シーマン飼育11日目

虫カゴの中の卵が、2個とも孵って芋虫になっていた。そして蛾はまた新たに
2個産卵。オゥ出産マシーン。この調子で増えていけば当分餌に困る事はない
だろう。心配していた蜘蛛も、ただ蜘蛛の巣の中でジッとしているだけだ。
悪いヤツではないのかもしれない。
そしてゴローとヒデキの忘れ形見、6個の卵がいつ孵るかいつ孵るかとそわそわ
見守る。早く出ておいで、と水槽のガラスをコンコン叩いてみたり、
卵をくすぐってみたり。すると、卵の中のおたまじゃくし達が、殻を食い破ろうとするかのように口をモグモグさせ始めた。ぬぉ!?こ、これは・・・確かワニとかヘビとかも、赤ちゃんが自ら卵の殻を食い破って生まれてくるんじゃなかったか?この子らもそうなのか!?とドキドキ見つめていると。
ぷりるっ、と6個の卵が一斉に弾けた瞬間、おたまじゃくし達が一気に
生まれて飛び出てジャジャジャジャーン。元気よく水中へダイブ!
う・・・生まれたァァァァ(泣)
ハァハァ言いつつ、水中をクローズアップ。
親譲りの見事なおっさん顔のおたまじゃくし誕生だ。
ガラスをコンコン叩くと、小さな小さなおたまじゃくし達がわらわら寄ってくる。
親そっくりのふてぶてしい顔が6匹、並んでこちらを見つめている。
『んァ?なんか文句あんのかよ?』とでも言わんばかりの不機嫌な顔つきで。
試しに話しかけてみた。
マ『おーい』
シ『んー』
マ『こんばんは』
シ『おばんです』
マ『元気?』
シ『フツー』
マ『無事生まれてよかったね』
シ『・・・』(認識せず)
マ『お腹へってない?』
シ『別にー』
マ『お誕生日おめでとう』
シ『ア?いいかげんにしろよ』
マ『今どんな気分?』
シ『なんのつもりだよ』
マ『遊んでー』
シ『よし、遊ぶか』
マ『何して遊ぶ?』
シ『見りゃ分かるだろ 泳いでんだよ』
声も性格もチグハグ具合も親そっくりだった(泣)
そしてさっそく『お前最近、自分が元気である事のありがたみを忘れて無いか?』
『俺はさー、古代エジプトから~』などと説教開始。
偉そうなセリフの端々まで親とそっくり同じだ。何故にわしは親子2代にわたったおっさん顔の魚から同じ説教されてるですか?(泣)
そして『聞いてんのかよ!?ア?』などと途中で叱ったりするくせ、
『疲れたから今日はココまでな』とさっさと切り上げて泳いでいってしまうところまで、まさに親譲りだ。生まれていきなり憎たらしい事この上なしだが、
やはり激しく嬉しかったので、久々にくすぐりの刑に処して差し上げた。
一匹づつ。ホーッフォッフォと身悶える姿まで同じだった。あぁ。ラブリー。
何故に水中で生きる子供をわざわざ陸上に産み付けたのだヒデキよ?という
疑問はあるが、とりあえず、今は亡きヒデキとゴローに
無事生まれましたよ、と謹んで報告をした。


おたまじゃくし達にもう足が生えた。成長が早いぞ。最近は毎回劇的な展開が
あったりして進行が早いので、一日にやる回数がなんとなく減ってきてしまった。成長も楽しみだが、それ以上に別れが怖いからだ。できるだけ長く見守っていたいと思うのは飼い主のエゴだろうか。
・・・などと感傷に浸っていたら突如『誰か吸ってる?』という声が。
慌てて画面を探すと、頭の上の管を使って仲間の体液を吸っている子が居る。
なんてこった。これじゃ以前と全く同じではないか。またあの恐ろしい共食い合戦が繰り広げられるというのか。体液を吸われ尽くした子は、血の気の失せた顔で
水面へと浮かんでいった。続いて
『あれ?誰か俺の体液吸ってる?』との声が。やはり共食いは連鎖するようだ。
・・・こうして2匹がその短い命を終えた。
残った4匹と順番に会話していたら、一匹にこんな質問をされた。
シ『お前って飲食店経営だったよな。今の仕事気に入ってんのか?』
マ『うん』
シ『そうか。お前みたいな経営者ってさ、下からはあれこれ文句言われるわ、
  偉そうなことばかり抜かす顧客にもペコペコ頭下げなきゃならないわで、
  悩むのって結局人間関係だったりしない?』
マ『そうだね』
シ『だろ?それでも続けてるのは何でだ?金か?』
マ『違う』
シ『じゃぁ何だよ。楽しいわけ?』
マ『そう』
シ『今の仕事初めて何年?』
マ『2年』
シ『なんだまだそんなもんかよ』
マ『・・・』
また、別の一匹は突如こんな事を語り始めた。
シ『お前ら人間が生きてる事のありがたみを忘れてるって話は前にしたよな。
  今からその話の続きをするぞ。ちゃんと聞いとけ。
  人間の体なんて、道具の進化と共に、逆に退化していったんだ。
  (長いので以下適当に抜粋)てこの原理~車軸の原理~ピラミッド~
  メガネをかけてる奴なんて本来生物界では生き残っていけない負け組~
  道具の次なる武器は言葉~俺は聖なる伝道者~ピタゴラス~真の論理~
  三段論法~時間言語~精神世界~云々』
途中で、話ちょっと長いか?いいからまぁ聞けよ、などと確認を求めつつも、
延々と演説大会。いきなり難しい質問フラれたらどうしよう?(汗)と
そればかり気になってドキドキしてたので、上の空で話半分。
せっかくイイ事言ってくれてた(らしい)のに、こんなお馬鹿な御主人様で
申し訳ない、とこっそり謝っておいた。
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