僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

 エッフェル塔とレストランと

2008年05月13日 | 旅行

トロカデロ広場から見えるエッフェル塔が一番だと思います…とボワシエールさんが書いておられたそのトロカデロ広場に出るつもりで、パッシー通りから、地図と磁石を頼りに3人でテクテク歩いた。しかし、斜め斜めに延びる道路は、分岐点に来るとさらに斜め左右に分かれて行くので、正しいコースをたどっているつもりでも、やっぱり道を間違えたらしい。閑静な住宅街から下り坂になり、緑の美しい小公園が眼下に広がったと思ったら、いきなりセーヌ川に出て、目の前に巨大なエッフェル塔がそびえていた。

あとから地図を確認すると、トロカデロ広場はもう1本左の道を行かなければならなかったのだ。まあ、仕方ないだろう。トロカデロ広場からの景観は、帰るまでに再チャレンジしよう。



 
 
エッフェル塔を背にしてのショット。
  メリーゴーランドの向こうに見えるのがシャイヨー宮。その後方にトロカデロ広場がある。
  1本、道を間違えて、いきなりエッフェル塔へ来てしまったわけだ。


人通りの少ない住宅街の中を歩いて来たので、急に観光バスがズラリと並び、見物客の大群が目の前に現れると、ちょっとびっくりする。エッフェル塔の下は人・人・人で大賑わいだ。塔に上がるエレベーターの順番を待つ人たちで、長蛇の列が出来ていたし、階段で上がるチケット売場の行列も、かなり長くなっていた。写真はこちら側からだと逆光になるので、塔の向こうへ行って撮影することにした。

それにしてもすごい人の列だ。むかし、僕も一度エッフェル塔の最上部である第3展望台まで上ったことがあるけれど、その時はこれほど混雑していなかった。それでも、第1展望台へ行くと、次の第2展望台への行列がズラリ。ようやく第2展望台に上がると、今度は第3展望台への行列がウネウネと続いており、一番上まで行くのに相当な時間がかかったのを覚えている。むろん、ここで貴重な時間を潰すわけにはいかないので、僕たちはそのまま塔の下を歩き過ごした。



  

 

  
  展望台へ行く人たちがズラ~っと並んでいる。

 

 
  皆さん、黙々と列に並んで、根気よく順番を待つ。

 

「エッフェル塔と東京タワーはどっちが古いの?」と姉が質問する。
にわかガイドの僕は、エヘンと咳払いを一つして、
「エッフェル塔は100年以上前にできています。東京タワーは昭和33年建設だから、今年がちょうど50年ということになりますね、はい」
こういうやさしい質問なら、どんどんしてちょーだい、アネさま。

エッフェル塔の全景が写真に入るところまで来て、「はい、ポーズ!」と撮影をしていたら、すぐ横にアメリカ人ふうの若いカップルがいたので3人そろって撮ってもらえないかと頼んだ。「オーケー、オーケー」とひとりが快く応じてくれて、2枚撮ってくれたうちの1枚が下の写真である。3人で写っている写真は少ないので、貴重な1枚になった。

 

  

 

お返しに2人に「撮りまひょか?」と聞くと、「へぇ、頼んまっさ」と返ってきたのでカメラを受け取り、「は~い、行きまっせ~」と声をかけると、さすがアメリカンらしく、2人は派手に抱き合うポーズでこちらを向き、嬉しくてたまらんという表情を浮かべてカメラにおさまった。アツアツで湯気が出そうな仲良しカップルであった。

時計は11時半を少しまわっていた。
これからボワシエールさんが紹介してくれた、シーフードがおいしいというお店まで歩いて行けば、ちょうど12時過ぎくらいになるだろう。

僕たちはエッフェル塔のわき道を抜けてセーヌ川沿いに出て、ドゥビィー橋という歩行者専用のなかなか味わいのある橋を渡って、教えてもらったお店へ向かって歩いた。この辺からのエッフェル塔の眺めも素晴らしかった。

 

 
  僕たちが渡って来た ドゥビィー橋 と エッフェル塔。 


セーヌ川の対岸(右岸)に出て、エッフェル塔を背にして歩いて行くとアルゴ橋があり、メトロのアルマ・マルソー駅があった。アルゴ橋からジョルジュ通りという大通りが延びている。ボワシエールさんによると、ここからセーヌ川を背にして大通りを歩いて行くと、すぐにそのビストロがあるということだ。

「黄色と青のテーブルクロスがトレードマーク」のそのビストロはすぐに見つかった。時間はちょうど12時だった。どうやらまだ準備中のようだ。店の男性がテラスの各テーブルを丁寧に整えている。その人に、店は何時から始まるのか? とたどたどしい英語で尋ねたら、その人は僕に向かって、言葉ではダメだと思ったのだろう…両手をひらいて見せたあと、次に片手をひらいて見せた。
「ん…?」と、僕は何のことやらわからなかったが、妻と、妻の姉が、
「15分待て、ということやろね」と互いに頷き合いながら、そう言った。
両手が10で、片手が5…か? 足して15。15分待て…。
ふ~む、なるほど。女性の勘は、するどい。

