最近、モミィは、やたらと「標準語」で話す。
たとえば学校で先生に褒められたことを家で報告する時、これまでなら「きょうなぁ、学校でなぁ、先生にほめられてん」とベタベタの大阪弁で言っていたのが、近頃は「あのさぁ、あたしね、きょう学校でね、先生にほめられちゃったの~」という具合だ(ひっくり返るわ)。
標準語を使うようになったのは友だちの影響らしい。モミィには学校の同じクラスでとても仲良しの友だちが一人いる。色白で目のパッチリした可愛い女の子で、僕もモミィが習い事で急がなければならない時、学校まで迎えに行くのだが、いつもその子とモミィの2人が手をつないで校門から出てくる。
そして僕がその子に「こんにちは、〇〇ちゃん。今日は寒いネェ」と言うと、〇〇ちゃんは「そうよね、とても寒いからさ、今日は温かいジャンバーを着てきたの」と、柔らかな表情で「標準語」をしゃべるのである。なんだか大人の女性と話しているような錯覚を起こしてしまう。モミィの言葉づかいは明らかにその子の影響を受けているようだけど、言葉だけでなく、他にもさまざまな影響を、いろいろな友だちから受けていることが、家に帰ってからの会話でよくわかる。まだまだ幼いと思っていても、やはり子どもは家から見えないところで、しっかりと成長しているのだ。
モミィは学校であったことをいろいろと妻に話すので、そばで聞いていると面白い。最近、最も関心を引いたのはモミィの「小さな恋」のお話である。
モミィは幼稚園時代からずっと「わたし、男の子、嫌いやねん。男の子はいたずらしたり暴れたり、いっぱい悪いことするから」と言っていたのに、このごろ急に心境が変化したようで「あたしさ~、好きな男の子がいるのよ」な~んて言い出すのだから驚く。
「へぇ~、好きな男の子ができたの?」と妻が言うと、モミィが「ウン」と頷いて、話の続きをする。しかしモミィが心を寄せる男の子は「イケメンでさぁ、女の子のファンが多いの。だから私のことは、相手にしてもらえないの」と言うのだ。ふ~む、片思いか…と僕は横でその会話を聞いている。妻はそれを聞いて「なぜ相手にしてもらえないとわかるの?」と尋ねる。
モミィによると、その男の子が日直の時の話だったけれど、何かを質問する遊びがあって、みんなハーイ、ハーイと手を挙げるのだが、誰を当てるかは日直の子が決めるらしく、その日、日直だったイケメンの男の子は、モミィがずっと手を挙げ続けたにもかかわらず、「ワタシを当てたんは8番目やでぇ、ホンマに、ずっと手あげてたのになぁ」と、ここは大阪弁で語るモミィなのであった。せめて2番目か3番目に当ててほしかった、と嘆くので、「まあ、しかたないでしょ。その男の子も好きな子が沢山いるんだろうし」妻が言うと、モミィは「あのな、その子はな、男の子としか遊べへんねん。女の子は嫌いみたいやねん」。な~んや、それは…?やっぱりまだ7歳だ。話の焦点がイマイチ合っていない。
あははは~、と僕はそれを聞いていて横で笑ってしまった。
悲しき片思い…というものでもない。今でもモミィの会話の中には、何度も何度もイケメン君が登場してくるが、標準語をしゃべる親友の〇〇ちゃんもイケメン君が好きで、何とかちゃんも何とかちゃんも、み~んなそのイケメン君が好きだけれど、無視される…
…と嘆くモミィである。話を総合すると、女の子たちがイケメン君に集団で恋をして集団でフラれているという話のようだ。そしてイケメン君にそれほどモテる秘訣をぜひ聞きたいと思う僕なのである。うひひ~(気持ち悪い~!)。
元々同世代の子どもたちより“おくて”だったモミィだけれど、小学校に入ってからのこの8ヶ月間で、驚くほどの成長を見せた。子供同士というのは家庭では与えられない影響をお互いに与え合うんだなぁと、改めて思う。
特にモミィは僕たち2人の間で育ってきたので、家庭内できょうだいに鍛えられることもなく、実におっとりした子で、幼稚園時代は集団の中でいつもぐずぐずモタモタしていた。それが一番の心配のタネだった。でも、最近、「あのさぁ、テレビのさぁ、プリキュアをちゃんとビデオで録画しておいてね。のんちゃんはさぁ、忘れんぼだからねぇ」など、おしゃまを言うモミィを見て、まぁまぁ普通に育ってくれている…と実感するのだ。生意気なことも言う年齢に入ってきたけれど、それも成長のあかしなのだろう。
…と、以上モミィの近況でした。
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ところで、今日のタイトルに掲げた「小さな恋のメロディ」は、ご存知の方も多いと思いますが、大昔の映画のタイトルです。
イギリスのパブリック・スクールに通う少年ダニエルと少女メロディの恋の物語で、背景に流れるビージーズのテーマ曲が絶品だった。特に、メロディちゃんが手ですくいあげた金魚を水溜りのようなところに放すところでこの曲が流れるシーンは、思い出すだけで涙がポロポロこぼれそう…。
この映画が日本で公開されたのが、ちょうど僕が結婚した年(1971年→昭和46年)だった。東京に住んでいるKさんという友人が大の映画好きで、数日置きに自分が見た映画の感想を手紙で僕のところへ書き送って来ていた時期で、中でも「小さな恋のメロディ」は彼はぞっこんお気に入りのようだった。そして手紙に書かれてあったのが、「主人公のダニエル少年を演じたマーク・レスター君の顔が、のんさんにそっくりなので余計に親近感を覚えます。ぜひ一緒に見ましょう」というものであった。そして「〇月〇日に大阪へ行きますので、一緒にこの映画を見ましょう」と書き、本当に大阪まで新幹線でやって来た。友人は新婚のわが家に数泊し、2人で「小さな恋のメロディ」を見に行った。彼はこの映画を何度見たかわからないほど見たそうだけど、映画館でダニエル少年が出てくるたびに「ほら、似てるでしょ?」と僕の耳元でささやいたのである。
ダニエル少年を演じたマーク・レスターは当時まだ10歳ちょっとだった。金髪でとても可愛い少年だった。僕は22歳の大人である。そんな可愛い男の子と、どこが似てるん…?と思いながら見ていたが、友人は最後まで「ほら、似てるでしょ?」と映画館でささやき続けたのである。
そんな思い出がよみがえってきます。
ちなみに…
写真上が当時のマーク・レスター。
下が当時(22歳)の僕ちんです。
ゼンゼン違うでしょ?
でも、何のかんのと言いながら、モミィや映画をダシに自分の若い頃の写真を載せるなんて、まぁ僕もちゃっかりしてますわ。
ど~も、失礼しました~