ここでまず知っておきたいのは、「ノルマ」という言葉の由来です。もともとロシア語で、社会主義国家だったソ連時代、個人や工場に割り当てられた、一定時間内・期間内になすべき生産責任量を意味します。経済活動の民営を原則とする資本主義ではなく、民営を認めない社会主義に由来する言葉なのです。
この言葉を日本に伝えたのは、第二次世界大戦の敗戦直後、ソ連の捕虜となってシベリアに連行・抑留され、長期間の収容所生活を送った末、命からがら帰国した日本軍兵士らです。シベリア抑留では約6万人もが死亡したとされますが、その生命を奪ったのは、極寒、飢餓のほか、ノルマを課す過酷な重労働でした。
シベリア抑留におけるノルマの実態を少し詳しく見てみましょう。それが資本主義に由来するものでないことがよくわかるはずです。
重労働で特に厳しかったのは、炭鉱・鉱山での作業と伐採、貨物の積み下ろしです。極寒の中、斧やハンマー、のこぎり、一輪車などしか使えない、過酷な肉体労働でした。
労働は1日8時間、月4回の休日と定められましたが、それはノルマの達成が条件です。達成できなければ罰として超過労働が要求され、給食が減らされ、休日が減らされました。労働報酬の支払いはノルマの100%以上の遂行が条件だったので、未遂行の場合は支払われませんでした。
抑留者の中には、作業を免れるためみずからの手足の指をわざと切断したり、体温をごまかしたりする人もいました。ある意味で「不正」ですが、命にかかわる状況下でのぎりぎりの自衛行為だったと言えます(長勢了治『シベリア抑留』)。
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