実際そのとおりだった。
お店の前にあったベンチに座って3人で待っていると、15分後、男性はこちらを見て、「おいで、おいで」と手招きをした。



  
   まだ準備中だったので、僕たちは道端のベンチに座って時間の経つのを待った。
     ちなみに「POISSONS」とあるのは、「魚」の意味。
     妻はこれを見て、「 “毒”  みたい」 と思ったそうだ。
     それは 「POISON」である。 アンジェリーナ・ジョリー主演でそんな映画があったな~。

   
ちょっと緊張しながら中に入ると、別のお兄さんが「予約はしているか?」と英語で聞いてきた。「してませ~ん」と答えたついでに、「私はフランス語を話せません」とも言っておいた。こういうことは早い目に言っておかなければならないが、相手は「そんなこと、わかってるがな」という感じで、席まで案内してくれた。

さて、注文がむずかしい。緊張の瞬間だ。
おまけに周囲にはまだお客がいない。
店内がガヤガヤとしていて、お客さんがいろんなものを食べていたら、そういうのを見ながらだいたいの感じがつかめるのだが、なにしろ一番乗りである。店内は、不気味に静まり返っている。ドキドキ。

僕たちはランチコースではなく、それぞれ1品を注文することにしていた。
英語メニューがチョークで手書きされた黒板が運ばれて来て、前に置かれた。
これが、お勧めの品…なのだろうか?

英語と言っても、何が書いてあるか、皆目わからない。
しかも手書きだし…。
「どうする…? 何を注文する…?」と僕は尻込みしながら2人に相談する。
しかし、2人とも「おまかせします」という目で僕を見る。
こうなると、にわかガイドもさっぱり形無しである。

う~ん。困った。ちょっと恥ずかしいが、これしか方法はないだろう…。
僕は黒板に箇条書きにされている料理の上から順に、3品を注文した。
ひとつずつ、指で「これと、これと、これちょーだい」である。とほほ。

一番上には「COD FISH」のなんとか…。25ユーロ。
二番目には「SALMON」のなんとか…。21ユーロ。
三番目には「SKATA」の steam なんとか…。28ユーロ。

二番目のサーモンというのだけ辛うじてわかった以外は、さっぱりわからん。
フランス語のメニューはある程度わかっておかねばと、カンニング用にガイドブックのコピーを持ち歩いていたが、英語メニューの、特に魚の種類などは何の予習もしていない。こういう局面では、むしろ英語のほうがむずかしいと言えた。

やがて運ばれてきた3つの料理を、3人で分けながら食べた。
来たのは、サーモンと、タラと、そしてもうひとつ、何かわからないものだった。
「COD FISH」というのは、タラのことだった(勉強不足!)。
しかし、あとのひとつがどうしてもわからない。
とても美味しいのだけど、「SKATA」
の意味がわからないのだ。


   
   シーフードのおいしい店、という看板にたがわず、味はとてもよかった。


結局、「SKATA」の意味がわからないまま、お勘定をしてそこを出た。
代金はしめて82ユーロであった。
そのころは、もうお客さんがかなり増えていた。
よく繁盛している店である。

レストランを出たあと、何となく「高揚感」のようなものが湧いてきた。
パリまで来たのだから、こういうお店に入れてよかったなぁ~という感じ。
ボワシエールさんに紹介してもらったおかげである。

  

 
 僕たちは中で食べたが、店を出るときには、テラスのお客さんも増えていた。

 

ホテルへ帰ってから、部屋に置いたままにしてあった電子辞書で調べてみた。
「SKATA」というのは、「ガンキエイ」とあった。
ははぁ…。
エイだったのか。
そういえば、普通の魚の切り身の形はしていなかったなぁ。
味は、なんとも言えずまろやかで、トロリと美味しかった。
ぜひ、もう一度、今度はじっくりと味わってみたいものだ。

僕が辞書を見て「あれは、エイやったんや!」と言うと、
「何かそんな感じがしたよ。おいしかったねぇ~」と妻。
レストランの中では雰囲気に押され気味で言葉少なだった僕らも、ホテルに戻ると、あれやこれやの感想が飛び出してきて話が大いに盛り上がった。注文する時はどうしようもないほど緊張したけれど、3人でその日の出来事を振り返ってみると、このお店での話は、してもしても、尽きないほどであった。

この3日後にも、ボワシエールさんに教えてもらった別のビストロへ行き、ここでも貴重な体験ができた。ごく当たり前に時間を過ごすより、悩んだりつまづいたり、あるいはヒヤヒヤしたりしながら注文をしたり、どきどきワクワクしながら料理の来るのを待ったりするのは、終わってみたら実に楽しい思い出である。

「楽しい旅行ですわ。おかげさまで…」
姉は、しみじみとそう言ってくれた。
にわかガイドとしては、何よりもその言葉が嬉しく、心が安らぐのであります。

                                ~ 続きます ~


 

  
 
左手のシャイヨー宮の上がトロカデロ広場。
 そこへ行くつもりが、エッフェル塔前のイエナ橋へいきなり出てしまった。
 イエナ橋の隣がトゥビー橋。 ここを渡ってニューヨーク通りを右へ歩き、その次のアルマ橋へ。
 M (メトロ) のALMA MARCEAU から少し上がったところにそのレストランがあった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

コメント (10)
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