東銀座の裏通りに、知る人ぞ知る肉屋があり、ここのコロッケがとてもうまい。
まだ銀座のそばに住んでいた若い頃の昼下がり、ここでコロッケをいくつか買い求め、自転車を転がして銀座4丁目の交差点(三越の前)で、休日の歩行者天国の人通りを眺めながら、揚げたてのコロッケを食っておりました。
銀座で立ち食いをするなら、木村屋のあんぱんかここのコロッケに限ります。
するとコロッケの匂いに惹かれたのでしょう、三人組の女性たちが話しかけてきました。
「あの、そのコロッケ、ひとつ譲ってくれませんか」
もちろん素直に教える私ではありません。
「あげてもいいけど、それではあなたたちは物乞いになってしまいます。ご自分で買ってください」
「どこで売ってるんですか」
「いや、こういうのは自分で探してこそ楽しいんですよ。人に教わったらありがたみがない」
「そういわず、どうか教えてください」
そこまでいわれると、こちらもいたずら心が湧き上がってきます。
「それなら、交換条件でいきましょう。あなたたちがこのコロッケに見合うと思う物を、私に買ってきてください。私がそれに満足したら、場所を教えてあげます」
見知らぬ男にそういわれれば、普通ならそこで断念すると思います。。
しかし彼女たちには、揚げたてのコロッケの匂いがよほど魅力的だったのでしょう。
しばし相談の上、ひとりが三越に入っていきました。
そして戻ってきた彼女の手には、どう見ても500円以上はするチョコレートが握られていました。
そこまでしてコロッケを食いたいか。
おそらく普段から、うまいコロッケを食い慣れているんでしょうね。親御さんがしっかりした料理を普段から食べさせているのだと思います。
交渉成立。自転車を押して歩きながら、いっしょに店まで連れていってあげました。
そこでコロッケを食べた彼女たちの喜びようといったら。
数十年前の、ひとつ100円もしないコロッケの、忘れられない思い出です。
まだ銀座のそばに住んでいた若い頃の昼下がり、ここでコロッケをいくつか買い求め、自転車を転がして銀座4丁目の交差点(三越の前)で、休日の歩行者天国の人通りを眺めながら、揚げたてのコロッケを食っておりました。
銀座で立ち食いをするなら、木村屋のあんぱんかここのコロッケに限ります。
するとコロッケの匂いに惹かれたのでしょう、三人組の女性たちが話しかけてきました。
「あの、そのコロッケ、ひとつ譲ってくれませんか」
もちろん素直に教える私ではありません。
「あげてもいいけど、それではあなたたちは物乞いになってしまいます。ご自分で買ってください」
「どこで売ってるんですか」
「いや、こういうのは自分で探してこそ楽しいんですよ。人に教わったらありがたみがない」
「そういわず、どうか教えてください」
そこまでいわれると、こちらもいたずら心が湧き上がってきます。
「それなら、交換条件でいきましょう。あなたたちがこのコロッケに見合うと思う物を、私に買ってきてください。私がそれに満足したら、場所を教えてあげます」
見知らぬ男にそういわれれば、普通ならそこで断念すると思います。。
しかし彼女たちには、揚げたてのコロッケの匂いがよほど魅力的だったのでしょう。
しばし相談の上、ひとりが三越に入っていきました。
そして戻ってきた彼女の手には、どう見ても500円以上はするチョコレートが握られていました。
そこまでしてコロッケを食いたいか。
おそらく普段から、うまいコロッケを食い慣れているんでしょうね。親御さんがしっかりした料理を普段から食べさせているのだと思います。
交渉成立。自転車を押して歩きながら、いっしょに店まで連れていってあげました。
そこでコロッケを食べた彼女たちの喜びようといったら。
数十年前の、ひとつ100円もしないコロッケの、忘れられない思い出です。