秋から始まった朝カルオンライン野口体操講座で、画期的な気づきをもらった。
この講座には、リアルレッスンを受けてくださっていた方々も参加されているが、皆さん映像を切る方はおられない。
ところが、はじめての方々は、ほぼ全員が映像を切って参加されている。
映りたくない気持ちはわかる。
仕方がないと思う。
それでも複雑な思いで、毎回のことレッスンに臨んでいる。
この講座は、第一週目の土曜日に開いている。
画期的な気づきをもらった回は、11月7日のことである。
この日は、時間ギリギリの最後の方で「腕立てバウンド」を取り上げた。
「見えない方にどのようにお伝えしようか」
あまり煩雑にならないように、『原初生命体としての人間』にも書かれている「腕立て伏臥の腕屈伸(腕立て伏せ)」との関わりは省いて実技の説明することにした。
基本的な「腕立てバウンド」説明はこうだ。
第一段階
しゃがんだ姿勢から床に両手をつく→つくと同時に両足を後ろへ伸ばす→その時は、つま先を立てる→腕立て伏臥姿勢になる→腕を肘から曲げないで、伸ばしたままの状態で、腹筋を緩める→胴体が床に落ちていく
第二段階
思い切りゆるめると腹部を中心に、体が床についたままになる→その時、落とし過ぎないためにブレーキとしての筋力を使う→その止めを生かして、反作用で体を浮き上げる→体全体を弾ませる→3回目につま先を床から離して、体全体が大きくふわりと浮き上がる。
具体的にもっと書かないといけないが、ここでは省略して話を進めたい。
はじめての人にとっては、実際に運動を見てもらってもよくわからないのが実態だ。
オンラインでは、第一段階の次に落とし過ぎないで一回だけ浮き上がってもらった。
一回の浮き上がりだと、実におさまりが悪い。
そこで体の自然に任せて、何回か揺れを繰り返す。その方がおさまりも居心地もいいのである。
そんなやり方を、オンラインレッスンでは試みた。
さて、話はここから。
第2週目の土曜日14日と翌日の日曜日15日に、この話をしながら、同じように試してもらった。
とりわけ日曜日のクラスで、どの動きも苦戦されている男性が、素晴らしく自然な動きを見せてくれた。
腕は肘から曲げずに伸ばしたまま、胴体が落ち過ぎない程度に筋力を使って制御し、その力の溜めをもらって、弾みをつける。そのあとは回数を気にすることなく、自然に任せて「ふわ〜ん ふわ〜ん」と胴体全体を上下に振動させている。
よく見ると伸ばされている腕と床に触れているつま先が支えになって、胴体と脚が弛み、その弛みが、波打っているのだ。首もバランスの良い微妙な揺れと波を受け取っているようだ。
「これだ!」
思わず褒めてしまった私。
ついで、全てのクラスの中で一番素晴らしい「腕立てバウンド」ができる方に、同じような要領で試してもらった。
なんともぎごちない動き。
「こんなはずじゃない」ご自身で首を傾げながらの反応。
改めて、先程の男性に、自然な揺れを見せてもらった。
「私もそうですが、野口体操の動きの型にハマってしまっているんですね。だから型を外すことが難しくなっているわけです」そう言ってしまって、自分の発言にドキッとした瞬間だった。
野口体操の「腕立てバウンド」が身についていることはよしとしても、そのリズム感を外すことができなくなってしまったことに愕然とした。
野口三千三に習って没後は私のクラスに参加してくださっているベテランの方々の目が、カッと見開かれた瞬間でもあった。
「同感!」
目にその文字が張り付いている。
型にハマらない野口体操の型にすっかりハマっていた。
腕とつま先で支えられて、弛んでいる胴体や脚が、柔らかく自然な上下動の中で波打つ新たな「腕立てバウンド」は、他のほとんどの動きで苦戦している新人の方のようにはいかない現実と向き合ったベテランたちであった。
まずは、型にハマってみる。それがことのほか大変なのだ。
さらに型が身についたら、型を破る。
それまでに何十年の歳月が流れた。
「せっかくだから、型破りの視点を持って、野口体操の動きを再考せねば!」
レッスンが終わると、何人かの方が集まって、私が持参した資料をみたり、板書を写メしたり、思ったことを話し合ったりするのは毎回のこと。それが貴重だ。
ところが、今回、今まで一度も輪に加わることがなかった方が、にこやかな笑顔で仲間に入られた。
「いつの間にか、野口体操の型に、悪い意味でハマり過ぎていたんですねー。その価値に合わないものと折り合いがつかなくて・・・・・」
生きずらかった人生に、ほっと気が緩んで、それがきっかけとなって、突き抜けられたような表情を見せてくださった。
今朝、この要領で「腕立てバウンド」の中のヴァリエーションの一つ、両手を同時に離してポンポンポンと前進するバウンドを試してみた。
初めて楽にできた。
体の自然に任せるってこういうことか・・・・
おもわず嬉しさが込み上げた。
人生、捨てたもんじゃない!