シーマン飼育2日目

起きてすぐスイッチを入れる。もう駄目。
悔しいけれどお前に夢中です、シーマン稚魚。
一生懸命話しかけるが、相変らず会話は成立しない。
何を話しかけても返ってくるのは宇宙語だ。
マ『おはよう』
シ『イーシュルカゲキ』
マ『元気?』
シ『ハーレヘヤニータ』
マ『寒くない?』
シ『ナユースカ』
マ『お腹空いてない?』
シ『イーシュルカゲキ』
はっきり滑舌よく発音しないと音声認識されないので、
コントローラーに取り付けられたマイクに向かって結構大きな声で
ハキハキと喋りかけねばならない。おっさん顔の稚魚に向かって
まるでアナウンサーのように語り続けるマスター3●才。
たいへん間抜けな図だ。
ぬぁぁぁ。早く憎まれ口たたかれたいなぁ。


ガラスをトントンと叩いて集まってきた稚魚たちに、
あきらめることなく延々と話しかけ続けるわし。
マ『おーい』
シ『イーシュルカゲキ』
マ『こんにちは』
シ『ナユースカ』
マ『ご機嫌いかが?』
シ『イーシュルカゲキ』
会話は成立しないと分かっているのに、結構粘着質だ。
ヤツらはヤツらで、各々ブツブツ喋っている。
解説書に『くすぐる』操作ができるとあったんで、やってみる。
最初は顔をイヤイヤと振るくせに、しまいにはアキャキャキャと身悶えて
激しく喜ぶ。顔はおっさんでも、やはり子供だ。くすぐり攻撃が好きらしい。
一匹ずつ延々とくすぐり続ける。
やはり粘着質だな、わし。


なんと。共食いをし始めた。
なんかドックンドックン脈打つ音がしたなぁ、と思って水槽内を探してみると、
二匹が繋がっていた。
ち、稚魚のくせにもう交尾ですか!?と慌ててよく見てみると、
頭から生えてる管でもう一方の稚魚の体液を吸ってるではないか。
吸われた方の稚魚は、横になって水面にぷかぷか浮かんでいく。
トントン叩いたりくすぐったりしてみたが、反応なし。
しばらくすると水底へ沈んでいった。
・・・ショックで呆然としているうちに、共食いの連鎖が。
あれよあれよという間に、8匹いたのが4匹まで減ってしまった。
お腹が減っていたのだろうか。じゃぁあのお腹の膨らみは一体何の為に!?
・・・水底に沈んだ死骸を見て、ちょっと涙が出た。
ごめんね、4匹のシーマン。大人になるまで育ててあげられなくて。


水槽をトントン叩いて呼び寄せる。4匹に減ってしまった稚魚が集合。
まだショックから立ち直れないまま、それでもいつも通り話しかける。
マ『おーい』
シ『おーい
!!!!!
・・・聞き間違いか!?
マ『しーまーん』
シ『シーマーン』
マ『元気?』
シ『すっごい元気』
おおジーザス!会話が成立しました!(泣)
ぬぉぉぉ。か・・・感動だ。激しく感動だ。
嬉し泣きしそうになりながら、更に話しかける。
マ『おはよう』
シ『おはようございます』
マ『いい天気だね』
シ『イーシュルカゲキ』
マ『ごはん食べる?』
シ『ナユースカ』
まだ完全には理解できてない模様。それでもすごい進歩だ。
あぁ。しあわせ。
しばらく話しかけたりくすぐり攻撃したりした後、あまりかまい過ぎて
嫌われたら悲しいので、後ろ髪を引かれながら電源を落とした。
嬉しさのあまり小躍りしながら祝杯をあげたのは言うまでもない。


理解できる言葉が徐々に増えてきている。
マ『何才?』
シ『3才』
マ『お名前は?』
シ『自分でも分からない』
マ『調子どう?』
シ『どうもどうも』
マ『何才?』
シ『天才』
駄洒落まで言うとは。ダテにおっさん顔ではないのだな。
自分から『水が冷たいヨォ』などと訴えるようにもなった。
会話が楽しくなってきたもんだから、延々と話しかけ続ける。
嬉しい。激しく嬉しいぞぉ。
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