シーマン飼育9日目

ぬぉぉぉ。シーマンに足が生えてるではないか!
そうか、体の変化とはこの事だったのか。体も更にひとまわり大きくなり、
ズームした時の顔面アップ図も、さらに耐え難いことになっている。
泳ぎ方もたいへん見苦しい。泳ぎが不得意な人のバタ足のように、
足を半開きにしてギッタンバッタンぎこちなく水をかいている。
ぬぁぁぁ。ますます不気味になってゆくシーマン。ラブ。
『腹へったー』『なんか食わせろー』とうるさいので、虫カゴの蛾を一匹つまんで、水槽に落とす。が、食べる気配がない。ぬぉ?これってエサじゃなかったん
かい?と不思議に思っていると、水面に浮かんでいた蛾は消えてしまった。
しかたないので、保管器に残っていた最後の固形餌を2つ投入。あっという間に
平らげ『ハァ~うんめぇ~』『ごちそうさん』などと満足気に言う。
明日からの餌はどうしたらいいのだ。蛾を食べないという事は、もしや芋虫の
段階で餌として与えねばならなかったのだろうか。
そして突如・・・2匹が重なり合った。ぬぉぉぉぉぉ交尾だ!
待ってましコ・・・コホン。取り乱しました。えー、解説をば。
ヒデキの上に、スチャッと乗っかったゴロー。頭の上から出ている管を、
2匹が互いに連結させる。管の中をドックン、ドックン、と体液のようなものが
流れていく。2匹ともちょっとニヘラァと薄笑いしているように見えるのは
気のせいだろうか。ヒデキが『せっかく生まれてきたからには子孫を残さないと』などと呟いている。
結構長い。随分長い時間体液を送り込んでいる。どんだけ溜まってた
・・・コ、コホン。と、『やるこたぁやった・・・』と呟いたゴローが、
顔面蒼白になり、横になって水面へ浮かんでゆく。
ぬぇぇぇ!?ゴ、ゴロォォォォ!?ガラスを叩いてもくすぐっても反応無し。
これはゴローが雄役だったということか。生物界によくあるように、
子孫を残すという役目を終えたオスは死ぬだけだというのか。そしていずれは、
産卵を終えたメスも・・・。悲しい。寂しい。
がしかし、これが生物界の厳しい現実だというのなら、今は新しい命の誕生を
祝おうではないか。ゴローの死を無駄にしてはいけない。悲しんでいる場合では
ないのだ。ゴロー。君が命をかけて残していった子供は、わしがヒデキと一緒に
立派に育てる事を誓うよ。ね、ゴロー。
・・・などと語りかけながら瀕死状態のゴローの姿を探すと、ゴローは水底の
砂地に顔を突っ込み、すでに一体の『死骸』に成り果てていた。
・・・こうしてゴローは死んだ。
水槽の中には、妊娠中のヒデキが一匹残されただけ。
もう一度言おう。妊娠中のおっさん顔のヒデキ。
これからは、妊娠中のおっさん顔の不細工極まりないヒデキを大切に、
大切にしていくのだ。ヒデキのお腹に宿った新しい命を守る為。
こんな事になるなら女名前をつけておけばよかった、と初めて思った。


