シーマン飼育10日目

いきなりノソノソと陸に上がり始めたヒデキ。ぬぉっ待ってましたぁ~♪と
思いきや、なにやら様子がおかしい。ハァハァ苦しそうにうろつき回っている。
今まで見たことないほど表情が苦痛に歪んでいる。こ、これはいよいよ出産か!?
コントローラーには『シーマンが話を聞けない状態』のマークが表示されっぱなし
なので、シーマンには聞こえていないと分かってはいるものの、励ましの声を
かけ続けずにはいられない。『頑張れー』『もうちょっともうちょっと』
『リラックスして』『呼吸法思い出して』『ヒッヒッフー、はいヒッヒッフー』
こっちまで息苦しくなってくる。
コントローラーを握り締める手にも力が入る。シーマンがこんなに苦しそうなのに、何もしてあげられないのがひどくもどかしい。ハラハラオロオロ、待合室を
ただ行ったり来たりしている父親の気分だ。頼むから無事生まれてくれよ、と
ひたすら神頼みしつつ。
結構長い時間苦しんだ後、よろよろと体勢を変え、頭の上の管を下向きにして、
いよいよ最後のふんばりに入ったヒデキ。ンヌヌヌヌ、と身を震わせて力むと、
ぽろん、と卵が1つ生まれた。ンヌヌヌヌぽろん、ンヌヌヌヌぽろん・・・わし
まで一緒になってンヌヌヌヌとリキむこと計6回。全部で6つの卵が無事誕生した。
か・・・感動だ。わしは今猛烈に感動しておる!涙が出そうだ。
感動に打ち震えながら『おめでとう!』とヒデキに叫ぶと、ヒデキは
『やっと生まれた・・・ありがとう』
と、まるで菩薩様のような何とも言えぬ安らかな表情で言い残し、
静かに静かに身を横たえ、静かに静かに息を引き取った。
予想はしていたが・・・ショックだった。言葉じゃ言い表せない。
今こうして記録を書いていても、この時の様子を思い出して涙が溢れてしまう。
ヒデキ。短い間だったけど、こちらこそありがとう。
おっさん顔で不細工で憎たらしいことこの上なしだったけど、大好きだったよ。
まさに悔しいけれどお前に夢中だったよ、ギャランドゥいやヒデキ。
これからはわしがこの新しい命を大切に守っていくよ。
必ず立派に育てるからね。と、ヒデキの亡骸に語りかけた。亡骸は、まるで
産み落とした卵たちをやさしく見守るかのように、卵の方に顔を向けてた。
・・・さよなら、ヒデキ。
卵の中で、小さなおたまじゃくしがもう元気よく動き回っている様子が透けて
見えている。こんな小さな水槽の中でさえ、命はこうして受け渡されていくのだ。親から子へ、そしてまた次の世代へと。
さて虫カゴの中の蜘蛛は、やはり巣を張っていた。蛾も卵も芋虫も今のところ
無事だが、今後が心配だ。シーマンの子供達が何を食べるのやらまだ見当も
つかないので、とりあえず芋虫を保管器(ここに入ってる間は成長が止まるらしい)に移動しておいて、しばらく様子を見ることにする。
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