね。
ありがとう、おかあさん!」  彼岸花は、母の言葉と、いく粒もの涙を花びらで受けとめ、
ひとすじの光となり、空に昇っていきました。母は、空を見上げ、いつまでも祈りつづけました。
コメント (2)
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