【はじめに】
焼石岳は奥羽山脈の中ほど、岩手県の南西部にある地味なお山だ。
高さは1500mを少し超える程度と低いが、
日本アルプスならば2500m以上の高所でないと見られないような高嶺の花が豊富に見られる。
早池峰山や鳥海山のように固有種が無いのは残念だが、
種類の豊富さ、お花畑の規模では東北でもトップクラスではないか
(少なくとも奥羽山系では断トツ)と思っている。
そのフロラ(植物の種類)は近隣の栗駒山や秋田駒、岩手山など新しい火山とは異なり、
少し離れた月山、朝日連峰など日本海側の高山や蔵王の不忘山、
遠く離れた北アルプス白馬岳と共通種が多いように感じる。
何故そうなのか。理由は定かではないが、勝手な推測をいくつか述べてみる。
姥石平越しに見た焼石岳山頂。2019/06/04
山頂の東側、姥石平には広大な風衝草原が発達している。
ここは冬の季節風が極めて強そうだ。
風で雪が飛ばされ、ハイマツや低木が生えにくい。そのため草原になっていると推測。
一方、その下の山腹、東側斜面には大量の雪が溜まり、
日本海側第一線の鳥海山、月山の東斜面に迫るくらいの多雪地帯になっている。
そのせいか亜高山帯にアオモリトドマツなど針葉樹林を欠如している。
また焼石岳は火山だが、山体が古く、至る所に大小の凸凹地形がある。
凹地の多くは、雪解け水を貯め込んで、池や湿原になっている。
このような多雪気候と複雑な地形が、
昔の寒冷な時代に広く分布していた北方系植物のシェルター(避難場所)となり、
現在でも数多くの高山植物を育んでいるのではないかと・・・。
本図鑑は、焼石岳の最も一般的な登山コースである中沼コースで見られる花を主体にしている。
それ以外には秋田側から入る東成瀬コース、北側の湯田コースも少しだが歩いてみたら、
中沼コースには無い花がけっこう咲いていた。
同じ山なのにフロラが違うので、この二ルートについては、後の方で別頁にまとめてみた。
掲載順はおおむね、開花が早いものから、山の低い所から見られる順に並べているが、
開花期間の長い花や特徴的な一部の花は複数回登場させている。
植物名の同定にあたっては、手持ちの複数の高山植物関係書籍を参考にさせて頂いたが、
自信の無い種類については、「~だろうか。」と表現している。
正確な名前をご存知の方、また何か間違いにお気づきの方はご指摘頂きたい。
【六月(低所)の花】
焼石の花盛りは意外と早い。その中心は山頂のすぐ東に広がる姥石平。
中腹はまだ雪に覆われていると言うのに、そこだけは雪消えが速く、
六月上旬には冒頭写真のようなお花畑が出来上がる。
が、中腹に咲く花から始めて行く。
2019/06/04 銀明水のリュウキンカ群生。
ミズバショウ 2017/06/17
リュウキンカ 2018/06/23
この山にはミズパショウとリュウキンカがとにかく多い。
中沼のほとりなど低所では六月上旬に咲くが、
銀明水の上部や南本内岳の一部など、雪消えの遅い場所では、
八月お盆頃に咲いていることもあり、驚いてしまう。
中沼から銀明水にかけての登山道沿いや焼石沼付近には
リュウキンカの黄金の花道や絨毯が出来てみごとだ。
ミズドクサは中沼に多い。バックの黄花はリュウキンカ。
ミズドクサ 2017/06/17
ツルキツネノボタン 2017/06/17
ツルキツネノボタンは北海道から長野県にかけて分布し、比較的まれな植物とされているが、
八幡平やここ焼石ではごく普通に見かける。
ブナ樹林帯の花たち
タムシバ 2021/06/10
ムラサキヤシオ 2019/06/04
ミヤマスミレ 2021/06/10
コミヤマカタバミ? 2018/06/23
サンカヨウ 2017/07/08
サンカヨウの白い花弁(厳密には内萼片)は雨や夜露にあたると透明になることがある。
サンカヨウの花のアップ 2018/06/23
シラネアオイ 2018/06/23
オオバキスミレとノウゴウイチゴ。2018/06/23 焼石沼付近にて。
ノウゴウイチゴ 2018/06/23 花弁は7,8枚。
アキタブキ 2018/06/23
灌木帯の花たち
ベニバナイチゴ 2021/06/10
サラサドウダン 2018/06/23
サラサドウダン 2018/06/23
以上。
「(2) 6月高所編」へ続く。
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