イタリア・ルネサンスを代表する画家、ボティチェリの絵画展が、
東京の美術館で開催されていることを、先日の新聞で知りました。
ボティチェリの「日本初の大回顧展」と銘打たれていました。
日本イタリア国交150周年記念の催し…とのこと。
ボティチェリと言えば「ヴィーナスの誕生」が有名ですね ↓
学校の美術の教科書でもこの絵が出ていて、よく覚えています。
東京でのボティチェリ展にはその絵は来ていなかったようですが、
「代表作」と新聞で紹介されていた「アペレスの誹謗」というのは、
イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館で見たことがあります。
もちろん、その時に「ヴィーナスの誕生」も見ました。
新聞記事を読みながら、そのフィレンツェ旅行のことが思い出されました。
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フィレンツェに夫婦で旅行したのは、11年前のことになる。
行先はフィレンツェのみ。往復の飛行機とホテルだけの予約。
そんな個人旅行だった。
これまでのブログにも書いたことがあるけれど、
旅の初日、フランクフルトでフィレンツェ行きの飛行機に乗り換え、
夜にフィレンツェ空港に着いて、タクシーでホテルへ行こうとしたら、
運転手が、きょとんとした顔で、
「フィレンツェのホテルだって? だんな、ここはボローニャですぜ」
と言ったときには、ひっくり返りそうになった。
「えぇ?」と事情を聴いてみると、フィレンツェは濃霧で着陸できず、
そこから100キロ以上も離れたボローニャ空港に着陸した…というのだ。
つまり、いま僕たちがいるところは、フィレンツェではなかったのだ。
機内放送がされていたようだが、そんなことは何も知らないままだった。
空港に着いて、周囲はやたら携帯電話をしているのが目についたけれど、
日本人は一人もいないし、何が起きたのか、全然わからないままに、
空港出口のタクシーでフィレンツェ駅前のホテルへ行こうとしたわけ。
まさにアッと驚く展開で、そのあと習いたてのイタリア語で四苦八苦しつつ、
何とか列車の駅へ行き、特急列車に乗ってどうにかフィレンツェに着けた…
…という、まったく思いも寄らぬ滑り出しになった旅行だった。
しかしまぁ、苦労した甲斐は十分にあり、
フィレンツェの街はとても素敵だった。
フィレンツェに着いた翌日、バスでシエナという街を見に行ったあと、
午後から、フィレンツェの中心となるドゥオモ周辺をぶらぶら歩いた。
昼食に入った店で、パスタを注文した時のこと。
妻も僕も同じパスタを注文したのだけれど、店のお姉さんは、
「ここにはいろんなパスタがあるのだから、2種類注文してよ」
と、勝手に別々の種類のパスタを持ってきた。なんとまぁ強引な(笑)。
パスタでお腹がいっぱいになったところで、街の中を歩いた。
すぐにドゥオモが見えてきた。
洗礼堂、ドゥオモ、ジョットの鐘楼などが並ぶ光景は絵に描いたようだ。
壮麗、華美、圧巻。こちらの身が、すくんでしまいそうだった。
ドゥオモ(大聖堂)を背景に。
カルツァイウォーリーはフィレンツェで最も賑やかな通り。
そこから、カルツァイウォーリーという通りを歩くと、
シニョリーア広場というところに出た。
映画「眺めのいい部屋」で、女の主人公がこの広場で、
いろいろな出来事に遭遇するシーンは、とても印象的だったな~
そこには彫像が並び、中にはミケランジェロ作のダヴィデ像もあった。
これはレプリカで、本物はこの近くのアカデミア美術館というところにある。
実はこのダヴィデ像は、今は美術館の中に置かれているけれど、
これが完成した時、どこに置くかが議論になりいろんな意見が出た。
その結果、このシニョーリア広場に面したヴェッキオ宮の、
正面入り口の脇に置く…ということに決まったそうである。
つまり、いま、このレプリカがあるところに本物があったのだ。
シニョーリア広場からヴェッキオ宮を見る。
建物の前にいくつかの彫像が並んでいる。
その中にダヴィデ像(レプリカ)があった。
元々、ここに本物の像があったそうだ。
さて、そのシニョーリア広場のヴェッキオ宮の、
奥のほうに行くと、有名なウフィツィ美術館があった。
冒頭のボティチェリの「ヴィーナスの誕生」などがある美術館だ。
メディチ家の収蔵品をもととし、ルネサンス絵画の宝庫と言われ、
フィレンツェに来たからには、必ずここへ入らなければならない。
しかし美術館は、どこが入口かわからないほど長蛇の列だった。
(ただし、団体客は並ぶことなく、別の入口から入って行った)
この時期は、わりに観光客の閑散期で、どこも空いていた。
しかし、さすがにここだけは多くの人が並んでいた。
たぶんこれでもまだ少ないほうかも知れないけれど、
午前中に、シエナの街を歩き回って疲れていたので、
ここでこれだけの列に並ぶ元気は残っていなかった。
また明日か明後日に来たらええわ…。
そう言いながら、僕たちはウフィーツィをあとにして、また歩いた。
ウフィーツィ美術館には、長蛇の列が…
そして近くのドゥオモ付属美術館を覗いたら、ガラ空きだったので入った。
ここは「聖母子像が必見」…とガイドブックに書かれてあった。
聖母子像の前で。撮影禁止の札は見えなかったので、パチリ。
ドゥオモ付属美術館を出て、次はアカデミア美術館へ行った。
どれも近くにあるので、歩いてもすぐである。
このアカデミア美術館で、いよいよ本物のダヴィデ像が見られる。
胸ワクワクで、ガイドブックの地図を眺めながら、テクテク。
そして、入口で一人8ユーロの入場料を払って美術館に入った。
ここも見学客は少なかった。とにかく、ダヴィデ像を見なければ…
館内を足早に歩いて行くと、向こうの方に凛々しく立つ像が見えた。
これぞ小学生の時から写真で見ていたダヴィデ像の「ほんまもん」だ。
ミケランジェロという名前も、中学校の美術の時間で覚えた。
周囲には僕と妻のほか誰もおらず、シーンと静まり返っていた。
ルーブル美術館にあるミロのヴィーナスは、4回見たけれど、
いつもそこは人だかりだった。しかし、今、ここは誰もいない。
僕と妻とダヴィデとの“3人きり“でありました~♪
残念ながら撮影禁止だったので、
ネットの写真を載せます。
僕たちが行った時、ダヴィデさんは、
一人ポツンと寂しそうに立っていました(笑)。
さて、そうこうしているうちに夕方近くになった。
僕たちはホテルに戻ろうと、来た道を引き返して行ったら、
ウフィツィ美術館に並んでいた人の列が、全くなくなっていた。
思わぬチャンス到来である。もちろん僕たちは、入口へと急いだ。
そして、他に誰もお客のいない窓口で、
一人9.5ユーロを支払って中に入った。
憧れの「ヴィーナスの誕生」に会えるのが、とても楽しみだった。