曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

映画「リズと青い鳥」の感想

2018-05-06 10:43:04 | テレビ・映画
娘二人を連れて映画「リズと青い鳥」を見てきた。父娘でハマっているTVアニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフ映画である。



「響け〜」は高校の弱小吹奏楽部が新任の指導者の下でコンクールを勝ち進んで行く話だ。TVでは主人公・黄前久美子の一年生のころを描いていたが、「リズと〜」はその翌年の話。明るくて人気者のフルートエース、傘木希美(のぞみ)と、無口で友人の少ないオーボエエース、鎧塚みぞれが主人公となる。

「リズと青い鳥」というのは北宇治高校が選んだ自由曲のタイトルだ。孤独な少女リズが唯一の友だった青い鳥を空に返すという童話?がモチーフになっているらしい。そして曲中にフルートとオーボエのソロの掛け合いがある。

前半はリズがみぞれで、鳥がのぞみだった。みぞれは鳥を手放す気持ちが分からないといい、演奏も低調。

後半は逆転する。才能のないのぞみ=リズが、才能あるみぞれ=鳥を開放できるかどうかが焦点となる。

だが、のぞみがみぞれの才能を羨み、のぞみに縛られているということを読み取るのが難しかった。みぞれが新山先生から音大に誘われ、のぞみは誘われなかったのが逆転のきっかけなのだろうが、それまでも才能には嫉妬していたのだろうか。

この映画はセリフで気持ちを伝えることが少ない。視線の動きや表情の微妙な変化、カメラワーク、象徴的な風景などで人物の心理状態を表現しようとしている。視聴に集中力を要する映画だったし、正確に読み取れたかどうか自信がない。

原作一巻の久美子の説明によると、吹奏楽部は女子が多いので、女子同士で好き嫌いの人間関係が激しいらしい。本作でも「大好きのハグ」とかいって抱き合って互いのいいところを言い合う儀式が登場する。

自分的にはテレビ一期の麗奈と久美子の関係に萌えてた。「これは愛の告白だから」「ずっとそばにいてくれる?」などの危ないセリフが飛び出しつつ、久美子は美少女である麗奈と一緒にいることに気後れしていた。共感と嫉妬と羨望が混ざった不思議な友情だった。

その麗奈と久美子のコンビが、リズと青い鳥のソロ掛け合いを演奏して、のぞみとみぞれに見せつける。本当の親友とはこういうものだと。そして僕は、この二人は仲良しのままなんだなと安心した。

対して、のぞみはみぞれの「のぞみは私の全部」に「みぞれのオーボエが好き」としか返せなかった。他の部員全部を敵に回す覚悟で麗奈を支持した久美子のようにはいかなかった。

だからどうしたと言われればどうもしない。のぞみとみぞれのすれ違っているようですれ違っていない微妙な関係を、息を詰めて見守る映画なので。

コンクールまではやらない。オーディションは、気付いたら終わっていた。ちゃんとした演奏シーンは、練習で第3楽章を通してやった時のみ。そのときのみぞれの演奏が入魂の出来だったため、ああ、みぞれは鳥を解放したのだと気付く。

最後にみぞれはいつも通り音楽室に行き、のぞみは図書室に行って参考書を広げる。のぞみはみぞれを追いかけて音大に行くのをやめ、普通の大学を目指す訳だ(これも僕の解釈で、具体的な説明はない)。二人は別の道を行くことになったが、冒頭で「disjoint」だった字幕の「dis」が取り消し線で消され、二人がそれなりの着地点に落ち着いたことを知る。

・・・・・

音響が凄い。通常なら無音のシーンで済ましていい場面でも、常に環境音を入れている。靴音や衣擦れの音が生々しく、いい機材で慎重に録音されたんだろうなあと思った。そのような音が常時聞こえるため、静かな映画なのに逆に完全に無音なシーンが少なかった。

各キャラクターの瞳が美しかった。透き通った湖か宝石のようだった。アニメの手法として、キャラクター毎に瞳の色が変えてあるので、いろんな色の湖や宝石を鑑賞できた。これは劇場の大画面で鑑賞すべき。音もすごい訳だし。

難点は童話部分。主役二人の声優の演技が達者なぶん、本田望結の棒読みが目立った。あれは作中劇の異世界なので狙った棒なのかもだが、スポンサー対策かなと思わなくもない。うまい声優が棒読みしたっていいわけだし。

見終わった直後は「満足度97%は嘘だな。俺はこういうのも好きだけど」と思ったのだが、一晩置いてみると、昨日劇場で見た夏のイメージが頭の片隅に残っていて微妙に心地よい。きちんと盛り上がってきちんと終わってないのが、返って余韻を長く残すのかもしれない。人を選ぶ作品だが、ひっそりと単館上映されている知る人ぞ知る邦画とか東南アジア系の静かな奴が好きな人には合うかも。

テレビの主役たち、新2年生の出番は少ない。麗奈の台詞などは、YouTubeで見られるPVのが全てだ。久美子はたしか二言しかない。新3年生は出番多い。テレビ途中から急激に株を上げた夏紀先輩が依然いい子で、安全弁的な役割を果たしている。新1年生の剣崎は優子部長と外見が被っており、なんでそうしたかなと若干首を傾げる。

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