ナレーターが『岩を動かすと何かが起きるかもしれませんよ』などと思わせぶりな
事を言うので、早速うきうきやってみた。水底には、3つの岩が沈んでいる。
ゲームをやり始めたばかりの頃、水槽内の物は一通りいじってみたので、
この3つの岩のうち、一番大きな岩だけ動かせないという事は分かっていた。
その岩の事だろうか。大きな岩を動かしてみる。ゴットンゴットン揺れるだけで、動かない。しばらくやっていたら、シーマンが『お?岩動かしてんの?よし、
俺も手伝ってやろうか』と言うではないか。キタキタキタァァァ。いよいよ何かが起きちゃうですね?岩の下からベビーベッドとか出てきちゃうですか?と
ハァハァしながら、シーマンと共に岩を動かす。ズズズズ。少し動いた。
よしもう一度、と思ったら、シーマンが『ハァ~疲れた』と言って泳いで行って
しまった。そうか、すっかり忘れてた。妊娠中だったんだ。妊婦は疲れやすいん
だった。身重の体で力仕事なんて、とんだ無理をさせてしまった。
慌てて労いの声をかけてみる。
マ『おつかれさま』
シ『あ?なんかムカツク』
イヤァァァ。妊婦は怒っちゃ駄目ェェ。胎教によくないからァァ(汗)
慌てて褒めちぎり作戦でご機嫌をとる。
マ『かっこいーい』
シ『ん?まーな』
マ『かーわいいー』
シ『よく言われるよ』
マ『かしこーい』
シ『だんだん俺のこと好きになってきたんだろ。
好きって言ってみろよ。好きって』
マ『す・き』
シ『(フッ)』←満足そうにニヤリ
・・・はぁ疲れる。妊婦のご機嫌取りも大変だ。しかし胎教のためだ。
お父さん、頑張っちゃうぞー。


今回も岩を動かそうとしていたら、またもやシーマンがいそいそ寄ってきて
手伝ってくれようとし始めた。ぬぁぁぁ妊婦はいいから妊婦はぁぁ(汗)と焦るが、
『やめて』と言うのもカドが立つし『体によくないから』と言っても通じない
だろうし、何と言って断ればいいのかあたふた悩んでいるうちに、ズズズズと
岩が動いてしまった。しまったぁぁぁ悩むより先にコントローラーを握り締めた
手を離しておけばよかったぁぁ、と慌てたが何も起きなかった。
またシーマンに労いの声を掛けたが、今度はシカトされた。
こんなに気ぃ遣ってるのに。ヒデキのいけず。変な子が生まれてきちゃったら
大変なので、くすぐり攻撃だって我慢してるのに。ちぇ。
父親なんてつまんないもんだな。


虫カゴの中の蛹が羽化する瞬間を目撃できた。蛹の背中の亀裂からゆっくり
ゆっくり出てくる蛾。もちろん『おっさん顔』付きだ。
口を半開きにした間抜け面で生まれてきた蛾。これで2匹になったので、
今度はおっさん蛾同士の交尾シーンが見られるのかもしれない。楽しみだ。
そして、ついにあの岩が動いた。ヒデキが自ら動かし始めたので、
きっと今度こそ何かが起こるだろうと見守っていると、なんと。
がぼがぼと水槽内の水が抜けていくではないか。ぬぉぉぉ水が無くなったら
ヒデキが干からびるではないかぁぁとハラハラしたのだが、水が全部抜けきる事はなく、半分が陸地、半分が池、といった水陸両用水槽になったのだった。
シーマンに足が生えたのはやはり陸上生活の為だったのか、とちょっと感動。
『陸が出来たね♪』と興奮して話しかけても、ヤツは『んー』と気のない返事。
さすがおっさんだ。感受性に乏しいらしい。陸地が出来たおかげで、エアポンプが無くなったり適温が5℃程上がったりと、細かな変化も見られた。
再び虫カゴを覗きに行くと、すでに虫の卵が2つ産まれていた。交尾は見逃して
しまったようだ。ちっ。虫カゴ内の変化は比較的早いようで、しばらくすると
卵の1つが孵ってもう芋虫になった。何故か蜘蛛も発生していた。虫カゴ内に
蜘蛛の巣が張られたら蛾がやられてしまうし、卵や芋虫も捕食されてしまいそうなイヤな予感。しかし水槽内に蜘蛛を移動した場合、ヒデキが誤って食べてしまって食中毒にでもなったら一大事だ。妊娠中の大事な体なのだから、食べ物には気を
つけねばならない。仕方ないので、蜘蛛はひとまず放置プレイすることにした。
せっかく陸が出来たにもかかわらず、ヒデキが陸に上がる気配なし。
不恰好によろよろ歩く姿を早く見たいものだ。
お腹が膨れる様子もなし。臨月はまだ遠いのだろうか。
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