「希望退職募集」という名のリストラが相次いでいる。東京商工リサーチの調査によると、2020年に希望退職募集を実施した上場企業は前年の2.6倍の93社。募集人数は判明した80社で1万8635人に達した(1月21日発表)。
募集企業数、募集人数ともにリーマンショック後の2009年(191社、2万2950人)に次ぐ規模になっている。
その勢いは2021年になっても止まらない。
筆者が確認しただけでも1月以降、2月10日までのわずか1カ月足らずの間で募集人数もJTの1100人を筆頭に、募集企業33社・募集人数が5000人に達している。リーマンショック後に最も多かった2009年の翌年の2010年は1万2223人だったが、“コロナリストラ”がそれを超えるのは確実な情勢だ。
残ってほしい社員、辞めてほしい社員の選別
希望退職は、通常の退職金にプラスして割増退職金と再就職支援会社による支援措置のパッケージ付きで募集が行われる。割増退職金を月給の24~36カ月分支給する企業もある。しかも退職を「希望」する人が手を挙げるので、一方的なリストラ(クビ切り)でないと思う人もいるかもしれない。
しかし実際はそうではない。
朝日新聞は「希望退職に応じるかどうかを決める権利は社員にある。それでも上司らが、面談などで繰り返し応募を促すケースが相次いでいる」と報じている(2020年2月2日朝刊)。
記事によると、あるメーカーの営業職の40代男性が、応募する気もなかったのに会社側から「制度の内容を説明したい」と言われ、3回の面談を申し込まれたという。
1回目の面談では「今後も残ってやっていける自信はありますか。別の生き方もある」などと言われた。「他に説明したいことがある」と設定された2回目の面談では、「あなたの評価は高くない」などと促されたと報じている。
これは事実上の退職勧奨である。「応募してほしい」とか「他社で活躍の道を探してはどうか」と言う退職勧奨は法的には問題ないものの、「辞めろ」とか「クビだ」と発言すれば強要として違法行為になりかねない。
実は希望退職募集に際して、個別面談による退職勧奨は過去に何度も繰り返されてきた。以前、取材した機械メーカーの人事部長はこう話していた。
「希望退職募集に際しては、事前の準備を含めて3カ月はかかります。募集公表前に、不採算部門の整理・縮小など事業計画の見直しによる経費削減目標を策定しますが、その中には人員削減規模と部門ごとの削減人数も入⇒
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