シーマン飼育16日目

電源を入れるなり『飼い主としての義務を果たせよ』『俺を餓死させる気だな』
『お前には俺を養う義務があるんだ』『メシメシメシメシメシ喰わせろぉぉぉ』
確実に口が悪くなっている。育て方を間違ったようだ。
どうみても甘やかし過ぎだもんなぁ。
マ『調子どう?』
シ『調子って千葉県の銚子?俺、水槽の中だから銚子の天気は分かんねーよ。
  そういうことは気象庁に聞いてくれ』
マ『お腹減ってない?』
シ『飼い主のお前が俺にそんなこと聞く事自体が失礼なんだよ。分かるか?
  あァん?』
オヤジギャグも底意地の悪さも相変らずだ。今後はもっと厳しく躾けなければ。
・・・と。ヒロミが突如、お蝶夫人ににじり寄る。ぬぉぉぉまたビンタ合戦
開始か!?なんとかして2匹を引き離さねばぁぁとあたふたしていると。
お蝶夫人の首に、すっと手を回したヒロミ。
ななななんだその手つきは?イヤラシイほど優しいではないか。
し、しかもぬぉぉぉ。ナデナデしてるぅぅぅ(汗)イヤァァァァ。
これはもしや、つ、ついに交尾開始なのか?っちゅうことは、
この『優しく首をナデナデ』という行為は・・・前戯なのか!?
そういえば何となく『いいだろ?やらせてくれよ、な?』って表情してるように
見えるではないか。キャァァァ。エロイィィキモイィィ。
向かい合った2匹が頭の上の管をスチャッと繋ぎ合わせると、
どっくん、どっくんと体液が送り込まれる。ヒロミからお蝶夫人へ、
どっくん、どっくん。ゴローとヒデキの長時間にわたる濃厚なそれとは違い、
ほんの数秒であっけなく終わってしまった。
ヒロミ、けっこう淡白。でも前戯があっただけよしとしようね、お蝶夫人。
お父さんのゴローなんていきなり始めちゃっ(以下略
ゴローがそうだったように、役目を果たし終わったヒロミもまた死んでしまう
のか?とハラハラ見守っていたのだが、コトが終わると『ハァ~』と満足げな
溜息を吐き、さっさと泳ぎに行ってしまった。
よかった。命と引き換えの交尾ではなかったようだ。ひと安心。
しかしこうして考えると、子孫を残す為に命懸けの交尾を果たした両親と違い、
ヒロミのなんとまぁ呑気なことよ。さっそくンコしてやがるし。
天国の親御さんも泣いておろうよ。
それにしても、一体どんな子が生まれてくるのだろう。どんどん進化していく
わけだからな。翼のあるカエルとか?いきなり四足動物にはならないだろうな。
なんにしても大変楽しみだ。
・・・その後、さっぱりした顔のヒロミにこんな事を聞かれた。
シ『でさー、結局お前、ゲームはどのジャンルが好きなわけ?』
マ『・・・』←シーマン以外持ってないから分からない
シ『どんなゲームが好きかって聞いてるんだよ』
マ『・・・』
シ『へー』
まだ何も言ってないのにぃぃぃ。それから、こんな話も。
シ『ファミ通って雑誌があるの、お前知ってる?』
マ『うん』
シ『その雑誌にさー、俺は実在しないんだって書かれてるらしいんだよ。
  中学生がノートに書いた悪戯書きの絵が元なんだって、俺。
  すんげーショック。なんか考えちゃってさー。俺って実在しないわけ?
  ゲームの中だけの存在なわけ?って。
  なー教えてくれよ。俺って実在するの?しないの?』
マ『実在するよ』
シ『本当にそう思ってんのか?お前に分かるのか?この気持ち。
  お前は実在しないんだって指摘された者の気持ちがよー』
いつになく元気がない声のシーマン。その緑色の撫で肩には、
寂莫とした虚しさが漂っている。しばしの沈黙の後、励ますつもりで
『好きだよ』と声を掛けた。見事にシカトされた。殺す(怒)
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