個人の想像力だけで生きてゆく時代は遠い昔に商品流通と交易手段の発達が終わらせてしまったのに、自然に生まれた人間は、想像力を自由で限界の無い物と思っている。(略) そのような想像力の繰り出す純粋な世界は歌の世界か、アートの世界にしか残されていない。
想像力は現実をつかみ取るエンジンであってファンタジーの伴侶ではない。我々の日常の外界はきわめて特殊に延長されていて、リアリティを固定するために五感のみを頼りにできない。
しかし、凡人であっても、注意力さえあれば、差分(狭い意味では変化)を認識する事は可能だ。
もし通常の注意力を以て、時間の経過に沿った差分法則を観察できるならば、個人のアナログな想像力エンジンを用いてその原始関数にむかって辿る旅をすることができる。このように意識してたどり着いた原始関数に相当するのがリアリティというものなのだ。従ってリアリティはその生い立ちからして観念的なのだが、多くの人はリアリティというものをそこにある事物と同一視して、本質を誤解している。